トゥルーアスリーテス 覚者だらけの大運動会!
トゥルーアスリーテス 覚者だらけの大運動会!


●スタジアムの雰囲気をお楽しみください
「ビールー、ビールー、ルービーはいかがっすかー」
 バドなんちゃらの格好でサーバーをしょって歩くユアワ・ナビ子(nCL2000122)。
「キンキンに冷えたルービー、悪魔的なルービーはいか……い、いか……イカのゲームしたいッ!」
 が、五分もしないうちにジェット噴射で客席を離脱。
 キャオラーとかいいながらダイナミック職場放棄をかました。

 ここは2017年にオープンした新国際競技場。
 とんでもなく頑丈なこの施設は昨今の『発現者もスポーツしたらよくね?』的運動に伴って建設されたものである。
 ここに!
 日本の主要テレビキー局たちが集まり!
 いま、始まる……!
「覚者だらけの大運動会ー!」

●説明役の職場放棄に伴ってムラキヨさんを引っ張ってくる暴挙
 みなさんこんにちは。FTVアナウンサーのタナカです。
 いよいよ開幕しました共同番組『トゥルーアスリーテス』。
 芸能界に存在する覚者アイドルや覚者芸人、元スポーツ選手や作家、タレント、声優、ミュージシャンに至るまでが一堂に会して行なわれる超常的大運動会でございます。
 今回の解説としてメインスポンサーでもあるムラキヨグループ会長、ムラキヨさんにお越し頂いております。
 よろしくおねがいします。
「よろしくお願いします! スカイタワー式典の番組でファイヴの皆さんが述べた『発現者というものを知って貰いたい』という考え方……非常に感激しました!
 そこで各局にご提案させていただいたのがこの大運動会です!
 様々な分野に発現者は居て、彼らのもつ身体的なスター性と個人としての人間性。それらを番組を通してご覧頂くことでより深く知り、そして親しむことができるでしょう!
 勿論この考えに気づかせてくれたファイヴからも特別ゲストとしてお呼びすることになっています。お茶の間の皆さん、どうぞご期待ください!」
 えーっはい、ご期待ください!
 それから――。
「特にファイヴの皆さん。共にこの日本に本当の希望を作り、未来を創ろうではありませんか! 確かに国は頼りにならないかもしれない、妖は恐ろしくリジェクター犯罪は後を絶たないかもしれない、けれど日本には彼らがいるということを、知らしめてやろうではありませんか!」
 やめっ、やめてくださいっ、マイクを奪わないでっ、ムラキヨさっ、ムラキヨさーん!
「お茶の間の皆さん、チャンネルはそのまま!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:簡単
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.運動会に出場する
2.なし
3.なし
 テレビ局の合同番組にファイヴのメンバーが特別ゲストとして招待されました。

●番組の内容
 学校でやるような運動会をダイナミックに改造した種目をテレビ局ごとに編成したチームで対抗して競うというお祭り番組です。
 皆さんは主要キー局にそれぞれ一人ずつゲスト枠(通称ファイヴ枠)で参加して頂きます。
(こんな局がいい的な指定してもOKですが、ダブったときは調整することになります)
 チームには芸人やタレント、アナウンサーや元スポーツ選手、歌手や俳優や声優やイワナ釣り名人なんかがごちゃまぜになっており、全員が覚者です。
 皆さんはそれぞれ『ひとつだけ』好きな競技に参加してください。
 競技が被ればお互いが対戦相手になるでしょう。

【競技】
●すねっこ玉入れ
 大量の『すねこすり』がフィールド内を逃げ回っています。
 このすねこすりを捕まえ、それぞれのチーム用のバスケットゴールに投げ入れます。
 制限時間内により多くバスケットにすねこすりを入れられたチームの勝利です。

 制限時間は10分。
 バスケットゴールは一般的な玉入れをグレードアップした作りで、カゴの高さは10メートル。
 特別製の頑丈な柱によってささえられています。カゴの大きさはすねこすりが一匹ずつが入るほどの狭さで、柱を通って内側にぽこぽことたまっていきます。
(すねこすりたちはこの状況を割と楽しんでいます)
 チームは一試合につき5人で構成され、一つの局から複数のチームが作られます。
 (皆さんはそのなかの1人として配置されます。テレビ的な理由でお友達と一緒のチームにはなれないキマリです)

●東京借り物競走
 ルールは一般的な借り物競走と一緒。札を引いて書いてあったものを借りてきて、ゴールを潜るまでの速さを競います。
 ただし借りてくるものが非常に限定的で、フィールドは『東京都内全域』です。
 制限時間は60時間。選手は1チームにつき1人です。

※プレイングを書くために、プレイヤーにのみ札の中身をこっそりお見せします。
 以下のうちからひとつを選んでプレイングに盛り込んでください。
・200年以上使われた思い出の品。手のひらサイズに限る。
・80歳オーバー女子のキスマーク100個(特定スタンプカードつき)
・ヒルズ族の社長。(分刻みのスケジュールを空けさせて抱えてくる必要あり)
・浅草神輿(一人でかつぐには無理があるのでトラックか神輿野郎たちが必須)

●エクストリーム棒倒し
 覚者パワーをフルにつかって棒倒しを行ないます。
 使う棒はめちゃくちゃ頑丈なポールですが、ルールは一般的な棒倒しといっしょです。
 20人のチームを組み、相手チームの棒を倒します。
 プレイング的には『攻撃』か『守備』のどちらかに入り、その方法を書くとよいでしょう。もしあなたが棒倒し玄人なら細かいあれこれを書いてもOKですが、一応これ覚者パワーを使った棒倒しなので、色々とんでもないことがおこります。
 術式や体術の使用もOKですが、命数消費にならない程度に戦います。後述する人としてダメなことやテレビ的にダメなことは控えましょう。
 (皆さんはチーム内の1人として配置されます。テレビ的な理由でお友達と一緒のチームにはなれないキマリです)

【全体的なルール】
 この大会で守られるルールは以下の三つです。
・人としてダメなことはしない。
・テレビ的にダメなことはしない。
・みんなで仲良く戦いましょう。

【補足情報あれこれ】
●ムラキヨ
 シキムラ キヨ。大規模複合企業体『ムラキヨグループ』の会長で、ファイヴの出資者の一人。
 ファイヴとはカフェ五華による『恒久的な地域復興』や地デジ化による『安全共有サービス』といった色々な事業をおこしている。
 FTVはムラキヨがオーナーのローカルラジオ局。

●この番組って?
 各テレビ局が共同で行なうお祭りです。それぞれの視点から撮影・編集・全国に放送されます。
 注目度の高さからいくつものスポンサーが協賛し、出資額の一部(というか大半)は『ファイヴ基金』に入り、妖被災者の復興支援金などに使われます。地味にチャリティー番組です。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
3/6
公開日
2017年05月11日

■メイン参加者 3人■


●東京借り物競走
 東京浅草、雷門前。
 観光客が行き交う一大観光スポットで、納屋 タヱ子(CL2000019)はぽつんと立っていた。
 手には札。札には『200年以上使われた思い出の品。手のひらサイズに限る』とある。
「高齢の方に聞き込みをすればと思いましたけど……まず高齢の方を探さないとですね」
 札をポケットに入れて、タヱ子は歩き出した。

 タヱ子とカメラのマンツーマンによる野外撮影である。
 道行く女子高生がスマホを向けてくる。タヱ子はカメラが珍しいのかな程度にとらえていたのだが、つい最近の放送がきっかけでお茶の間人気が出ていることにあまり気づいていない。
 浅草といえば古い町だし渋い文化も残っている。例えば落語の寄席なんかがそうだ。
 『大入』と書かれた看板の下に、いかにも今から落語をしますよといった風情の若者が立っていた。
「すみません。この辺りで高齢の方はいらっしゃいませんか? 二百年以上使われた品を探しているのですが」

 といって、案内されたのが落語家の楽屋である。お弟子さんに囲まれた、タヱ子も見たことのある落語家(なんか紫色の着物着た人)が『ああどうもいらっしゃい』と座布団を貸してくれた。
 座布団に(一旦遠慮してから)座りつつ、出されたお茶を手に取る。
「こちらに二百年以上使われている品があるとうかがったのですが……」
「ええ、ええ。ございますよ。おいラクダイ、あれ持ってきなさい」
「へいっ!」
 やけに太った弟子が小さな太鼓を抱えてやってきた。
「お囃子といってね、落語を始める時にトンカラトンカラと音楽が鳴るでしょう? あれはみんな、ここの弟子たちが太鼓を叩いて鳴らしているですよ。僕も若い頃はずーっとこれでね、馬みたいな顔した師匠が『おいおまえ、囃子のひとつもたたけなくてなにが古典だっていうんだ』と……」
「あの、嬉しいのですが」
 それを持ち出したらなにか大変なことになりそうだったので、タヱ子は『他のものはありませんか?』と持ちかけた。
 というか、仮に持ち出せたとしても『手のひらサイズ』という限定から外れてしまう。
 できれば手に収まる程度のもので、と言うタヱ子に落語家はうんうんと頷いた。
「じゃあちょっと弟子に取ってこさせるから、すこしここで話していきませんか」
 ときた。

「出資者のムラキヨさんの思惑に反してしまうかもしれませんが、発現者の能力をいかして運動しようと思えば、能力自体の強さでおおよその勝負が分かってしまうと思うんです。力比べのような構図は見せたくありませんし、能力の強さでその人がコンテンツとして消費されていくのもよくないと……」
 正座をして語るタヱ子に、落語家は再びうんうんと頷いた。弟子たちもうんうんと頷いている。
「納屋さんは、格闘技はお嫌いですか」
「嫌いというほどでは……」
「ということは、他に理由がありそうですな」
「はい……」
 湯飲みを手に、水面を見つめるタヱ子。
「発現者を知って貰いたいという理念には変わりないのですが、隔者犯罪が消えないけれど覚者がいることを知らしめたいというのは違うと思いました。まるでいいわけのように聞こえてしまって」
 うんうんと頷く落語家。
「うちの弟子には妙な決まりがありましてね。週末には弟子たちで飲みに行くんですが、彼らまるで金を持ってないもんだから必ず食い逃げするんですわ。一人が店主に土下座して財布を取りに行かせるフリをして、結局全員ふらっと帰っちまう。けど店主はまた連中がくれば店に入れて飯も酒も出すんですな」
「それって、一体どういう……」
 眉を寄せるタヱ子を遮るように、太った弟子が桐の小箱を持って現われた。
「師匠! 持ってきました!」
「よしよし……これはあたしの師匠から受け継いだものでね、仕事につかうヒモなんだけれど、これを持っていきなさい。急ぐだろうから、話はここまでだ」
「どうも」
 なんだか釈然としないながらも、桐の箱を受け取ってタヱ子は頭を下げた。
 余談みたいな語り方をしてしまうが、競技の結果としてタヱ子は二位にはいった。ヒルズのIT社長に土下座をしまくった芸人覚者が優勝したらしい。

●エクストリーム棒倒し
「人を攻撃するのは好きじゃないしね。俺は守備に徹することにしペキュウ!?」
 『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は空を飛んだ。
 棒倒しの試合開始から十秒後のことである。

 棒倒し。
 それは誰もが知っている団体競技である。
 集団の力で棒が倒れないように支えつつ、相手の集団が支える棒を倒すことで勝利となる。
「ある意味、最も運動会らしい競技と言えるでしょう。強化された人間同士のぶつかり合い。果たして軍配はチームに上がるのか。解説のムラキヨさん、どうでしょう」
「発現者が自らの体術や術式を使ってぶつかり合うぶん、見た目に激しいバトルになるでしょう。しかし、戦闘レベルが高ければ勝てるというわけではありませんね」
「それはどういうことでしょう。おっとゴングが鳴りました、試合スタートです!」

 横に広がるは奏空や元スポーツ選手、イケメン俳優たちによる守備陣たち。
 そこへ飛び込んでくるのは巨乳自慢のグラビアアイドルである。
 えっちょっとこんなお姉さんに攻撃なんて出来ないよまってどうしよう、とか思っていたら平手が飛んできた。
「吹っ飛べオラァ!」
「ペキュウ!?」
 そして冒頭に戻る。
 試合会場は戦場の空気そのものだった。
 雷鳴がとどろき炎があがり、それらを治癒すべく雨が降り風が吹き天才子役がサンマを焼き全裸芸人がトレーを回転させ売れっ子声優がサンバのリズムで踊り出す。
「なんだこれ、戦闘依頼か!? ……いやちがう、なんかがちがう!」
 序盤はそうしたお互いの削りあいにはなったが、すぐに(奏空基準での)戦闘風景からは一変した。
 目的が相手の棒を倒すことである以上、相手を倒す暇があったら棒に登ってぐいっと倒した方がよいに決まっているのだ。
 覚者パワーで突っ込む以上、雷鳴がとどろこうが炎が燃えさかろうが関係はないし、なんなら相手を殴り倒すよりも相手の棒に攻撃陣全員でしがみついたほうが勝利が早いのだ。
「これはHPを削りあうバトルじゃない。即席のチームワークを競ってるんだ!」
 納屋さんじゃないんだから鉄壁防御とか無理だよと思ってた奏空だが、チームワークなら自信がある。というか、棒倒しに物理防御はあんま関係がないのだ。たとえ全員が屈強な防御力をもっていても、チームワークと作戦の相性によって勝敗が瞬く間に決まる。それが棒倒しの神髄である。自衛隊学校の運動会とか行くとよく分かるよねこの原理。
「うおー! 棒は俺が絶対にまもるー!」
 棒にしがみついて自らをつっかえ棒にする奏空。
 そこにめり込み黒人レスラーのパンチ。
「ペキュン!?」
 棒さんといったピクニック。棒さんと過ごすクリスマス。棒さんと一緒に吹き消すバースデーケーキのろうそく。一緒にこたつですごす冬、海にくりだす夏、そして婚約指輪を取り出す俺……。
「ってなんだこの走馬燈! 記憶にないよ!」
 そうこうしているうちに、奏空のチームは相手の棒の先端にがしがししがみついて重心を傾けさせ、押し切りで勝利となった。

●すねっこ玉入れ
「コホン。なんだか……緊張しますね」
 きょろきょろとあたりを見回しながら、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)はペスカと顔を見合わせた。
 出場競技はすねっこ玉入れ。
 会場を逃げ回るすねこすりを捕まえては籠に放り込むという、一見フィジカルな競技であるが、しかし……。
「こ、これは」
 試合開始のホイッスルと共に放出されたすねこすりたちが一斉にそこら中を駆け回り、時には出場者のすねにゴッとぶつかり転倒させるという非常にテクニックを要する展開になった。
「これでも経験は豊富なほうです。負けませんよ!」
 ラーラは逃げ回るすねこすりをよーく観察して、タイミングよくキャッチ。さあ籠に向かって投げなくては……と思った矢先に手の中のすねこすりと目が合った。
 手の中でぷるぷるするすねこすり。
「あ、ああ……もふもふ。おどろかせてごめんね。よしよし、いいこいいこ」
 抱きしめてなでこなでこするラーラ。
 そう、これはすねこすりを追いかける体力と、捕まえる技術力と、可愛い生き物を放り投げる精神力が試される競技なのだ。
 借り物競走にしろ棒倒しにしろこの玉入れにしろ、覚者パワーというより人間性を競っているような気がしてきた。
 となれば、ラーラとて負けては居られない。
 別に人間性に自信ありとうたっているわけじゃあないが、可愛いものとの付き合いかたにはちょっと自身があった彼女である。ペスカとか。
「いまからあの籠に向かってジャンプしてください。せーのでいきますよ。せーの……!」
 ラーラがひょいっと投げ飛ばすと、すねこすりは彼女にあわせて籠へと飛び込んでいった。
 無理矢理投げようとしていた選手は、暴れるすねこすりのせいで手元が狂ってなかなか籠に入らない。どころかキャッチするだけでも一苦労である。
 ラーラは自分の路線が正しかったことを自覚して、グッと拳を握り込んだ。
「この調子でどんどんいきましょう!」

 右へ左へ逃げ回るすねこすり。
 転倒する元力士。可愛い生き物に夢中になってしまうジャニ系アイドル。筋肉で解決しにかかる芸人。意外にもすねこすりと打ち解けながら順調に籠へ飛び込ませていく悪役レスラー。
 そんな中で、ラーラは順調に得点を稼いでいた。
「大丈夫ですよー。よしよし」
 キャッチしたら一度抱きしめて安心させて、籠に飛び込むことを一旦説明してから一緒に楽しく遊ぶ感覚で入って貰う。
 この繰り返しはとても安定した。

 試合終了までの個人得点は一~二を争うもので、チーム全体での得点では僅差で勝利することができた。
「皆さんありがとうございます!」
 小さな花火を両手からぱちぱち上げながら勝利のポーズをとるラーラ。カメラにもばっちり笑顔であった。

●チャリティーはつづく
 こうして二日にわたって行なわれた運動会の収録は終わり、番組は日本各地で放送された。
 発現者を、人間にはない能力をもった超人とみる一方で、個々人ごとの人間性をもったただの人であることを知るだろう。
 来月には、覚者プロレスも企画されているらしい。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
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