≪結界王暗躍≫こんな所にゴミを捨てるな!
●
地元の人間も近寄らない山の奥。
そこにはゴミがうず高く積まれていた。
もちろん、こんな所に処理施設があるわけもない。いわゆる不法投棄というやつだ。
「こうしてみると、ここも随分と溜まったもんだ。ここも潮時かもな」
「あぁ、地元の連中も警備を強化してる。別の場所探すのは面倒だけど、仕方ないか」
トラックから乱雑にごみを下ろしながら、男たちはのんきな話に興じる。彼らにしてみれば、ここはごみを捨てる場所でしかない。違法行為をやっているという自覚も薄い。
そして、荷台に積んでいたゴミを下ろし終えて、作業をしていた1人は近くにあった古びた社の上にどっかり腰を下ろすと、ペットボトルの茶を飲み干す。
「ふぅい。帰りがなければ、ビールでも飲みたいところなんだがな」
「違いない!」
笑いあう男たち。
その時、彼らの後ろにあったごみの山が動く。
「ん、何だ?」
物音に気付いて振り向く男たち。しかし、その顔はすぐさま恐怖に凍り付く。
「グギュラァァァァァァァァァ!」
「ブォォォォォォォォォォォン!」
視線を向けた先には巨大な扇風機と冷蔵庫があった。一応、彼らも以前投棄した記憶がある。だが、彼らが恐怖したのは、これらのものが巨大化し襲い掛かって来たからだ。
因果応報。
そうして、男たちの意識は闇の中へと消えていった。
●
「はーろろん♪ みんな、今日は集まってくれてありがとー!」
集まった覚者達に元気に挨拶をするのは、『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)。そして、全員そろったことを確認すると、彼女は発生した事件の説明を始めた。
「うん、妖が現れる夢を見たの。みんなの力を貸して!」
麦の渡してきた資料には、巨大な扇風機と冷蔵庫が描かれていた。機械部品を元に手足のようなものがくっついており、妖の姿だとわからせてくれる。
「出てきたのは物質系の妖、ランクは2だよ。そんなに手ごわい相手じゃないけど、油断は禁物だよね」
この妖達は不法投棄されたごみが妖になったものだ。そして、目の前にいる捨てた連中を真っ先に殺そうとしている。彼らには当然の報いともいえるが、妖を放置するわけにもいかない。放っておけば、人里に災いをもたらすことになるだろう。
まぁ、急げば不法投棄している連中も助けることは出来る。
「それと、現場には『七星剣』の隔者もいるみたい。『結界王』って人の依頼で動いているみたい」
『七星剣』は国内最大規模の隔者組織だ。FIVEとは何度も矛を交えている。
そして、『結界王』はそこの幹部の1人である。正体は分からないがFIVEを敵視しているとのことだ。以前にも『結界王』の関わる事件にFIVEが遭遇したが、容易に尻尾をつかませてはくれない。
今回、目的は不明だが現場に『結界王』の息のかかった隔者がいるらしい。上手くアプローチ出来れば、情報を手に入れることが出来るはずだ。
目標の最優先はあくまでも、妖の撃退。そのうえで、どのように立ち回るかは覚者達の判断に任されている。
説明を終えると、麦は覚者達を元気良く送り出す。
「無事に帰って来てね? みんなのこと信じているから!」
●
木々の中に紛れて状況を観察しながら、『七星剣』の隔者である江崎大樹(えざき・たいじゅ)は内心ため息を漏らした。この度は『結界王』の依頼を受けて、山中にやって来たのだが、目の前の不法投棄は隔者の目からしてもどうかと思う。
「『結界王』の仕事だってのに……ついてねぇなぁ」
自分でもあまり運がいい方とも思っていないが、目の前の邪魔者達はどうしたものかと思う。『結界王』の依頼を果たすため、彼らを蹴散らすことも考えたが、余計な騒ぎは御免だ。
幸い、男たちは大樹に気付く様子もない。彼らが立ち去ってから仕事を果たせばいい。
そう結論して気配を、改めて消す。
しかしそんな時、状況に変化が起きた。
ゴミ山の中から、妖が姿を現す。そして、男たちに襲い掛かろうとする。
大樹はわずかに逡巡する。別に彼らを助けようと思ったわけではない。この状況で自分がどのように動けばリスクが少ないかを考えただけだ。
依頼は全く難しいものではなかった。が、思ったよりも厄介な状況になってしまった。そこで大樹は、今度こそはっきりと大きなため息を漏らす。
「こんな所にゴミを捨てるな! ったく……ついてねぇなぁ」
地元の人間も近寄らない山の奥。
そこにはゴミがうず高く積まれていた。
もちろん、こんな所に処理施設があるわけもない。いわゆる不法投棄というやつだ。
「こうしてみると、ここも随分と溜まったもんだ。ここも潮時かもな」
「あぁ、地元の連中も警備を強化してる。別の場所探すのは面倒だけど、仕方ないか」
トラックから乱雑にごみを下ろしながら、男たちはのんきな話に興じる。彼らにしてみれば、ここはごみを捨てる場所でしかない。違法行為をやっているという自覚も薄い。
そして、荷台に積んでいたゴミを下ろし終えて、作業をしていた1人は近くにあった古びた社の上にどっかり腰を下ろすと、ペットボトルの茶を飲み干す。
「ふぅい。帰りがなければ、ビールでも飲みたいところなんだがな」
「違いない!」
笑いあう男たち。
その時、彼らの後ろにあったごみの山が動く。
「ん、何だ?」
物音に気付いて振り向く男たち。しかし、その顔はすぐさま恐怖に凍り付く。
「グギュラァァァァァァァァァ!」
「ブォォォォォォォォォォォン!」
視線を向けた先には巨大な扇風機と冷蔵庫があった。一応、彼らも以前投棄した記憶がある。だが、彼らが恐怖したのは、これらのものが巨大化し襲い掛かって来たからだ。
因果応報。
そうして、男たちの意識は闇の中へと消えていった。
●
「はーろろん♪ みんな、今日は集まってくれてありがとー!」
集まった覚者達に元気に挨拶をするのは、『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)。そして、全員そろったことを確認すると、彼女は発生した事件の説明を始めた。
「うん、妖が現れる夢を見たの。みんなの力を貸して!」
麦の渡してきた資料には、巨大な扇風機と冷蔵庫が描かれていた。機械部品を元に手足のようなものがくっついており、妖の姿だとわからせてくれる。
「出てきたのは物質系の妖、ランクは2だよ。そんなに手ごわい相手じゃないけど、油断は禁物だよね」
この妖達は不法投棄されたごみが妖になったものだ。そして、目の前にいる捨てた連中を真っ先に殺そうとしている。彼らには当然の報いともいえるが、妖を放置するわけにもいかない。放っておけば、人里に災いをもたらすことになるだろう。
まぁ、急げば不法投棄している連中も助けることは出来る。
「それと、現場には『七星剣』の隔者もいるみたい。『結界王』って人の依頼で動いているみたい」
『七星剣』は国内最大規模の隔者組織だ。FIVEとは何度も矛を交えている。
そして、『結界王』はそこの幹部の1人である。正体は分からないがFIVEを敵視しているとのことだ。以前にも『結界王』の関わる事件にFIVEが遭遇したが、容易に尻尾をつかませてはくれない。
今回、目的は不明だが現場に『結界王』の息のかかった隔者がいるらしい。上手くアプローチ出来れば、情報を手に入れることが出来るはずだ。
目標の最優先はあくまでも、妖の撃退。そのうえで、どのように立ち回るかは覚者達の判断に任されている。
説明を終えると、麦は覚者達を元気良く送り出す。
「無事に帰って来てね? みんなのこと信じているから!」
●
木々の中に紛れて状況を観察しながら、『七星剣』の隔者である江崎大樹(えざき・たいじゅ)は内心ため息を漏らした。この度は『結界王』の依頼を受けて、山中にやって来たのだが、目の前の不法投棄は隔者の目からしてもどうかと思う。
「『結界王』の仕事だってのに……ついてねぇなぁ」
自分でもあまり運がいい方とも思っていないが、目の前の邪魔者達はどうしたものかと思う。『結界王』の依頼を果たすため、彼らを蹴散らすことも考えたが、余計な騒ぎは御免だ。
幸い、男たちは大樹に気付く様子もない。彼らが立ち去ってから仕事を果たせばいい。
そう結論して気配を、改めて消す。
しかしそんな時、状況に変化が起きた。
ゴミ山の中から、妖が姿を現す。そして、男たちに襲い掛かろうとする。
大樹はわずかに逡巡する。別に彼らを助けようと思ったわけではない。この状況で自分がどのように動けばリスクが少ないかを考えただけだ。
依頼は全く難しいものではなかった。が、思ったよりも厄介な状況になってしまった。そこで大樹は、今度こそはっきりと大きなため息を漏らす。
「こんな所にゴミを捨てるな! ったく……ついてねぇなぁ」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖2体の討伐
2.『結界王』に関する出来る限りの情報収集
3.なし
2.『結界王』に関する出来る限りの情報収集
3.なし
ゴミはきちんとゴミ箱に、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は妖と戦っていただきたいと思います。
●戦場
とある山中。不法投棄を行う違法業者によって、ゴミが散乱しています。
時刻は夜で、。
足場に問題はありません。
●妖
物質系の妖。不法投棄されたごみが妖になったもの。1体ずついて、どちらも前衛。
・冷蔵蟲(れいぞうこ)
物質系の妖でランクは2。冷蔵庫から機械部品が足のように生え、虫のようなフォルムをしている。術式への防御力が高め。
能力は下記。
1.冷気の奔流 特近単貫2 100%,50% 凍傷、致命
2.凍てつく風 特遠単 氷結
・扇風鬼(せんぷうき)
物質系の妖でランクは2。巨大化した扇風機のような姿をしている。術式への防御力が高め。
能力は下記。
1.回転する刃 物近列 二連、流血
2.突風 物遠単 重圧
●隔者
『七星剣』に所属する隔者で、実力は高いです。『結界王』という人物と多少つながりがあるようです。
妖との戦いに関しては、原則傍観に務めますが、覚者達が劣勢になると「目的」のために動きます。
隠れ潜んでいるため、発見するには何かしらの技能を使用する必要があります。捕らえようとする場合には全力で逃げます。何かしらの工夫が必要でしょう。
覚者との戦いは明らかに分が悪いので避けようとします。身の安全が保障されるのなら、戦いに協力してくれるかもしれません。
・江崎大樹
『七星剣』に属する木行の精霊顕現です。『結界王』から供与された強めの武装をしています。
小柄な男で拳銃を使います。やる気が無さげに見えますが、プロ意識は高いです。口癖は「ついてねぇなぁ」。
術式を中心的に使い、仇華浸香を得意とします。
●一般人
現場に不法投棄を行っていた2人組の男です。
現場には軽トラックで来ており、近くにはトラックが停車しています。
妖になったゴミは彼らが持ち込んだものです。
彼らの持ち込むゴミは近辺でも問題になっているので、可能であれば捕らえて警察にでも突き出すのが良いでしょう。放置すれば彼らは死亡しますが、彼らの生死は依頼の成功に影響を与えません。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/8
7/8
公開日
2017年05月05日
2017年05月05日
■メイン参加者 7人■

●
夜の山を必死に逃げようとする影があった。山中に不法投棄を行っていた者達だ。
だが、悲しいかなその逃げ場を、彼らが捨てたゴミが塞いでしまう。因果応報というにも哀れ過ぎる末路だ。
しかし、これが最期かと思われたとき、ぼうっと灯火が彼らの顔を照らす。
明かりの中から姿を見せたのは、『静かに見つめる眼』東雲・梛(CL2001410)だ。すっと銀色の棍を取り出すと、周囲に警戒を張り巡らせる。
凶暴に蠢く妖は、新たな獲物が来たと舌なめずりするかのように身を乗り出す。
「清潔さと無縁のこの振る舞い。がっかりなのです」
しかし、そのような獰猛な妖を前に、シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)は恐れる様子を見せない。嘆息と共に刀を取り出すと、すっと構える。
ぱっと見たところでは、品の良いお嬢様にしか見えないが、少なくともその構えから最低限の心得があることは分かる。いや、大の大人が逃げ出す化け物相手に一歩も退かないその姿から、胆力も一端のものであることは間違いない。
実の所、シャーロットは力が発現してからそれほど多く覚醒を行ったわけではない。
だから、試すように全身に力巡らせていく。
そして、全身に英霊の力が宿ったことを確かめ、金色に輝く瞳で妖を睨んだ。
同じく、覚醒を行った『世界樹の癒し』天野・澄香(CL2000194)は黒い翼を大きく広げる。その手に握られるのはタロットカード。彼女の戦いに力を与えて、何度も運命に関わってきたものだ。
「不法投棄なんてするから、こんな事になるのではないでしょうか……」
ため息交じりの言葉が形の良い唇からこぼれ出る。
正直な話、襲われている男たちのやったことには怒りを覚える。そもそもからして、自分で捨てたゴミに襲われているのだから、どうしようもない。
だけど、それはそれ。
「失っていい命なんてありませんから……」
全てが終わった後、警察で罪を償ってもらう。そのため、目の前の妖へと戦いを挑む。
澄香の呼びかけへ応じるように、徒花の香りが妖達を包み込んだ。
「ひとまずは、あの人たちを逃がしてからですね」
炎の魔法を得意とする『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)だが、火を操るしかできないわけではない。
むしろ、生来真面目な性質だ。
かつては魔法の道を忌避していたが、受け入れた今はむしろ貪欲なほどに様々な術を学んでいる。
ラーラの詠唱と共に、周囲の空気が変質していく。
それに応じて、今にも飛び掛かろうとしていた妖達の動きが鈍っていく。ラーラの生み出した静かな夜の風が、妖の動きを封じたのだ。
そう長く動きを封じられるものでもないが、襲われていた者たちが逃げる時間を作るだけだったら十分だろう。妖の能力を推し量りながら、ラーラはほっと胸をなでおろす。
しかし、これで終わる相手でないことは百も承知。
動き出す前にと先手を打って、覚者達は攻撃を開始した。
『花屋の装甲擲弾兵』田場・義高(CL2001151)の斧が唸りを上げ、斎・義弘(CL2001487)の放った火柱が天をも焦がす勢いで燃え上がる。
当然、動き始めた妖も激しく応戦を行ってきた。
その中で、覚者達はこの場に潜むもう1つの不確定要素にも目を向けていた。この場に何かしらの目的をもって潜む隔者がいる。
もちろん、隔者だって1年365日悪事を企んでいるわけでもなかろうが、下手を打てば状況が妖退治どころでなくなる可能性だってある。
「わぁっ」
そんな中で、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は、敵の攻撃を受けるとわざとらしい程の悲鳴を上げて倒れる。
「くそぉ、手ごわい相手だなぁ」
普段の奏空を知るものからは考えられないあざとい動きだ。その様子にあまりに違和感を覚えたのだろう。藪の中から様子を見ようとしたのか、がさりと小さな音がした。
そして、戦いながらも隔者の存在に注意を払っていた覚者達が、それを見逃すはずもない。
「そこのあんた」
装甲服についた霜を落としながら、梛は藪に潜む人物に向かって声を掛ける。
相手から返事はない。だからそれを意に介さず進める。
「そんなところに隠れてないで俺達の手伝いしない? 別に多勢で捕まえるとかはしない。俺達の目的は妖と一般人だけだから安心して」
梛の言葉に偽りはない。大事なことは妖の討伐であって、隔者の動きは重要ではない。むしろ、不確定要素になるのであれば、目の前で向き合ってしまった方が気は楽というもの。
「まぁ、言葉だけじゃ信用出来ないかもだけど、良かったらこっちきて、手伝って。手伝ってくれても、特に報酬はないけど」
「これ以上隠れても無駄だ。なにも喧嘩しようってんじゃない。話がしたいから出てこいよ」
義高も分厚い筋肉で妖の刃を受け止めながら呼び掛ける。
そう言いながら、義高の気息には寸分の乱れもない。最悪の場合、二面戦闘を行う羽目になることだって織り込み済みだ。
「たしかに聞いておきたいことはあるが、戦闘に集中できなくなるから厄介だ。そこまで戦闘は楽じゃない」
「もしよろしければ、妖退治をお手伝いいただくことは出来ませんか? 安全は保障します」
「分かったよ、まったくついてねぇ」
そう言って茂みから隔者が姿を現す。互いの利益は一致した。そうなった以上、無理をして争うこともなさそうだ。
「わぁん、お手伝いしてくれると助かります!」
いかにも新米覚者でございと、奏空は嬉しそうな声を上げる。自分でも正直あざといと思う。見た目からすれば決して違和感はないのだが。出来れば、余計な手の内を見せたくはない。
「さて、これで粗大ゴミ相手に集中できるな」
義弘は改めて盾を構えなおして妖に向き直る。
正直な話、この場で襲われている男たちに関しては自業自得だと思っている。だが、救える命を救わない選択肢はない。
「死にたくなければ余計な動きはするな。分かっているな?」
あとは無事にことを終わらせるだけ。彼らに関しては、警察に突き出してお灸を据えてやればよい。
「力の限り闘い、守るとしよう」
●
後顧の憂いを払拭した覚者達は妖達へと攻撃を集中させる。もはや恐れるものはないとばかりに怒涛の攻撃だ。数の上においても、1人戦力が増えたのは大きい。
業者を庇いながら戦う義弘であるが、想定していたほどのケガもなく済んでいる。
(七星剣の隔者がこんな所で何をしていたんだろう? いや、ひとまず目の前の妖をなんとかしなくちゃ)
奏空は思考を切り替えて妖へと挑む。
その動きは大振りが多く、一見すると無駄な動きだらけだ。しかし、見るものが見れば、位置取りは自身が不利にならぬような的確なものであると分かる。また、攻撃を決めるときの一撃は風のように鋭い。
相手にしてみると、正確な実力を見切ることは極めて困難である、と言える。
おまけに、当の相手は澄香の対応にも追われているわけで。
「貴方も仇華浸香を使うのですね。実力者とお見受けしましたけれど、お一人で夜の山中に入るなんて危ないのでは? こんな所で何をなさっていたのですか?」
「ま、仕事で、な。お互いのため、詳しい話は避けとこうや」
「これは本当に疑問なのですよね。一人で動くのは危険ですから……」
同じ木行使いだからと話しかけているのは、天然なのか打算なのか。
隔者の実力自体は、澄香と同じかやや勝るかもという位だ。工夫によっては十分に1対1でも勝てるだろう。それを思えば、この状況で牙を剥くことはなさそうだ。
だから、澄香も目の前の敵に集中して仲間の支援を行う。敵の攻撃は手ごわいが、彼女の生み出す生命の滴は仲間たちの傷を癒していく。
傷が消えたことを確認すると、シャーロットは隔者を一瞥すると再び妖へと切りかかる。
あのような相手に構っているほど、彼女の心に余裕があるわけでもない。まだまだ彼女の中にある周りへの壁は固い。
「頑丈なゴミの塊であっても、刃筋の通った正確な斬撃であれば……」
ちらっと、刀に刻まれた聖句にシャーロットは目をやる。しばし逡巡するが、口に出しかけたその言葉を飲み込んだ。
今は自身の鍛錬を信じる。
「それ以上」に頼るのは、自分の限界を感じた時でいい。
日々繰り返した剣を振る。動きは基本に忠実。それ故に、理想の一撃であり、自分に出せる精一杯の攻撃だ。
そして、その一撃は綺麗に妖の足を断ち切る。
「このとおり、なのです」
大きく倒れながら、妖は暴れることをやめない。大きく凍える息を吐きだし、悪あがきを見せる。
しかし、その動きはすぐに終わることになった。突然、身悶えるかのように震え始めたのだ。そして、ほどなく動きを止める。
徒花の香りが、妖の力をそして命を奪ったのだ。
「まもり、灯役有難う」
妖が倒れたのを見て、梛はそっと自分の守護使役に礼を述べる。
言葉を聞いて跳ねるようにして喜ぶまもり。
言うまでもなく、今の妖にとどめを刺したのは梛だ。片方を倒したことで、ようやく状況は楽になった。
そして、息をつく暇もなく覚者達は残った妖に攻撃を集中させる。
妖も激しく風を巻き起こし、応戦を行ってきた。
「……行きます」
風の中で足を踏みしめるラーラ。その掌の中に炎がぼっと灯る。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
ラーラの詠唱に応じて、飛び出た炎は中型の肉食獣を思わせる形に変わる。そして、生まれた炎のサーバルは、戦場を勝手気ままに走り回り出した。
いかに異形の力を手に入れていようと、妖の知性は決して高いものではない。明滅する炎に注意を引き付けられて、覚者達への攻撃がおろそかなものになってしまう。
「相手は弱っています。総攻撃のチャンスです」
妖に生まれた隙と、その力が弱まっていることを見抜いたラーラは仲間に伝えた。
その言葉にタイミングを合わせて、覚者達は全力で攻撃する。
「さぁ、気合入れていくとするか」
にやりと笑うと、義弘はメイスを握り締め高く掲げる。
すると、現れた炎の柱が妖を包み込み、化生の姿を焼いていく。
先ほどまで逃げ出そうとしていた不法投棄業者たちを庇っていたのだ。その必要のなくなったタイミングであれば、思う存分力を振るうことが出来るというものだ。
怯えている男たちの様子を見れば、義弘の「守る」がただ守るだけでなく、脅しの入ったものであることは想像に難くないが。元々、誤解を招きやすい外見でもある。
ともあれ、炎が収まったところで、妖は窮鼠猫を噛むとばかりに最後の一撃を放とうとする。しかし、それに先んじて義高は大きく斧を振り上げた。
「あんたが何してこようと、どのみち俺は向こうの攻撃を避けつつ、『ギュスターブ』振るってのインファイトしかできねぇ」
大きく義高の筋肉が膨張する。
ギュスターブ、義高と共に多くの死線を乗り越えてきた斧が、ギラリと凶悪に輝いた。
「幸い、『術式への防御力が高め』って話だから物理攻撃には普通の防御力なんだろう。助かるぜ」
軽く言い放つと、義高は豪腕で重量級の武器を思い切り振り下ろす。
単純な力は、それだけで強力な武器だ。
そして、その強烈無比な一撃は妖を粉砕し、元通りかそれ以上のスクラップへと変えるのだった。
●
「これにて一件落着だな」
戦いが終わった後で、義高は業者の犯罪の写真を撮って証拠にする。
性懲りもなく逃げようとした業者たちだったが、澄香がすでに車のタイヤをパンクしていたため敵わなかった。
「不法投棄はいけないよ。こういう風に危ない時もあるし」
「これに懲りてくださいね」
さすがに観念した業者たちに梛と奏空が言う。こんな所に捨ててはいけない、年若い彼らにだって分かる理屈だ。
「ところでお兄さんはどうしてここへ?」
「あんた強そうな武器持ってるね。特別性?」
そして成り行きとは言え、協力して戦った隔者に声を掛ける。
「こっちも仕事だ。嬢ちゃんにも言われたが、1人の方が動きやすいってのもあるんだよ」
元々、隠密が得意な口なのだろう。武器に関しては、上のもの――おそらくは『結界王』――から渡されたもののようだ。着実に『結界王』は武装の充実を図っている。
近くもっと直接的にFIVEへの攻撃を仕掛けてくることだろう。
そして、去っていく隔者を約定通り見送る覚者達。澄香も可能な範囲で後をつけてみたが、残念ながら尻尾をつかませるような行動はなかった。
代わりに奏空は、現場で小さな社が暴れた妖によって破壊されているのを見つけた。隔者がしきりに気にしていたものだ。詳しいことは破壊されて分からないが、地脈の要に建てられたものとあった。
そうしたところで、義弘が業者のトラックの修理を終える。凱旋するにも、彼らを連れていくにもその方が楽だ。
覚者達が帰還する姿を見ながら、シャーロットは自分のやったことに対して複雑なものを感じていた。処罰を与えるために助けるということは、どうしても愚かしく思えてしまう。もっとも、だからと言って助けないあるいは直接手を下すのもそれこそ恥知らずだ。
そこまで考えてシャーロットはかぶりを振って考えを打ち消す。
「……やめましょう。ワタシは、目前の敵にこそ向き合うべきなのです」
まだ発現して間もない身の上だ。いずれ、FIVEで戦っていけば、見えてくるものもあるだろう。
今日も覚者として1歩を進んだ。
その先に何があるかを知るために、覚者達は少しずつでも進んでいくのだ。
夜の山を必死に逃げようとする影があった。山中に不法投棄を行っていた者達だ。
だが、悲しいかなその逃げ場を、彼らが捨てたゴミが塞いでしまう。因果応報というにも哀れ過ぎる末路だ。
しかし、これが最期かと思われたとき、ぼうっと灯火が彼らの顔を照らす。
明かりの中から姿を見せたのは、『静かに見つめる眼』東雲・梛(CL2001410)だ。すっと銀色の棍を取り出すと、周囲に警戒を張り巡らせる。
凶暴に蠢く妖は、新たな獲物が来たと舌なめずりするかのように身を乗り出す。
「清潔さと無縁のこの振る舞い。がっかりなのです」
しかし、そのような獰猛な妖を前に、シャーロット・クィン・ブラッドバーン(CL2001590)は恐れる様子を見せない。嘆息と共に刀を取り出すと、すっと構える。
ぱっと見たところでは、品の良いお嬢様にしか見えないが、少なくともその構えから最低限の心得があることは分かる。いや、大の大人が逃げ出す化け物相手に一歩も退かないその姿から、胆力も一端のものであることは間違いない。
実の所、シャーロットは力が発現してからそれほど多く覚醒を行ったわけではない。
だから、試すように全身に力巡らせていく。
そして、全身に英霊の力が宿ったことを確かめ、金色に輝く瞳で妖を睨んだ。
同じく、覚醒を行った『世界樹の癒し』天野・澄香(CL2000194)は黒い翼を大きく広げる。その手に握られるのはタロットカード。彼女の戦いに力を与えて、何度も運命に関わってきたものだ。
「不法投棄なんてするから、こんな事になるのではないでしょうか……」
ため息交じりの言葉が形の良い唇からこぼれ出る。
正直な話、襲われている男たちのやったことには怒りを覚える。そもそもからして、自分で捨てたゴミに襲われているのだから、どうしようもない。
だけど、それはそれ。
「失っていい命なんてありませんから……」
全てが終わった後、警察で罪を償ってもらう。そのため、目の前の妖へと戦いを挑む。
澄香の呼びかけへ応じるように、徒花の香りが妖達を包み込んだ。
「ひとまずは、あの人たちを逃がしてからですね」
炎の魔法を得意とする『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)だが、火を操るしかできないわけではない。
むしろ、生来真面目な性質だ。
かつては魔法の道を忌避していたが、受け入れた今はむしろ貪欲なほどに様々な術を学んでいる。
ラーラの詠唱と共に、周囲の空気が変質していく。
それに応じて、今にも飛び掛かろうとしていた妖達の動きが鈍っていく。ラーラの生み出した静かな夜の風が、妖の動きを封じたのだ。
そう長く動きを封じられるものでもないが、襲われていた者たちが逃げる時間を作るだけだったら十分だろう。妖の能力を推し量りながら、ラーラはほっと胸をなでおろす。
しかし、これで終わる相手でないことは百も承知。
動き出す前にと先手を打って、覚者達は攻撃を開始した。
『花屋の装甲擲弾兵』田場・義高(CL2001151)の斧が唸りを上げ、斎・義弘(CL2001487)の放った火柱が天をも焦がす勢いで燃え上がる。
当然、動き始めた妖も激しく応戦を行ってきた。
その中で、覚者達はこの場に潜むもう1つの不確定要素にも目を向けていた。この場に何かしらの目的をもって潜む隔者がいる。
もちろん、隔者だって1年365日悪事を企んでいるわけでもなかろうが、下手を打てば状況が妖退治どころでなくなる可能性だってある。
「わぁっ」
そんな中で、『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)は、敵の攻撃を受けるとわざとらしい程の悲鳴を上げて倒れる。
「くそぉ、手ごわい相手だなぁ」
普段の奏空を知るものからは考えられないあざとい動きだ。その様子にあまりに違和感を覚えたのだろう。藪の中から様子を見ようとしたのか、がさりと小さな音がした。
そして、戦いながらも隔者の存在に注意を払っていた覚者達が、それを見逃すはずもない。
「そこのあんた」
装甲服についた霜を落としながら、梛は藪に潜む人物に向かって声を掛ける。
相手から返事はない。だからそれを意に介さず進める。
「そんなところに隠れてないで俺達の手伝いしない? 別に多勢で捕まえるとかはしない。俺達の目的は妖と一般人だけだから安心して」
梛の言葉に偽りはない。大事なことは妖の討伐であって、隔者の動きは重要ではない。むしろ、不確定要素になるのであれば、目の前で向き合ってしまった方が気は楽というもの。
「まぁ、言葉だけじゃ信用出来ないかもだけど、良かったらこっちきて、手伝って。手伝ってくれても、特に報酬はないけど」
「これ以上隠れても無駄だ。なにも喧嘩しようってんじゃない。話がしたいから出てこいよ」
義高も分厚い筋肉で妖の刃を受け止めながら呼び掛ける。
そう言いながら、義高の気息には寸分の乱れもない。最悪の場合、二面戦闘を行う羽目になることだって織り込み済みだ。
「たしかに聞いておきたいことはあるが、戦闘に集中できなくなるから厄介だ。そこまで戦闘は楽じゃない」
「もしよろしければ、妖退治をお手伝いいただくことは出来ませんか? 安全は保障します」
「分かったよ、まったくついてねぇ」
そう言って茂みから隔者が姿を現す。互いの利益は一致した。そうなった以上、無理をして争うこともなさそうだ。
「わぁん、お手伝いしてくれると助かります!」
いかにも新米覚者でございと、奏空は嬉しそうな声を上げる。自分でも正直あざといと思う。見た目からすれば決して違和感はないのだが。出来れば、余計な手の内を見せたくはない。
「さて、これで粗大ゴミ相手に集中できるな」
義弘は改めて盾を構えなおして妖に向き直る。
正直な話、この場で襲われている男たちに関しては自業自得だと思っている。だが、救える命を救わない選択肢はない。
「死にたくなければ余計な動きはするな。分かっているな?」
あとは無事にことを終わらせるだけ。彼らに関しては、警察に突き出してお灸を据えてやればよい。
「力の限り闘い、守るとしよう」
●
後顧の憂いを払拭した覚者達は妖達へと攻撃を集中させる。もはや恐れるものはないとばかりに怒涛の攻撃だ。数の上においても、1人戦力が増えたのは大きい。
業者を庇いながら戦う義弘であるが、想定していたほどのケガもなく済んでいる。
(七星剣の隔者がこんな所で何をしていたんだろう? いや、ひとまず目の前の妖をなんとかしなくちゃ)
奏空は思考を切り替えて妖へと挑む。
その動きは大振りが多く、一見すると無駄な動きだらけだ。しかし、見るものが見れば、位置取りは自身が不利にならぬような的確なものであると分かる。また、攻撃を決めるときの一撃は風のように鋭い。
相手にしてみると、正確な実力を見切ることは極めて困難である、と言える。
おまけに、当の相手は澄香の対応にも追われているわけで。
「貴方も仇華浸香を使うのですね。実力者とお見受けしましたけれど、お一人で夜の山中に入るなんて危ないのでは? こんな所で何をなさっていたのですか?」
「ま、仕事で、な。お互いのため、詳しい話は避けとこうや」
「これは本当に疑問なのですよね。一人で動くのは危険ですから……」
同じ木行使いだからと話しかけているのは、天然なのか打算なのか。
隔者の実力自体は、澄香と同じかやや勝るかもという位だ。工夫によっては十分に1対1でも勝てるだろう。それを思えば、この状況で牙を剥くことはなさそうだ。
だから、澄香も目の前の敵に集中して仲間の支援を行う。敵の攻撃は手ごわいが、彼女の生み出す生命の滴は仲間たちの傷を癒していく。
傷が消えたことを確認すると、シャーロットは隔者を一瞥すると再び妖へと切りかかる。
あのような相手に構っているほど、彼女の心に余裕があるわけでもない。まだまだ彼女の中にある周りへの壁は固い。
「頑丈なゴミの塊であっても、刃筋の通った正確な斬撃であれば……」
ちらっと、刀に刻まれた聖句にシャーロットは目をやる。しばし逡巡するが、口に出しかけたその言葉を飲み込んだ。
今は自身の鍛錬を信じる。
「それ以上」に頼るのは、自分の限界を感じた時でいい。
日々繰り返した剣を振る。動きは基本に忠実。それ故に、理想の一撃であり、自分に出せる精一杯の攻撃だ。
そして、その一撃は綺麗に妖の足を断ち切る。
「このとおり、なのです」
大きく倒れながら、妖は暴れることをやめない。大きく凍える息を吐きだし、悪あがきを見せる。
しかし、その動きはすぐに終わることになった。突然、身悶えるかのように震え始めたのだ。そして、ほどなく動きを止める。
徒花の香りが、妖の力をそして命を奪ったのだ。
「まもり、灯役有難う」
妖が倒れたのを見て、梛はそっと自分の守護使役に礼を述べる。
言葉を聞いて跳ねるようにして喜ぶまもり。
言うまでもなく、今の妖にとどめを刺したのは梛だ。片方を倒したことで、ようやく状況は楽になった。
そして、息をつく暇もなく覚者達は残った妖に攻撃を集中させる。
妖も激しく風を巻き起こし、応戦を行ってきた。
「……行きます」
風の中で足を踏みしめるラーラ。その掌の中に炎がぼっと灯る。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
ラーラの詠唱に応じて、飛び出た炎は中型の肉食獣を思わせる形に変わる。そして、生まれた炎のサーバルは、戦場を勝手気ままに走り回り出した。
いかに異形の力を手に入れていようと、妖の知性は決して高いものではない。明滅する炎に注意を引き付けられて、覚者達への攻撃がおろそかなものになってしまう。
「相手は弱っています。総攻撃のチャンスです」
妖に生まれた隙と、その力が弱まっていることを見抜いたラーラは仲間に伝えた。
その言葉にタイミングを合わせて、覚者達は全力で攻撃する。
「さぁ、気合入れていくとするか」
にやりと笑うと、義弘はメイスを握り締め高く掲げる。
すると、現れた炎の柱が妖を包み込み、化生の姿を焼いていく。
先ほどまで逃げ出そうとしていた不法投棄業者たちを庇っていたのだ。その必要のなくなったタイミングであれば、思う存分力を振るうことが出来るというものだ。
怯えている男たちの様子を見れば、義弘の「守る」がただ守るだけでなく、脅しの入ったものであることは想像に難くないが。元々、誤解を招きやすい外見でもある。
ともあれ、炎が収まったところで、妖は窮鼠猫を噛むとばかりに最後の一撃を放とうとする。しかし、それに先んじて義高は大きく斧を振り上げた。
「あんたが何してこようと、どのみち俺は向こうの攻撃を避けつつ、『ギュスターブ』振るってのインファイトしかできねぇ」
大きく義高の筋肉が膨張する。
ギュスターブ、義高と共に多くの死線を乗り越えてきた斧が、ギラリと凶悪に輝いた。
「幸い、『術式への防御力が高め』って話だから物理攻撃には普通の防御力なんだろう。助かるぜ」
軽く言い放つと、義高は豪腕で重量級の武器を思い切り振り下ろす。
単純な力は、それだけで強力な武器だ。
そして、その強烈無比な一撃は妖を粉砕し、元通りかそれ以上のスクラップへと変えるのだった。
●
「これにて一件落着だな」
戦いが終わった後で、義高は業者の犯罪の写真を撮って証拠にする。
性懲りもなく逃げようとした業者たちだったが、澄香がすでに車のタイヤをパンクしていたため敵わなかった。
「不法投棄はいけないよ。こういう風に危ない時もあるし」
「これに懲りてくださいね」
さすがに観念した業者たちに梛と奏空が言う。こんな所に捨ててはいけない、年若い彼らにだって分かる理屈だ。
「ところでお兄さんはどうしてここへ?」
「あんた強そうな武器持ってるね。特別性?」
そして成り行きとは言え、協力して戦った隔者に声を掛ける。
「こっちも仕事だ。嬢ちゃんにも言われたが、1人の方が動きやすいってのもあるんだよ」
元々、隠密が得意な口なのだろう。武器に関しては、上のもの――おそらくは『結界王』――から渡されたもののようだ。着実に『結界王』は武装の充実を図っている。
近くもっと直接的にFIVEへの攻撃を仕掛けてくることだろう。
そして、去っていく隔者を約定通り見送る覚者達。澄香も可能な範囲で後をつけてみたが、残念ながら尻尾をつかませるような行動はなかった。
代わりに奏空は、現場で小さな社が暴れた妖によって破壊されているのを見つけた。隔者がしきりに気にしていたものだ。詳しいことは破壊されて分からないが、地脈の要に建てられたものとあった。
そうしたところで、義弘が業者のトラックの修理を終える。凱旋するにも、彼らを連れていくにもその方が楽だ。
覚者達が帰還する姿を見ながら、シャーロットは自分のやったことに対して複雑なものを感じていた。処罰を与えるために助けるということは、どうしても愚かしく思えてしまう。もっとも、だからと言って助けないあるいは直接手を下すのもそれこそ恥知らずだ。
そこまで考えてシャーロットはかぶりを振って考えを打ち消す。
「……やめましょう。ワタシは、目前の敵にこそ向き合うべきなのです」
まだ発現して間もない身の上だ。いずれ、FIVEで戦っていけば、見えてくるものもあるだろう。
今日も覚者として1歩を進んだ。
その先に何があるかを知るために、覚者達は少しずつでも進んでいくのだ。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
