その日、五麟は震撼した
●
「た、大変なのだ!!
京都近郊の川沿いの桜が綺麗だったので見惚れていた人間にぶつかった古妖がすってんころりん! どぶどぶと川に流されていき魚たちが彼をちくちくつっつくものだから、慌てて川から避難し、土手まで泳ぎ着き、走って土手から去るところで、あまりにも空がすごいので見上げていた人間にぶつかり、再びすってんころりんした古妖がやってられるかー! となりわーってなって泣き出して変な力がファーってなったみたいなので、今日は一日不思議なことが起こるかもしれないのだ!!」
「た、大変なのだ!!
京都近郊の川沿いの桜が綺麗だったので見惚れていた人間にぶつかった古妖がすってんころりん! どぶどぶと川に流されていき魚たちが彼をちくちくつっつくものだから、慌てて川から避難し、土手まで泳ぎ着き、走って土手から去るところで、あまりにも空がすごいので見上げていた人間にぶつかり、再びすってんころりんした古妖がやってられるかー! となりわーってなって泣き出して変な力がファーってなったみたいなので、今日は一日不思議なことが起こるかもしれないのだ!!」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.一日平和にやり過ごす
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
日常パートですよ。何も指定しなければ日常パートですよ。
●状況
OPの出来事があったため、今日は不思議なことがおこる
何が起こるかって、それは『性別逆転』である
●このイベシナでは何ができるの?
・特に何も指定が無ければ、普通の五麟市での一日としてイベシナをお使いください
・性別逆転、とは
単純に、性別が逆転します。PLの任意という魔法がある為、強制ではありません
性別が?の方は、あまり楽しめないかもしれません。すみません…
●場所:五麟市
●その他
タグや相手指定するほどでもなく、
適当な誰かと絡んでもいいよっていう方のみ、EXプレで【絡みOK】と書いてください
それが鉢会える状況で、絡めそうであれば描写します。ご縁が無いときもあります
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
それではご縁がありましたら、よろしくお願いします
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
7日
7日
参加費
50LP
50LP
参加人数
16/∞
16/∞
公開日
2017年05月01日
2017年05月01日
■メイン参加者 16人■

●
――朝は叫び声から始まる。主に切裂ジャックの。
……デジャブ感じるね。
それとは知らず、時任千陽はベッドから起き上がる。
起き上がった瞬間、何故か胸元に重みというか異物感を感じ、視線をそっと下に落とすと……、暫く考えてから本部へ連絡した。
情況を理解してから千陽は服装を整え定位置につきつつ、胸元の邪魔さを感じた時。
「ときちか! 聞いて!! 俺、女に……ってお前もかーいッ!!」
千陽の予測は当たるというか友人の習性を十分に理解しているのか、それとも彼が分かりやすいのか。
問題が起きたからジャックが訪ねて来た。そしてそれを千陽は予測していた。
いつもより数割程小柄になったジャックがわたわたうろうろしながら色々頑張って身振り手振り説明しているが、ピタ、と止まる。
「……ちょっと待った。おかしくね!? 俺の胸元は男んときとほぼ変わらない些細さなのに、ときちかは邪魔そうなくらいある!」
「個人差というものは何においても存在しますし、悲観することではないと思います」
「こんな運命受け止められない入水自殺してくる!」
くるっと玄関方面に身体を向けたジャックの肩を掴む千陽。
「落ち着きましょう、入水自殺するのは二ヶ月ほど先でしょう。桜桃忌的に。っていうか気軽にコンビニ感覚で自殺はやめてください」
其の時ジャックは気づいてしまった。これは重大なチャンスであることを。
一生のお願いを使い尽くす勢いの理由を並べてからジャックは土下座した。
「ときちか! おっぱいを! おっぱいを、もませてください!!」
千陽の頭のすぐ隣に「!?」のマークが飛び出した。
「そんな不埒な願いを叶えれるわけがないでしょう!」
「少しだけだから!!」
「いけません!」
「友達だろ!?」
「それはそれ、これはこれです!」
千陽は、飛びついて来たジャックを寸前でかわし、部屋を慌てて出ていき、ジャックがそれを追う。
両者覚醒を果たしながら五麟市内外全体鬼ごっこは始まった。
いつもより少しばかり男らしい体つき……いや、むしろ男の子になってしまった野武七雅は、隣の和服が似合う美男子(担当STとして書いていて照れるが)の樹神枢に話しかけた。
「あのね、枢ちゃん。もしかしなくてもあたしたちの身体、変になっちゃってるかもなの?」
「そうかもしれないのだ」
七雅の言葉はいつも通りなのだが、傍から見れば男同士が隣あって座っているという摩訶不思議な光景。
「……」
七雅は一呼吸置いた。
不思議な事が起きている、それよりもだ。
七雅は枢から顔を背けた。七雅の頬が少しだけ朱に染まりながら、今聞こえた枢の少し低音のボイスにときめいて両頬を抑えたのだ。
見た目はどちらも男だが、心は乙女のままなのだろうか。それとも声のせいだろうか。
七雅は俯きながら、隣に触れあう体温にも心臓が跳ねて飛び出しそうな思いである。
嗚呼、此れが世に言う、びーえるというやつなのだろうか。その真相の闇は深い。
とりあえず顔が赤い七雅へ、枢は熱があるのだろうかと彼女(彼?)のおでことおでこをくっつけたのであった。
田場義高は屈強で姉御肌のようなアマゾネスげふん、フォークロアと言えばいいのか……そのような女性になり、彼(彼女?)の妻はイケメンかつスレンダー美人で、娘は息子になっている。
やってられるかー!!
と心の中で叫んだ義高だが、いつもの仕事である花屋の経営は手を止めるわけにはいかない。性別が逆転しようと、花の命は関係ないし、そこらへんは義高の優しさもある。
店を開いて、義高が店頭に花を並べているとき。ふらっと、少年二名が歩み寄ってきた。
「わあ、この花、とっても綺麗だね枢ちゃ……枢くん?」
「枢ちゃんでいいのだ、結鹿」
菊坂結鹿は「うー」と慣れない性別逆転に眉間に少しだけシワを寄せ、少年になっている枢はくすくすと笑っていた。
普段は女の子二人で並んで、身体を寄せ合っていたりして微笑ましいが。男子同士だと些か身体的接触は危うい感じがする。
変な人にでも捕まったり……とか結鹿が背中を震わせたとき、枢は寒いのかと思って羽織っていたストールを結鹿にかけてやっていた。
そんな二人の話合いを微笑ましく観察しながら、「なんかどこかで見かけたことあるよな」と義高は思っていた。突然姿が変わっていると、人って案外気づけないものなのだ。
枢は小さな花のブーケを買いつつ、その花のひとつを結鹿の髪に刺しつつ。
「大変だな、義高殿」
と彼女(彼?)に話しかけていたり。
結鹿と枢はそのまま、ショッピングに出かけつつ。いつも通りの女子であるときと全く同じ日を過ごしに行った――。
そんな中、ラーラ・ビスコッティはハッとした。
服装は女性のままなのだが、この状態で突然男の性へと変わってしまったらしい。
いつもよりも少々顔つきが雄々しくなったラーラは周囲を見回してから、誰もいない事を確認し落ち着きつつ、せめて服装だけでもなんとかしなければと思考する。
ふとその時、結鹿(♂)と枢(♂)がちょっと危ない系の人たちに絡まれているのをラーラは発見する。
いつもながらの正義感と共に、高火力を放ちつつラーラは二人を助けるのだが。
「……お兄さん、そういう趣味なのかな」
結鹿がラーラをまじまじと見ながら、男性が女性ものを着ていることに不思議そうな目線を向けていた。どちらかといえば、結鹿と枢たちも似たようなものであるが。
「いや、多分、ラーラ殿だと思うのだ」
「あ、同じ被害者なんだね……」
「そ、そちらもですか……」
三人は、同時に「はぁ」とため息をついた。
とりあえずとラーラは歩き出しつつ、守護使役には特に変化が及んでいないことに安堵した。帰路を辿りつつ、タキシードとか燕尾服とかどこにあったかを考えながら。
そういえば――。
「何で私は男の子になっても身長が伸びないんでしょうか……」
ラーラは今日二度目のため息をついた。
向日葵御菓子は思った。本部からの連絡――性別逆転するかも――っていうもの。
そこに期待が膨らんだ。短い夢でもいいから、高身長の男っていうのを、むしろその身長の高さからの眺めを味わいたい――。
「だからぁ~~っ!! 豊かな胸が大胸筋になったってかまわないのっ! ただ、身長が伸びてくれさえすればいいのっ!!」
ぽん! と音と煙が出てもくもくと包まれていく御菓子。
煙が無くなった後、そこに居たのはいつも通りの身長のしょうね……げふん、男のこ……ごほん、男であった。
その瞬間、御菓子は膝から崩れ落ちていった。
そんな悲劇があることは、当たり前だが知る由も無い藤壱縷は、朝起きたら男性になっていたということで鏡をじぃ……と見つめていた。
視線もちょっと高めか、顔は儚いイケメンで、髪型はいつも通りだが体格が少しばかり変わったか。ふと、気になることがあって壱縷は藤零士のところへ行く。
案の定、そこには思い描いた風景があった。
わずかに膨らんだ胸に手を当てる零士がいたのだ。中身は二重人格のゼロという名前を名乗る方ではあるのだが。零士は壱縷の姿を見た瞬間、一瞬誰だかわからなくなったが、直ぐに姉だとわかると顔を背けた、恥ずかしくて。壱縷は顔を斜めに倒す女性らしい仕草をしつつ、しかし、割とイケメン。
このまま出歩こうなんて、壱縷が言うので零士は後ろをついて行く。壱縷は壱縷で自分の大胆さに驚いていた。後ろを見ると、少しだけ雰囲気が変わっている零士がいる。雰囲気が変わっているのは、女性になってしまったからだろうか?
渋々壱縷を追いつつ、ふと見つけた古着屋に入っていった零士はフードの付いたパーカーを買って着込んで、顔をフードで隠した。
その時、道端で倒れている御菓子。壱縷は驚きつつ、その背中にそっと手を当てた。
「身長が……同じなんです……!」
「は、はあ……」
などと訴えかける御菓子の手が壱縷の手を掴んだ。
「女性から男性になったのに身長がそのままなんです」
壱縷はハッとした。自分は男性になって身長が伸びていることを。
これは下手なことは言えないと笑顔のまま壱縷はそっと御菓子を諭して行く。
そんな姿を見ながら、コンビニで買った飲み物に口をつける零士。なんだかんだ、男性を楽しんでいる姉を見ながら、しかし、早く戻らないものかと瞳を閉じたのであった。
惨劇とかギャグとか鬼ごっことか始まっている最中、束の間の平和な日常もある。
今日は姫神桃の家でお泊まり会なのだ。柳燐花と、月歌浅葱は桃の家にお邪魔している。
こう言うのが初めて……なのだようか。緊張しており動きがギクシャクしていたり、いつも以上に口数が少ない燐花は、水色のパジャマに身を包みつつ、二人へお菓子を配る。
「クッキー焼いてきました。良かったら、召し上がったください……お口に合えばいいのですが」
少しだけおずおずとしつつ、しおらしい燐花とは対照的に。浅葱は両手を上げて喜んでいる。因みに浅葱は白色のパジャマである。美味しそうですねっ!と笑いながら、口にひょいとクッキーを投げ込んだ浅葱。そして薄ピンクのパジャマに身を包みつつんだ桃も、クッキーをひとつ摘んで食む。
「美味しい!クッキー焼けるなんて羨ましいわ。今度教えてくれないかしら?」
燐花は薄く笑いながら、美味しいという言葉と共に段々と無くなっていくクッキーを満足そうに見つめていた。
ころんと、転がった浅葱はアロマキャンドルを用意していた。これを暗い部屋に灯せば、何時もの部屋も、明暗が神秘的に彩られらという算段だ。浅葱が思っていた通り、仄かに明るく、そして揺らめくキャンドルの灯りは何とも言葉にできぬやすらぎの空間を演出している。
お布団の上で転がったり戯れたりしている浅葱と燐花の手前に、桃は蜂蜜入りのホットミルクを置いた。
「ふふ、眠くなっても大丈夫そうね。それと、さっきから桃さんとか、姫神さんは擽ったいわ。桃でいいのよ」
桃の方が、近くに感じるから……と、桃は二人に少しだけ赤い頬を見せながら言った。
さて、では本題に入ろう。女子会といえば。これである。
「二人の恋バナも、聞いてみてもいいかしら。浅葱も、普段、そういう話とか聞かないけど、どう?」
「コイバナ……ですか。お話の定番は好みのタイプ、とかになるのでしょうか?」
桃の質問に、燐花は今まで出逢った男性を思い浮かべつつ。
「好きになった人がタイプとも言いますね。私は……」
燐花は恥ずかしそうに頬を両手でで覆った。
浅葱もその隣で腕を組みながら考えていたが、特定の異性の好みはなかなか難しい事のようだ。しかしそのかわりに。
「恋ではなく、すきならありますよっ!その相手は……桃ですよっ!」
私!?と言いながら、飛びついてきた浅葱を受け止める桃。浅葱は桃に頬すりしながら、燐花さんも好きですよっ!と空いた片手で燐花を引き寄せて抱きついた。
「それで!桃はどんなタイプが好きですかっ」
「そうね……気になる人は特に、ね。でも、リードしてくれる人が好きかしら?」
桃は燐花をチラ、とみやる。
「好きになった人が好きも素敵よね。まるで、運命みたいだわ」
「運命……」
こうした友人として出逢えたのも何かの運命であろうか。三人の夜更けは優しい光と甘いお菓子と飲み物と共に更けていく。
工藤奏空は驚愕していた。
隣にいる飛鷹直斗の胸元が明らか膨らんでいて、それでいてさっきより小柄で可愛らしいというか。さておき、自分自身もまじまじとよーーーくみてみれば、何となく自分自身にも同じような事が起きているような。
「お、俺たち、もしかして、女子になってるーーー!!?」
奏空はわたわたと焦ったのだが、隣の直斗は至極冷静だ。
「どうしてこんな平然としていられるの!?」
「なんでって、世の中神秘で溢れてんだ。今更性別逆転くらい驚きもしないっていうか」
わー!と頭を抑えた奏空は、今まで安易に女装してきたから、ここで突然バチが当たったのだと更に更に慌てていく。そんな彼に見兼ねたのか、直斗は奏空の肩を叩いて、直斗の顔を見た奏空へサムズアップ。
「大丈夫だ、女装する事に罪はないし、罰もねェ。逆に考えるんだ…女になった事を楽しめと。…そんな事考えてたらテンション上がってきた、ヒャッホー!」
「うわーん!俺とは真逆の性質を持っている人だったーー!!」
奏空の混乱は続き、隣で直斗は、はははと笑っている謎の空間ができていた。それが側から見れば個性溢れて注目されたのか。
街頭でライヴをやっていた人たちが近づいてきては、出演しないかと突然。勿論、直斗の瞳は輝いた。即座に服を脱ぎ捨てたかと思うと、その下からいつ着替えたのかわからないが、アイドル風の服に着替え直斗兼美少女。
その素早さに奏空は拍手したところで、首根っこをライヴやってた人に掴まれたかと思うとそのまま姿が消え、出てきたかと思えばアイドル風のフリル満載な衣装の奏空が出てきた。俯いて、死にたいと言っていた。
結果から言うと、二人のライヴはかなり成功して、画像サイトにダブピした二人の画像が載ったとかのらなかったとか。
四月一日四月二日は、長身かつ、巨乳の美女になっていた。鏡を見つめて三秒くらい固まったのだが、そのあとは何事もなかったように行動を始める。ツッコミ役が不足している。
同じ頃、赤袮維摩も女性になっていた。曲線美を持つ維摩は、矢張り何故か鏡を見つめて三秒くらい固まったのだが、そのあとは何事もなかったように、むしろ今までも女性であったかのように生活を始めた。矢張りツッコミ役が不足している。まるで双子のように行動が一致しているところはツッコミを入れたいところである。
「うす!引きこもってる?」
「春の陽気で頭が花盛りなのか?」
突然の四月二日の訪問に、維摩はそれだけいって扉を閉めようとしたが、寸前で四月二日の足と体が閉まる扉を止めてこじ開けていく。
そして家の中に入った四月二日は、紙袋の中身を広げ始めたのだ。出てきたのは、女性ものの洋服のようだ。特に下着の類が多い。どうやらここに来るまでに買ってきたようだ。
「途中にちょっと店覗いたら、可愛い春物いっぱい出ててさぁ。キミに似合いそうなのも買ってきたよお」
「ふん」
「コレとか……ぷぷ、こんな小さいの入るんだー!あたしは背高いから無理だわ~」
「無駄に無駄を重ねて、駄肉の世界チャンピオンにでも成る気なのか?」
とは言いつつ、維摩は自分の胸と四月二日の胸を比較しつつ、何だか遣る瀬無い気分になったのか、四月二日の足をベチベチと蹴り始めた。大は小を兼ねるというかなんというか、矢張り大きい方が強いということか。
「ええい、デカさだけが取り柄めっ。その脂肪を少しはそれを頭に回してろよ」
しかしその瞬間、維摩は抱えられ、紙袋の中身全て着るほどのファッションショーアンド着せ替え人形させられてしまったとか。それは半日を費やすほどに、密に行われてゆく。
暫くしてから、四月二日は思う。なんか、なんか……
「おかしくない!?俺たちってもとからこうだっけ!?」
「ふん、いい加減切っても切れない腐れ縁だろうが。「俺」とお前のはな」
男女逆転の不可思議に最後までツッコミ役が不足していた。
――朝は叫び声から始まる。主に切裂ジャックの。
……デジャブ感じるね。
それとは知らず、時任千陽はベッドから起き上がる。
起き上がった瞬間、何故か胸元に重みというか異物感を感じ、視線をそっと下に落とすと……、暫く考えてから本部へ連絡した。
情況を理解してから千陽は服装を整え定位置につきつつ、胸元の邪魔さを感じた時。
「ときちか! 聞いて!! 俺、女に……ってお前もかーいッ!!」
千陽の予測は当たるというか友人の習性を十分に理解しているのか、それとも彼が分かりやすいのか。
問題が起きたからジャックが訪ねて来た。そしてそれを千陽は予測していた。
いつもより数割程小柄になったジャックがわたわたうろうろしながら色々頑張って身振り手振り説明しているが、ピタ、と止まる。
「……ちょっと待った。おかしくね!? 俺の胸元は男んときとほぼ変わらない些細さなのに、ときちかは邪魔そうなくらいある!」
「個人差というものは何においても存在しますし、悲観することではないと思います」
「こんな運命受け止められない入水自殺してくる!」
くるっと玄関方面に身体を向けたジャックの肩を掴む千陽。
「落ち着きましょう、入水自殺するのは二ヶ月ほど先でしょう。桜桃忌的に。っていうか気軽にコンビニ感覚で自殺はやめてください」
其の時ジャックは気づいてしまった。これは重大なチャンスであることを。
一生のお願いを使い尽くす勢いの理由を並べてからジャックは土下座した。
「ときちか! おっぱいを! おっぱいを、もませてください!!」
千陽の頭のすぐ隣に「!?」のマークが飛び出した。
「そんな不埒な願いを叶えれるわけがないでしょう!」
「少しだけだから!!」
「いけません!」
「友達だろ!?」
「それはそれ、これはこれです!」
千陽は、飛びついて来たジャックを寸前でかわし、部屋を慌てて出ていき、ジャックがそれを追う。
両者覚醒を果たしながら五麟市内外全体鬼ごっこは始まった。
いつもより少しばかり男らしい体つき……いや、むしろ男の子になってしまった野武七雅は、隣の和服が似合う美男子(担当STとして書いていて照れるが)の樹神枢に話しかけた。
「あのね、枢ちゃん。もしかしなくてもあたしたちの身体、変になっちゃってるかもなの?」
「そうかもしれないのだ」
七雅の言葉はいつも通りなのだが、傍から見れば男同士が隣あって座っているという摩訶不思議な光景。
「……」
七雅は一呼吸置いた。
不思議な事が起きている、それよりもだ。
七雅は枢から顔を背けた。七雅の頬が少しだけ朱に染まりながら、今聞こえた枢の少し低音のボイスにときめいて両頬を抑えたのだ。
見た目はどちらも男だが、心は乙女のままなのだろうか。それとも声のせいだろうか。
七雅は俯きながら、隣に触れあう体温にも心臓が跳ねて飛び出しそうな思いである。
嗚呼、此れが世に言う、びーえるというやつなのだろうか。その真相の闇は深い。
とりあえず顔が赤い七雅へ、枢は熱があるのだろうかと彼女(彼?)のおでことおでこをくっつけたのであった。
田場義高は屈強で姉御肌のようなアマゾネスげふん、フォークロアと言えばいいのか……そのような女性になり、彼(彼女?)の妻はイケメンかつスレンダー美人で、娘は息子になっている。
やってられるかー!!
と心の中で叫んだ義高だが、いつもの仕事である花屋の経営は手を止めるわけにはいかない。性別が逆転しようと、花の命は関係ないし、そこらへんは義高の優しさもある。
店を開いて、義高が店頭に花を並べているとき。ふらっと、少年二名が歩み寄ってきた。
「わあ、この花、とっても綺麗だね枢ちゃ……枢くん?」
「枢ちゃんでいいのだ、結鹿」
菊坂結鹿は「うー」と慣れない性別逆転に眉間に少しだけシワを寄せ、少年になっている枢はくすくすと笑っていた。
普段は女の子二人で並んで、身体を寄せ合っていたりして微笑ましいが。男子同士だと些か身体的接触は危うい感じがする。
変な人にでも捕まったり……とか結鹿が背中を震わせたとき、枢は寒いのかと思って羽織っていたストールを結鹿にかけてやっていた。
そんな二人の話合いを微笑ましく観察しながら、「なんかどこかで見かけたことあるよな」と義高は思っていた。突然姿が変わっていると、人って案外気づけないものなのだ。
枢は小さな花のブーケを買いつつ、その花のひとつを結鹿の髪に刺しつつ。
「大変だな、義高殿」
と彼女(彼?)に話しかけていたり。
結鹿と枢はそのまま、ショッピングに出かけつつ。いつも通りの女子であるときと全く同じ日を過ごしに行った――。
そんな中、ラーラ・ビスコッティはハッとした。
服装は女性のままなのだが、この状態で突然男の性へと変わってしまったらしい。
いつもよりも少々顔つきが雄々しくなったラーラは周囲を見回してから、誰もいない事を確認し落ち着きつつ、せめて服装だけでもなんとかしなければと思考する。
ふとその時、結鹿(♂)と枢(♂)がちょっと危ない系の人たちに絡まれているのをラーラは発見する。
いつもながらの正義感と共に、高火力を放ちつつラーラは二人を助けるのだが。
「……お兄さん、そういう趣味なのかな」
結鹿がラーラをまじまじと見ながら、男性が女性ものを着ていることに不思議そうな目線を向けていた。どちらかといえば、結鹿と枢たちも似たようなものであるが。
「いや、多分、ラーラ殿だと思うのだ」
「あ、同じ被害者なんだね……」
「そ、そちらもですか……」
三人は、同時に「はぁ」とため息をついた。
とりあえずとラーラは歩き出しつつ、守護使役には特に変化が及んでいないことに安堵した。帰路を辿りつつ、タキシードとか燕尾服とかどこにあったかを考えながら。
そういえば――。
「何で私は男の子になっても身長が伸びないんでしょうか……」
ラーラは今日二度目のため息をついた。
向日葵御菓子は思った。本部からの連絡――性別逆転するかも――っていうもの。
そこに期待が膨らんだ。短い夢でもいいから、高身長の男っていうのを、むしろその身長の高さからの眺めを味わいたい――。
「だからぁ~~っ!! 豊かな胸が大胸筋になったってかまわないのっ! ただ、身長が伸びてくれさえすればいいのっ!!」
ぽん! と音と煙が出てもくもくと包まれていく御菓子。
煙が無くなった後、そこに居たのはいつも通りの身長のしょうね……げふん、男のこ……ごほん、男であった。
その瞬間、御菓子は膝から崩れ落ちていった。
そんな悲劇があることは、当たり前だが知る由も無い藤壱縷は、朝起きたら男性になっていたということで鏡をじぃ……と見つめていた。
視線もちょっと高めか、顔は儚いイケメンで、髪型はいつも通りだが体格が少しばかり変わったか。ふと、気になることがあって壱縷は藤零士のところへ行く。
案の定、そこには思い描いた風景があった。
わずかに膨らんだ胸に手を当てる零士がいたのだ。中身は二重人格のゼロという名前を名乗る方ではあるのだが。零士は壱縷の姿を見た瞬間、一瞬誰だかわからなくなったが、直ぐに姉だとわかると顔を背けた、恥ずかしくて。壱縷は顔を斜めに倒す女性らしい仕草をしつつ、しかし、割とイケメン。
このまま出歩こうなんて、壱縷が言うので零士は後ろをついて行く。壱縷は壱縷で自分の大胆さに驚いていた。後ろを見ると、少しだけ雰囲気が変わっている零士がいる。雰囲気が変わっているのは、女性になってしまったからだろうか?
渋々壱縷を追いつつ、ふと見つけた古着屋に入っていった零士はフードの付いたパーカーを買って着込んで、顔をフードで隠した。
その時、道端で倒れている御菓子。壱縷は驚きつつ、その背中にそっと手を当てた。
「身長が……同じなんです……!」
「は、はあ……」
などと訴えかける御菓子の手が壱縷の手を掴んだ。
「女性から男性になったのに身長がそのままなんです」
壱縷はハッとした。自分は男性になって身長が伸びていることを。
これは下手なことは言えないと笑顔のまま壱縷はそっと御菓子を諭して行く。
そんな姿を見ながら、コンビニで買った飲み物に口をつける零士。なんだかんだ、男性を楽しんでいる姉を見ながら、しかし、早く戻らないものかと瞳を閉じたのであった。
惨劇とかギャグとか鬼ごっことか始まっている最中、束の間の平和な日常もある。
今日は姫神桃の家でお泊まり会なのだ。柳燐花と、月歌浅葱は桃の家にお邪魔している。
こう言うのが初めて……なのだようか。緊張しており動きがギクシャクしていたり、いつも以上に口数が少ない燐花は、水色のパジャマに身を包みつつ、二人へお菓子を配る。
「クッキー焼いてきました。良かったら、召し上がったください……お口に合えばいいのですが」
少しだけおずおずとしつつ、しおらしい燐花とは対照的に。浅葱は両手を上げて喜んでいる。因みに浅葱は白色のパジャマである。美味しそうですねっ!と笑いながら、口にひょいとクッキーを投げ込んだ浅葱。そして薄ピンクのパジャマに身を包みつつんだ桃も、クッキーをひとつ摘んで食む。
「美味しい!クッキー焼けるなんて羨ましいわ。今度教えてくれないかしら?」
燐花は薄く笑いながら、美味しいという言葉と共に段々と無くなっていくクッキーを満足そうに見つめていた。
ころんと、転がった浅葱はアロマキャンドルを用意していた。これを暗い部屋に灯せば、何時もの部屋も、明暗が神秘的に彩られらという算段だ。浅葱が思っていた通り、仄かに明るく、そして揺らめくキャンドルの灯りは何とも言葉にできぬやすらぎの空間を演出している。
お布団の上で転がったり戯れたりしている浅葱と燐花の手前に、桃は蜂蜜入りのホットミルクを置いた。
「ふふ、眠くなっても大丈夫そうね。それと、さっきから桃さんとか、姫神さんは擽ったいわ。桃でいいのよ」
桃の方が、近くに感じるから……と、桃は二人に少しだけ赤い頬を見せながら言った。
さて、では本題に入ろう。女子会といえば。これである。
「二人の恋バナも、聞いてみてもいいかしら。浅葱も、普段、そういう話とか聞かないけど、どう?」
「コイバナ……ですか。お話の定番は好みのタイプ、とかになるのでしょうか?」
桃の質問に、燐花は今まで出逢った男性を思い浮かべつつ。
「好きになった人がタイプとも言いますね。私は……」
燐花は恥ずかしそうに頬を両手でで覆った。
浅葱もその隣で腕を組みながら考えていたが、特定の異性の好みはなかなか難しい事のようだ。しかしそのかわりに。
「恋ではなく、すきならありますよっ!その相手は……桃ですよっ!」
私!?と言いながら、飛びついてきた浅葱を受け止める桃。浅葱は桃に頬すりしながら、燐花さんも好きですよっ!と空いた片手で燐花を引き寄せて抱きついた。
「それで!桃はどんなタイプが好きですかっ」
「そうね……気になる人は特に、ね。でも、リードしてくれる人が好きかしら?」
桃は燐花をチラ、とみやる。
「好きになった人が好きも素敵よね。まるで、運命みたいだわ」
「運命……」
こうした友人として出逢えたのも何かの運命であろうか。三人の夜更けは優しい光と甘いお菓子と飲み物と共に更けていく。
工藤奏空は驚愕していた。
隣にいる飛鷹直斗の胸元が明らか膨らんでいて、それでいてさっきより小柄で可愛らしいというか。さておき、自分自身もまじまじとよーーーくみてみれば、何となく自分自身にも同じような事が起きているような。
「お、俺たち、もしかして、女子になってるーーー!!?」
奏空はわたわたと焦ったのだが、隣の直斗は至極冷静だ。
「どうしてこんな平然としていられるの!?」
「なんでって、世の中神秘で溢れてんだ。今更性別逆転くらい驚きもしないっていうか」
わー!と頭を抑えた奏空は、今まで安易に女装してきたから、ここで突然バチが当たったのだと更に更に慌てていく。そんな彼に見兼ねたのか、直斗は奏空の肩を叩いて、直斗の顔を見た奏空へサムズアップ。
「大丈夫だ、女装する事に罪はないし、罰もねェ。逆に考えるんだ…女になった事を楽しめと。…そんな事考えてたらテンション上がってきた、ヒャッホー!」
「うわーん!俺とは真逆の性質を持っている人だったーー!!」
奏空の混乱は続き、隣で直斗は、はははと笑っている謎の空間ができていた。それが側から見れば個性溢れて注目されたのか。
街頭でライヴをやっていた人たちが近づいてきては、出演しないかと突然。勿論、直斗の瞳は輝いた。即座に服を脱ぎ捨てたかと思うと、その下からいつ着替えたのかわからないが、アイドル風の服に着替え直斗兼美少女。
その素早さに奏空は拍手したところで、首根っこをライヴやってた人に掴まれたかと思うとそのまま姿が消え、出てきたかと思えばアイドル風のフリル満載な衣装の奏空が出てきた。俯いて、死にたいと言っていた。
結果から言うと、二人のライヴはかなり成功して、画像サイトにダブピした二人の画像が載ったとかのらなかったとか。
四月一日四月二日は、長身かつ、巨乳の美女になっていた。鏡を見つめて三秒くらい固まったのだが、そのあとは何事もなかったように行動を始める。ツッコミ役が不足している。
同じ頃、赤袮維摩も女性になっていた。曲線美を持つ維摩は、矢張り何故か鏡を見つめて三秒くらい固まったのだが、そのあとは何事もなかったように、むしろ今までも女性であったかのように生活を始めた。矢張りツッコミ役が不足している。まるで双子のように行動が一致しているところはツッコミを入れたいところである。
「うす!引きこもってる?」
「春の陽気で頭が花盛りなのか?」
突然の四月二日の訪問に、維摩はそれだけいって扉を閉めようとしたが、寸前で四月二日の足と体が閉まる扉を止めてこじ開けていく。
そして家の中に入った四月二日は、紙袋の中身を広げ始めたのだ。出てきたのは、女性ものの洋服のようだ。特に下着の類が多い。どうやらここに来るまでに買ってきたようだ。
「途中にちょっと店覗いたら、可愛い春物いっぱい出ててさぁ。キミに似合いそうなのも買ってきたよお」
「ふん」
「コレとか……ぷぷ、こんな小さいの入るんだー!あたしは背高いから無理だわ~」
「無駄に無駄を重ねて、駄肉の世界チャンピオンにでも成る気なのか?」
とは言いつつ、維摩は自分の胸と四月二日の胸を比較しつつ、何だか遣る瀬無い気分になったのか、四月二日の足をベチベチと蹴り始めた。大は小を兼ねるというかなんというか、矢張り大きい方が強いということか。
「ええい、デカさだけが取り柄めっ。その脂肪を少しはそれを頭に回してろよ」
しかしその瞬間、維摩は抱えられ、紙袋の中身全て着るほどのファッションショーアンド着せ替え人形させられてしまったとか。それは半日を費やすほどに、密に行われてゆく。
暫くしてから、四月二日は思う。なんか、なんか……
「おかしくない!?俺たちってもとからこうだっけ!?」
「ふん、いい加減切っても切れない腐れ縁だろうが。「俺」とお前のはな」
男女逆転の不可思議に最後までツッコミ役が不足していた。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
