<玉串の巫女・撃>ひとおりカタシロふたおりミシロ
<玉串の巫女・撃>ひとおりカタシロふたおりミシロ


●『髄液啜り』の足跡
 これまでのあらすじを語ろう。
 神社本庁所属対妖覚者機関『玉串の巫女』。その本拠地である神社が妖の軍団に襲撃され壊滅した。
 多くの死者を出したものの、半数以上の戦闘員(巫女)が逃げ延び、ファイヴ覚者と共同で組んだ反撃部隊により拠点の一つである『豊四季神社』の奪還に成功した。
 救出した巫女を加えさらなる奪還作戦を企てるのだが、そのおり妖大襲撃の裏にあった大妖『髄液啜り』の情報を掴むのだった。

●奪還、三咲神社
「皆さん。前回は豊四季神社の奪還に協力して頂いて、ありがとうございます。おかげで生存した巫女たちの救出にも成功しました。
 現在は再編成した巫女部隊によって残りの拠点から妖が広がらないように牽制を行なっているところです」
 玉串の巫女第四席『豊四季』は、ファイヴのブリーフィングルームで深々と頭を下げた。
「ですが戦力は未だ劣勢。全国に点在する九つの神社のうち八つが、未だ敵の勢力下にあるのです。
 勝手なお願いになってしまいますが、どうかもう暫く皆さんの力を貸してください」

 今回このメンバーで挑むのは神社庁内で『三咲神社』と呼ばれる山奥の神社である。(※実在する同名の神社とは別ものものである)
「清らかな川辺にたつ神社で、元々妖に対する防衛拠点として機能していました。高い防衛力あったはずなのですが、件の大妖『髄液啜り』によって壊滅してしまったようです。
 現在大妖はこの地を去り、制圧状態を維持するためのR3妖2体と新たに大量に生み出されたR1妖の群れによって拠点が閉ざされています。
 襲撃から逃れた巫女が山の上に立てこもっている筈ですが、彼女たちが妖の手に落ちるのも時間の問題でしょう。
 早急に拠点を奪還し、逃げ延びた巫女たちの安全を確保しなければなりません。
 私『豊四季』、三咲神社を担当していた『三咲』、再編成された『黒子衆』、そしてファイヴの精鋭六名による部隊を結成します。
 今回も皆さんには1チームずつの戦闘部隊をつけさせて頂きます。前回前々回と高い成果を上げておりますので、巫女たちも皆さんを信頼しているでしょう」

 三咲神社は対妖用防衛拠点であり、山頂のシェルターを安全な避難所とすべく改造されている。
 元々は形代(カタシロ)という神事道具を作る念術者が治めていた神社で、高い神通性のある形代を生産し、巫女の武器として活用されていた。
 しかし拠点が制圧されてからは道具一式が妖化し、拠点の防衛力そのものが敵に利用された形になってしまったようだ。
「神社は大規模な結界によって守られています。元々対妖用だったものを逆利用されたもので、突入路は正面の門ひとつきりとなっています。
 まずは偵察部隊による図面をご覧ください」
 豊四季が広げた地図によれば、三咲神社は『Y字』の形をしており、下部分から突入することになるようだ。
 そして、上部の二点それぞれに印をつけた。
「奥にあたるこの部分に拠点を守るR3妖がそれぞれ一体ずつ配置されています。他はすべてR1である以上、彼らを倒せば拠点は統率を失い、壊滅状態となるでしょう。R3の二体が合流してしまうと非常に厄介ですので、離れた位置による二体同時殲滅が望ましいでしょう。
 よって、ダメージを抑えつつ素早い突破と、バランスよく二手に分かれつつ的確にR3を撃破する作戦が求められます」

 R3妖『ヒナシロツブシ(雄型)』『ヒナシロツブシ(雌型)』
 なめした人間の皮膚を大量に継ぎ合わせた巨大な帯状の妖。
 先端がそれぞれ男女の上半身になっており、十二本の長い腕がはえている。
 攻撃方法は似通っているが与える特殊効果が異なるのでチーム分けに注意すること。

「高い知能をもった妖がここまで恐ろしいものだとは。この被害を人里に広げないためにも、必ず妖たちを倒しましょう!」


■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.R3妖×2の撃破
2.なし
3.なし
【注意:このシナリオに参加する場合、同日に公開された『六実神社奪還作戦』には参加できません。システム的には可能ですが、うっかり両方の依頼に参加してしまった場合には戦力の半減などのペナルティが科せられますのでくれぐれもご注意ください】

 こちらはシナリオタグ<玉串の巫女>の系列シナリオです。
 玉串の巫女のことわからないという人は最後のあたりの説明を読んでください。それでも分からないことがあったら知っている人に聞くとよいでしょう。

●目標
・全体目標:神社の奪還
・メイン目標:R3妖×2の撃破
・サブ目標:すべての妖の撃退
・サブ目標:立てこもった一般人の救出
※妖は逃走しないものとする。
※立てこもっている限り一般人は戦闘終了まで狙われないものとする。

【エネミーデータ】
●R1妖
 Y字の戦場に突入する際、第一~第三層までの妖集団と戦う必要があります。
 層によって敵の種類が異なることにご注意ください。

・第一層
 生物系R1。野生の犬や狸などの小動物が妖化したもの。神社内というより結界の外にはみ出るかたちで展開している。そのため最初に戦うことになる。
 戦闘能力は低く、BS等の心配も少ない。

・第二層
 物質系R1。カタシロの原材料となる和紙が妖化した集団。
 特攻が高く物理に弱い。エネルギー弾による遠距離攻撃がメインで【痺れ】がつく。

・第三層
 心霊系R1。襲撃の際に殺された人々の霊魂が妖化したもの。
 物攻に強く特攻に弱い。この層は対R3戦闘にも混じってくるので、一緒に相手をするつもりで考えましょう。

●R3妖
 物質系妖R3。なめした人皮を継ぎ合わせた妖。
 雄雌の二種類がおり、それぞれスペックは似通っているが攻撃方法が異なる。

・『ヒナシロツブシ(雄型)』
→しめつける:物近列【超重】
→がなる:特遠全【混乱】・命中マイナス補正
→飛行能力:飛行ペナルティ以下の高度を飛行します

・『ヒナシロツブシ(雌型)』
→からみつく:特近列【封印2】
→わらう:特遠全【魅了】・命中マイナス補正
→飛行能力:飛行ペナルティ以下の高度を飛行します

【味方戦力】
・豊四季隊:術式による遠距離攻撃を得意とする部隊。命中補正などを高めて確実なダメージを与えるスタイル。火行メイン。
・三咲隊:体術による物理攻撃と術式による回復術が得意。痛みに耐えて物理で殴るスタイル。木行メイン。

【部隊戦闘ルール】
 全員が1チームの部隊をもって戦います。
 自分のチームはリーダー(自分)1名+部下5名で形成されます。
 部下はプレイングで指示した内容に従って戦います。何も指示を出さなかった場合自分で考えてそこそこに行動します。
(注意:スキル単位で細かく指示しているとプレイングリソースた足りなくなります。簡略化に努めましょう)
 戦闘するにあたって『率先して戦う』『指揮に集中する』『戦いながら指揮する』のいずれかを選択して下さい。
 率先して戦う場合は自らのフルパワーを使いつつ、チームの援護を受けられます。
 指揮に集中すると自分のパワーがあまり出せない代わりにチームのダイス目に大きな補正を加えられます。
 両立させるとその中間の効果になります。

●チームの練度やメンバーについて
 連れて行くのは『黒子衆』と呼ばれる玉串の巫女候補生で、レベル10~15のそこそこな覚者たちです。命数は少ない。
 連れて行くチームは自分で『(チーム名):○○なチーム』とオーダーすることでそれらしいチームが新規に組まれますが、もし自分に深く面識のあるチームがいる場合はチーム単位で指定することが出来ます。
 その場合『面識補正』がかかり、ダイス目に影響します。
 チームにはチーム名にちなんだ漢字一文字を服に刺繍しています。
 既存のチーム:兎、亀、抜、王、死、花、櫻、癒
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2017年04月22日

■メイン参加者 6人■


●三咲神社奪還作戦、構成
 妖に選挙された覚者拠点三咲神社を奪還すべく、八組計四十八名が動員された。
 『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)、花組。
「今回も頼りにしてます。花組の皆さん、よろしくお願いしますね」
「任せてください」
「命を大事に、ですよね!」
 単独でもファイヴの通常依頼をこなせるほどのチームワークと能力配分がなされたチームだ。
 しかも深いなじみもあることから、花組のメンバーはラーラが指示をする前からパターンを提示できるほどになっていた。
 今回のパターンは回復による守備をメインにしての突破である。
 賀茂 たまき(CL2000994)、兎さん部隊。
「みなさん、よろしくお願いしますね。すこし、つらい戦いですけれど……」
「気にしないでください、教官」
「あなたのおかげで拾った命です。ついて行きますよ!」
 遊撃を専門とした部隊で、ある程度チーム単体で動けるバランスと別働隊との連携行動をしやすいスキル配分が特徴だ。
 ここまでの二組は黒子衆に戦術アドバイザーとして派遣された頃からの付き合いだ。かなりのツーカーである。
 そして。
 『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)、神風部隊。
「宜しくな! 命は大事にしろ、俺が必ず護る。目標は死者ゼロだ、当ったり前だろ!」
「「はい!」」
 ジャックの部隊は速度特化のBS付与部隊。木行と天行の特攻撃スキルを中心としていた。
 ジャックは一人一人の名前と顔をきちんと把握して接するようにしていた。
 『狗吠』時任・千陽(CL2000014)、千陽隊。
「オーダーは細かく伝えたつもりでしたが、大丈夫でしたでしょうか」
「リーダーほどの実力ではありませんが……はい! 大丈夫です」
「ご命令を、リーダー!」
 普段からチームのバランスを考える千陽の広いバランス感覚はこういう時にも有効に働いた。
 速度の高い異常状態やスタミナの回復担当、とダメージリカバリーの担当。前に出て壁になれる千陽とあわせての、戦力の立て直しに秀でたチームである。
 『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)、櫻組(おーかしんかげりゅうとなかまたち)。
「言葉の最初とあとにサーをつけるのよ! へい櫻組、私らのモットーはなあに?」
「サー! 死なないことです! サー!」
「じゃあやることは決まってるわね!」
「サー! あとで一緒に写メいいですか! サー!」
「そっちじゃない!」
 こちらは数多自慢のワントップ補助型チーム。優秀なスタンドプレイの集合としてチームプレイが成立するファイヴとは違い、一番強いリーダーに全てゆだねる玉串ならではのスタイルだ。
 このジャック、千陽、数多のチームは本庁陥落時に駆けつけた人として少なからずなじみがあるようだった。チームごとの連携はともかく、信頼は置かれているようだ。
 『探偵見習い』工藤・奏空(CL2000955)、月組。
「俺は玉串の巫女さん達とお会いするの初めてですが、宜しくお願いします!」
「よろしくお願いします、リーダー!」
「可愛いです、リーダー!」
「たまき教官の兎とかけてるんですよね、リーダー!」
 こちらは初対面とはいえ好感度が高そうだった。玉串の窮地に駆けつけてくれているというだけで、既に最初から好感度は高いのだ。
 メンバー構成は奏空が前々から視野に入れていた回復による戦線維持を目的とした構成で、千陽とはまたちがったどっしりとした防衛力のチームだ。
「他のチーム同様、命数や魂の使用は禁止です。お願いします!」
 この段階に来て、(どうしてもというタイミングはあれど)命数を節約してより長く戦う方針が黒子衆に浸透していた。そういった意味でも、ファイヴでいままでやっていた感覚とは違う戦術を立てていかなくてはならないだろう。
 これに加えて豊四季隊、三咲隊による

●三咲神社第一層突破作戦
 神社の外にはみ出るように展開しているランク1妖の集団を突破すること自体は簡単だ。高威力の攻撃で突き進めばよいだけである。しかし黒子衆たちに高い火力を期待するのは難しく、第二層で潰されてしまわないためにもより消耗をおさえた突破方法が求められた。
「倒して進まねばならないわけではありません。二俣さん、新町さん、協力を!」
「俺も行きます!」
 ラーラと奏空、そして連携可能な巫女たちは同時に艶舞・寂夜を発動。ダメージこそないが敵を眠らせる性質をもつ術式である。
 知能が低く異常状態のリカバリー手段も少ない第一層の妖たちはその三割ほどが眠りについた。三割というのは、効果射程範囲に入っていない妖が半数以上はいるからであって、命中精度の問題とはまた別である。
「しかし正面さえ手薄になればこちらのものです。実力行使で突破しましょう!」
 残った妖がそれぞれ攻撃を仕掛けてくるが、千陽は部隊に回復を指示しつつ無頼漢を中心に突破をはかる。
 ジャックも召炎波をかけながら部隊を引き連れて後に続く。しかし今回は指揮に集中しているので、アテにしているのは黒子衆だ。
「天行のチームはあとから加わった妖に眠りを付与や。でもって敵を抑えつつ突破!」
 ジャックの指示に従って妖を眠らせる術式を放つ巫女たち。
「眠った敵は攻撃に含めず、全体攻撃で一気に燃やす。木行のメンバーは全体に鈍化を付与してから、攻撃に加わって」
 余裕を見て封解 裏コード『赤兎』を使用して強化をはかった。
 一旦タイミングをズラす形で飛び込んだのはたまきと数多の部隊である。
 残った妖の中でも比較的タフな個体を狙って、数多がばっさばっさと切り捨てていく。
「しばらくは温存よ、守備を固めときなさい!」
 『サーイエッサー!』と応える巫女たちを背に、ひときわ大柄な巨体をぶった切った。
 側面から低空飛行によって飛びかかる妖の集団。
「応戦して下さい!」
 割り込むよに滑り込んだたまきが、リュックサックから丸めたポスターサイズの護符を引っ張り出し、地面に放った。開いた護符に描かれた文様が意味を成し、見えない衝撃が妖たちを一斉に打ち払った。
 払ったそばから巫女たちが射撃や斬撃を加えて倒していく。
 奏空が開けた道を確認すると、他の部隊に呼びかける。
「第一層は無事に突破できます。このまま一気に突入しましょう!」
 こうして、第一層の妖を突破した部隊は神社内へと突入していったのだった。

●三咲神社第二層突破作戦
 Y字型に進路を限定された三咲神社。その分岐点にあたる部分が、今作戦の第二層である。
 カタシロの原材料になっていた特別な和紙が妖化し、周囲をひらひらと飛び回ったり人型になった細身の妖が駆け寄ってきたりしている。
「物理型の力の見せ所よ、まかせとけい!」
 腕まくりした数多は巫女の付与をうけてひらひらと舞う紙妖へと突撃する。
 エネルギー弾を浴びせられるが即座に回復。跳躍によって飛び乗り相手を切り裂くと、更に飛んで数体いっぺんに切り裂いていった。
 瞬く間に紙切れへと戻っていく妖立ちを見て、思わず拍手する櫻組。
「そこ、ぼーっとしない! 次いくわよ!」
 ここで前へ出ているのは数多ばかりではない。
「皆さん、回復を厚めに、痺れに注意してください!」
 巫女たちに指示を飛ばしながら、奏空もまた取り囲もうとする人型の妖を次から次へと切り裂いていく。ジグザグに抜けていくさまに、数多がちいさく口笛をふいた。
「この先の分岐は、ラーラさんとたまきさんが一緒だったわねそらくん。ファイトよ、ヒーロー!」
「はい! 黒子衆のみんなも、たまきちゃんも守ります! ラーラさんも、もちろん!」
「えっと……はい、ありがとうございます」
 私も頑張って奏空さんを支えますねと言って、たまきも護符を取り出した。護符というかキングサイズのペーパーファイルのようなものだったが、ホルダー部分を解除してA4サイズの護符へいっぺんに念をこめた。
 舞い散っていく紙がそれぞれつぎあわさり巨大な護符が完成。大地から土の竜が飛び出し、大柄な妖を貫いていった。
 特攻撃が通じづらいとはいえ、それを補ってあまりある威力だ。
「お姫様はたまきさんにお譲りしますよ。私も、守られてばかりじゃありませんから」
 金の鍵を取り出したラーラは魔導書の封を解き、おまじないを唱え始める。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 たまきの竜に続いて、ラーラの魔方陣から炎の獅子が飛び出し紙の妖を食いちぎっていく。
 妖も妖で術のバリアを展開するが、ラーラの火力の前では文字通り紙切れ同然であった。
 そこまで凄まじい火力を出せない巫女たちも、たまきやラーラが集中攻撃をうけないように立ち回りながら回復支援に徹していた。
 隊列によって物特双方に切り替えられる彼女たちのチームには、さして難しくない状況だった。
「あっちはいいわねえ。それじゃ、私のナイトのジャック君とチカ君はかっこいいとこ見せてね!」
「はい、努力します」
 ストイックに応える千陽。
「黙って守られてればええねん」
 ジャックも照れながら応えた。
 ジャックの部隊は第一層と同じく敵を眠らせて全体攻撃で燃やす作戦だ。
「視界的に、毒やなぁ」
 封解 裏コード『赤兎』がきれないように注意しながら、全体攻撃を続けた。
 攻撃をうけた妖たちの反撃が部隊を襲う。
 妖にもダメージを与えたが、ジャックの部隊もダメージをうけた。
 そこへ千陽が部隊に回復を指示、味方の部隊を回復していく。
「全ての妖を倒しきる必要はありません。ここからは二手に分かれて攻撃を行ないます。豊四季さん、三咲さんもいいですね!」
 同じように妖を攻撃していた豊四季と三咲がオーケーサインを返してきた。
 八つの部隊はそれぞれ別れ、ヒナシロツブシ戦へと突入する。

●ヒナシロツブシ雄型
 言語化できない言葉をわめきながら空を舞うR3妖、ヒナシロツブシ。
 その周囲には殺された人々の霊魂が妖化し、駆けつけた部隊へと群がっていく。
 ジャックは素早く部隊に指示を飛ばした。
「神部隊はBS攻撃を中心に! 先手を取って攻撃するんや。ただし、そろそろR3が倒せそうな気配を察知したら全員待機して攻撃を最後に行って、次ターン先手を取って攻撃、連続攻撃のような形にするんや」
 そうしてジャックは潤しの雨による回復に集中し始めた。
 一方で千陽は部隊ごと後ろに下がり、しめつけ攻撃から逃れるように立ち回った。
「自分はエネミースキャンを試みて効率のよい攻撃ができるようにしてみます。部隊の皆さんは回復とガードを」
 ここまで消耗を押さえてきたのはこのためでもある。
 前衛に出る数多や、周囲の妖から攻撃をうける後衛チームを適時カバーするために動き回るのだ。
 千陽もまた、烈空波を放ってヒナシロツブシと周囲の妖をそれぞれ攻撃していく。
「しっかし、こんなバケモノ作り出すなんてどういうヤツなのよ髄液啜りって。ちょっとメガネ解説しなさいよ。メガネっぽく解説しなさいよ、くわしく!」
「メガネって呼ばないでください! 私だって知りたいですよ、詳しく!」
 豊四季部隊の援護射撃を受けながら、数多は突撃。
 浴びせかけられる攻撃やしめつけを味方のカバーや回復に全て任せ、数多はまっすぐヒナシロツブシに飛びかかった。
「この不気味一反木綿、さっさと死ね!」
 刀が突き刺さり、相手をまっすぐに切り裂いていく。
 そこへ他の部隊が一斉に攻撃を浴びせ、ヒナシロツブシを撃滅した。
「おやすみ、ヒナシロツブシ」
「ランク3は倒しました。掃討に移ります」

●ヒナシロツブシ雌型
 雄型との戦いがまだ続いていた頃、こちら対雌型チームは敵の封印攻撃に苦戦していた。 オリジナルスキルで攻撃できるラーラやたまきたちと違い、黒子衆たちに封印状態はつらいのだ。リカバリーの方法もかぎられた体術しかない。更に魅了攻撃をうけてしまうと、メインの火力になっているメンバーがそのまま脅威になってしまう。
 しかし。
「俺に任せて! 皆を守るって、いったから!」
 奏空は妙法睡蓮水紋を発動。水の波紋にのせて封印状態にあった巫女や仲間たちを回復していく。
 連鎖するように奏空の部隊が清廉香や回復術式を展開。防衛力を固めていく。
「群がってくる雑魚はウチが蹴散らしたる。ボスは頼むで!」
 三咲は腰のカードホルダーから大量のカタシロを取り出すと、それらを自らの拳に纏わせていった。頑丈な鎧と化した護符でもって雑魚の群れに飛び込んでいく。
 対して、ラーラとたまきは奏空の加護を受けながらヒナシロツブシを迎え撃った。
「力を磨いたのは理不尽をこの手で打ち払うため。髄液啜りの好きにはさせません! いきましょう、たまきさん!」
「はい……!」
 たまきは龍槍円舞と書かれたファイルを再び取り出して開放。
 同時にラーラも魔導書の鍵をはずして解放。
 巨大な壁のように継ぎ合わさった護符に、幾何学模様が複雑に走り回ったような、非常に複雑な魔方陣が描かれていく。
「龍槍円舞」
「召炎帝」
 同時に突きだした指のさき、ヒナシロツブシへ巨大な竜と獅子が飛びかかり、真っ二つに食いちぎっていった。

 かくして、三咲神社は無事奪還することができた。
 隠れていた人々を助け出す人や、たがいをねぎらう人々、髄液啜りの正体を想像する人々。そんな中で、たまきがぽつりと語り出した。
「次に狙う神社が特定できたら、巫女さんたちを守ることにもつながりますよね」
「……次、ですか」
 豊四季は唸って腕組みをした
「本庁陥落のおりに、同時に襲撃を受けたことで陥落したのが豊四季、三咲、六実神社です。複数の拠点を落とすだけの軍勢を持っていますから全てとはいかないでしょうが、一箇所に集中させることで迎撃が可能になるかもしれません」
「けどそんなことできるん? 妖なんて何考えてるかわからんヤツやん」
 三咲の言葉にこたえるように、たまきは地面に図形を描き始めた。
「もしかしたら法則性があるのでは。例えば、5を対称に1と9、2と8、3と7、4と6の様に……」
 いわゆる九九の紋。0~9の文字を等間隔においた円環を、九九の一桁数字をたどるようにしていくと必ず幾何学模様になるという数字のアートである。
「4、6、3、ときたなら……次は7では」
「七栄神社。だとしたら、まずいですね。賭けてみる価値はあるでしょう」
 

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし




 
ここはミラーサイトです