≪嘘夢語≫転生トラックに轢かれた覚者が異世文字数
●転生トラックに轢かれた覚者が異世界転生して、手に入れたチート能力で無双する件
あなた達は、突然やって来たトラックに轢かれて、死んだ。
●女神との邂逅
意識を失ったあなた達は、なんかピカピカした空間で目を覚ます。
目の前には女神っぽい人がいて、申し訳なさそうにしている。
「この度は私の手違いで、死なせてしまい申し訳ありませんでした。本来なら命数も魂も残っているので、そんなはずなかったんですけど。そこでお詫びと言ってはなんですが、あなた達を転生させて差し上げます。おまけにチート能力もお付けしますよ!」
転生先の世界は微妙に荒廃した世界のようだ。
国土は荒れ果て、愚かな王が治め、魔物が闊歩しているのだという。
まぁ、チート能力で頑張って住みよい世界を作ると考えるのなら、逆にやりがいはあるのかもしれない。
「転生先がどんな人間なのかはプレイングに書いてくださいね。皆さん、生まれるタイミングがずれてても構いませんので。それでは、良い転生ライフを~」
あなた達は、突然やって来たトラックに轢かれて、死んだ。
●女神との邂逅
意識を失ったあなた達は、なんかピカピカした空間で目を覚ます。
目の前には女神っぽい人がいて、申し訳なさそうにしている。
「この度は私の手違いで、死なせてしまい申し訳ありませんでした。本来なら命数も魂も残っているので、そんなはずなかったんですけど。そこでお詫びと言ってはなんですが、あなた達を転生させて差し上げます。おまけにチート能力もお付けしますよ!」
転生先の世界は微妙に荒廃した世界のようだ。
国土は荒れ果て、愚かな王が治め、魔物が闊歩しているのだという。
まぁ、チート能力で頑張って住みよい世界を作ると考えるのなら、逆にやりがいはあるのかもしれない。
「転生先がどんな人間なのかはプレイングに書いてくださいね。皆さん、生まれるタイミングがずれてても構いませんので。それでは、良い転生ライフを~」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.世界を救う
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
流行に乗ってみた、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は異世界に転生して「俺TUEEEEE!」していただきます。
●舞台説明
死んだPC達が転生した異世界。いわゆる中世ファンタジー風の世界ですが、モンスターの襲撃などもあって荒廃しています。魔法などは存在するようで、術式が魔法として認識されます。
皆様は後述の「脅威」を2つ以上解決することで、この世界を救うことが出来ます。
細かいことは突っ込まない方向でなにとぞ。
プレイングで指定いただければ、ある程度設定を拾います。
●設定
PCの転生後の設定は自由に決めてもらうことが出来ます。あくまでも人格は元のままです。メインの描写は、PCの現在の年齢の時になります。
プレイングで名前・姿・職業などを指定してください。
また、1つ「チート能力」を得ることが出来ます。
本シナリオ中で使え、決めた一つのことに対してはかなりの無茶が効きます。
最強の魔剣(どんな相手でも倒せる)、すごいカリスマ(民衆を従えることが出来る)、大地の浄化(豊かな実りをもたらす)などです。プレイングで1つ、お好きなものを書き込んでください。
なお、この能力は他のPCに影響を及ぼすことは無いのでお気を付けください。
●脅威
この世界を襲う脅威です。
元の能力だけでは困難かもしれませんが、チート能力を用いれば解決可能になる可能性があります。
1人当たり1つの対応に絞った方が、描写が良くなる可能性が高いです。
1.荒廃した大地
モンスターの襲撃や悪政のあおりを受けて、大地が荒れて、実りをもたらさなくなっております。良い穀物を用いる、大地を開墾するなどによって解決が可能です。
2.悪政
悪い王様が政治を行っており、国は乱れています。革命を行う、王様を立ち直らせる、他の王族を立てるなどで解決が可能です。
3.モンスターの襲撃
魔王やドラゴンが定期的に襲ってきます。モンスターたちを倒す、モンスターたちを飼いならすなどで解決が可能です。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
7日
7日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
5/6
5/6
公開日
2017年04月17日
2017年04月17日
■メイン参加者 5人■

●
「手違いで死んだって……マジ?」
「えーっ! やだよー! 元の世界に帰りたいよー!」
『不屈のヒーロー』成瀬・翔(CL2000063)と『新緑の剣士』御影・きせき(CL2001110)の嘆きはごもっともだ。
まだまだ年若い彼らにとって、奪われた年月は「手違い」などで済むものではない。
「やれやれ、まさか手違いで一生を終えることになろうとは」
どこか達観したような様子で苦笑いを浮かべているのは『白い人』由比・久永(CL2000540)だ。彼の場合、外見こそ似たり寄ったりだが、実際に生きた年月は文字通り10倍近い。
それに生まれついての境遇もあって、たいていのことは受け入れられるつもりだ。
「それにしても……人生何が起こるか分からんな」
「ライトノベルでこういうタイプのお話も読んだことはありましたが、まさか自分がそうなっちゃうなんてびっくりですね……」
統計が取れる類のものではないので何とも言えないが、決して頻繁に起きるものではないだろう。それだけに、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)も驚きの色を隠せない。
とは言え、一応、異世界への転生とそちらでの第二の生は約束されたわけだ。
諸々の話を聞いて、ようやく覚者達も納得する。
「ちぇー、まだやりてー事たくさんあったんだけどなあ」
「でも、こうなっちゃった以上、やるっきゃないよね!」
「んー、まあ、異世界とはいえ生き返らせてくれるってなら、いっか!」
残念ながら元に戻ることは出来ない。
それだったら、前向きに考えるしかないだろう。
そして、そんな覚者達を光が包み込み、彼らは異世界へと転生した。
●
「神の御使い」と呼ばれる青年の噂が流れるようになったのはいつの頃からだったか。
とある小さな村に生まれたヒサエという子が舞うと、土地に豊かな実りがもたらされるようになった、という話がそこかしこで囁かれるようになった。おまけにその子が自分を神の使いとまで言い出したのだからどうしようもない。
「思いの外あっさり信じられてしまったな」
ヒサエとして生を得た久永は苦笑を浮かべる。
実際、神の使いとして振舞うのはこれが初めての経験ではない。
以前においても、ご神体として扱われていたのだ。それを思えば、今回の方が気楽なことは多い。
「まぁもてはやされるのはまんざらでもないし、これはこれで良いかなと……面白いしな」
それに何といっても、一番の喜びは太陽の下をのんびり歩くことが出来るということだ。
姿かたちは転生前と大差はないが、光に弱い虚弱体質に関しては改善された。それだけでも、転生して悪くなかったと思える。
そんなことを考えていると、表からヒサエを呼ぶ声が聞こえてきた。
今日も『神様』の仕事をする時間のようだ。
ヒサエが生まれてから早数10年が経った。
気が付けば、この国も随分と豊かになった。最初は小さな村でご本尊様扱い程度だったヒサエも、いつの間にやら新興宗教の教祖といった感じになっている。
正直な話、国からもう少しうるさく言われるかなとも思ったが、そういうこともなかった。
「豊穣の力は永遠に続くものではない。放置すればいずれ荒地に戻るだろう」
そして、今日もヒサエは人々に教えを説いて回る。
今やこの世界はヒサエにとっても愛着のあるものになっていた。自分がいなくなってまた土地が荒廃してしまったのでは意味がない。野生の獣やモンスターの出る山野にも恵みを振りまく。
かつて覚者として生きていた時から100年の時が流れ、人々が笑顔と共に耕す姿を見て、ヒサエは呟いた。
「全世界が豊かな実りに包まれたらいいなぁ……」
●
いつの頃からか、この世界には不思議な吟遊詩人の噂が流れ出す。
様々な場所で、戦う人々を応援する少女の噂だ。
ある時は辺境の蛮族と戦う兵士達を。
ある時は身分違いの愛に悩む若者を。
もし、昭倭という時代を知るものなら、ククル・ミラノ(CL2001142)という少女を思い出したことだろう。だが、この世界にその名を知るものはほとんどいない。
ただ一つ言えることは、異世界においても彼女のやることは変わらなかった、ということだ。
●
「やっぱりこの姿は不本意です」
ぷくっと頬を膨らませて不満を漏らしつつ、ラーラは巨大な一つ目巨人の前に立った。
ラーラが転生したのは、太陽の石という伝説の魔石に選ばれた少女だった。元からそういう少女がいたのか、このままの姿で現れたのか、彼女自身に知るすべはない。
ただ、すらっと背の高い姿を希望していたのに、それが反映されなかったことに関しては、はっきりと不満に思っている。
「と、そんなことを言っていられませんね」
そう言ってラーラは現実に立ち返る。
こちらに来てこの方、ラーラは太陽の石に導かれるようにして、多くの魔物と戦っていた。
魔法の研鑽を積む、という点でやることは変わらない。それに、力のない人々を守るということも前からやっていることだ。
(こちらの世界の記憶は……そうですね。やっぱり何も思い出せません。どんなお父さん、お母さんから生まれたんでしょう。いいえ、私にとっては前の世界のお父さんとお母さんしかいませんから、これで十分です)
そういう意味で、ラーラの意識は覚者として戦っていた時と何も変わらない。
それに、ペスカも一緒に来てくれているのだ。恐れるものなどあるものか。
巨人の振り下ろしてきた拳を難なく躱し、圧縮した空気弾をぶつける。太陽の石の力で彼女の魔力は大きく向上していた。
続けざまに火炎弾を放ち、巨人の動きを封じる。何せ、これ以上巨人の動きを許せば、人里に出てきてしまう。ようやく開拓が進んできたとのことだ。そんなことを許すわけにはいかない。
「これ以上、時間をかけるわけにはいきませんね。ペスカ!」
前の世界から一緒の時間を過ごしている親友に声を掛けると、ペスカは金色の鍵を取り出して魔導書の封印を解く。
魔力の消耗の激しい技だが、今は切り時だ。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
空中に描かれた魔法陣から巨大な炎の塊が現れる。
そして、薄れゆく意識の中でラーラは自分の勝利を確信した。
●
街に現れたヘルハウンドの襲撃を止めたのは、小人族の軽業師だった。
彼が光の粉を纏うと『実際に空を飛んでいるのではないか』と言われるほどの巧みな曲芸を行うことで有名だ。小人族はあまり自分たちの呼び名に頓着しない種族で、彼も一度名を問われて答えた『キセキ』という、どこの国の名前ともつかないなで呼ばれている。
魔物を止めたのは剣の技でも魔法の力でもなく、「友達になろうよ」という一言だった。
そして、キセキは大人しくなった魔物を殺せという声を尻目に、街の近くに住むドラゴンの所に向かうと言い出した。魔物がドラゴンに命じられてきたことを聞かされたからだ。
「飛べる魔物さんは飛べない魔物さんを運んであげて! 頑丈な魔物さんはトラップからみんなを守って!」
ドラゴンの谷にやって来たキセキは自らの身体を輝かせて、魔物たちに合図を送る。
気が付けばキセキが連れている魔物たちは、ちょっとした数になっていた。猜疑心の強い王に目をつけられなかったのは驚きと言ってもよい。
しかし、谷の主であるドラゴン相手にはそうはいかなかった。
現れたドラゴンは、自分へ逆らう魔物たちを不遜だとばかりに炎のブレスを吹き付けて来る。
「さすがに手ごわいや。でも、今度は僕が先頭切って戦う番だよ!」
そう言って、キセキは近くの植物を巨大化させてドラゴンを縛り上げる。
ドラゴンはそれを引きちぎり、キセキに鋭い爪を突き立てた。
キセキ1人では勝利は覚束なかったろう。だが、キセキには頼れる仲間がいた。
ユニコーンはキセキの傷を癒し、活力を与えた。
ヘルハウンドはキセキの足となり、戦場を駆け回った。
ゴブリンたちもちょこまか動いて、ドラゴンをかく乱した。
「よーし、みんないくぞ!」
そして、キセキの号令を発し、最後の一撃をドラゴンに叩き込むのだった。
「ふーん、魔王っていうのがいるんだね。そっちにもいかないと」
ドラゴンの傷を癒しながら、キセキは話を聞き出す。
どうやら最近復活した魔王の影響で、魔物たちも人間の領域に手出しをするようになっていたらしい。
だったら、魔王とも仲良くなりに行くだけだ。
キセキの旅はまだまだ終わらない。
●
「よし、じゃあみんなで王様に直談判に行こうぜ!」
ふらりとやってきた不思議な少年は、そんなことを言い出した。
対立する2つの村の間に立ち、仲裁を買って出るというだけでも随分と酔狂な話だろう。だが、話を聞いて根本の原因が王の課す重税にあると聞いてこれだ。
村人たちも、村の対立で引き裂かれそうになっていた恋人たちも開いた口が塞がらない。
しかし、少年はそんな彼らを引き連れて、意気揚々と王都に向かって旅を始めた。
「どうだ、分かったか! オレには神獣が付いてるんだぞ!」
顔を青痣だらけにして少年は笑う。その前にいる騎士団長もまた然り。
まぁ、これだけの人間が王の下へやってくれば、治安維持のために騎士がやって来るのは道理。そして、殴り合いの喧嘩が始まった。
喧嘩の中で少年は雷の獣を呼び出して、力を見せた。
最後には騎士団長と拳を握っての殴り合い。それで認められた少年は、王との面会を認めさせた。
「なあ、王様? なんで悪い事するんだ? 話してみろよ、聞いてやるぜ?」
この世界の歴史においても、ここまで明け透けな問いを投げたものはいない。
逆に怒りの言葉を向けようとした王の方が絶句してしまったほどだ。
「一度、みんなが喜ぶ事して見ろよ。怖がられるよりも『ありがとう』って言われる方が何十倍も嬉しいぜ? 王様がいい王様になってくれたらオレも嬉しいしさ!」
時を遡ること10数年前、若くして命を落とした成瀬翔という覚者は「誰とでも仲良くなれる力」を望んだ。
しかし実の所、彼はそのようなものを望む必要はなかったのかもしれない。
相手と本音でぶつかることが出来ることこそ、この少年が元々持っていた力なのだから。そして、その言葉は王の中にあった孤独を癒した。
それから、王は今までとは別人のように善政を敷くようになったという。
もちろん、国土が『神の御使い』の力によって豊かになったというのもあるだろう。また、今まで脅威であった魔物が国の守りに協力を始めたというのもあるかもしれない。
そして、件の少年の行方はそれ以降杳として知られていない。
あるものは、『神の御使い』と会った姿を見たという。
またある者は、炎の魔法使いや小人族の曲芸師と魔王の城に向かったともいう。
ともあれ、こうしてこの世界に平和な時代がやって来たのだ。
●
邯鄲の夢、と言う言葉がある。
昔の中国の若者が眠りについた夢の中で、栄耀栄華を極める。しかし、目が覚めるとそれは粟が煮えるまでの時間に見た夢でしかなかったというものだ。
人の世は儚い。
だが、覚者達は確かに1つの世界を救った。
「手違いで死んだって……マジ?」
「えーっ! やだよー! 元の世界に帰りたいよー!」
『不屈のヒーロー』成瀬・翔(CL2000063)と『新緑の剣士』御影・きせき(CL2001110)の嘆きはごもっともだ。
まだまだ年若い彼らにとって、奪われた年月は「手違い」などで済むものではない。
「やれやれ、まさか手違いで一生を終えることになろうとは」
どこか達観したような様子で苦笑いを浮かべているのは『白い人』由比・久永(CL2000540)だ。彼の場合、外見こそ似たり寄ったりだが、実際に生きた年月は文字通り10倍近い。
それに生まれついての境遇もあって、たいていのことは受け入れられるつもりだ。
「それにしても……人生何が起こるか分からんな」
「ライトノベルでこういうタイプのお話も読んだことはありましたが、まさか自分がそうなっちゃうなんてびっくりですね……」
統計が取れる類のものではないので何とも言えないが、決して頻繁に起きるものではないだろう。それだけに、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)も驚きの色を隠せない。
とは言え、一応、異世界への転生とそちらでの第二の生は約束されたわけだ。
諸々の話を聞いて、ようやく覚者達も納得する。
「ちぇー、まだやりてー事たくさんあったんだけどなあ」
「でも、こうなっちゃった以上、やるっきゃないよね!」
「んー、まあ、異世界とはいえ生き返らせてくれるってなら、いっか!」
残念ながら元に戻ることは出来ない。
それだったら、前向きに考えるしかないだろう。
そして、そんな覚者達を光が包み込み、彼らは異世界へと転生した。
●
「神の御使い」と呼ばれる青年の噂が流れるようになったのはいつの頃からだったか。
とある小さな村に生まれたヒサエという子が舞うと、土地に豊かな実りがもたらされるようになった、という話がそこかしこで囁かれるようになった。おまけにその子が自分を神の使いとまで言い出したのだからどうしようもない。
「思いの外あっさり信じられてしまったな」
ヒサエとして生を得た久永は苦笑を浮かべる。
実際、神の使いとして振舞うのはこれが初めての経験ではない。
以前においても、ご神体として扱われていたのだ。それを思えば、今回の方が気楽なことは多い。
「まぁもてはやされるのはまんざらでもないし、これはこれで良いかなと……面白いしな」
それに何といっても、一番の喜びは太陽の下をのんびり歩くことが出来るということだ。
姿かたちは転生前と大差はないが、光に弱い虚弱体質に関しては改善された。それだけでも、転生して悪くなかったと思える。
そんなことを考えていると、表からヒサエを呼ぶ声が聞こえてきた。
今日も『神様』の仕事をする時間のようだ。
ヒサエが生まれてから早数10年が経った。
気が付けば、この国も随分と豊かになった。最初は小さな村でご本尊様扱い程度だったヒサエも、いつの間にやら新興宗教の教祖といった感じになっている。
正直な話、国からもう少しうるさく言われるかなとも思ったが、そういうこともなかった。
「豊穣の力は永遠に続くものではない。放置すればいずれ荒地に戻るだろう」
そして、今日もヒサエは人々に教えを説いて回る。
今やこの世界はヒサエにとっても愛着のあるものになっていた。自分がいなくなってまた土地が荒廃してしまったのでは意味がない。野生の獣やモンスターの出る山野にも恵みを振りまく。
かつて覚者として生きていた時から100年の時が流れ、人々が笑顔と共に耕す姿を見て、ヒサエは呟いた。
「全世界が豊かな実りに包まれたらいいなぁ……」
●
いつの頃からか、この世界には不思議な吟遊詩人の噂が流れ出す。
様々な場所で、戦う人々を応援する少女の噂だ。
ある時は辺境の蛮族と戦う兵士達を。
ある時は身分違いの愛に悩む若者を。
もし、昭倭という時代を知るものなら、ククル・ミラノ(CL2001142)という少女を思い出したことだろう。だが、この世界にその名を知るものはほとんどいない。
ただ一つ言えることは、異世界においても彼女のやることは変わらなかった、ということだ。
●
「やっぱりこの姿は不本意です」
ぷくっと頬を膨らませて不満を漏らしつつ、ラーラは巨大な一つ目巨人の前に立った。
ラーラが転生したのは、太陽の石という伝説の魔石に選ばれた少女だった。元からそういう少女がいたのか、このままの姿で現れたのか、彼女自身に知るすべはない。
ただ、すらっと背の高い姿を希望していたのに、それが反映されなかったことに関しては、はっきりと不満に思っている。
「と、そんなことを言っていられませんね」
そう言ってラーラは現実に立ち返る。
こちらに来てこの方、ラーラは太陽の石に導かれるようにして、多くの魔物と戦っていた。
魔法の研鑽を積む、という点でやることは変わらない。それに、力のない人々を守るということも前からやっていることだ。
(こちらの世界の記憶は……そうですね。やっぱり何も思い出せません。どんなお父さん、お母さんから生まれたんでしょう。いいえ、私にとっては前の世界のお父さんとお母さんしかいませんから、これで十分です)
そういう意味で、ラーラの意識は覚者として戦っていた時と何も変わらない。
それに、ペスカも一緒に来てくれているのだ。恐れるものなどあるものか。
巨人の振り下ろしてきた拳を難なく躱し、圧縮した空気弾をぶつける。太陽の石の力で彼女の魔力は大きく向上していた。
続けざまに火炎弾を放ち、巨人の動きを封じる。何せ、これ以上巨人の動きを許せば、人里に出てきてしまう。ようやく開拓が進んできたとのことだ。そんなことを許すわけにはいかない。
「これ以上、時間をかけるわけにはいきませんね。ペスカ!」
前の世界から一緒の時間を過ごしている親友に声を掛けると、ペスカは金色の鍵を取り出して魔導書の封印を解く。
魔力の消耗の激しい技だが、今は切り時だ。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
空中に描かれた魔法陣から巨大な炎の塊が現れる。
そして、薄れゆく意識の中でラーラは自分の勝利を確信した。
●
街に現れたヘルハウンドの襲撃を止めたのは、小人族の軽業師だった。
彼が光の粉を纏うと『実際に空を飛んでいるのではないか』と言われるほどの巧みな曲芸を行うことで有名だ。小人族はあまり自分たちの呼び名に頓着しない種族で、彼も一度名を問われて答えた『キセキ』という、どこの国の名前ともつかないなで呼ばれている。
魔物を止めたのは剣の技でも魔法の力でもなく、「友達になろうよ」という一言だった。
そして、キセキは大人しくなった魔物を殺せという声を尻目に、街の近くに住むドラゴンの所に向かうと言い出した。魔物がドラゴンに命じられてきたことを聞かされたからだ。
「飛べる魔物さんは飛べない魔物さんを運んであげて! 頑丈な魔物さんはトラップからみんなを守って!」
ドラゴンの谷にやって来たキセキは自らの身体を輝かせて、魔物たちに合図を送る。
気が付けばキセキが連れている魔物たちは、ちょっとした数になっていた。猜疑心の強い王に目をつけられなかったのは驚きと言ってもよい。
しかし、谷の主であるドラゴン相手にはそうはいかなかった。
現れたドラゴンは、自分へ逆らう魔物たちを不遜だとばかりに炎のブレスを吹き付けて来る。
「さすがに手ごわいや。でも、今度は僕が先頭切って戦う番だよ!」
そう言って、キセキは近くの植物を巨大化させてドラゴンを縛り上げる。
ドラゴンはそれを引きちぎり、キセキに鋭い爪を突き立てた。
キセキ1人では勝利は覚束なかったろう。だが、キセキには頼れる仲間がいた。
ユニコーンはキセキの傷を癒し、活力を与えた。
ヘルハウンドはキセキの足となり、戦場を駆け回った。
ゴブリンたちもちょこまか動いて、ドラゴンをかく乱した。
「よーし、みんないくぞ!」
そして、キセキの号令を発し、最後の一撃をドラゴンに叩き込むのだった。
「ふーん、魔王っていうのがいるんだね。そっちにもいかないと」
ドラゴンの傷を癒しながら、キセキは話を聞き出す。
どうやら最近復活した魔王の影響で、魔物たちも人間の領域に手出しをするようになっていたらしい。
だったら、魔王とも仲良くなりに行くだけだ。
キセキの旅はまだまだ終わらない。
●
「よし、じゃあみんなで王様に直談判に行こうぜ!」
ふらりとやってきた不思議な少年は、そんなことを言い出した。
対立する2つの村の間に立ち、仲裁を買って出るというだけでも随分と酔狂な話だろう。だが、話を聞いて根本の原因が王の課す重税にあると聞いてこれだ。
村人たちも、村の対立で引き裂かれそうになっていた恋人たちも開いた口が塞がらない。
しかし、少年はそんな彼らを引き連れて、意気揚々と王都に向かって旅を始めた。
「どうだ、分かったか! オレには神獣が付いてるんだぞ!」
顔を青痣だらけにして少年は笑う。その前にいる騎士団長もまた然り。
まぁ、これだけの人間が王の下へやってくれば、治安維持のために騎士がやって来るのは道理。そして、殴り合いの喧嘩が始まった。
喧嘩の中で少年は雷の獣を呼び出して、力を見せた。
最後には騎士団長と拳を握っての殴り合い。それで認められた少年は、王との面会を認めさせた。
「なあ、王様? なんで悪い事するんだ? 話してみろよ、聞いてやるぜ?」
この世界の歴史においても、ここまで明け透けな問いを投げたものはいない。
逆に怒りの言葉を向けようとした王の方が絶句してしまったほどだ。
「一度、みんなが喜ぶ事して見ろよ。怖がられるよりも『ありがとう』って言われる方が何十倍も嬉しいぜ? 王様がいい王様になってくれたらオレも嬉しいしさ!」
時を遡ること10数年前、若くして命を落とした成瀬翔という覚者は「誰とでも仲良くなれる力」を望んだ。
しかし実の所、彼はそのようなものを望む必要はなかったのかもしれない。
相手と本音でぶつかることが出来ることこそ、この少年が元々持っていた力なのだから。そして、その言葉は王の中にあった孤独を癒した。
それから、王は今までとは別人のように善政を敷くようになったという。
もちろん、国土が『神の御使い』の力によって豊かになったというのもあるだろう。また、今まで脅威であった魔物が国の守りに協力を始めたというのもあるかもしれない。
そして、件の少年の行方はそれ以降杳として知られていない。
あるものは、『神の御使い』と会った姿を見たという。
またある者は、炎の魔法使いや小人族の曲芸師と魔王の城に向かったともいう。
ともあれ、こうしてこの世界に平和な時代がやって来たのだ。
●
邯鄲の夢、と言う言葉がある。
昔の中国の若者が眠りについた夢の中で、栄耀栄華を極める。しかし、目が覚めるとそれは粟が煮えるまでの時間に見た夢でしかなかったというものだ。
人の世は儚い。
だが、覚者達は確かに1つの世界を救った。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
