≪嘘夢語≫国滅びバッドエンドの世界です
≪嘘夢語≫国滅びバッドエンドの世界です


●バッドエンド! 暴力の支配する世界で
「この種籾を村まで持って帰ってくれ……これは人間の希望……ぐふぅ!」
『気炎万丈』榊原・源蔵(nCL2000050)は種籾が入った袋を覚者に渡し、力尽きた。
 これをどうするか? それは貴方達次第――



■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:どくどく
■成功条件
1.この世界で生きる
2.なし
3.なし
 どくどくです。
 ポスト・アポカリプス大好き。

●説明っ!
 妖により日本は滅びました。政府は崩壊し、諸外国は日本を見捨てます。妖の渡航を恐れて日本から出る船や飛行機は撃ち落とされるようになりました。
 人々は妖を恐れ、村単位のコミューンに籠るようになります。と、言うよりはその程度の数しか生き残れなかったのです。食料の供給は立たれ、人々はいずれ来る餓死と妖に怯える毎日です。
 貴方達の立場は様々です。榊原の村の人間でもいいし、旅の覚者でもいいです。種籾を奪う悪党でも構いません。
 なおこの世界における種籾は、黄金と同価格です。生きるための希望とも言えます。
 善? 悪? それが必要な時代ではありません。食料を得なければ、明日には貴方が死ぬかもしれません。ですが、だからこそそれらの道を貫く事は美しくあります。
 どうするか? それは貴方が決めることです。

●登場人物
・榊原・源蔵(nCL2000050)
 PCに種籾を渡して死亡します。状況によっては妖化して襲い掛かってきます。
 村はそこから歩いて半日ほどに在ります。

・トラ型妖
 この辺りに出没する妖です。倒してもいいです。倒さなくてもいいです。
 ボス(ランク2)を中心として10体ほどのザコ(ランク1)がいます。ボスを倒すとザコは散り散りと去り、一時的にこの辺りの危険度が下がります。

・村人
 30人ぐらい。全員一般人。榊原の帰りを待っています。
 襲撃すれば、相応の食料が手に入ります。支配することもできます。

●場所状況
 滅びた日本。妖に交通網を破壊され、荒涼とした世界です。
 夢の中なので、世界観にそぐわなければ大抵のモノや乗り物はあるものとします。まあ、こんな世界なので車の移動は目立ちますが。

■エイプリルフール依頼について
この依頼は参加者全員が見ている同じ夢の中での出来事となります。
その為世界観に沿わない設定、起こりえない情況での依頼となっている可能性が
ありますが全て夢ですので情況を楽しんでしまいしょう。
またこの依頼での出来事は全て夢のため、現実世界には一切染み出す事はありません。

※要約すると夢の世界で盛大な嘘を思いっきり楽しんじゃえ!です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(2モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
5/8
公開日
2017年04月14日

■メイン参加者 5人■

『天を翔ぶ雷霆の龍』
成瀬 翔(CL2000063)
『天を舞う雷電の鳳』
麻弓 紡(CL2000623)
『願いの花』
田中 倖(CL2001407)


 荒涼とした世界。
 かつて人が住んでいたであろうマンションは墓標の様に静かに佇み、壊れた公園のブランコが風に揺れている。妖の進軍を示すようにアスファルトは所々砕け、抗戦の無意味さを示すように地面には赤黒いシミが散らばっている。
 人の文化はほぼ崩壊した。圧倒的な暴力。圧倒的な戦力。圧倒的な破壊。それを前に現代兵器すら押し返した妖達。覚者さえもその数で打ち破り、この国の中枢すら破壊する。そこまでして、妖達は支配しない。ただ壊すのみ。それだけが妖の欲望。
「ひっでーよなぁ」
 バイクを運転しながら『不屈のヒーロー』成瀬 翔(CL2000063)がそんな光景を見ていた。無人の街。無人の道。かつては賑わいがあっただろう住宅街は静かで、それが逆に暴力の爪痕を感じさせていた。響くのはただバイクのエンジン音だけ。燃料が尽きればこのバイクもただの鉄の塊となる。
「荒廃する世界、とか本の中みたいだ」
 バイクのサイドカーに座り、『導きの鳥』麻弓 紡(CL2000623)はそんな事を口にする。人間による視界が終わった世界。ポスト・アポカリプスと言われる物語はいくつか読んだことがある。核戦争、宇宙人の襲来、人工知能の暴走……。滅んだ後の世界で人間がどう生きるか。それがやってこようとは。
「まあ何とかなるだろう。とりあえずあのじーさんの情報では近くに集落があるらしいぜ。コレ、届けるついでに食料を分けてもらおう」
 翔が手にしているのは、源蔵からもらった種籾だ。土と耕具があれば、稲作ができる。食料が増えれば、餓死する人も減る。これは今の日本における希望なのだ。
「分けてもらえるといいけど」
 肩をすくめる紡。妖により荒らされたこの国に、食料は少ない。食料を運ぶ手段はなく、人は手持ちの食料で耐えるしかない。貴重な食料をわけてもらえるかどうか。
「へへ。コイツと交換してもらうのさ。夜も冷えてくるからな」
「毛皮……? さっき戦った鹿の妖の?」
 紡は相棒の強かさに舌を巻いていた。しばらく見ないうちに成長したなぁ。頼りになるというか。
「あそこだ」
 目印の看板を見つけた翔。バイクは唸りをあげてそちらに走る。


「止まりなさい。それ以上近づくと、攻撃を仕掛けますよ」
 翔と紡の足を止めたのは、『スーパー事務員』田中 倖(CL2001407)だ。村の入り口で銃を構え、バイクに乗る二人に警告をする。レザージャケットにモヒカン頭。そんなこの世界ならどこにでもいそうなモブスタイルである。異論は聞かない。
「俺達は旅のモノだ。榊原っていうじーさんからこの種籾を渡すように言われてきたんだ」
「怪しいモノじゃない……っていっても仕方ないかな、こんな時代じゃ」
 両手をあげ、翔と紡はバイクから降りる。榊原の名前に反応したのか、倖は驚きの表情を浮かべる。詳しく事情を聴いて、沈痛な声を上げた。
「そうですか……。事情は分かりました。とりあえず中に」
「俺達を信用するのか?」
「判断には悩みますが、貴方達は腕の立つ旅人のようです。今は少しでも戦力が欲しい所なので」
 倖の言葉に顔を見合わせる翔と紡。どうやら荒事の予感がする。
「傷、ない? あったら、治す」
 たどたどしく口を開き、桂木・日那乃(CL2000941)が二人に近づく。そのまま傷を癒すべく術を行使した。日那乃もこの村に雇われた旅人のようだ。今までは、妖に傷つけられた村人を癒していた。
「妖? この近くにいるのかよ」
「トラの妖。かずも多くて、大変」
「私が説明しますわ」
 割って入ったのは『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)。三角帽子にローブと言う魔女の格好だ。時折突き刺さる村人の視線。ラーラはそれを悲しくも思いながら、しかし村人に恨みを持つことはない。
「なんだか嫌われているみたいだね」
「お気になさらずに。私が生まれる前の確執です。こんな時代になった以上、お互い協力すべきかと」
 かつて魔女と言うだけで迫害されたラーラの先祖。それゆえにラーラは村から離れて暮らさざるを得なかった。強い迫害を受けたこともあるが、それでも人を恨むつもりはない。
「トラが妖化した群れがこの村近くに巣食っています。退治するには覚者の数が足りない状況なのです」
「ええ。できればお二方にはその協力をしていただければ。榊原さんがお亡くなりになった以上、村の防衛力は大きく減ってしまいました」
 ラーラと倖のお願いに、翔は迷うことなく頷く。
「任せときな! 悪い奴を倒すのはヒーローの務めだ!」
「しかたないなぁ。ボクも手伝うよ」
 翔がやるなら仕方ない、とばかりに紡も頷いた。気のりはしないが、仕方ない。
「ん。じゃあ、わたしも行く。治療、するね」
 治療をある程度終えた日那乃も、その戦いに同行すると挙手する。妖との戦いともなれば、けが人は増えるだろう。傷を癒せる日那乃の存在はありがたい。
 こうして結成された覚者チーム。彼らは一路、トラの妖が巣を作っている場所に向かうのであった。

(ふっふっふ。上手く妖を排除できれば次は……)
 そんな中、倖が静かに眼鏡を光らせていた。


「夢見がいないと、妖を探すのがこんなに大変だなんてな……」
 三体目のトラ妖を倒した後に翔がぼやく。FiVEがまだ健在だったころは、夢見の事前情報を元に作戦を立てていたのだが、それがない以上は足で探すしかない。それも『この辺り』という大雑把な範囲からだ。
「情報って大事だね」
 ペットボトルの水を口に含みながら紡が答える。この水とて生きるために重要な要素だ。渇きを癒す為だけではなく、傷口の消毒にも必要になる。まだトラの妖はいるのだ。節約しなくてはいけない。
「怪我、治す。トラはまだ、いるから」
 日那乃は戦いの傷を癒しながら周囲を警戒する。癒しの術とて無限ではない。過度の回復で無駄に消費すれば、いざというときに回復が出来なくなる。しかし回復を渋れば死に至る傷を受ける事もある。その配分は重要だ。
「こんな世の中がいつまで続くんでしょう……なんて今は考えても仕方ないですね」
 度重なる戦い。絶望しか見えない未来。それはラーラの心を削っていた。味方のいない孤独な戦い。今共にしている覚者達も、時が来れば別れることになる。今は生き残ることが出来ても、この先どうなるかわからない。
「ええ。今は生きるために頑張りましょう。生きるために」
 頷く倖。法は死に、己を守ってくれるものは何もない。ただ覚者の力の身が身を守ってくれるのだ。ならば生きるためにこの力を使うのは間違いではない。……皮肉な話だ。こんな時代になったからこそ、憤怒者の怒りは消え去ったのだから。
 会話も少なく荒れた街を歩く一行。目的地は不明だが、歩く先に妖がいることは建物の傷と死体の多さから理解できる。そして――
「いたぞ。おそらくあればボスだ」
「ランク2って所だね。取り巻きに六体ほどほど」
 幸運なことに、先に気づいたのは覚者達の方だった。翔と紡と倖の守護使役達『空丸』『トゥーリ』『真鴨』で周囲を警戒しており、風の向きや慎重さなどが功を為したのだろう。運が悪ければこちらが不意打ちを受けていたかもしれないのだ。
 作戦は? ラーラがあそこの高台まで回り込んで遠距離攻撃で不意打ち。後は一気に叩く。言葉を出さすに翔の送受信・改で作戦を行う覚者達。そのまま頷き、移動を開始する。ラーラの『ペスカ』が足音を消し、気付かれずに移動する。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を……イオ・ブルチャーレ!」
 戦いの開幕を告げたのはラーラの炎。紅き炎を手のひらから放ち、トラ妖の群れに打ち込んだ。炎は獅子の姿となり妖達を蹂躙するように駆け回る。燃え盛る轟音は獅子の咆哮の如く。妖の苦痛の声さえ消し去って、炎の獣は君臨する。
 妖達に休む間を与えず、ラーラは持っていた本を開く。不意打ち成功の初手に全力を尽くすのは戦いの基本。戦いの流れをこちらに呼び込むのだ、生まれた炎の弾丸が連続で妖に打ち込まれた。熱き雨が妖の体力を奪っていく。
「今です!」
「ではいきますか。ヒャッハー!」
 まるで人が変わったかのように――っていうか実際に変わっているのだが――倖が叫び声をあげて妖に突撃する。イカレた時代の一般モブの如く舌を出し、刃物を手にして襲い掛かった。あの優しかった事務員がこのようなkとに。これも時代のサガか。
 倖は多くの闘い(と言う名の略奪)を経験しているのか、不意打ち時の動きは機敏。ラーラの先制で怯んだ隙を逃すことなく、トラの死角から飛びかかる。ブーツダガーを煌めかせ、獣の力でトラを刻む。返り血でレザージャケットが血に染まった。
「ケヒャヒャヒャ! 弱い奴に価値はないんだよぉ!」
「怪我したら、言ってね」
 翼を羽ばたかせて宙に浮き、日那乃が水の術を行使する。不意打ちに成功したとはいえ、それで瓦解する妖ではない。ランク2を中心に反撃に転じてくる。その爪は覚者の守りすら易々と引き裂くだろう。怪我を治す回復屋として、ここが気合の入れどころだ。
 イメージするのは水の中。守護使役『マリン』の力で水中に潜っている時の不思議な浮遊感。その時の心境を保ったま、日那乃は水の術を行使する。半トランス状態で放たれた癒しの水術が、覚者達の傷を癒していく。
「ごはんと引き換えに、治す」
「結構がめつい!? いや、オレだってご飯欲しいけどさ!」
 こんな時世だ。労働の報酬を求めることは当然と言えよう。しかしご飯と引き換えなら癒してもらわなくても……と少し悩む翔であった。ヒーローは見返りを求めないが、生きる為にはご飯が必要なのだ。
 頭を振って戦闘に集中する。『DXカクセイパッド』から生み出された霊刀を手にして、トラ達の前に立つ翔。霊刀が纏うは雷。翔が刀を一振りすれば、そこから放たれた稲妻が戦場を荒れ狂う。それは数多の龍が戦場を進むが如く。
「後ろは任せたぜ、紡!」
「分かったよ。安心して戦ってきな」
 翔の背中を守るように移動する紡。どう動けばいいか、などと言葉を交わす必要はない。翔がどう攻めるかは、紡には分かっているのだから。どう動き、どう攻め、そしてどこをフォローすればいいのか。長く付き合ってきた相棒だから。
 翔の稲妻に合わせるように紡も術を放つ。神具の先に集まる蒼い稲妻。稲妻は鳳凰の姿を取り、その翼を広げた。その羽ばたきは雷轟。その飛翔は紫電。翔の龍と紡の鳳凰。二つの稲妻が荒れ狂うように駆け巡る戦場は、暴威ではあったが幻想的でもあった。
 不意打ちの勢いを殺さぬままに覚者達はトラの妖を攻める。取り巻きのランク1を一気に滅ぼし、頭領のランク2に襲い掛かった。
「流石に一味違うぜ!」
「このまま一気に打ち砕きましょう!」
「傷、治すから」
 ランク1とは違い、その一撃は重い。しかし戦い慣れた覚者達は確実に妖の体力を奪っていた。日那乃の回復を起点とし、術式と体術を駆使して攻め立てる。そして――
「これでトドメだぁ! シャアアアアアア!」
 蛇のような声をあげて倖の蹴りがトラの頭領の首を刎ねた。回転して飛ぶ首が紙面に落ちる。それを踏みつけながら笑みを浮かべた。
「なんでぇ、大したことなかったなぁ」
「……なんでこの人こんなにガラが悪いんだ?」
「この世界のモブ、こんな感じっていうイメージ、だから?」
 倖の態度を前に、ひそひそと呟き合う覚者達。
 何はともあれ、妖のボスは討たれた。これで周囲の妖の活動も減少するだろう。


 帰り際、翔は可能な限りトラの妖を減らしたかったが、水と食料の関係で断念せざるを得なかった。
「逃げたかもしれないしなぁ。仕方ないか」
 自分を納得させるように言って、帰路につく。
 村は覚者の無事に喜ぶ。そしてトラを倒せたという報を聞いて、その喜びは倍増した。
「おお、あのトラを!」
「私らなど、怖くて逃げるしかできなかったのに!」
「いやはや。やはり覚者は違う。なんと素晴らしい御方達だ!」
 脅威が去ったことに対する安堵と、自分達を助けてくれた英雄。それに希望と言う光を見ていた。
「皆さん……」
 村人に迫害されていたラーラは、魔女の力が受け入れられたことの喜びで涙を流す。皮肉な話だ。力により忌み嫌われたのに、その力を行使して受け入れられるとは。
「あー。うん。それで申し訳ないんだけど、食料とかを分けてほしいんだ。報酬と言うかなんというか」
「ええ、構いません。私達の備蓄から幾分かお分けしましょう」
 村人は食糧庫に覚者を案内し、そこから非常食の箱を持ってくる。これでしばらくは餓死することはないだろう。だが――
「足りませんねぇ。もしかしてこれは一人分なのですか? それでも足りないのですが」
 眼鏡の縁を押さえて、倖が告げる。その圧力に押されるように、村人は答えた。
「いえ。しかしこれ以上は……我々の分もありますので」
「貴方達の分? 私達が妖を退治しなければ死んでいたのですよ。なら餓死しても構いませんよね?」
「そんなご無体な!」
「ああ、後お菓子が食べたいですね。あるならそれを持ってくれば勘弁してあげましょう。無いのなら……貴方達を狩って楽しむとしましょうか」
「待てよ!」
 倖の前に立ちふさがる翔。村人を脅迫する態度に、義憤を燃やしたのだ。
 立ちふさがったのは翔だけではない。相棒の紡と、そしてラーラも立ちふさがる。
「正義の味方気取りの子供たちが煩いですねぇ。
 貴方達も、お腹が空くでしょう? こんな時代です。世の中、上手く渡った者勝ちなのですよ。覚者の力を使い、腹を満たす。弱肉強食は余の摂理なのです」
 笑みを浮かべる倖。しかしそれを突っぱねるように翔は手を祓った。
「確かにお腹は空くさ。だからと言って、こんなことは許されない!」
「全く、しょうがないな。ボクも手伝うよ」
 ため息をついて紡が翔の背を守るように立つ。こうなると思っていた、とばかりに肩をすくめて。倖の性格も何もかも、お見通しだったようだ。
「この村は私が守ります!」
 炎を携え、ラーラは倖を睨む。確かにこの村の人達からいい感情は向けられなかった。だけど恨みはしなかった。いつか和解できると信じていた。だからこの村は守る。いつか手を取りあえる日が来ると信じて。
「ん。ごはんと引きかえに、だれでも治す、から」
 中立の態度をとると日那乃は少し離れたところに立つ。正義や悪は関係ない。日那乃にとって重要なのは、人を癒すこと。戦いが始まれば、両方癒すつもりだ。
「歯向かうというのなら受けて立ちますよ。返り討ちにして差し上げます」
 構えを取り、挑発するように指を動かす倖。
 最後の闘いが始まった。

「まさか、この私がこのような子供にぃぃぃぃぃぃ! あぶばぁ!?」
 そして終わった。


 荒れ果てた町の中をサイドカー付きのバイクが走る。
「次はどこに行く?」
「そうだね。翔の行きたい所でいいよ」
 翔と紡は特に行先もなくバイクを走らせていた。
「俺さ。妖を全部倒したい。この国に平和を取り戻したいんだ」
 ――それは途方もない事だった。圧倒的な力を持つ妖を倒し、平和を取り戻す。それを為すにはどれだけの力と時間が必要になるのか。それが可能なら、日本はこうなっていなかったのに。
「ふーん。じゃあ付き合うよ」
 それを理解しながら、紡は気軽に頷いた。そういうと思っていた、と言わんがばかりの顔で。
 バイクは走る。今は先の見えない道を。

「ラーラさん、麦が生えましたよ!」
「魔女の本の中に、植物の育て方の本があっただなんて……本当にありがとう!」
 ラーラは魔女の知識を生かし、村を復興させようと尽力していた。
 森に生きる魔女は森で生きる術を得ている。その中に農業のことが書かれた本があったのだ。その知識をもとに種籾を植え、育てた。その結果、小さな稲穂が顔を出したのだ。
 これらを刈り取り、増えた種籾をまた植える。こうして食料が増えれば、餓死する者がいなくなる。
「はい。頑張りましょう」
 笑みを浮かべるラーラ。先は長い。しかし希望は確かにあった。

「どこ、行こう?」
 いつの間にか日那乃の姿は消えていた。村人と覚者達の傷を癒した後に、お礼を言う暇も与えずにいなくなっていたのだ。
 無人の道を歩く日那乃。彼女が与えるのは癒し。傷ついた人がいればそこに現れ、傷を癒して去っていく。
 そんな日那乃の行動から、彼女の事を癒しの聖女と呼ぶものが現れる。噂は少しずつ広がり、その噂が希望となって広がっていく。
 そしてまた、今日も日那乃は誰かを癒していた。

 妖の暴威により引き裂かれた日本。
 しかし希望は、確かに存在していた。


「ああ、よく寝た」
 倖は軽く伸びをして寝床から出た。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

 良い悪夢(ユメ)見れたかい?




 
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