【地下闘技】地下闘技場脱出作戦
●これまでのあらすじ
覚者を戦わせ賭け事を行ない莫大な利益を得ていた神秘マフィアを一斉検挙すべく、ファイヴの覚者とAAAのスパイは闘技場の出場者とそのスカウトマンという立場で内部へ潜入。
ファイブ覚者たちはいくつかの分野でのし上がり、ある者たちはチーム戦の優勝者としてボスの警備員に徴用され、ある者は個人戦を勝ち抜いて御前試合に招集され、またある者たちは健全な闘技場を営むアリーナ運営を軌道に乗せ始めた。
そして今日は、御前試合の日。
『勝者――葦原!』
剣を振り抜き、相手の覚者を下した葦原 赤貴(CL2001019) 。
彼は刃にねっとりとついた血を払って手放した。
拍手の音がぱらぱらと浴びせられる。
檻で覆われたその外側には地下闘技場のスポンサーにあたるマフィア幹部や政治家、資産家たちが並んでいる。その護衛についているのはこれまでチーム戦や御前試合を勝ち抜いた覚者たちだ。
高額で雇われた彼らは地下闘技場の威光であり、最強の防衛戦力でもあった。
その中には酒々井 数多(CL2000149) 、御白 小唄(CL2001173) 、鹿ノ島・遥(CL2000227) らの姿もある。
彼らをスカウトしたAAAのスパイことユェンが、ボスにごまをするそぶりをした。
「どうですボス。俺の持ってきた練習はいい具合でしょう? ね、だから俺の雇い賃上げてくださいよ」
低俗なふりをする。
侮られるように誘導する。
ボスはでっぷりとした巨漢だった。ワイングラスを飲み干すと、背後に放る。割れるグラスの音と共に、周囲の拍手は止まった。
「ご苦労。実にいい試合だった。少年、貴様はこれからもこのフィールドで戦い続けるつもりかね」
「……」
鋭い目で見返す赤貴。
ボスはそれを肯定ととったか、立ち上がって言った。
「しかしここで終わりだ。貴様は勝ちすぎた。始末しろ」
檻が開き、護衛のために固められていた覚者たちが放たれる。
戦闘を終え満身創痍の赤貴に、無数の覚者が襲いかかる。
「ちょ、ちょっとボス! どういうつもりなんです!?」
掴みかかるユェンに、ボスはうっとうしそうに言い放った。
「奴に払うファイトマネーはないと言ったんだ。今後の金儲けで有効に使わせて貰うよ」
「……その言葉が聞きたかった」
振り込まれた斧の刃をあろうことか拳で受け止めた遥が、ギラリと目を光らせた。
一方では巨大な刀を艶めかしい刀で受け止める数多。
「証拠は上々。自白も完璧。後は全員たたきのめすだけよね」
「ようやく、『やりたいこと』ができます!」
ガントレットで地面を殴りつけた小唄が、飛来した術式弾を衝撃で消し飛ばした。
あがる黒煙。
額に青筋を浮かべるボス。
「……鼠どもが。全員殺せ!」
一方その頃、地下闘技場の外では。
「おとんを殺すは娘の勤め。ほな、いってみよーかい」
眼鏡を光らせた少女がパチンと指を鳴らした。
アリーナからかき集めた少女ファイターたち。それに混じって、岩倉・盾護(CL2000549) や神室・祇澄(CL2000017) 、御影・きせき(CL2001110) や天楼院・聖華(CL2000348) たちが完全武装で構えている。
ドアを蹴り放つ聖華。
「もう演技をする必要もないよな! 魔法少女あらため正義のヒーロー、天楼院聖華! 全員お縄をちょうだいするぜ!」
最終任務。
闘技場の一斉検挙。
クリア条件は護衛覚者集団の壊滅。
バトル、スタート。
覚者を戦わせ賭け事を行ない莫大な利益を得ていた神秘マフィアを一斉検挙すべく、ファイヴの覚者とAAAのスパイは闘技場の出場者とそのスカウトマンという立場で内部へ潜入。
ファイブ覚者たちはいくつかの分野でのし上がり、ある者たちはチーム戦の優勝者としてボスの警備員に徴用され、ある者は個人戦を勝ち抜いて御前試合に招集され、またある者たちは健全な闘技場を営むアリーナ運営を軌道に乗せ始めた。
そして今日は、御前試合の日。
『勝者――葦原!』
剣を振り抜き、相手の覚者を下した葦原 赤貴(CL2001019) 。
彼は刃にねっとりとついた血を払って手放した。
拍手の音がぱらぱらと浴びせられる。
檻で覆われたその外側には地下闘技場のスポンサーにあたるマフィア幹部や政治家、資産家たちが並んでいる。その護衛についているのはこれまでチーム戦や御前試合を勝ち抜いた覚者たちだ。
高額で雇われた彼らは地下闘技場の威光であり、最強の防衛戦力でもあった。
その中には酒々井 数多(CL2000149) 、御白 小唄(CL2001173) 、鹿ノ島・遥(CL2000227) らの姿もある。
彼らをスカウトしたAAAのスパイことユェンが、ボスにごまをするそぶりをした。
「どうですボス。俺の持ってきた練習はいい具合でしょう? ね、だから俺の雇い賃上げてくださいよ」
低俗なふりをする。
侮られるように誘導する。
ボスはでっぷりとした巨漢だった。ワイングラスを飲み干すと、背後に放る。割れるグラスの音と共に、周囲の拍手は止まった。
「ご苦労。実にいい試合だった。少年、貴様はこれからもこのフィールドで戦い続けるつもりかね」
「……」
鋭い目で見返す赤貴。
ボスはそれを肯定ととったか、立ち上がって言った。
「しかしここで終わりだ。貴様は勝ちすぎた。始末しろ」
檻が開き、護衛のために固められていた覚者たちが放たれる。
戦闘を終え満身創痍の赤貴に、無数の覚者が襲いかかる。
「ちょ、ちょっとボス! どういうつもりなんです!?」
掴みかかるユェンに、ボスはうっとうしそうに言い放った。
「奴に払うファイトマネーはないと言ったんだ。今後の金儲けで有効に使わせて貰うよ」
「……その言葉が聞きたかった」
振り込まれた斧の刃をあろうことか拳で受け止めた遥が、ギラリと目を光らせた。
一方では巨大な刀を艶めかしい刀で受け止める数多。
「証拠は上々。自白も完璧。後は全員たたきのめすだけよね」
「ようやく、『やりたいこと』ができます!」
ガントレットで地面を殴りつけた小唄が、飛来した術式弾を衝撃で消し飛ばした。
あがる黒煙。
額に青筋を浮かべるボス。
「……鼠どもが。全員殺せ!」
一方その頃、地下闘技場の外では。
「おとんを殺すは娘の勤め。ほな、いってみよーかい」
眼鏡を光らせた少女がパチンと指を鳴らした。
アリーナからかき集めた少女ファイターたち。それに混じって、岩倉・盾護(CL2000549) や神室・祇澄(CL2000017) 、御影・きせき(CL2001110) や天楼院・聖華(CL2000348) たちが完全武装で構えている。
ドアを蹴り放つ聖華。
「もう演技をする必要もないよな! 魔法少女あらため正義のヒーロー、天楼院聖華! 全員お縄をちょうだいするぜ!」
最終任務。
闘技場の一斉検挙。
クリア条件は護衛覚者集団の壊滅。
バトル、スタート。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.護衛覚者集団の壊滅
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
とはいえパッケージシナリオではないので、参加者の入れ替えや定員割れにも対応しておりますのでお気軽にご参加ください。
●状況
地下闘技場の広いフィールドで、前回の個人戦優勝者とチーム戦優勝者たちが10人規模の覚者集団に囲まれています。
対してこちらは、外側から駆けつけたアリーナチーム及びショーバトルチームの混成部隊で突入。これらを殲滅します。
相手は取り囲んだつもりが挟み撃ちに遭っているので、状況的悠里はこちらにあるのです。
・前回シナリオ参加者に適用されるルール
シナリオ『【地下闘技】闘技場ハック計画』にて個人戦・チーム戦に参加したメンバーがこのシナリオにも参加した場合、内側から戦うメンバーとして固定されます。
特典として『不意打ち判定(戦闘開始時にだけこちらが2ターン分動ける)』を付与します。
参加していなかった場合も、描写はされませんが一応そこにいるものとして戦力が加えられます。
今回から参加したメンバーや、アリーナ・ショーバトル参加メンバーは外側から攻撃を仕掛けます。その場には十人規模くらいの追加戦力が存在していますので、戦闘でどうしても不利になるということはないでしょう。
●敵戦力
覚者10人の混成部隊です。
五行と因子はバラバラですがファイヴのトップ勢ちょい下くらいの戦力をもった覚者たちです。
雰囲気として刀使い、拳法使い、ガンマン、陰陽術士、西洋魔法使い、西洋騎士、ボクサー、鎧武者、そのた諸々といった具合です。
総合戦力では敵よりこちらが勝っているので、気軽に戦いたい相手と戦ってください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
8/8
8/8
公開日
2017年03月14日
2017年03月14日
■メイン参加者 8人■

●ラストバトルステージ
ドラムロールを想像できようか。
軽快なギターと、ロシア人ロックシンガーの声は?
結構。ならここから先は容易に想像できるだろう。
「オレたちを舐めすぎだ」
『歪を見る眼』葦原 赤貴(CL2001019)が地面に剣を突き立てるや否や、放射状に放たれる炎の波。
周囲を囲むファイターたちがひるむ一瞬の隙に『使命を持った少年』御白 小唄(CL2001173)は地面を殴って高く跳躍。
苦し紛れに放たれた魔法弾を半身ひねりで回避すると、鉄のナックルをはめたボクサーめがけて回し蹴りを繰り出した。
腕でガードするボクサー。
「覚悟しろ、悪党ども! 僕たちはファイヴのINVERSEだ!」
その横をなめらかにすり抜ける『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)。
斬りかかる雑兵たちの刃を踊るようにはじき飛ばすと、抜刀した鎧武者へとタックルをしかけた。
ただのタックルではない。刀を斜めに構えての体当たりだ。鎧武者は刀を交差して当てるようにしてガード。強烈な勢いに靴底が地面を長くこすったが、ステージ端でそれは止まった。
その背中を強く蹴りつけ、押し止めた者がいたからだ。
アリーナステージでレギュラーをはってきた少女ファイターたちである。
押し寄せる軍勢と呼ぼうか。それとも迫り来る波と表現するべきか。
無数のファイターたちが、闘技場のガードマンとして雇われていたファイターたちとぶつかり合う。
刃のぶつかる音。爆発音。銃声。その他全ての音がしたと思っていい。
かような現場で刀の柄を握り込む『sylvatica』御影・きせき(CL2001110)。左右を駆け抜けるファイターたちに一歩遅れるように意気揚々と歩き始めた。
「いよいよ親玉をやっつけるんだね。がんばろー!」
おー、と突き上げた腕……の上を飛び越えるようにファイターが飛んでいく。放物線を描いてだ。
ゆっくりと手を下ろす。
恐れからではないのは分かるだろう。なぜなら彼の赤い目が、オモチャを見つけた子供のように輝いているではないか。
両目に映るは野太刀を握って間合いのギリギリ外で立ち止まる男の姿。
きせきは刀を抜いて跳躍――した彼の鼻先を狙って放たれる弾丸。
テンガロンハットのガンマンが放ったものだ。
しかし弾はターゲットへは当たらない。空中に飛んで割り込んだ『献身なる盾』岩倉・盾護(CL2000549)が片手でキャッチしたからだ。
まるで野球のボールでも受け止めるように握り込み、着地する盾護。
ガンマンは二丁拳銃を抜いて連続射撃を加えるが、立ち上がった盾護は腕からシールドパックを展開。
まるで折りたたみ傘を開くように展開された超電磁フィルムが弾丸を一ミリ手前で制止させていく。
「盾護、頑張る。お前、逃がさない」
そんな盾護の後ろから滑り出る『正義のヒーロー』天楼院・聖華(CL2000348)。
同じくガンマンの後ろから飛び出してくる西洋騎士。
剣と剣がぶつかり合い、反発して火花を散らす。
「さあお嬢様、本気の俺を特等席で見せてやるぜ」
明後日の方向から飛んできたクナイを二本目の剣で打ち払い、聖華は振り返った。
弾かれ回転して飛んでいくクナイ。闘技場の柱に突き刺さる。
アリーナのオーナーにして地下闘技場オーナーの娘、眼鏡の彼女は壁に刺さったクナイを抜いて放り捨てた。
「これだからバトルステージはおもろいんよ。せやろ、ドスケベなねーちゃん」
「あらん、そんな呼び方心外よん♪」
宙返りをかけながら娘の頭上を飛び越える『悪意に打ち勝ちし者』魂行 輪廻(CL2000534)。
そのまま銃弾と刀が複雑に交差する中をアクロバット回転で駆け抜けていくと、状況に混乱していたファイターに組み付いた。組み付くといっても膝を首に搦めて身体を勢いよく捻ることで投げ飛ばすという荒技である。
「一人も逃がさないけど、最後も魅惑のショーにしてあげるから許してねん」
明後日の方向から飛んでくる氷の鳥抜き放ったメタルリボンで真っ二つに破壊すると、相手の陰陽術士へと向き直った。
「手加減はできそうにないわよん」
入り乱れる敵味方。
その中心で、『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227)は仮面を脱いで直立不動の姿勢をとっていた。
四方から襲いかかるファイターたち。
後頭部へと打ち込まれた鉄パイプ。胸めがけて突き出された金属バット。拘束しようと両腕にそれぞれ掴みかかる手。
遥はそれら全てを一瞬でカウンターした。
具体的に述べるにはかの一秒間を十倍にスロー再生せねばなるまい。
まず後方からの鉄パイプ。これを首から肩にかけての筋肉を『柔軟に硬化』させることで受け止めつつ、てこの原理で後ろ蹴りのエネルギーへと変換。蹴り飛ばす。更に前方に流れる肩の力を利用して、突き込む金属バットの先端に両手ごしに力を押し込む。相手の握力と腕力を超えて打ち込まれた突きが、自らの武器の柄を腹に打ち込まれるという形で伝達される。
更に彼の腕を掴んだ二人の腕を素早くねじり上げ、抵抗する力をそのまま利用して豪快に身体を上下反転させた。
腹を押さえて呻く二人と、頭を押さえて呻く二人のできあがりである。
拳法家がゆっくりと歩み出て、小刻みなステップを踏み始める。
「まるでカンフー映画だ。中国拳法家か?」
「いや、悪いが……」
足を開いて拳を打ち下ろし、堅牢な構えにシフトする。
「空手家だ。今日だけちょっぴり、ダーティーだけどな」
●戦いを楽しめ
章は区切っても時間は進まない。
ステップを踏む拳法家。空手の防御姿勢をとる遥。
にらみ合いと間合いの奪い合いはほんの三秒ほどである。
拳法家は一瞬で間合いを詰めて突きを繰り出してくる。
顔面めがけての突きを手のひらを当ててズラす。刃のように鋭い拳が、遥のこめかみをこすっただけで肉をそいでいった。直撃すれば死ぬ拳だ。
が、それは遥とて同じ。
「そこだ!」
相手の顔面めがけて拳を打ち込む。鼻を潰して連鎖的に眼球周辺の骨を砕くという禁じ手である。といっても『できるものならやってみろ』という禁じ手なのだが。
相手もすぐに対応した。交差した腕ごしに親指を突き出してくる。同じく遥も指を抜く。
喉を潰して殺す空手界きっての禁じ手だ。
にやりと笑う。遥はしかし相手の指を掴んで捻り、膝蹴りを交えて投げ飛ばした。
飛んでいく拳法家をよそに、きせきは刀使いと間合いを奪い合っていた。
刀は一撃必殺になりえる武器だが、基本的な有効射程は決まっている。
○○~○○センチまで。この前部分がゼロになることはないので、きせきで言えば約40から80センチといった所だ。普通よりも大きな刀を無理に使っているのでこの範囲は一般より短い。
が、それを補って余りあるほどに彼は自由だった。
「――!」
必殺の間合いを先に奪い、コンマ二秒早く剣を振り込む刀使い。
きせきはその剣をまるで避けること無く接近。右腕が飛んでいくが構うこと無く左手を相手の顔面に押しつけると壁際まで押し込む。後頭部を柱に叩き付け、伸ばした植物のツルで刀を右腕ごと引っ張ってくると、鎖鎌の要領で相手の額に叩き込んだ。
頭蓋骨と柱をを貫通する刀。
追って吹き出した炎が柱をめらめらと焼いていく。
否、柱は炎によってはじけ飛んだ。魔術師が放った火焔連弾ゆえだ。
まるで薙ぎ払うように放たれた弾を、巨大な銅鑼の裏に回り込んで防御する赤貴。
吊るしヒモを切って銅鑼をタイヤのように転がしつつ同時に走る。炎の弾が幾度となく銅鑼を叩いて轟音を鳴らした。
ステージを四分の一回転したところで銅鑼が回転をやめ、ぱたんと倒れる。
両手を上げて現われる赤貴……と見せかけて、剣は足下に刺さっていた。
振動が即座に伝わり、魔術師の足下から同じ剣の形をした岩が飛び出していく。
カタパルト発射さながらに吹き飛んだ魔術師がきりもみ回転して、一瞬だけ、宙を舞う輪廻の足場となった。
周囲から放たれる弾丸をリボンで弾き、更に跳躍。
陰陽術士が次々に札を活性化させて放ってくる。
最後には巨大な水の竜となって飛んだが、輪廻はそのことごとくをまるで遊ぶように回避していった。
いや、ねぶるようにとでも表現すべきだろうか。
男の情動をわきたてるような動きであらゆる攻撃を受け流し、そしてやがては陰陽術士の顎に中指が触れるのだ。
「とっておきのサービスよん♪」
瞬間、輪廻の姿が四つに分裂したかに見えた。
腕をへし折り、足の両膝を砕き、両耳をシンバルのように叩き、最後に胸を小指でツンとやったかと思うと、気づけば輪廻は陰陽術士の背後にいた。
振り返り、投げキスを一つ。
するとなんということか、陰陽術士の心臓部分にぽっかりと穴が空いて破裂したではないか。
陰陽術士が倒れて血の池を広げる。広がった池を撥ねさせながらボクサーがラッシュパンチを繰り出していく。
ラッシュをガントレットでガードしていく小唄。
隙を突いて顔面にパンチを繰り出すが、一発二発じゃまるで倒れない。同じく顔面に三発ほどパンチをくらう。
「へへ……」
顔を殴られた時。人は様々な感情を抱く。恐怖や怒りや焦りや、そして混乱。しかし小唄の抱いた感情は、きわめてシンプルな闘争本能だった。
獣のように笑うと、ボクサーの腹にパンチラッシュを叩き込む。
更に顔面にラッシュ。
反撃のボディーブローで倒れそうになるも、ギリギリで踏みとどまった。
「いい勝負、ですね!」
目を見開き、顔面めがけてパンチを繰り出す。
同じく彼の顔面へ繰り出されたパンチは空をきり、かくして頬を正確にとらえた小唄のパンチによってボクサーは吹き飛んでいった。
飛んできたボクサーを刀で受け止める数多。なに、想像力をはたらかせるほどの動きでは無い。リンゴをナイフで受け止めるあの曲芸と同じだ。
あの芸ではリンゴを足で踏んづけて切り裂きその場に捨てはしなかったろうが。
「私、この闘技場好きよ。命がけって、素敵じゃない」
鎧武者と間合いを取り合う。
踏み込んでからは一瞬ごとの読み合いである。
強引な切り込みを刀で弾き、上段打ちを更に弾く。
数多は火花の代わりに桜の幻影を散らしながら、秒速三十発ほどの斬撃を叩き込んだ。
そのうち二十九発は弾かれ。
一発は、相手の喉を貫いた。
たった一発で、決まる勝負である。
引き抜き、背を向ける数多。
視界にはガンマンが映った。次の相手か? 否、彼はお取り込み中の筈。
「盾護、お前、ボコボコ、決定」
割り込んだ盾護がガンマンの放った銃弾をガード。
ガンマンが散弾銃に持ち替えて射撃。弾は止まるが物理エネルギーが逃がせない。
思い切り吹き飛ばされるが、盾護はめり込んだ壁から自らをはがして再び構えた。
「盾護、負けない」
ガンマンがサブマシンガンに持ち替えて連射。盾護は負けじと相手にシールドバッシュを仕掛けにかかる。
タックル。しかし決定打となるタックルではない。彼が体当たりで組み伏せた所に、聖華が刀の柄でもって頭を打ち付けるというデュアルテイクダウンである。
立ち上がり、振り返る聖華。
「次はアンタだぜ」
聖華はスピンジャンプ。からの斬撃。
盾で防いだ西洋騎士は剣による反撃を試みるが、それは逆手に握った聖華の剣で防がれた。
ブレーキをかけながら着地。そうして出来た隙を突くように剣の先を突きだしてくる騎士に、聖華はギラリと目を光らせた。光ったのはそれだけではない。彼女の剣と魂もだ。
瞬光。
ストロボのような白い炎があがったつぎの瞬間には、聖華は剣を突き出して騎士と背中合わせになっていた。
「屠竜灰燼剣。終わりだぜ」
とん、と刀の柄を拳で叩くと、騎士はその場に崩れ落ちた。
騎士だけではない。ファイターたちが皆倒れていた。戦闘続行不能。ノックダウンである。
ぶん、と刀を投げる数多。
こっそりと逃げだそうとしていたボスの眼前に突き刺さり、ボスは悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。
「来て貰うぜボス。あんたにゃ現行法じゃ裁けない罪を償って貰う必要があるんでね」
ユェンが彼の前にかがみ込み、手錠をかける。
事態は既に収拾されつつあった。
後から詰めかけたAAAの非覚者チームがファイターたちを次々と拘束していく。
引っ張られていく父を見て、深呼吸をするカツミ。
ボスの娘にしてアリーナのオーナーである。ユェンは去り際、カツミや盾護たちを振り返った。
「俺の仕事はこれで終了だ。こちとら警察官じゃあないんでね、この先ここで何が起ころうがしったことじゃあない。アンタらで話し合いな」
不作法だが、彼なりの感謝の仕方なのだろう。
聖華はうーんといって背伸びをした。
「また依頼をこなす日々かー。目指せ最強、ってな!」
「今度も頑張る」
頷く盾護。
キャノピーとにらみ合って『やるか? お、やるか?』みたいな会話をする遥。
そんな中、きせきはふうと息をついた。
「この後はどうするの? 闘技場をアリーナにしちゃうとかかな」
「僕は出ませんからね! 絶対にごめんですよ!」
何かを察してぶんぶんと首を振る小唄。
対してカツミはその場に置いてあったステーキ肉を手づかみで頬張ると、ふた噛みで飲み込んだ。
「闘技場の元締めを潰したかて、ショーを楽しむ需要は消えんし、闘争を求めるやからも消えん。せやから、うちがもらう。うちは、おとんよりも上手な悪党になるで?」
「悪党……」
明確に嫌悪感を示す小唄に、カツミは挑戦的に笑った。
「恐い顔するなや。悪党ゆうても綺麗な悪党やで。人を喜ばすし幸せにもする。金は儲けるが儲けさせもする。うちが犯すんは法律とガッコのセンセの言いつけだけや。おとんは人の道まで犯したから豚箱に行ったんやし?」
「あら、私はそーゆーの大歓迎よ? なんならもとのままでも楽しめちゃうかも」
数多がチャーミングなしぐさで言うと、輪廻が割といい加減に『そーよん』と合いの手を入れた。
腕組みを解く赤貴。
「また闘技場として機能するなら、俺も歓迎だ。名を売るチャンスも増えるだろうしな」
そして、彼らは惨状のステージを下り、光さすフィールドへと帰っていく。
ステージに再びスポットライトが下りる日は、近い。
ドラムロールを想像できようか。
軽快なギターと、ロシア人ロックシンガーの声は?
結構。ならここから先は容易に想像できるだろう。
「オレたちを舐めすぎだ」
『歪を見る眼』葦原 赤貴(CL2001019)が地面に剣を突き立てるや否や、放射状に放たれる炎の波。
周囲を囲むファイターたちがひるむ一瞬の隙に『使命を持った少年』御白 小唄(CL2001173)は地面を殴って高く跳躍。
苦し紛れに放たれた魔法弾を半身ひねりで回避すると、鉄のナックルをはめたボクサーめがけて回し蹴りを繰り出した。
腕でガードするボクサー。
「覚悟しろ、悪党ども! 僕たちはファイヴのINVERSEだ!」
その横をなめらかにすり抜ける『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)。
斬りかかる雑兵たちの刃を踊るようにはじき飛ばすと、抜刀した鎧武者へとタックルをしかけた。
ただのタックルではない。刀を斜めに構えての体当たりだ。鎧武者は刀を交差して当てるようにしてガード。強烈な勢いに靴底が地面を長くこすったが、ステージ端でそれは止まった。
その背中を強く蹴りつけ、押し止めた者がいたからだ。
アリーナステージでレギュラーをはってきた少女ファイターたちである。
押し寄せる軍勢と呼ぼうか。それとも迫り来る波と表現するべきか。
無数のファイターたちが、闘技場のガードマンとして雇われていたファイターたちとぶつかり合う。
刃のぶつかる音。爆発音。銃声。その他全ての音がしたと思っていい。
かような現場で刀の柄を握り込む『sylvatica』御影・きせき(CL2001110)。左右を駆け抜けるファイターたちに一歩遅れるように意気揚々と歩き始めた。
「いよいよ親玉をやっつけるんだね。がんばろー!」
おー、と突き上げた腕……の上を飛び越えるようにファイターが飛んでいく。放物線を描いてだ。
ゆっくりと手を下ろす。
恐れからではないのは分かるだろう。なぜなら彼の赤い目が、オモチャを見つけた子供のように輝いているではないか。
両目に映るは野太刀を握って間合いのギリギリ外で立ち止まる男の姿。
きせきは刀を抜いて跳躍――した彼の鼻先を狙って放たれる弾丸。
テンガロンハットのガンマンが放ったものだ。
しかし弾はターゲットへは当たらない。空中に飛んで割り込んだ『献身なる盾』岩倉・盾護(CL2000549)が片手でキャッチしたからだ。
まるで野球のボールでも受け止めるように握り込み、着地する盾護。
ガンマンは二丁拳銃を抜いて連続射撃を加えるが、立ち上がった盾護は腕からシールドパックを展開。
まるで折りたたみ傘を開くように展開された超電磁フィルムが弾丸を一ミリ手前で制止させていく。
「盾護、頑張る。お前、逃がさない」
そんな盾護の後ろから滑り出る『正義のヒーロー』天楼院・聖華(CL2000348)。
同じくガンマンの後ろから飛び出してくる西洋騎士。
剣と剣がぶつかり合い、反発して火花を散らす。
「さあお嬢様、本気の俺を特等席で見せてやるぜ」
明後日の方向から飛んできたクナイを二本目の剣で打ち払い、聖華は振り返った。
弾かれ回転して飛んでいくクナイ。闘技場の柱に突き刺さる。
アリーナのオーナーにして地下闘技場オーナーの娘、眼鏡の彼女は壁に刺さったクナイを抜いて放り捨てた。
「これだからバトルステージはおもろいんよ。せやろ、ドスケベなねーちゃん」
「あらん、そんな呼び方心外よん♪」
宙返りをかけながら娘の頭上を飛び越える『悪意に打ち勝ちし者』魂行 輪廻(CL2000534)。
そのまま銃弾と刀が複雑に交差する中をアクロバット回転で駆け抜けていくと、状況に混乱していたファイターに組み付いた。組み付くといっても膝を首に搦めて身体を勢いよく捻ることで投げ飛ばすという荒技である。
「一人も逃がさないけど、最後も魅惑のショーにしてあげるから許してねん」
明後日の方向から飛んでくる氷の鳥抜き放ったメタルリボンで真っ二つに破壊すると、相手の陰陽術士へと向き直った。
「手加減はできそうにないわよん」
入り乱れる敵味方。
その中心で、『雷切』鹿ノ島・遥(CL2000227)は仮面を脱いで直立不動の姿勢をとっていた。
四方から襲いかかるファイターたち。
後頭部へと打ち込まれた鉄パイプ。胸めがけて突き出された金属バット。拘束しようと両腕にそれぞれ掴みかかる手。
遥はそれら全てを一瞬でカウンターした。
具体的に述べるにはかの一秒間を十倍にスロー再生せねばなるまい。
まず後方からの鉄パイプ。これを首から肩にかけての筋肉を『柔軟に硬化』させることで受け止めつつ、てこの原理で後ろ蹴りのエネルギーへと変換。蹴り飛ばす。更に前方に流れる肩の力を利用して、突き込む金属バットの先端に両手ごしに力を押し込む。相手の握力と腕力を超えて打ち込まれた突きが、自らの武器の柄を腹に打ち込まれるという形で伝達される。
更に彼の腕を掴んだ二人の腕を素早くねじり上げ、抵抗する力をそのまま利用して豪快に身体を上下反転させた。
腹を押さえて呻く二人と、頭を押さえて呻く二人のできあがりである。
拳法家がゆっくりと歩み出て、小刻みなステップを踏み始める。
「まるでカンフー映画だ。中国拳法家か?」
「いや、悪いが……」
足を開いて拳を打ち下ろし、堅牢な構えにシフトする。
「空手家だ。今日だけちょっぴり、ダーティーだけどな」
●戦いを楽しめ
章は区切っても時間は進まない。
ステップを踏む拳法家。空手の防御姿勢をとる遥。
にらみ合いと間合いの奪い合いはほんの三秒ほどである。
拳法家は一瞬で間合いを詰めて突きを繰り出してくる。
顔面めがけての突きを手のひらを当ててズラす。刃のように鋭い拳が、遥のこめかみをこすっただけで肉をそいでいった。直撃すれば死ぬ拳だ。
が、それは遥とて同じ。
「そこだ!」
相手の顔面めがけて拳を打ち込む。鼻を潰して連鎖的に眼球周辺の骨を砕くという禁じ手である。といっても『できるものならやってみろ』という禁じ手なのだが。
相手もすぐに対応した。交差した腕ごしに親指を突き出してくる。同じく遥も指を抜く。
喉を潰して殺す空手界きっての禁じ手だ。
にやりと笑う。遥はしかし相手の指を掴んで捻り、膝蹴りを交えて投げ飛ばした。
飛んでいく拳法家をよそに、きせきは刀使いと間合いを奪い合っていた。
刀は一撃必殺になりえる武器だが、基本的な有効射程は決まっている。
○○~○○センチまで。この前部分がゼロになることはないので、きせきで言えば約40から80センチといった所だ。普通よりも大きな刀を無理に使っているのでこの範囲は一般より短い。
が、それを補って余りあるほどに彼は自由だった。
「――!」
必殺の間合いを先に奪い、コンマ二秒早く剣を振り込む刀使い。
きせきはその剣をまるで避けること無く接近。右腕が飛んでいくが構うこと無く左手を相手の顔面に押しつけると壁際まで押し込む。後頭部を柱に叩き付け、伸ばした植物のツルで刀を右腕ごと引っ張ってくると、鎖鎌の要領で相手の額に叩き込んだ。
頭蓋骨と柱をを貫通する刀。
追って吹き出した炎が柱をめらめらと焼いていく。
否、柱は炎によってはじけ飛んだ。魔術師が放った火焔連弾ゆえだ。
まるで薙ぎ払うように放たれた弾を、巨大な銅鑼の裏に回り込んで防御する赤貴。
吊るしヒモを切って銅鑼をタイヤのように転がしつつ同時に走る。炎の弾が幾度となく銅鑼を叩いて轟音を鳴らした。
ステージを四分の一回転したところで銅鑼が回転をやめ、ぱたんと倒れる。
両手を上げて現われる赤貴……と見せかけて、剣は足下に刺さっていた。
振動が即座に伝わり、魔術師の足下から同じ剣の形をした岩が飛び出していく。
カタパルト発射さながらに吹き飛んだ魔術師がきりもみ回転して、一瞬だけ、宙を舞う輪廻の足場となった。
周囲から放たれる弾丸をリボンで弾き、更に跳躍。
陰陽術士が次々に札を活性化させて放ってくる。
最後には巨大な水の竜となって飛んだが、輪廻はそのことごとくをまるで遊ぶように回避していった。
いや、ねぶるようにとでも表現すべきだろうか。
男の情動をわきたてるような動きであらゆる攻撃を受け流し、そしてやがては陰陽術士の顎に中指が触れるのだ。
「とっておきのサービスよん♪」
瞬間、輪廻の姿が四つに分裂したかに見えた。
腕をへし折り、足の両膝を砕き、両耳をシンバルのように叩き、最後に胸を小指でツンとやったかと思うと、気づけば輪廻は陰陽術士の背後にいた。
振り返り、投げキスを一つ。
するとなんということか、陰陽術士の心臓部分にぽっかりと穴が空いて破裂したではないか。
陰陽術士が倒れて血の池を広げる。広がった池を撥ねさせながらボクサーがラッシュパンチを繰り出していく。
ラッシュをガントレットでガードしていく小唄。
隙を突いて顔面にパンチを繰り出すが、一発二発じゃまるで倒れない。同じく顔面に三発ほどパンチをくらう。
「へへ……」
顔を殴られた時。人は様々な感情を抱く。恐怖や怒りや焦りや、そして混乱。しかし小唄の抱いた感情は、きわめてシンプルな闘争本能だった。
獣のように笑うと、ボクサーの腹にパンチラッシュを叩き込む。
更に顔面にラッシュ。
反撃のボディーブローで倒れそうになるも、ギリギリで踏みとどまった。
「いい勝負、ですね!」
目を見開き、顔面めがけてパンチを繰り出す。
同じく彼の顔面へ繰り出されたパンチは空をきり、かくして頬を正確にとらえた小唄のパンチによってボクサーは吹き飛んでいった。
飛んできたボクサーを刀で受け止める数多。なに、想像力をはたらかせるほどの動きでは無い。リンゴをナイフで受け止めるあの曲芸と同じだ。
あの芸ではリンゴを足で踏んづけて切り裂きその場に捨てはしなかったろうが。
「私、この闘技場好きよ。命がけって、素敵じゃない」
鎧武者と間合いを取り合う。
踏み込んでからは一瞬ごとの読み合いである。
強引な切り込みを刀で弾き、上段打ちを更に弾く。
数多は火花の代わりに桜の幻影を散らしながら、秒速三十発ほどの斬撃を叩き込んだ。
そのうち二十九発は弾かれ。
一発は、相手の喉を貫いた。
たった一発で、決まる勝負である。
引き抜き、背を向ける数多。
視界にはガンマンが映った。次の相手か? 否、彼はお取り込み中の筈。
「盾護、お前、ボコボコ、決定」
割り込んだ盾護がガンマンの放った銃弾をガード。
ガンマンが散弾銃に持ち替えて射撃。弾は止まるが物理エネルギーが逃がせない。
思い切り吹き飛ばされるが、盾護はめり込んだ壁から自らをはがして再び構えた。
「盾護、負けない」
ガンマンがサブマシンガンに持ち替えて連射。盾護は負けじと相手にシールドバッシュを仕掛けにかかる。
タックル。しかし決定打となるタックルではない。彼が体当たりで組み伏せた所に、聖華が刀の柄でもって頭を打ち付けるというデュアルテイクダウンである。
立ち上がり、振り返る聖華。
「次はアンタだぜ」
聖華はスピンジャンプ。からの斬撃。
盾で防いだ西洋騎士は剣による反撃を試みるが、それは逆手に握った聖華の剣で防がれた。
ブレーキをかけながら着地。そうして出来た隙を突くように剣の先を突きだしてくる騎士に、聖華はギラリと目を光らせた。光ったのはそれだけではない。彼女の剣と魂もだ。
瞬光。
ストロボのような白い炎があがったつぎの瞬間には、聖華は剣を突き出して騎士と背中合わせになっていた。
「屠竜灰燼剣。終わりだぜ」
とん、と刀の柄を拳で叩くと、騎士はその場に崩れ落ちた。
騎士だけではない。ファイターたちが皆倒れていた。戦闘続行不能。ノックダウンである。
ぶん、と刀を投げる数多。
こっそりと逃げだそうとしていたボスの眼前に突き刺さり、ボスは悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。
「来て貰うぜボス。あんたにゃ現行法じゃ裁けない罪を償って貰う必要があるんでね」
ユェンが彼の前にかがみ込み、手錠をかける。
事態は既に収拾されつつあった。
後から詰めかけたAAAの非覚者チームがファイターたちを次々と拘束していく。
引っ張られていく父を見て、深呼吸をするカツミ。
ボスの娘にしてアリーナのオーナーである。ユェンは去り際、カツミや盾護たちを振り返った。
「俺の仕事はこれで終了だ。こちとら警察官じゃあないんでね、この先ここで何が起ころうがしったことじゃあない。アンタらで話し合いな」
不作法だが、彼なりの感謝の仕方なのだろう。
聖華はうーんといって背伸びをした。
「また依頼をこなす日々かー。目指せ最強、ってな!」
「今度も頑張る」
頷く盾護。
キャノピーとにらみ合って『やるか? お、やるか?』みたいな会話をする遥。
そんな中、きせきはふうと息をついた。
「この後はどうするの? 闘技場をアリーナにしちゃうとかかな」
「僕は出ませんからね! 絶対にごめんですよ!」
何かを察してぶんぶんと首を振る小唄。
対してカツミはその場に置いてあったステーキ肉を手づかみで頬張ると、ふた噛みで飲み込んだ。
「闘技場の元締めを潰したかて、ショーを楽しむ需要は消えんし、闘争を求めるやからも消えん。せやから、うちがもらう。うちは、おとんよりも上手な悪党になるで?」
「悪党……」
明確に嫌悪感を示す小唄に、カツミは挑戦的に笑った。
「恐い顔するなや。悪党ゆうても綺麗な悪党やで。人を喜ばすし幸せにもする。金は儲けるが儲けさせもする。うちが犯すんは法律とガッコのセンセの言いつけだけや。おとんは人の道まで犯したから豚箱に行ったんやし?」
「あら、私はそーゆーの大歓迎よ? なんならもとのままでも楽しめちゃうかも」
数多がチャーミングなしぐさで言うと、輪廻が割といい加減に『そーよん』と合いの手を入れた。
腕組みを解く赤貴。
「また闘技場として機能するなら、俺も歓迎だ。名を売るチャンスも増えるだろうしな」
そして、彼らは惨状のステージを下り、光さすフィールドへと帰っていく。
ステージに再びスポットライトが下りる日は、近い。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
