<初心者歓迎>ホワイト・アウト・サンド
●雪上の妖退治
「みんな、よく来てくれた。今回は妖発生地域での討伐任務に当たって欲しい。シンプルな内容だから、経験が浅くても迷わないはずだ」
中 恭介(nCL2000002)が提示したのは北陸地方の山岳地帯。未だ雪の積もる地域での妖討伐である。
「北陸地方には雪山を削って車道を通す習慣があるんだが、この車道に妖が発生してしまった」
出現する妖は雪の自然系妖、除雪機の物質系妖の二種だ。
雪妖は雪でできた二足歩行ゴーレムのような形状をしており、氷の槍を投げるなどして攻撃してくる。身体の雪が自在に変形するため物理攻撃が通じづらいようだ。
一方除雪機妖は四足歩行のサイのような形状で、体当たりが主な攻撃方法だ。こちらはエネルギーを屈折させるフィールドがはられていて術式などの特攻撃が通じづらい。
「気をつけるべきは相手の物・特防御のみで、他は深く心配する要素はない。
ルートは二通りあり、妖を逃がさないためにその両方から侵攻することになる。序盤はチームを二つにわけて、最後に合流して一気に挟み撃ちにするという作戦だ。では、健闘を祈る!」
「みんな、よく来てくれた。今回は妖発生地域での討伐任務に当たって欲しい。シンプルな内容だから、経験が浅くても迷わないはずだ」
中 恭介(nCL2000002)が提示したのは北陸地方の山岳地帯。未だ雪の積もる地域での妖討伐である。
「北陸地方には雪山を削って車道を通す習慣があるんだが、この車道に妖が発生してしまった」
出現する妖は雪の自然系妖、除雪機の物質系妖の二種だ。
雪妖は雪でできた二足歩行ゴーレムのような形状をしており、氷の槍を投げるなどして攻撃してくる。身体の雪が自在に変形するため物理攻撃が通じづらいようだ。
一方除雪機妖は四足歩行のサイのような形状で、体当たりが主な攻撃方法だ。こちらはエネルギーを屈折させるフィールドがはられていて術式などの特攻撃が通じづらい。
「気をつけるべきは相手の物・特防御のみで、他は深く心配する要素はない。
ルートは二通りあり、妖を逃がさないためにその両方から侵攻することになる。序盤はチームを二つにわけて、最後に合流して一気に挟み撃ちにするという作戦だ。では、健闘を祈る!」
■シナリオ詳細
■成功条件
1.妖の討伐
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
ちょこっとだけ補足をしますのでプレイングの参考にご覧ください。
●ルートA、B
ほぼ一本道のルートをA側とB側の両方から進んで攻撃していく作戦になっています。
道の両端はとっても高い雪壁に覆われており、横道にそれる心配はありません。
(この道はコンクリートのように硬くなった雪をカンナのように重機で何度も削って作った道です。毎年開かれ観光客も来たりするのですが、まだ一般公開前のため人もおりません)
足場はアスファルト道路となっており、ちょっと雪が残っていることはあるかもしれませんが足を取られるほどではないでしょう。
作戦ではメンバーを2チームに分けてあたります。
チーム分けは相談で決めて頂いても構いませんし、『おまかせ』と書いて頂ければ綺麗な形でチーム分けを行ないます。
●妖
道中二種類の妖が無数に出現します。種別と攻撃方法を紹介します。
・雪妖
自然系ランク1
氷の槍:特遠単
雪で包む:特近単【凍傷】
・除雪機妖
物質系ランク1
突撃:特近単
サイクルアップ:強化【物攻アップ】
作戦は前後で二つのパートに分かれるはずです。
襲いかかってくる妖を倒しながらごりごり進む前半パート。
挟み撃ちで一気に残りの妖を殲滅する後半パートです。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
4/6
4/6
公開日
2017年03月13日
2017年03月13日
■メイン参加者 4人■
●立山ホテルと雪上車
呼吸だけで身が凍るような雪景色。
右も左も空の色すら真っ白な中で、『鮮血の亡者』杠 一臣(CL2001571)は堂々とたたずむホテルを振り返った。
さほど大きな建物では無いにもかかわらず、人里から大きく離れたこの場所では恐ろしく存在感を放っている。
「こんな時代でもしっかり運営できているのだから、驚きですね」
「……え、うん。はい」
接し方を探るような調子で頷く大辻・想良(CL2001476)。さっきまで守護使役を会話をしていたようで、どこかそわそわとしていた。
面識が少ないせいか会話もやはり少なく、寒空で数分ほど無言のまま過ごした頃になって、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と『自殺撲滅委員会』神々楽 黄泉(CL2001332)がホテルの中から出てきた。
「今回はこの四人で作戦にあたるみたいですね」
「六人じゃ、ないの?」
黄泉は状況に疑問がある、というよりは会話の隙間を埋めるためといった調子で合わせてきた。現に斧の素振りを始めている。
一臣は頷いて手帳を開いた。
「ボクと大辻さんはそこの道路から出て上側から侵攻。ラーラさんと神々楽さんは……」
脚部がキャラピラになった重機を見上げるラーラ。
「この車両で下側ルートから侵攻します。今回はメンバーが足りないので、一定以上ダメージを受けたら撤退しましょう。敵の全滅は難しくないでしょうけれど、念のために」
「雪の谷。ふしぎ」
話の流れをぶった切って語る黄泉。
ただでさえ雪の多い地域の、それも万年雪が残るような山中である。十メートルはゆうに超えるような積雪が地層を作り、硬い『雪の岩盤』ともいうべき地形を生成している。
そんな地層をブルトーザーやショベルカーを使ってカンナのように削っていき、二車線道路なみの谷を形成するのがこの山での常識だという。
「人の生み出す自然の神秘……ですか。なんだか、矛盾してますね」
雪の地層を撫でる想良に、一臣が穏やかに笑いかけた。
「人も自然の一部ですよ。動物が巣や道を作るように、これもまた大自然の生み出した光景ということなのでしょう」
それから、三十分後
一臣は両目を見開いて氷の槍を殴りつけていた。
血まみれの拳が氷塊を砕き、赤く散った滴が周囲の雪壁を塗らしていく。
「わらわらと、つぶしがいがありますね……!」
いびつに組み合わさった雪のバケモノが、地面や雪壁から氷の槍を生成しては投げつけてくる。
一臣はそれを右へ左へかわし、そして時には殴りつけて破壊しては突き進んでいく。
普段のおっとりとした、言い方を選ばないならばジメジメとした雰囲気はどこかへ消え失せ、まるで嫌いなノートを引き裂くような強引さで雪の妖を踏みつぶす。
彼の顔面に組み付いて呼吸を止めにかかる雪妖も、加熱させた手のひらで掴み取り、引きはがしてから真っ二つに引き裂いた。
除雪機の妖がガタガタを身体をゆすりながら接近してくる。
一台の除雪機が妖化したというよりは、ばらばらに砕け散ってパーツごとに妖化した雰囲気だ。
「血が見られないのが残念ですが……まあいいでしょう」
エンジン音めいたうなりを上げて突撃してくる除雪機妖を靴底で迎え撃つと、強引に蹴って突き飛ばした。
弧を描き、バウンドしながら転がる除雪機妖。
戦いの強引さに一瞬ひるむ様子を見せつつも、妖たちはそれが本能だとばかりに一臣に群がっていく。
「一旦、下がってください」
想良が術式形成を開始。両手を高く翳すと、ばちばちと走る電流が雲を作り始めた。
大きく広がっていく雲が雪妖の群れを覆っていく。
めいっぱいにエネルギーがチャージされた雲は表面から青白い電流を漏らし、ばちばちと音をたて始める。
そうしている間にも妖たちは距離をつめ、想良を亡き者にせんと駆け寄ってくる。
距離にして10メートル。すぐに5メートル。
もうじき1メートル。
雪でできた腕が想良の顔に伸びたその時。
「いまっ……!」
両手を振り下ろし、たまったエネルギーを開放させた。
周囲に激しい電流がほとばしり、妖たちが次々とはじけ飛んでいく。
これひとつで随分気力を消耗するものだ。もう何発売ったか分からない。振り返れば、来た道に妖の残骸が無数に散らばっていた。
ふうふうと粗い呼吸を整え、深呼吸。
吸って、吐く――寸前に除雪機妖がぶつかってきた。妖の残骸の紛れて接近していたのだ。
想良は一瞬宙を舞い、雪壁に激突。
地面を転がるも、駆け寄ってくる雪妖たちめがけて電撃を放出。
腕から放たれた電撃が雪妖を次々に爆殺していくなか、一臣が除雪機妖へ強引にナイフを突き立てていた。
側面を掴み、引き裂くように払う。衝撃によって放たれた金属片が無数に飛び散り、後続の除雪機妖たちに突き刺さっていった。
すぐさま起き上がり、残った雪妖たちにエアブリットを打ち込んでいく想良。
「二人だけだと、やっぱりきついかな」
一方、下側ルート。
雪の谷を素直に通るには妖が多すぎるということで、いわゆる山部分をモービルでもって移動していたラーラと黄泉。
運転手に下ろされ、二人は谷底を覗き込んだ。
雪妖と除雪機妖が混ざってわらわらとうごめいている。
遠目には大きな石を裏返した時の虫さながらで、ラーラは若干引いていたのだが……。
「先に、行くね」
黄泉は虚空から巨大な斧を引っこ抜くと、おもむろに谷へとダイブした。
「ちーれつーぅ」
気の抜けた声。
爆発的な破壊音。
コンクリートさながらに固まった雪の地面を粉砕し、周囲の妖たちを丸ごと吹き飛ばしていく。
ぐるん、と斧を回転させ、持ち手を変えると大上段に振り上げる。
「よろーいどーぉしーぃ」
気の抜けた声。
爆発音。
振り下ろした斧の衝撃がそのままエネルギーの波となり、無数の妖たちをまたも吹き飛ばしていく。
木っ端みじんに砕け散る除雪機妖たち。
その一方で雪妖は砕けたそばからくっついて、今度はこちらの番だとばかりに黄泉へと群がっていく。
黄泉はこれで力押しが通じない相手が苦手だ。獣のような素直さの裏返しとして、考えてもわかんないものは考えない主義なのだ。
ゆえに、頭で動くタイプが必要になる。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を」
もう何十回繰り返したかわからないおきまりのおまじないが雪の壁に反響しては吸い込まれていく。
頭上から飛び降りるラーラは、無数に魔方陣を生み出しながら降下。
縦一列に並び柱と化した魔方陣を一斉に分解。炎の柱と換え、中から巨大な炎の獅子を出現させた。
「イオ・ブルチャーレ!」
獅子に食いつかれた雪妖は勿論、その風にあてられただけで雪妖はみるみる溶解し、跡形も無く消えていく。
圧倒的な、そして暴力的な光景であった。
小声で『おー』と呟く黄泉。
彼女の視線を受けてなんかの予感に身を震わせるラーラ。
こほんと咳払いをして、上方目指して歩き始めた。
「観光客の皆さんが訪れる場所となれば、妖を一体たりとも残せません。頑張りましょう!」
「わかった」
黄泉はうなずき。
「だから、あとでいまの、教えてほしい」
「えっ」
「ほしい」
「あの」
「おねがい」
ラーラはうーんと唸って目を瞑った。
ジャンル違いじゃないかなあとは、言いづらい雰囲気である。
さて、途中経過を語る時間だ。
一臣と想良による上側ルート、ラーラと黄泉による下側ルート。
双方からせめて挟み撃ちにする作戦だが、この利点は戦力バランスが偏っていてもいいという所にある。
戦力的にはいまひとつカードの足りない四人チームであっても、攻め方次第では妖たちを倒しきることも不可能ではないのだ。
そこへくると上側チームは、物特両刀で地道に対応する一臣と安定した全体攻撃とこまめな回復で戦線を維持する想良によって遅いながらも確実に妖たちを削っていくことができた。
その一方で物理一辺倒でひたすら薙ぎ払う黄泉と魔法専門でひたすら溶かすラーラの分担によってみるみる敵を削っていった。
そんなわけで、両メンバーが合流したのは予定地点よりもかなり上でのことになった。
「皆さん、ご無事ですか!」
右目に横ピースを翳すラーラ。
別にカワイイアピールをしているわけじゃなくて、円形魔方陣の柱やスクエア魔方陣のキューブや球形の立体魔方陣のごく小さいものを指の間に生み出して透かし見ることで、妖へのスカウター代わりとしているのだ。複数の立体魔方陣をこまかく切り替えながら精査する様子は、顕微鏡で菌類を観察するさまにちょっと似ていた。
一方で想良は『ていさつ』による俯瞰視点で妖の動きを観察しているが、どうやら挟み撃ちにあったことで混乱しているようだ。
「動きがめちゃくちゃになってる……今がチャンス、かもしれません」
「火力は充分です。せーので責め立てましょう!」
想良は頷いて脣星落霜の術式を練り上げ、ラーラもまた召炎帝の魔方陣を組み立てる。
一方で黄泉と一臣は群れの中に飛び込んでそれぞれのえものを握り込む。
「今です!」
一斉放火。
雪妖がたちまちのうちに溶けさるなかを、黄泉が斧のフルスイングを繰り出していく。
「ちょー、よーみくらー……っしゅ!」
ズンという地響きめいた音と共に粉砕される除雪機妖。
残った一体に加熱したナイフを突き立てとどめとばかりに踏みつける一臣。
「さて、これでなんとか完了……ですかね」
見回してもあらたな敵影はない。
このあと四人はあたりを一通り探索して妖の殲滅を確認してから、現場から撤収したのだった。
呼吸だけで身が凍るような雪景色。
右も左も空の色すら真っ白な中で、『鮮血の亡者』杠 一臣(CL2001571)は堂々とたたずむホテルを振り返った。
さほど大きな建物では無いにもかかわらず、人里から大きく離れたこの場所では恐ろしく存在感を放っている。
「こんな時代でもしっかり運営できているのだから、驚きですね」
「……え、うん。はい」
接し方を探るような調子で頷く大辻・想良(CL2001476)。さっきまで守護使役を会話をしていたようで、どこかそわそわとしていた。
面識が少ないせいか会話もやはり少なく、寒空で数分ほど無言のまま過ごした頃になって、『赤き炎のラガッツァ』ラーラ・ビスコッティ(CL2001080)と『自殺撲滅委員会』神々楽 黄泉(CL2001332)がホテルの中から出てきた。
「今回はこの四人で作戦にあたるみたいですね」
「六人じゃ、ないの?」
黄泉は状況に疑問がある、というよりは会話の隙間を埋めるためといった調子で合わせてきた。現に斧の素振りを始めている。
一臣は頷いて手帳を開いた。
「ボクと大辻さんはそこの道路から出て上側から侵攻。ラーラさんと神々楽さんは……」
脚部がキャラピラになった重機を見上げるラーラ。
「この車両で下側ルートから侵攻します。今回はメンバーが足りないので、一定以上ダメージを受けたら撤退しましょう。敵の全滅は難しくないでしょうけれど、念のために」
「雪の谷。ふしぎ」
話の流れをぶった切って語る黄泉。
ただでさえ雪の多い地域の、それも万年雪が残るような山中である。十メートルはゆうに超えるような積雪が地層を作り、硬い『雪の岩盤』ともいうべき地形を生成している。
そんな地層をブルトーザーやショベルカーを使ってカンナのように削っていき、二車線道路なみの谷を形成するのがこの山での常識だという。
「人の生み出す自然の神秘……ですか。なんだか、矛盾してますね」
雪の地層を撫でる想良に、一臣が穏やかに笑いかけた。
「人も自然の一部ですよ。動物が巣や道を作るように、これもまた大自然の生み出した光景ということなのでしょう」
それから、三十分後
一臣は両目を見開いて氷の槍を殴りつけていた。
血まみれの拳が氷塊を砕き、赤く散った滴が周囲の雪壁を塗らしていく。
「わらわらと、つぶしがいがありますね……!」
いびつに組み合わさった雪のバケモノが、地面や雪壁から氷の槍を生成しては投げつけてくる。
一臣はそれを右へ左へかわし、そして時には殴りつけて破壊しては突き進んでいく。
普段のおっとりとした、言い方を選ばないならばジメジメとした雰囲気はどこかへ消え失せ、まるで嫌いなノートを引き裂くような強引さで雪の妖を踏みつぶす。
彼の顔面に組み付いて呼吸を止めにかかる雪妖も、加熱させた手のひらで掴み取り、引きはがしてから真っ二つに引き裂いた。
除雪機の妖がガタガタを身体をゆすりながら接近してくる。
一台の除雪機が妖化したというよりは、ばらばらに砕け散ってパーツごとに妖化した雰囲気だ。
「血が見られないのが残念ですが……まあいいでしょう」
エンジン音めいたうなりを上げて突撃してくる除雪機妖を靴底で迎え撃つと、強引に蹴って突き飛ばした。
弧を描き、バウンドしながら転がる除雪機妖。
戦いの強引さに一瞬ひるむ様子を見せつつも、妖たちはそれが本能だとばかりに一臣に群がっていく。
「一旦、下がってください」
想良が術式形成を開始。両手を高く翳すと、ばちばちと走る電流が雲を作り始めた。
大きく広がっていく雲が雪妖の群れを覆っていく。
めいっぱいにエネルギーがチャージされた雲は表面から青白い電流を漏らし、ばちばちと音をたて始める。
そうしている間にも妖たちは距離をつめ、想良を亡き者にせんと駆け寄ってくる。
距離にして10メートル。すぐに5メートル。
もうじき1メートル。
雪でできた腕が想良の顔に伸びたその時。
「いまっ……!」
両手を振り下ろし、たまったエネルギーを開放させた。
周囲に激しい電流がほとばしり、妖たちが次々とはじけ飛んでいく。
これひとつで随分気力を消耗するものだ。もう何発売ったか分からない。振り返れば、来た道に妖の残骸が無数に散らばっていた。
ふうふうと粗い呼吸を整え、深呼吸。
吸って、吐く――寸前に除雪機妖がぶつかってきた。妖の残骸の紛れて接近していたのだ。
想良は一瞬宙を舞い、雪壁に激突。
地面を転がるも、駆け寄ってくる雪妖たちめがけて電撃を放出。
腕から放たれた電撃が雪妖を次々に爆殺していくなか、一臣が除雪機妖へ強引にナイフを突き立てていた。
側面を掴み、引き裂くように払う。衝撃によって放たれた金属片が無数に飛び散り、後続の除雪機妖たちに突き刺さっていった。
すぐさま起き上がり、残った雪妖たちにエアブリットを打ち込んでいく想良。
「二人だけだと、やっぱりきついかな」
一方、下側ルート。
雪の谷を素直に通るには妖が多すぎるということで、いわゆる山部分をモービルでもって移動していたラーラと黄泉。
運転手に下ろされ、二人は谷底を覗き込んだ。
雪妖と除雪機妖が混ざってわらわらとうごめいている。
遠目には大きな石を裏返した時の虫さながらで、ラーラは若干引いていたのだが……。
「先に、行くね」
黄泉は虚空から巨大な斧を引っこ抜くと、おもむろに谷へとダイブした。
「ちーれつーぅ」
気の抜けた声。
爆発的な破壊音。
コンクリートさながらに固まった雪の地面を粉砕し、周囲の妖たちを丸ごと吹き飛ばしていく。
ぐるん、と斧を回転させ、持ち手を変えると大上段に振り上げる。
「よろーいどーぉしーぃ」
気の抜けた声。
爆発音。
振り下ろした斧の衝撃がそのままエネルギーの波となり、無数の妖たちをまたも吹き飛ばしていく。
木っ端みじんに砕け散る除雪機妖たち。
その一方で雪妖は砕けたそばからくっついて、今度はこちらの番だとばかりに黄泉へと群がっていく。
黄泉はこれで力押しが通じない相手が苦手だ。獣のような素直さの裏返しとして、考えてもわかんないものは考えない主義なのだ。
ゆえに、頭で動くタイプが必要になる。
「良い子に甘い焼き菓子を、悪い子には石炭を」
もう何十回繰り返したかわからないおきまりのおまじないが雪の壁に反響しては吸い込まれていく。
頭上から飛び降りるラーラは、無数に魔方陣を生み出しながら降下。
縦一列に並び柱と化した魔方陣を一斉に分解。炎の柱と換え、中から巨大な炎の獅子を出現させた。
「イオ・ブルチャーレ!」
獅子に食いつかれた雪妖は勿論、その風にあてられただけで雪妖はみるみる溶解し、跡形も無く消えていく。
圧倒的な、そして暴力的な光景であった。
小声で『おー』と呟く黄泉。
彼女の視線を受けてなんかの予感に身を震わせるラーラ。
こほんと咳払いをして、上方目指して歩き始めた。
「観光客の皆さんが訪れる場所となれば、妖を一体たりとも残せません。頑張りましょう!」
「わかった」
黄泉はうなずき。
「だから、あとでいまの、教えてほしい」
「えっ」
「ほしい」
「あの」
「おねがい」
ラーラはうーんと唸って目を瞑った。
ジャンル違いじゃないかなあとは、言いづらい雰囲気である。
さて、途中経過を語る時間だ。
一臣と想良による上側ルート、ラーラと黄泉による下側ルート。
双方からせめて挟み撃ちにする作戦だが、この利点は戦力バランスが偏っていてもいいという所にある。
戦力的にはいまひとつカードの足りない四人チームであっても、攻め方次第では妖たちを倒しきることも不可能ではないのだ。
そこへくると上側チームは、物特両刀で地道に対応する一臣と安定した全体攻撃とこまめな回復で戦線を維持する想良によって遅いながらも確実に妖たちを削っていくことができた。
その一方で物理一辺倒でひたすら薙ぎ払う黄泉と魔法専門でひたすら溶かすラーラの分担によってみるみる敵を削っていった。
そんなわけで、両メンバーが合流したのは予定地点よりもかなり上でのことになった。
「皆さん、ご無事ですか!」
右目に横ピースを翳すラーラ。
別にカワイイアピールをしているわけじゃなくて、円形魔方陣の柱やスクエア魔方陣のキューブや球形の立体魔方陣のごく小さいものを指の間に生み出して透かし見ることで、妖へのスカウター代わりとしているのだ。複数の立体魔方陣をこまかく切り替えながら精査する様子は、顕微鏡で菌類を観察するさまにちょっと似ていた。
一方で想良は『ていさつ』による俯瞰視点で妖の動きを観察しているが、どうやら挟み撃ちにあったことで混乱しているようだ。
「動きがめちゃくちゃになってる……今がチャンス、かもしれません」
「火力は充分です。せーので責め立てましょう!」
想良は頷いて脣星落霜の術式を練り上げ、ラーラもまた召炎帝の魔方陣を組み立てる。
一方で黄泉と一臣は群れの中に飛び込んでそれぞれのえものを握り込む。
「今です!」
一斉放火。
雪妖がたちまちのうちに溶けさるなかを、黄泉が斧のフルスイングを繰り出していく。
「ちょー、よーみくらー……っしゅ!」
ズンという地響きめいた音と共に粉砕される除雪機妖。
残った一体に加熱したナイフを突き立てとどめとばかりに踏みつける一臣。
「さて、これでなんとか完了……ですかね」
見回してもあらたな敵影はない。
このあと四人はあたりを一通り探索して妖の殲滅を確認してから、現場から撤収したのだった。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし








