明日がいい日になりますように
【F村S2】明日がいい日になりますように


●ファイヴ村という歴史
 日本には、ファイヴ村という不思議な村がありました。
 そこでは人と古妖が仲良く暮らし、毎日が遊園地のような日々を過ごしています。
 この土地を支えた栄えある『管理者』たちは、毎月のように彼らに降りかかる苦難や新たなる挑戦に乗り出して、そのたびにひとつひとつ歴史を作っていったのです。
 ですが、それは永遠ではありません。
 手から飛び立つ鳥のように。
 彼らは彼らの力だけで動き出す時が来たのです。
 さあ、最後のお仕事です。
 これから沢山の苦難や挑戦が待っているであろう彼らに『役目』を与えてあげましょう。
 あなたの手から離れても、彼らが強くいられるように。


■シナリオ詳細
種別:シリーズ
難易度:簡単
担当ST:八重紅友禅
■成功条件
1.ファイヴ村の総仕上げ
2.なし
3.なし
 ファイヴ村にまつわるシリーズシナリオもいよいよ最後となりました。
 今後は皆さんは『名誉管理者』として名前が残り、再び村に来たときにはきっと歓迎されることでしょう。
 しかし彼らはもう充分に育ち、広がり、結束しました。自分の力で困難を乗り越えることができるでしょう。
 管理者である皆さんの最後の仕事は、この村の人々に役目を与えることです。

 なにげに王子の作った『騎士制度』が習慣として残っているので、村にいるNPCたちに『○○騎士』の称号と役目を与えましょう。
 自分が今まで「私の担当はここに違いない!」と受け持っていたお仕事を受け継がせるのです。

 そして、シリーズシナリオとしてお届けできるのもこれで最後となりますので、やり残したことがあったら今のうちにやっておきましょう。
 それでは。
 シリーズラストパートをお楽しみください。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
(0モルげっと♪)
相談日数
5日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
公開日
2017年02月22日

■メイン参加者 6人■

『田中と書いてシャイニングと読む』
ゆかり・シャイニング(CL2001288)
『希望を照らす灯』
七海 灯(CL2000579)

●さよならはファイヴ村、これからもファイヴ村
「皆グラス持ったー? それじゃあいくよー、王子ファイナルミッションにー、かんぱーい!」
 プリンス・オブ・グレイブル(CL2000942)はお城の大宴会場でビールジョッキを振りかざした。
 後ろには『THE PRINCE LAST DAY さらば王子』という映画の告知ポスターみたいなものが飾られていた。軽くダイハードをパクっていた。
 軽く一年にわたって急成長をとげたファイヴ村も、ついに管理者たちの手を離れるときが来た。
 最初に『王子マッチョマックス村』とかいう名前が誰も止めなかったせいでしばらく定着しちゃったのはいい思い出である。
 あと皆軽く忘れてるけど村長はプリンスということになっていた。役職名は『王子』である。
「というわけで、次の王子を選定するよ。ダラララララララ――ダンッ!」
 ドラムロールとめぐるスポットライト。二つのライトが交差して止まったのは、いそいそとテレビリモコンを隠す古妖リモコン隠しの上だった。
「おめでとー!」
 手作りの王冠とタスキ(『あんたが王子』って書いてある)をかけられ、ピンマイクを持たされるリモコン隠し。
 ついでにプリンスは『スーパー王子ゴッド王子ゴッド』とかいうタスキをかけられる。
「リモコン隠しはね、一番使いどころないからね。何も出来ないのが大事なんだよ」
 とにかくリモコンを隠したいと語るリモコン隠しの脇で、プリンスはスピーチを続けた。
「ここは竜が戦う場所じゃなくて、くらす場所でしょ。火を噴いたり飛んだりっていう便利さじゃなくて、暮らしたい民が来てやりたいことをさせるには、生まれついた能力なんて関係ないのさ。なにもできない民だからこそ、なんでもさせてあげられるニュー王子になれるのさ!」
 そして王子からはお手製『おうじさまスイッチ』を進呈された。
 人文字ずつボタンが書かれていて、押すと王子がおじぎしたりうきうきしたりしてくれるボタンである。
「余が帰るまでこのリモコンを隠しておくんだよ。それが最初の仕事だからね」
 後生にて、様々な暗号やトラップや陰謀が渦巻くお宝探しの結末が『段ボールで作ったオモチャ』になるフラグが今たった。

●古妖だって生きている
 いいヤツもわるいヤツもいて、話の通じるやつも通じないやつもいる。
 良くも悪くも偏見をもたれていて、時にはいたずらに利用されることもある。
 それは古妖をさす言葉でもあり、人間をさす言葉でもあった。
 なればこそ。
「古妖のみんなが社会に認められて、自分らしく生きられるように、私たちはこれからも橋渡しを続けていかなきゃいけないんだよ」
 『天使の卵』栗落花 渚(CL2001360)は絵本のような優しい引き継ぎマニュアルを逆さに持つと、副村長に突きだした。
 色濃いメンバーに押されて存在を忘れていた人も多いという、ファイヴ村の初期メンバーである。ホームレスすれすれの生活から始めはや一年である。
「古妖はまだ偏見をうけてるし、まだ社会進出を受け入れられる時期じゃないと思う。だから、副村長さんのようにどんな人でも良さを認めてあげられる人が必要なの。私よりずっと長くこの村を見てきたあなたなら、それが出来ると思うから」
 マニュアルには渚が今まであれやこれやと積み重ねてきた技術や知識の全てが詰まっていた。
 この本と経験が合わされば、新たにファイヴ村と同様の土地を開拓することもできるだろう。
「副村長さんは今日から『雇用騎士』だよ。コヨーワークやコヨープロジェクトは今の編成のままで充分に動くから、それをまとめる役目になるかな。これからの困難を自分たちだけで乗り越えなきゃいけないし、そこに加われないのは寂しいけど……」
 渚は目尻をぬぐって笑った。
「信じてるからね。みんなはもう、ひとに守られたり助けられるだけの存在じゃないもんね。けど、危険が迫ったら、必ず駆けつけるからね。それは、約束だよ」
 副村長は頷き、うやうやしく渚から本を受け取った。
 今も登録者と協力企業を増やしているコヨーワークは、日本全国で起きている未曾有の妖ショックへのかつてない対策として機能しつつある。社会が古妖の存在を隣人同様に受け入れるには十年単位の時間がかかるが、いずれ彼らが小学校に通い、スーツを着て就職活動をし、結婚をして家を買う時代がやってくるだろう。
 その日のもまだ、この本が受け継がれていくことを願うものである。

●積み重ねた出会いの形
「もふもふー! もふもっふ! もふーもふー!」
 『ファイヴ村管理人ふわもこ担当』ゲイル・レオンハート(CL2000415)が乱心していた。
 もふもふヒツジやすねこすりにまみれて地面をごろごろ転がっていた。
 別に来ようと思えばいつでも来れるのだが、管理者の立場を離れるにあたってのもふり納めのようなものである。
 それを、『田中と書いてシャイニングと読む』ゆかり・シャイニング(CL2001288)は真顔でじっと見つめていた。
 咳払いをして立ち上がり、髪を整えるゲイル。
「すまん、取り乱した」
「いや平常運行でしたよね」
「まずはふわもこパークで活躍してくれているアマゾネスに『ふわもこお世話騎士』の任を与えよう。いや、それだけじゃだめだな」
「すねこすりさんとふわふわヒツジさんには特別な称号を与えたいですね」
 ファイヴ村を『古妖と共存する村』に決めた際の共存古妖第一号。すねこすり。
 なんか京都にわんさかわいたから虫取り網やらゲージやらをもって捕まえてきた小動物みたいな古妖だが、彼らの活躍したすねっこキャラバンは古妖のイメージアップへ着実に貢献してくれた。
「ので、すねこすりさんたちには『はじまりの騎士』の称号をあげましょう」
「ならヒツジにもあげたい」
 連れてきた張本人であるゲイルが、ヒツジさんの背中に埋まりながら真剣な顔で言った。
「ヒツジさんは『癒やし系騎士』です」
「賛成だ」
 YESの札を上げつつもふもふ埋まっていくゲイルであった。

 サザナミ村のほうへ行くと言うゆかりと別れ、ゲイルは農場へとやってきた。
 山や谷を大胆に開拓した農場と牧場には、今も沢山の人と古妖が農作業に従事している。デジタル文明の根深い都会暮らしをあまり経験しない古妖のほうがどうやら農業適正は高いらしく、田舎育ちの四十代男性なんかと並んで農業機械を操縦することもしばしばである。
 『ファイヴ村管理人農林担当』エメレンツィア・フォン・フラウベルク(CL2000496)はそんな大農場の中央に作られた休憩所で、ダモさんと一緒にお茶していた。
「来ていたのか」
「こっちの台詞よ。農業騎士の称号を誰に与えようか迷っていたのよね」
「ふむ……時に、辰巳はどうした」
 辰巳はファイヴ村へ正式に招待された古妖のひとりで、天候を操作するという能力から畑仕事を手伝っていたが、今では立派に農作の知識と技術を得て農家として活動している。
 天候操作も作物が死ぬレベルの雨や風がやってきた時に限り、多くは有史以前から培った人類の農耕技術を駆使している。
「はじめはテロリストから保護するだけだったが、古妖のまとめ役になってもらったりといろいろ力を貸して貰ったからな。彼に与えてはどうだろうか」
「そうね。なじみもあることだし、いいんじゃないかしら」
 よし、と頷いてゲイルは包みから一升瓶を取り出した。
「こんな日も来るだろうと思って用意していた大吟醸だ。願いを込めて、頂こう」

●世界を変えるほんとうの力
「電波障害の解決。七星剣の瓦解。今まで妖や覚者におびえ、制限された技術の中で細々と生き延びてきた日本は大きく変わろうとしています。新たな時代が、やってくるのです」
 灯台レストランでコーヒーをすすり、『希望を照らす灯』七海 灯(CL2000579)は遠くを眺めた。
 この灯台の役割も、光を放って港の位置を示すだけのものではなくなっている。電波設備を整え、ラジオ放送や無線回線の開設準備が着々と進んでいる。
 灯台守がその役割を変えてきたように、この村もまた変わっていくだろう。
「ですがそこに、私たちはいるべきではありません」
「親から子が離れるように、ですか?」
「むしろ子供は私のほうなんですけれど、ね」
 向かいでケーキをつつくレンさんに、灯は苦笑した。
「いいえ。あなたは立派な大人です。人を律して育て、色々なものを与え、そして今最後の自由を与えようとしている。これを人は親と呼ぶはずです」
「だと、いいですけれど」
 村の発展はめざましいものがある。
 全く違う種族ですら理解し、尊重できること。
 それこそがファイヴ村の強さであり、ともすれば世界を変えかねない力だった。
「レンさん。あなたに『サポート騎士』の称号を与えます。これからも、ファイヴ村を支えていってくださいね」
 言ってから、灯は再び苦笑した。
「それに、レンさんは私にとって頼れる姉のような存在でしたから。親になるのはちょっとくすぐったいです」

 一階層ずれて展示室。
 ゆかりはちくわの着ぐるみから顔を出していた。
「いいですか!? こうやって、写真をとってツ○ッターにアップするんですよ。ハッシュタグつけて!」
 加工食品アピールの役目を誰かに譲ろうとして、木の子ふくめ皆がとても微妙な顔をしたので咄嗟に思いついたアイデアである。
 とりま自分で写真にうつってツイートしつつ……。
「それにしても、村作りに関わってからずいぶんたつんですね。ゆかりもなんだか、村と一緒に成長できた気がします」
 できることが増えて、やらなきゃ行けないことが増えて、仲間が増えて、未来が広がって。
 それはまさしく成長そのものである。
 今まさに成長した村が巣立ち、多くの人々を育てようとしていた。
 この村でノウハウを学んだ人が都会へ移住し、古妖を雇ったカフェを開くかもしれない。地方に進出して農業や漁業を営むかもしれない。
 様々な流通に村のノウハウが使われ、日本の産業に少なからず変化をもたらすだろう。
「もうみんな、立派に一人前です! 村作りに関わってくれた全ての人と古妖さん。感謝です!」
 最後はみんなと自録りして、ゆかりはそれを壁紙にした。

 妖に汚染された荒野をある日切り開き、一件の木造小屋を建てた者たちがいた。
 土を耕し種をまき、古妖を招き入れて芸を学ばせ、山を開いて農地とし、政治に加わり社会を築き、村を広げて港をもった。
 古今東西の人と古妖を受け入れ、遊園地を作り商店街を興し、人々が満足して暮らせる村を作った。
 そして今、彼らは村を手放し、残る人々に未来を託した。
 マックス村とサザナミ村からなるその行政特区は、今も彼らの名前をとってこう呼ばれている。

 ファイヴ村。

■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

シリーズはこれにて完結となります。
もしご要望が大きければ観光シナリオなどを組むこともあるでしょう。
けれどひとまず。
ファイヴ村の管理に関わった全てのみなさま、お疲れ様でした。




 
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