<ヒノマル戦争>日大制圧戦 VS第五覚醒隊
●
こちらファイヴ会議室。中 恭介(nCL2000002)は戦力図を背に、覚者たちを集めていた。
「現在ファイヴとヒノマル陸軍は戦争状態にある。FH協定によって互いを保護しながらの戦いだが、拠点の制圧は決戦時の戦況に大きく影響する。今回狙うのは日本大学法学部新聞学科……つまり第五覚醒隊の本拠地だ。説明を頼む」
杏介から託される形で、姫神 桃(CL2001376) は一枚の名刺を翳した。
「これはヒノマル陸軍の第五覚醒隊、威徳ヤマタカから受け取った名刺よ。『今回はこちらが攻めたのだ。次はそちらの番だ』ですって」
当時はファイヴのプロデュースで生まれた五華モールの防衛作戦だった。
東雲 梛(CL2001410) も当時は随分気を悪くしたものだが、引き替えに自分たちの本拠地を晒してくる姿勢には悪くは思わないだろう。
「あのチームは、最初から自分たちの実力を晒してきた。逆に言うと、それだけ強いってことなんだ」
そんなチームがフルパワーで決戦にあたれば、当然大きな戦力になるだろう。
チーム戦に出てきていない多くのメンバーたちも、恐らくは実力者そろいの筈だ。
この戦争期間の終盤で本拠地を制圧し、敵戦力を大きく低下させるのが狙いだ。
「敵は強力なチームだ。準備をしっかりとして、万全の状態で挑んでくれ」
こちらファイヴ会議室。中 恭介(nCL2000002)は戦力図を背に、覚者たちを集めていた。
「現在ファイヴとヒノマル陸軍は戦争状態にある。FH協定によって互いを保護しながらの戦いだが、拠点の制圧は決戦時の戦況に大きく影響する。今回狙うのは日本大学法学部新聞学科……つまり第五覚醒隊の本拠地だ。説明を頼む」
杏介から託される形で、姫神 桃(CL2001376) は一枚の名刺を翳した。
「これはヒノマル陸軍の第五覚醒隊、威徳ヤマタカから受け取った名刺よ。『今回はこちらが攻めたのだ。次はそちらの番だ』ですって」
当時はファイヴのプロデュースで生まれた五華モールの防衛作戦だった。
東雲 梛(CL2001410) も当時は随分気を悪くしたものだが、引き替えに自分たちの本拠地を晒してくる姿勢には悪くは思わないだろう。
「あのチームは、最初から自分たちの実力を晒してきた。逆に言うと、それだけ強いってことなんだ」
そんなチームがフルパワーで決戦にあたれば、当然大きな戦力になるだろう。
チーム戦に出てきていない多くのメンバーたちも、恐らくは実力者そろいの筈だ。
この戦争期間の終盤で本拠地を制圧し、敵戦力を大きく低下させるのが狙いだ。
「敵は強力なチームだ。準備をしっかりとして、万全の状態で挑んでくれ」

■シナリオ詳細
■成功条件
1.戦闘に勝利する
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
戦闘の勝敗によって拠点制圧の是非が決まります。
●シチュエーションデータ
大学の有するグラウンドが戦場になります。
平たく整地された場所なので戦闘に全く困りません。
●エネミーデータ
・『第五覚醒隊隊長』威徳ヤマタカ:土暦。槍使い。
→無頼漢、大震、地烈といった技を使う。スペックはバランス型。
→大震によるブロック破壊は対策されてしまったので今回は普通にぶつかるはず。
・『第五覚醒隊』安西:火彩。ショットガントレット装備。
→豪炎撃や飛燕、火焔連弾など火力特化のアタッカー。前衛タイプ。
・『第五覚醒隊』井上:土械。ショットガントレット装備
→タフで防御の硬い盾担当。倒れても起き上がる根性が売り。
・『第五覚醒隊』片山:水翼。絵本を武器にする少女。
→体術系の回復術に優れる。自然治癒力がきわめて高い。
→単体回復は得意だが集団の回復は比較的苦手。
・『第五覚醒隊』雷句:天現。魔導書使い。
→雷獣や脣星落霜といった火力の高い技に加え、演舞・舞音などの補助も使いこなす。機転の利く頭脳派。
・『第五覚醒隊』福田:木獣。刀使い。
→体術に優れ、剣術の腕は一流。貫殺撃・改や斬・二の構えなど力押しの技を得意とする。
協定については専用ページをご覧ください。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
6/6
6/6
公開日
2017年01月16日
2017年01月16日
■メイン参加者 6人■

●第五覚醒隊
大学の所有するサッカーコート。周囲の観客席には無数のギャラリーが控えているが、その七割近くが第五覚醒隊のメンバーだという。
今目の前にそろっている威徳率いる戦闘チームは、そのなかから選抜された人間たちだということだろう。
これまでの期間で協定を無視していたらどんなことがおきていたかと考えると、なかなかに恐ろしい構図である。
「モールを狙ったのは未だにムッとするけど」
「褒めてくれたことにも礼は言うけど」
「それはそれ、これはこれ」
東雲 梛(CL2001410)と『淡雪の歌姫』鈴駆・ありす(CL2001269)はコートの西側に立って腕組みをした。
「遠慮無く行かせて貰うわよ。覚悟しなさい」
「そりゃこっちの台詞だぜ! やけどすんなよ!」
安西が腕をぐるぐるとやったあと、腕から炎を燃え上がらせた。
やりとりを横目に、梛がバンテージを巻いた井上に話しかけた。
「マスメディアの学生なんだよね。どうしてヒノマルに? 今答えなくてもいいけど、俺たちが勝ったら教えてよ」
「なんだよややっこしいな。そういうのは勝負が濁るから嫌いなんだよ。別に普通じゃねえの? 正しいと思ったから入ったんだよ。お前だってそうだろ?」
「俺は……」
梛はわずかに目をそらした。彼がファイヴに来た理由は、間違いと正しさが同居していたからだ。
会話を遮るように手をぶんぶん振る『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)。
「よっ、元気? また会ったなあ!」
「あ、ええと……どうも」
絵本を胸に抱いた片山が小さく頭を下げて応える。
フィールドがフィールドなだけに、本当に今からサッカーの試合でも始めそうな雰囲気である。
「といっても、穏便にすむわけねーよな」
今から始まるのは殺し合いだ。『慧眼の癒し手』香月 凜音(CL2000495)は軽くストレッチをしつつ、他の仲間の様子をうかがった。
『雷切』姫神 桃(CL2001376)は地面に刺さったふた振りの刀を掴み上げると、くるくると回して交差状に背負った鞘にそれぞれ収めた。
「招待を受けたとおり、挑戦しに来たわ」
対して威徳は祈るように両手を打ち付け、深く深く呼吸をした。
「ん。そちらは?」
「鹿ノ島遥です! よろしくおねがいします!」
押忍の姿勢で勢いよく頭を下げる遥に、威徳もまた頭を下げた。
「よろしく頼む。では、始めようか。このコインが落ちてから、だ」
手のひらの間から出したコインを指で弾く。
飛び上がり、回転し、光を反射する。
●
「井上、福田、簡単に落とされるなよ!」
雷句が魔導書を開いて圧縮呪文を唱える間、井上たちは敵陣に突っ込んでいった。
対するは桃と遥。
「いくぜ桃、今日は俺とお前でダブル雷切だ!」
「見せつけてやりましょう、行くわよ遥!」
桃の手刀と井上のパンチが交差し、互いの腕を払い合う、桃の頭上を飛び越えるように現われた遥が連続蹴りを繰り出し、同じく井上の肩を足場に飛び上がった福田が刀の連続斬りを繰り出した。
遥の殺人的な蹴りと幅田の刀が相殺し、空中で無数の火花を起こす。
「全身を軸にしたシンプルかつ洗練された連続蹴り。空手家か!」
「そゆこと! そっちは剣道だな!」
「俺を無視して初めてんじゃねーっての!」
腕から放った炎で空中に漢字を描き、炎の竜を生み出す安西。
対して。
「アンタたちもついてないわね。この炎にまた焼かれることになるなんて――いくわよゆる、開眼!」
フィンガースナップでともした炎で文様を描いたありすが、空に大きな炎の波を起こした。
「あっ、俺も俺も!」
ジャックも本を開いて書き付けた名前をなぞっていく。
彼の頭上に浮かんだ炎の群れがありすの波にのって走って行く。
炎を逃れ、ばさばさと空へ舞い上がる片山。
白い絵本にクレヨンを走らせると、画に描いたホースが回復シャワーを振らせていく。
「おっと……」
凜音も対応して回復術式を練り始める。
と同時に、戦況を分析しはじめた。
敵のチームは前衛に寄ったタイプだ。
それでいて攻防のバランスが高く、汎用性に富んでいる。
やろうと思えば凜音を集中攻撃できるくらいの手はあるはずだが、それ以前に『前からすりつぶす』の作戦が有効だと踏んだのだろう。
よほどの戦力差がつかないかぎり、覚者チームVS覚者チームの戦闘は序盤から中盤まで拮抗状態が続く。こちらも相手も馬鹿では無いので集中攻撃に対策をとるし、一度とった奇策は二度とれないのが常識。かつての現代戦のように『一発撃たれたら死ぬ』というルールでもない限りは将棋をさすように互いを牽制しながら局面を動かしていくものだ。
そういった見方から察するに、当局面における中盤とは井上を倒した段階からになるだろう。
その頃にはこちらも一枚落とされている筈。終盤に向けての『積み』へどう進めていくか……。
「けど、相手の手を分かってる分、こっちの方が圧倒的に有利なんだよな」
丁度前衛では梛と威徳がぶつかっていた。
防御を固めた威徳に対し、梛は清廉珀香を展開。
更に捕縛蔓でコートから無数のツルをはやすと、威徳めがけて突撃していく。
梛の繰り出したスティックを両手で挟んで止める威徳。足払いによって梛は激しく転倒するが、素早く術式を組んで仇華浸香を放った。
「むん……!」
ピエロめいた仮面の下でわずかに顔をしかめると、威徳は倒れた梛の足を掴んで軽く放ると、掌底によって吹き飛ばした。
「うおっ!?」
遥たちが戦っているエリアに突っ込む梛。
巻き込まれて倒れた遥――の一方で桃は素早く飛び退き、横合いから繰り出された井上の拳を手のひらでガード。
更に後方から繰り出された幅田の剣を背部マウントしていた刀を半分抜くことでガードした。
加えて、井上の拳をねじり上げ、鳩尾めがけて手刀で突く。
「今よ、遥!」
「よっしゃあ!」
威徳が手のひらにオーラを溜めて遥に殴りかかる。
「させん!」
狙いは体術封じだ。
(オリジナルスキル扱いの四方蹴りはともかく)体術メインの遥である。ここで遥の活殺打を封じられては作戦が中盤から詰まってしまう。
凜音は咄嗟の機転を利かせ、間に一回だけ割り込んだ。
「ぐっ……!」
身体が内側からねじ切れるような感覚に襲われる。が、凜音なら体術がつかえなくても特に問題はない。
すぐに自らの回復を開始。
凜音と威徳をそれぞれ踏み台にした遥は、井上めがけて大回転空手チョップを叩き込んだ。
「キエーッ……ってな!」
必殺の一撃が炸裂し、井上が周囲の芝や土もろとも吹き飛んでいく。
「井上! くそっ、その手があったか!」
「最初からあっただろう。馬鹿め」
安西と雷句がそれぞれアイコンタクトをとり、同時に術式を発動させた。
「そいつ(凜音)は頭が切れるタイプだ。考えなしに標的になったりはしない。どれだけ早く落とせるかで勝負が決まるぞ!」
「……そこには気づかねーでいてくれたら楽なんだけどな」
口から垂れた血を、手袋ごしにぬぐう。
そして、凜音は術式の盾を練り上げて炎と雷の合成ビームを受け止めた。
一方でジャックは片山との競り合いに発展していた。
召炎波で削ろうとするジャックと癒力大活性でカウンターヒールをかける片山という構図である。とはいえ全体回復は若干苦手な片山である。こちらの総合火力に押され気味だった。
「お前たち暴力坂がいなくなったらどうするん? ファイヴに濃いよ、確かにお前たち悪いこともしたから憎んでる奴がいるかもしれないけど、戦争やってるのは俺たちなんだから従えよ」
「なんか理屈がめちゃくちゃです!」
「そんなことないって。さあ踊ろうぜ!」
キャンドルのように人差し指に炎をともし、ぐるぐるとうずまきを描くありす。
それだけで巨大な炎の渦が生まれ、敵陣を巻き込んで放たれる。
「良かったわね、今日の炎は特別熱いわよ!」
「こっちも、な!」
安西はぺたんと腕にシールを貼ると、空中に複数の漢字を描き出した。
「大盤振る舞いだ、腕ごといっとけ!」
無数の炎の竜が現われ、ありすめがけて炎の群れを解き放つ。
対するありすも空中に星形を描いて追撃。
二人の炎が互いを包んでいく。
「アンタたちとは、同じ組織だったら仲良くできた気がするわ」
「だったらお前もヒノマルに来いよ! 楽しいぜ!」
「悪いけど、戦争する気はないのよ」
梛と桃と遥。
三人は威徳を扇状に囲んで次々と連続攻撃をしかけていた。
「結構、強いね」
膝蹴りによって吹き飛ばされた梛は、自分を回復しながら顔を上げた。
威徳チームのバランスの良さはチェスの駒配置に似ている。どこかが削れてもカバーができるし、どこかがふさがれてもまたぐ手段を二つ以上有している。
そこらの考え成しに突っ込んでくる低ランク妖のように、カバーやスイッチといった一般的な対策がことごとく潰されるのだ。当然こちらも相手のそういった一般的な対策を潰しているので、最終的には底力のぶつかり合いとなる。
手に無数の豆を握って、威徳へと投げつける。
空中で炸裂した豆が威徳の全身にトゲとなって突き刺さるが、相手の動きはまるで止まる気配がない。
飛びかかる桃と遥――の間を風のようにすり抜け、梛に掌底を叩き込む。
両足をドンと地面につけての重い一撃である。
観客席まで吹き飛ばされる梛。
桃と遥は振り返り、そして構えた。
「遥、まだ倒れたりなんてしないわよね!」
「当然」
鼻血をぬぐって、遥は笑った。
「戦いが楽しければ、無限に立ってられる!」
「行くわよ!」
桃は背の刀をそれぞれ抜くと威徳めがけて連続で投擲した。
手のひらをぬるりと高速で走らせることではねのける威徳。
その隙をつくように飛びかかった遥の拳が威徳の顔面に命中。と同時に遥の腹に掌底が命中。
衝撃が遥の体内を走り、白目をむいて転落する。
一方の威徳は仮面が大きく砕けていた。
その額にぴたりと指をつける桃。
「勝負、あったわね」
「……そのようだ」
威徳は、はらはらと泣いていた。
「なにか、目を隠すものをくれないか。戦うときは、涙が止まらないんだ」
桃は困って、とりあえずハンカチを渡す。
対して威徳は、自らがはめていた革製の手甲を差し出した。
「これは?」
「ギブアンドテイクだ」
こうして、決戦開始直前にして第五覚醒隊の本拠地が制圧された。
再会は、決戦の場となるだろう。
――敵拠点『日本大学法学部新聞学科』を制圧しました!
大学の所有するサッカーコート。周囲の観客席には無数のギャラリーが控えているが、その七割近くが第五覚醒隊のメンバーだという。
今目の前にそろっている威徳率いる戦闘チームは、そのなかから選抜された人間たちだということだろう。
これまでの期間で協定を無視していたらどんなことがおきていたかと考えると、なかなかに恐ろしい構図である。
「モールを狙ったのは未だにムッとするけど」
「褒めてくれたことにも礼は言うけど」
「それはそれ、これはこれ」
東雲 梛(CL2001410)と『淡雪の歌姫』鈴駆・ありす(CL2001269)はコートの西側に立って腕組みをした。
「遠慮無く行かせて貰うわよ。覚悟しなさい」
「そりゃこっちの台詞だぜ! やけどすんなよ!」
安西が腕をぐるぐるとやったあと、腕から炎を燃え上がらせた。
やりとりを横目に、梛がバンテージを巻いた井上に話しかけた。
「マスメディアの学生なんだよね。どうしてヒノマルに? 今答えなくてもいいけど、俺たちが勝ったら教えてよ」
「なんだよややっこしいな。そういうのは勝負が濁るから嫌いなんだよ。別に普通じゃねえの? 正しいと思ったから入ったんだよ。お前だってそうだろ?」
「俺は……」
梛はわずかに目をそらした。彼がファイヴに来た理由は、間違いと正しさが同居していたからだ。
会話を遮るように手をぶんぶん振る『黒い太陽』切裂 ジャック(CL2001403)。
「よっ、元気? また会ったなあ!」
「あ、ええと……どうも」
絵本を胸に抱いた片山が小さく頭を下げて応える。
フィールドがフィールドなだけに、本当に今からサッカーの試合でも始めそうな雰囲気である。
「といっても、穏便にすむわけねーよな」
今から始まるのは殺し合いだ。『慧眼の癒し手』香月 凜音(CL2000495)は軽くストレッチをしつつ、他の仲間の様子をうかがった。
『雷切』姫神 桃(CL2001376)は地面に刺さったふた振りの刀を掴み上げると、くるくると回して交差状に背負った鞘にそれぞれ収めた。
「招待を受けたとおり、挑戦しに来たわ」
対して威徳は祈るように両手を打ち付け、深く深く呼吸をした。
「ん。そちらは?」
「鹿ノ島遥です! よろしくおねがいします!」
押忍の姿勢で勢いよく頭を下げる遥に、威徳もまた頭を下げた。
「よろしく頼む。では、始めようか。このコインが落ちてから、だ」
手のひらの間から出したコインを指で弾く。
飛び上がり、回転し、光を反射する。
●
「井上、福田、簡単に落とされるなよ!」
雷句が魔導書を開いて圧縮呪文を唱える間、井上たちは敵陣に突っ込んでいった。
対するは桃と遥。
「いくぜ桃、今日は俺とお前でダブル雷切だ!」
「見せつけてやりましょう、行くわよ遥!」
桃の手刀と井上のパンチが交差し、互いの腕を払い合う、桃の頭上を飛び越えるように現われた遥が連続蹴りを繰り出し、同じく井上の肩を足場に飛び上がった福田が刀の連続斬りを繰り出した。
遥の殺人的な蹴りと幅田の刀が相殺し、空中で無数の火花を起こす。
「全身を軸にしたシンプルかつ洗練された連続蹴り。空手家か!」
「そゆこと! そっちは剣道だな!」
「俺を無視して初めてんじゃねーっての!」
腕から放った炎で空中に漢字を描き、炎の竜を生み出す安西。
対して。
「アンタたちもついてないわね。この炎にまた焼かれることになるなんて――いくわよゆる、開眼!」
フィンガースナップでともした炎で文様を描いたありすが、空に大きな炎の波を起こした。
「あっ、俺も俺も!」
ジャックも本を開いて書き付けた名前をなぞっていく。
彼の頭上に浮かんだ炎の群れがありすの波にのって走って行く。
炎を逃れ、ばさばさと空へ舞い上がる片山。
白い絵本にクレヨンを走らせると、画に描いたホースが回復シャワーを振らせていく。
「おっと……」
凜音も対応して回復術式を練り始める。
と同時に、戦況を分析しはじめた。
敵のチームは前衛に寄ったタイプだ。
それでいて攻防のバランスが高く、汎用性に富んでいる。
やろうと思えば凜音を集中攻撃できるくらいの手はあるはずだが、それ以前に『前からすりつぶす』の作戦が有効だと踏んだのだろう。
よほどの戦力差がつかないかぎり、覚者チームVS覚者チームの戦闘は序盤から中盤まで拮抗状態が続く。こちらも相手も馬鹿では無いので集中攻撃に対策をとるし、一度とった奇策は二度とれないのが常識。かつての現代戦のように『一発撃たれたら死ぬ』というルールでもない限りは将棋をさすように互いを牽制しながら局面を動かしていくものだ。
そういった見方から察するに、当局面における中盤とは井上を倒した段階からになるだろう。
その頃にはこちらも一枚落とされている筈。終盤に向けての『積み』へどう進めていくか……。
「けど、相手の手を分かってる分、こっちの方が圧倒的に有利なんだよな」
丁度前衛では梛と威徳がぶつかっていた。
防御を固めた威徳に対し、梛は清廉珀香を展開。
更に捕縛蔓でコートから無数のツルをはやすと、威徳めがけて突撃していく。
梛の繰り出したスティックを両手で挟んで止める威徳。足払いによって梛は激しく転倒するが、素早く術式を組んで仇華浸香を放った。
「むん……!」
ピエロめいた仮面の下でわずかに顔をしかめると、威徳は倒れた梛の足を掴んで軽く放ると、掌底によって吹き飛ばした。
「うおっ!?」
遥たちが戦っているエリアに突っ込む梛。
巻き込まれて倒れた遥――の一方で桃は素早く飛び退き、横合いから繰り出された井上の拳を手のひらでガード。
更に後方から繰り出された幅田の剣を背部マウントしていた刀を半分抜くことでガードした。
加えて、井上の拳をねじり上げ、鳩尾めがけて手刀で突く。
「今よ、遥!」
「よっしゃあ!」
威徳が手のひらにオーラを溜めて遥に殴りかかる。
「させん!」
狙いは体術封じだ。
(オリジナルスキル扱いの四方蹴りはともかく)体術メインの遥である。ここで遥の活殺打を封じられては作戦が中盤から詰まってしまう。
凜音は咄嗟の機転を利かせ、間に一回だけ割り込んだ。
「ぐっ……!」
身体が内側からねじ切れるような感覚に襲われる。が、凜音なら体術がつかえなくても特に問題はない。
すぐに自らの回復を開始。
凜音と威徳をそれぞれ踏み台にした遥は、井上めがけて大回転空手チョップを叩き込んだ。
「キエーッ……ってな!」
必殺の一撃が炸裂し、井上が周囲の芝や土もろとも吹き飛んでいく。
「井上! くそっ、その手があったか!」
「最初からあっただろう。馬鹿め」
安西と雷句がそれぞれアイコンタクトをとり、同時に術式を発動させた。
「そいつ(凜音)は頭が切れるタイプだ。考えなしに標的になったりはしない。どれだけ早く落とせるかで勝負が決まるぞ!」
「……そこには気づかねーでいてくれたら楽なんだけどな」
口から垂れた血を、手袋ごしにぬぐう。
そして、凜音は術式の盾を練り上げて炎と雷の合成ビームを受け止めた。
一方でジャックは片山との競り合いに発展していた。
召炎波で削ろうとするジャックと癒力大活性でカウンターヒールをかける片山という構図である。とはいえ全体回復は若干苦手な片山である。こちらの総合火力に押され気味だった。
「お前たち暴力坂がいなくなったらどうするん? ファイヴに濃いよ、確かにお前たち悪いこともしたから憎んでる奴がいるかもしれないけど、戦争やってるのは俺たちなんだから従えよ」
「なんか理屈がめちゃくちゃです!」
「そんなことないって。さあ踊ろうぜ!」
キャンドルのように人差し指に炎をともし、ぐるぐるとうずまきを描くありす。
それだけで巨大な炎の渦が生まれ、敵陣を巻き込んで放たれる。
「良かったわね、今日の炎は特別熱いわよ!」
「こっちも、な!」
安西はぺたんと腕にシールを貼ると、空中に複数の漢字を描き出した。
「大盤振る舞いだ、腕ごといっとけ!」
無数の炎の竜が現われ、ありすめがけて炎の群れを解き放つ。
対するありすも空中に星形を描いて追撃。
二人の炎が互いを包んでいく。
「アンタたちとは、同じ組織だったら仲良くできた気がするわ」
「だったらお前もヒノマルに来いよ! 楽しいぜ!」
「悪いけど、戦争する気はないのよ」
梛と桃と遥。
三人は威徳を扇状に囲んで次々と連続攻撃をしかけていた。
「結構、強いね」
膝蹴りによって吹き飛ばされた梛は、自分を回復しながら顔を上げた。
威徳チームのバランスの良さはチェスの駒配置に似ている。どこかが削れてもカバーができるし、どこかがふさがれてもまたぐ手段を二つ以上有している。
そこらの考え成しに突っ込んでくる低ランク妖のように、カバーやスイッチといった一般的な対策がことごとく潰されるのだ。当然こちらも相手のそういった一般的な対策を潰しているので、最終的には底力のぶつかり合いとなる。
手に無数の豆を握って、威徳へと投げつける。
空中で炸裂した豆が威徳の全身にトゲとなって突き刺さるが、相手の動きはまるで止まる気配がない。
飛びかかる桃と遥――の間を風のようにすり抜け、梛に掌底を叩き込む。
両足をドンと地面につけての重い一撃である。
観客席まで吹き飛ばされる梛。
桃と遥は振り返り、そして構えた。
「遥、まだ倒れたりなんてしないわよね!」
「当然」
鼻血をぬぐって、遥は笑った。
「戦いが楽しければ、無限に立ってられる!」
「行くわよ!」
桃は背の刀をそれぞれ抜くと威徳めがけて連続で投擲した。
手のひらをぬるりと高速で走らせることではねのける威徳。
その隙をつくように飛びかかった遥の拳が威徳の顔面に命中。と同時に遥の腹に掌底が命中。
衝撃が遥の体内を走り、白目をむいて転落する。
一方の威徳は仮面が大きく砕けていた。
その額にぴたりと指をつける桃。
「勝負、あったわね」
「……そのようだ」
威徳は、はらはらと泣いていた。
「なにか、目を隠すものをくれないか。戦うときは、涙が止まらないんだ」
桃は困って、とりあえずハンカチを渡す。
対して威徳は、自らがはめていた革製の手甲を差し出した。
「これは?」
「ギブアンドテイクだ」
こうして、決戦開始直前にして第五覚醒隊の本拠地が制圧された。
再会は、決戦の場となるだろう。
――敵拠点『日本大学法学部新聞学科』を制圧しました!
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし

■あとがき■
レアドロップ!
取得キャラクター:『雷切』姫神 桃(CL2001376)
取得アイテム:形意崩拳手甲
取得キャラクター:『雷切』姫神 桃(CL2001376)
取得アイテム:形意崩拳手甲
