≪聖夜2016≫みんなで作るクリスマス
●
年の瀬も近づいた12月。街中はきらびやかに飾り付けられている。
クリスマスが近づいているのだ。
1年間様々に生きてきた中で、この日ばかりはそれを忘れてのんびりと楽しむことが出来る日である。
そんな街並みを眺めながらFIVE本部にやって来た覚者は入り口で1人の少女に声を掛けられた。
「はーろろん♪ あんど、めりくりー♪」
元気に挨拶をするのは、『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)。頭には丁寧にサンタ帽子をかぶっている。
「うん、FIVEのみんなを誘ってクリスマスパーティーやろうと思ってるんだ。良かったら、一緒にどう?」
麦の計画は簡単な手作りのクリスマスパーティー。
みんなで手作りしたものを持ち寄って、パーティーをしようというのだ。
「あたしはケーキ用意しているんだけど、付き合ってくれる人がいるとうれしいな。覚者のみんなって、手先が器用な印象あるしね」
仲間とわいわい語り合うもよし、互いに何かを持ち寄ってくるのもよし。もちろん、1人からの参加も歓迎だ。
自分の手で作ったクリスマスパーティーはきっと、よい思い出になることだろう。
食べ物でも飾りでも、何か1つ持ってくれば十分だ。
「それじゃ、あたしはほかの人にも声かけてくるから。よろしくね!」
そう言って麦はまた、元気よくクリスマスの街へと駆け出して行くのだった。
年の瀬も近づいた12月。街中はきらびやかに飾り付けられている。
クリスマスが近づいているのだ。
1年間様々に生きてきた中で、この日ばかりはそれを忘れてのんびりと楽しむことが出来る日である。
そんな街並みを眺めながらFIVE本部にやって来た覚者は入り口で1人の少女に声を掛けられた。
「はーろろん♪ あんど、めりくりー♪」
元気に挨拶をするのは、『イエロー系女子』大岩・麦(nCL2000116)。頭には丁寧にサンタ帽子をかぶっている。
「うん、FIVEのみんなを誘ってクリスマスパーティーやろうと思ってるんだ。良かったら、一緒にどう?」
麦の計画は簡単な手作りのクリスマスパーティー。
みんなで手作りしたものを持ち寄って、パーティーをしようというのだ。
「あたしはケーキ用意しているんだけど、付き合ってくれる人がいるとうれしいな。覚者のみんなって、手先が器用な印象あるしね」
仲間とわいわい語り合うもよし、互いに何かを持ち寄ってくるのもよし。もちろん、1人からの参加も歓迎だ。
自分の手で作ったクリスマスパーティーはきっと、よい思い出になることだろう。
食べ物でも飾りでも、何か1つ持ってくれば十分だ。
「それじゃ、あたしはほかの人にも声かけてくるから。よろしくね!」
そう言って麦はまた、元気よくクリスマスの街へと駆け出して行くのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.クリスマスを楽しむ
2.なし
3.なし
2.なし
3.なし
メリークリスマス・ネオゴリン、KSK(けー・えす・けー)です。
今回はクリスマスを楽しんでいただきたいと思います。
●行動について
今回はクリスマスパーティーをします。
場所はFIVE本部の会議室を借りています。
何かしら手作りの品、1品を持ち込んでパーティーを盛り上げてください。
ケーキやクッキーなどのお菓子、料理を持ち込むのもよいでしょう。またツリーなど、クリスマスの飾りつけを持ち込んでも構いません。
アイテム「クリスマスケーキ」をお持ちの方は、それを持ち込んだとしてプレイングを行っても構いません。
羽目を外しすぎないようにお気を付けください。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『御崎 衣緒(nCL2000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
麦は手作りケーキを持ち込んできます。
ちなみに、料理は素人レベルとしては十分な腕前です。
なんかオーダーあれば作ってくれるかもしれません。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
金:0枚 銀:0枚 銅:1枚
相談日数
6日
6日
参加費
50LP
50LP
参加人数
17/30
17/30
公開日
2017年01月07日
2017年01月07日
■メイン参加者 17人■

●
サンタクロースがやってくる姿は誰にも知られないものだ。
そして、今日クリスマス。パーティーの会場にも可愛らしいサンタが2人やって来た。
「ふふ……! 頑張りましょうね! 鈴鳴ちゃん!」
「うん、腕が鳴りますね!」
誰よりも早く会場入りしたのは、たまきと鈴鳴だ。まだ会場にある料理も飾りもほんの一部だけ。それをこっそり完成させるためにやって来た。
飾りつけは簡単な作業ではないが、みんなの驚く顔を思えば気分も盛り上がる。
モールや風船、リボンや花で飾りつけを行うと、見る間に部屋はパーティー会場へと変わっていく。そして、2人が最後に取り出したのは大きな星。
「ふふ……! 飾り付け係の特権ですね!」
たまきの手に握られたのは金色の、鈴鳴の手に握られたのは銀色の、厚紙で作った大きな星である。
「ふふ、そうですよね。これくらいの自己主張はしてもいいですよねっ」
せっかくきれいに飾り付けたのだ。ちょっと位のわがままは許されてもいい。
そして、一通り飾りつけが済んだのを見ると、2人はそっと会場を後にする。その際にこっそり、準備されていたサンドイッチを摘まむ。
サンタクロースだって、お腹は空くのだ。
それからしばらくして、飾りつけのために覚者達が入ってくる。彼らは一様に内装が終わっていることに驚きの声を上げる。たまきと鈴鳴もちゃっかりその中に紛れていた。
そして、皆が持ってきた飾りつけをどこに飾るかでまたワイワイと相談が始まる。
中でも那由多とジャックは、持ってきた飾りつけをツリーに飾ろうとしていた。
「ジャック、飾りつけお願いしてもええ?」
「クリスマスの飾りつけ、ね! いいぜ」
飾りを渡そうとする那由多。しかし、ジャックはそれを受け取ると彼女をツリーの前に立たせる。
「えーっと……触るで? 女の子あんま触りたくないんやけど……まあいいか!」
「って、うちに飾りつけ……!?」
見る間にクリスマスツリーへと変えられていく那由多。しかし、そんな彼女の当惑などどこ吹く風で、ジャックの飾りつけは進んでいった。
FIVEの貸し会議室など、覚者にとっては見慣れたもの。だけど、今日は違う。
クリスマスには魔法がかけられる。
無味乾燥な部屋も輝くパーティー会場に姿を変えるのだ。
「ちょっと大きいかもしれないけど、それはご愛嬌だよね?」
禊が持ってきた特大ケーキは、クリスマスという名の王国の中心に鎮座する城のようだ。
楽しまなければ損とばかり、禊は会場の中に飛び込んでいく。みんながどんな料理を作ってきたのかも気になるところだ。
主催した夢見の麦も料理話に応えてくれる。ちょうど料理談義がしたかったところ。男勝りな自分を嫌いでないが、女らしさが欲しいのもまた事実。
だがしかし、そんな禊の乙女心と関係なく、パーティーは始まるのだった。
●
こうして始まったパーティー。
手作りというテーマからか、皆わいのわいのと飾りつけを楽しみながらパーティーに参加している。
「きれいに飾り付けられた那由多」もその一つと言えるだろう。
「クリスマスリースやね! こんなんして貰ったの初めてや。ほな、お礼に抹茶ケーキ食べさせてあげる、はい、口あけて」
なんのかんので那由多は気に入ったようだ。浮き浮きした表情でジャックに抹茶ケーキを差し出す。
「ん! メリークリスマス。お? 那由多、指にクリームついてんよ」
そう言ってジャックは那由多の指をくわえて吸い取る。那由多が反射的にびんたをしてしまったのは言うまでもなく。
会場を見渡す凜音は後ろから袖を引かれる。何事かと見てみれば、そこにいたのはいつもおにぃと慕ってくる椿花だった。
「凜音ちゃん凜音ちゃん、これ! スネコスリのクッキーなんだぞ! ふわふわを表現するのが大変だったんだぞ!」
元気にはしゃぐ椿花の手に握られているのは……奇妙な不定形の物体。
実際のすねこすりとどこが似ているのか、共通点を見つけ出すのは中々に手間のかかる作業だろう。
ちゃんとすねこすりと同じように目もある。牙のようなものもある。後者はすねこすりになかった気もするが。
と言うか言われなければ、椿花以外にこれをすねこすりだと理解できるものはいないだろう。控えめに言って、ウネウネうにょにょとした何かだ。
だからと言って、それを正直に告げるほど凜音は非情な人間ではない。
「俺に作ってくれたのか? ありがとうな」
笑顔で受け取り、椿花の頭を撫でる。そして内心、これもアートなのかと思いつつ持ってきたジンジャーマンクッキーを渡す。
「そうだ……えっと、凜音ちゃん……メリークリスマス、なんだぞ!」
満面の笑みでお祝いの言葉を口にする椿花。
「ああ、メリークリスマス。じっとしてろな」
すると、凜音も彼女の髪にそっと髪飾りをつけて、祝福の言葉を返す。
いつまでもこうやって子ども扱いはできないのだろうと、心のどこかで感じながら。
こうして2人の時間は流れていく。
千歳と数多の兄妹は、2人で回りにジンジャーマンクッキーを配っていた。
最初は飾りつけにと用意していたのだが、作りすぎたので余ってしまったのだ。最初は困った顔をしていた千歳だったが、みんなに配り終えてほっとした表情を浮かべる。
ジンジャーマンクッキーはツリーに飾ればかわいいし、気づいた人が食べればおいしい。それにこうやって人に配れば楽しいと、三度の嬉しさがあるのだ。
「あぁ、そうだ。そういえば数多にプレゼントがあるんだよ」
ひと段落したところで、千歳は持ってきたプレゼントの箱を数多に渡す。
「え?ほんとに?! にーさまぷれぜーんと!」
すると、千歳はもらった箱を高く掲げ、くるくる回って喜ぶ。そして、喜びが落ち着いたところで今度は彼女から兄へプレゼントを渡す。自分をプレゼント、としたかったのはここだけの秘密だ。
「はい、にーさま、メリークリスマス。いっせーのであけましょ?」
「数多からも? ありがとう、なんだろう。それじゃあ早速開けてみようか」
同時に開けると、それぞれ出てきたのはピンクと白のマフラー。これには互いに顔を見合わせて、かぶってしまったことを笑ってしまう。だけど、そのかぶりだって心地いい。
2人してマフラーを巻き、ちょっとポーズをとってみる。
「良いねえ、良く似合ってるよ。俺はどうだい? 似合ってるかな?」
「えへへ、にーさまもすごく似合ってる! イケメン! かっこいい! 好き!」
兄妹仲睦まじく、互いの絆を確かめ合う。
クリスマスはそのためにあるのかもしれない。
「ま、こんなもんか」
翔は自分が持ってきた折り紙の飾りつけを眺めて、満足そうに頷く。サンタに雪だるまに星と葉っぱ、そしてベルだ。学校の図書室で調べて作ったにしては良い出来だと、自分でも思う。
その時、相棒の紡の姿が目に入った。翔とは真逆にしょんぼりしたような顔をしている。
それもそのはず。
紡も手作りパーティーと勢いこんで作ってみたのは折り紙リース。出来るだけ見栄え良いのをくっつけてきたけど、完成品は少しヨレヨレだ。
これはアカンと作ってみたホワイトチョコと星型スプリンクルで飾ったマシュマロポップも、やっぱり不細工。自分のぶきっちょさ加減に苦笑いするしかない。
「ん?紡は折り紙でリース折ってきたのか! 偶然だなー、オレも折り紙で……リース、結構シンプルだな」
そこへ明るく声をかけにやって来る翔。紡はばつの悪そうな表情を浮かべる。
そこで翔は自分の作ってきた折り紙を紡の作った折り紙に張り付けたのだ。
「えへへ、力を合わせたらかっこよくなったよな!」
2人の合作になったリースに紡も顔をほころばせ、満面笑顔で翔を抱きしめる。おまけに頭も撫でてしまう。
「翔、ありがとー」
あとは素直にパーティーを楽しむだけ。持ってきたマフラーとストラップを交換し、お菓子とジュースで乾杯だ。
幼い子供であっても覚者として戦うことは消して珍しくないこの世界。
だけど、紡はこうやって過ごせるのも悪くない。平和なひと時にそう思った。
●
「「「メリークリスマス!!!」」」
会場の中で【赤爺】グループの声が唱和する。
「メリークリスマース!! 今日はっ、楽しいっ、クリスマスッ、イエー! さあパーティーだ! ケーキだ! シャンパンだ!」
はしゃぐ遥の姿からは、とても普段の戦いの姿など想像もつかない。そんな年若い仲間たちの空いたグラスに、桃はシャンメリーを注いで回る。
今日の集まりは皆で持ち寄った手料理でお祝いだ。
「いっぱい騒いで盛り上がって、楽しいクリスマスにしようね!」
にこにこと笑いながら、きせきは燐花の持ってきたブラウニーケーキを手にする。
「お口に合えばいいのですが……」
当の持ち込んだ燐花はどことなく気恥ずかしそうな感じだ。
一応状況に合わせたものをチョイスしたつもりだが、割と世俗とずれたところがある彼女だ。ちょっと不安が残る。
「私はサンドイッチを持参したぞ! 得意料理だ!」
そう言って紅茶と一緒にサンドイッチをふるまうフィオナ。サンドイッチは挟むだけの代物だが、あえてここでは言うまい。
とはいえ、カフェバイトで鍛えたのは伊達ではないのだ。出来は様になっている。
「おっ、フィオナは手製の食い物と飲み物を持参か? お前の紅茶はうまいんだよなー」
「どうだ、遥! 参ったか!」
遥にはムキになってしまうフィオナ。だが、遥の方は余裕の表情だ。
「サンドイッチも綺麗に出来てるじゃん。やりおるなこいつ! ウェイトレスのアルバイトで女子力を高めおったな! 認めよう、ナイス女子力!」
2人のどこかほっこりするやり取りを眺めながら、桃は手作りのおはぎを差し出す。
「ちょっとクリスマスには場違いだけど、味は保証するわよ」
桃の言葉の通り、甘いもの好きの時雨も満足そうな顔をしている。
それを見て、今度は桃が食べるほうに回る。狙いは燐花のクッキーとフィオナのサンドイッチだ。
「燐花さんのお菓子……今度、作り方教えてほしいわ。美味しいし、フィオナさんの紅茶ともあってほっとする」
仲良い仲間と集まって、おいしい料理もあれば自然と会話も弾むもの。こうした場所が苦手な燐花も、気後れしながら楽しんでいる。
そして、宴もたけなわと言ったところでいよいよメインのイベント。プレゼント交換の時間がやって来た。
「プレゼントコウカーン!」
時雨の宣言と同時にプレゼントの交換会が始まる。
それぞれ内緒で用意しての交換会。誰のところに何が行くのか、それはサンタクロースにも分からない。
みんなで箱を回し、せーので開く。
「時雨ちゃんに届くプレゼントは誰のかなー? 楽しみっすねー」
開けると出てきたのは、マグカップとクリスマスカード。
「それは僕のだね。手作りのプレゼントは思いつかなかったから、カードにしてみたよ」
「きせきの女子力には勝てない気がする……!」
そうは言うものの、開くとサンタが飛び出してくる結構凝った代物だ。フィオナなどはそれを見て、高い女子力に膝を屈していたりする。
「オレのはなんだ……? あ、眼鏡だ」
「ファッショングラスっすよ。簡単に言えば伊達眼鏡っす」
時雨の用意したのはしゃれた雰囲気をした赤いカラーのファッショングラス。奔放な雰囲気を持つ遥だが、つけてみると意外と似合っていた。
「オレのプレゼントは誰のところ行ったんだろうな。オレのは……フフフ、いいものさ! 素晴らしいものであることは保障しよう!」
「遥のいいもの? ちょっと気になるわね。あら? これは?」
早速眼鏡をつけてポーズを決める遥。それを気にしていた桃だったが、出てきた巻き藁に目を丸くする。
「それこそ『お手製携帯マキワラ』! どこでも鍛錬できるぞ!」
遥らしいプレゼントに桃は吹き出してしまう桃。わざわざ聞く手間は省けたが、これには笑ってしまう。
「これは桃ちゃんのかな」
「そうね。日記にするのも、何かメモするにも、ひとつあると便利よ。一緒に押し花の栞も付けてみたわ」
笑っていた桃の荷物を覗き込むようにしたきせきの手にあるのは日記帳だ。桃の用意したものである。
その内に女子力の限界に打ちひしがれていたフィオナも復帰してプレゼントを開ける。
「残ってるのは2つだから……」
「ここで交換の形になったみたいですね」
奇しくもフィオナと燐花の間でプレゼントが行きかう形になったようだ。
フィオナからはクラシックな雰囲気の目覚まし時計。
燐花の用意したのは、雪をかたどった万年筆だ。
「メリークリスマスです。今日は楽しいひと時をありがとうございます」
プレゼントを受け取って、燐花は素直な自分の気持ちを口にする。来年には自分の口下手も治るだろうか?
それは分からない。
だけど、みんなで作ったクリスマスは、彼女自身にも、そしてこの場にいる者たちに、大切な思い出として残っていくことだろう。
サンタクロースがやってくる姿は誰にも知られないものだ。
そして、今日クリスマス。パーティーの会場にも可愛らしいサンタが2人やって来た。
「ふふ……! 頑張りましょうね! 鈴鳴ちゃん!」
「うん、腕が鳴りますね!」
誰よりも早く会場入りしたのは、たまきと鈴鳴だ。まだ会場にある料理も飾りもほんの一部だけ。それをこっそり完成させるためにやって来た。
飾りつけは簡単な作業ではないが、みんなの驚く顔を思えば気分も盛り上がる。
モールや風船、リボンや花で飾りつけを行うと、見る間に部屋はパーティー会場へと変わっていく。そして、2人が最後に取り出したのは大きな星。
「ふふ……! 飾り付け係の特権ですね!」
たまきの手に握られたのは金色の、鈴鳴の手に握られたのは銀色の、厚紙で作った大きな星である。
「ふふ、そうですよね。これくらいの自己主張はしてもいいですよねっ」
せっかくきれいに飾り付けたのだ。ちょっと位のわがままは許されてもいい。
そして、一通り飾りつけが済んだのを見ると、2人はそっと会場を後にする。その際にこっそり、準備されていたサンドイッチを摘まむ。
サンタクロースだって、お腹は空くのだ。
それからしばらくして、飾りつけのために覚者達が入ってくる。彼らは一様に内装が終わっていることに驚きの声を上げる。たまきと鈴鳴もちゃっかりその中に紛れていた。
そして、皆が持ってきた飾りつけをどこに飾るかでまたワイワイと相談が始まる。
中でも那由多とジャックは、持ってきた飾りつけをツリーに飾ろうとしていた。
「ジャック、飾りつけお願いしてもええ?」
「クリスマスの飾りつけ、ね! いいぜ」
飾りを渡そうとする那由多。しかし、ジャックはそれを受け取ると彼女をツリーの前に立たせる。
「えーっと……触るで? 女の子あんま触りたくないんやけど……まあいいか!」
「って、うちに飾りつけ……!?」
見る間にクリスマスツリーへと変えられていく那由多。しかし、そんな彼女の当惑などどこ吹く風で、ジャックの飾りつけは進んでいった。
FIVEの貸し会議室など、覚者にとっては見慣れたもの。だけど、今日は違う。
クリスマスには魔法がかけられる。
無味乾燥な部屋も輝くパーティー会場に姿を変えるのだ。
「ちょっと大きいかもしれないけど、それはご愛嬌だよね?」
禊が持ってきた特大ケーキは、クリスマスという名の王国の中心に鎮座する城のようだ。
楽しまなければ損とばかり、禊は会場の中に飛び込んでいく。みんながどんな料理を作ってきたのかも気になるところだ。
主催した夢見の麦も料理話に応えてくれる。ちょうど料理談義がしたかったところ。男勝りな自分を嫌いでないが、女らしさが欲しいのもまた事実。
だがしかし、そんな禊の乙女心と関係なく、パーティーは始まるのだった。
●
こうして始まったパーティー。
手作りというテーマからか、皆わいのわいのと飾りつけを楽しみながらパーティーに参加している。
「きれいに飾り付けられた那由多」もその一つと言えるだろう。
「クリスマスリースやね! こんなんして貰ったの初めてや。ほな、お礼に抹茶ケーキ食べさせてあげる、はい、口あけて」
なんのかんので那由多は気に入ったようだ。浮き浮きした表情でジャックに抹茶ケーキを差し出す。
「ん! メリークリスマス。お? 那由多、指にクリームついてんよ」
そう言ってジャックは那由多の指をくわえて吸い取る。那由多が反射的にびんたをしてしまったのは言うまでもなく。
会場を見渡す凜音は後ろから袖を引かれる。何事かと見てみれば、そこにいたのはいつもおにぃと慕ってくる椿花だった。
「凜音ちゃん凜音ちゃん、これ! スネコスリのクッキーなんだぞ! ふわふわを表現するのが大変だったんだぞ!」
元気にはしゃぐ椿花の手に握られているのは……奇妙な不定形の物体。
実際のすねこすりとどこが似ているのか、共通点を見つけ出すのは中々に手間のかかる作業だろう。
ちゃんとすねこすりと同じように目もある。牙のようなものもある。後者はすねこすりになかった気もするが。
と言うか言われなければ、椿花以外にこれをすねこすりだと理解できるものはいないだろう。控えめに言って、ウネウネうにょにょとした何かだ。
だからと言って、それを正直に告げるほど凜音は非情な人間ではない。
「俺に作ってくれたのか? ありがとうな」
笑顔で受け取り、椿花の頭を撫でる。そして内心、これもアートなのかと思いつつ持ってきたジンジャーマンクッキーを渡す。
「そうだ……えっと、凜音ちゃん……メリークリスマス、なんだぞ!」
満面の笑みでお祝いの言葉を口にする椿花。
「ああ、メリークリスマス。じっとしてろな」
すると、凜音も彼女の髪にそっと髪飾りをつけて、祝福の言葉を返す。
いつまでもこうやって子ども扱いはできないのだろうと、心のどこかで感じながら。
こうして2人の時間は流れていく。
千歳と数多の兄妹は、2人で回りにジンジャーマンクッキーを配っていた。
最初は飾りつけにと用意していたのだが、作りすぎたので余ってしまったのだ。最初は困った顔をしていた千歳だったが、みんなに配り終えてほっとした表情を浮かべる。
ジンジャーマンクッキーはツリーに飾ればかわいいし、気づいた人が食べればおいしい。それにこうやって人に配れば楽しいと、三度の嬉しさがあるのだ。
「あぁ、そうだ。そういえば数多にプレゼントがあるんだよ」
ひと段落したところで、千歳は持ってきたプレゼントの箱を数多に渡す。
「え?ほんとに?! にーさまぷれぜーんと!」
すると、千歳はもらった箱を高く掲げ、くるくる回って喜ぶ。そして、喜びが落ち着いたところで今度は彼女から兄へプレゼントを渡す。自分をプレゼント、としたかったのはここだけの秘密だ。
「はい、にーさま、メリークリスマス。いっせーのであけましょ?」
「数多からも? ありがとう、なんだろう。それじゃあ早速開けてみようか」
同時に開けると、それぞれ出てきたのはピンクと白のマフラー。これには互いに顔を見合わせて、かぶってしまったことを笑ってしまう。だけど、そのかぶりだって心地いい。
2人してマフラーを巻き、ちょっとポーズをとってみる。
「良いねえ、良く似合ってるよ。俺はどうだい? 似合ってるかな?」
「えへへ、にーさまもすごく似合ってる! イケメン! かっこいい! 好き!」
兄妹仲睦まじく、互いの絆を確かめ合う。
クリスマスはそのためにあるのかもしれない。
「ま、こんなもんか」
翔は自分が持ってきた折り紙の飾りつけを眺めて、満足そうに頷く。サンタに雪だるまに星と葉っぱ、そしてベルだ。学校の図書室で調べて作ったにしては良い出来だと、自分でも思う。
その時、相棒の紡の姿が目に入った。翔とは真逆にしょんぼりしたような顔をしている。
それもそのはず。
紡も手作りパーティーと勢いこんで作ってみたのは折り紙リース。出来るだけ見栄え良いのをくっつけてきたけど、完成品は少しヨレヨレだ。
これはアカンと作ってみたホワイトチョコと星型スプリンクルで飾ったマシュマロポップも、やっぱり不細工。自分のぶきっちょさ加減に苦笑いするしかない。
「ん?紡は折り紙でリース折ってきたのか! 偶然だなー、オレも折り紙で……リース、結構シンプルだな」
そこへ明るく声をかけにやって来る翔。紡はばつの悪そうな表情を浮かべる。
そこで翔は自分の作ってきた折り紙を紡の作った折り紙に張り付けたのだ。
「えへへ、力を合わせたらかっこよくなったよな!」
2人の合作になったリースに紡も顔をほころばせ、満面笑顔で翔を抱きしめる。おまけに頭も撫でてしまう。
「翔、ありがとー」
あとは素直にパーティーを楽しむだけ。持ってきたマフラーとストラップを交換し、お菓子とジュースで乾杯だ。
幼い子供であっても覚者として戦うことは消して珍しくないこの世界。
だけど、紡はこうやって過ごせるのも悪くない。平和なひと時にそう思った。
●
「「「メリークリスマス!!!」」」
会場の中で【赤爺】グループの声が唱和する。
「メリークリスマース!! 今日はっ、楽しいっ、クリスマスッ、イエー! さあパーティーだ! ケーキだ! シャンパンだ!」
はしゃぐ遥の姿からは、とても普段の戦いの姿など想像もつかない。そんな年若い仲間たちの空いたグラスに、桃はシャンメリーを注いで回る。
今日の集まりは皆で持ち寄った手料理でお祝いだ。
「いっぱい騒いで盛り上がって、楽しいクリスマスにしようね!」
にこにこと笑いながら、きせきは燐花の持ってきたブラウニーケーキを手にする。
「お口に合えばいいのですが……」
当の持ち込んだ燐花はどことなく気恥ずかしそうな感じだ。
一応状況に合わせたものをチョイスしたつもりだが、割と世俗とずれたところがある彼女だ。ちょっと不安が残る。
「私はサンドイッチを持参したぞ! 得意料理だ!」
そう言って紅茶と一緒にサンドイッチをふるまうフィオナ。サンドイッチは挟むだけの代物だが、あえてここでは言うまい。
とはいえ、カフェバイトで鍛えたのは伊達ではないのだ。出来は様になっている。
「おっ、フィオナは手製の食い物と飲み物を持参か? お前の紅茶はうまいんだよなー」
「どうだ、遥! 参ったか!」
遥にはムキになってしまうフィオナ。だが、遥の方は余裕の表情だ。
「サンドイッチも綺麗に出来てるじゃん。やりおるなこいつ! ウェイトレスのアルバイトで女子力を高めおったな! 認めよう、ナイス女子力!」
2人のどこかほっこりするやり取りを眺めながら、桃は手作りのおはぎを差し出す。
「ちょっとクリスマスには場違いだけど、味は保証するわよ」
桃の言葉の通り、甘いもの好きの時雨も満足そうな顔をしている。
それを見て、今度は桃が食べるほうに回る。狙いは燐花のクッキーとフィオナのサンドイッチだ。
「燐花さんのお菓子……今度、作り方教えてほしいわ。美味しいし、フィオナさんの紅茶ともあってほっとする」
仲良い仲間と集まって、おいしい料理もあれば自然と会話も弾むもの。こうした場所が苦手な燐花も、気後れしながら楽しんでいる。
そして、宴もたけなわと言ったところでいよいよメインのイベント。プレゼント交換の時間がやって来た。
「プレゼントコウカーン!」
時雨の宣言と同時にプレゼントの交換会が始まる。
それぞれ内緒で用意しての交換会。誰のところに何が行くのか、それはサンタクロースにも分からない。
みんなで箱を回し、せーので開く。
「時雨ちゃんに届くプレゼントは誰のかなー? 楽しみっすねー」
開けると出てきたのは、マグカップとクリスマスカード。
「それは僕のだね。手作りのプレゼントは思いつかなかったから、カードにしてみたよ」
「きせきの女子力には勝てない気がする……!」
そうは言うものの、開くとサンタが飛び出してくる結構凝った代物だ。フィオナなどはそれを見て、高い女子力に膝を屈していたりする。
「オレのはなんだ……? あ、眼鏡だ」
「ファッショングラスっすよ。簡単に言えば伊達眼鏡っす」
時雨の用意したのはしゃれた雰囲気をした赤いカラーのファッショングラス。奔放な雰囲気を持つ遥だが、つけてみると意外と似合っていた。
「オレのプレゼントは誰のところ行ったんだろうな。オレのは……フフフ、いいものさ! 素晴らしいものであることは保障しよう!」
「遥のいいもの? ちょっと気になるわね。あら? これは?」
早速眼鏡をつけてポーズを決める遥。それを気にしていた桃だったが、出てきた巻き藁に目を丸くする。
「それこそ『お手製携帯マキワラ』! どこでも鍛錬できるぞ!」
遥らしいプレゼントに桃は吹き出してしまう桃。わざわざ聞く手間は省けたが、これには笑ってしまう。
「これは桃ちゃんのかな」
「そうね。日記にするのも、何かメモするにも、ひとつあると便利よ。一緒に押し花の栞も付けてみたわ」
笑っていた桃の荷物を覗き込むようにしたきせきの手にあるのは日記帳だ。桃の用意したものである。
その内に女子力の限界に打ちひしがれていたフィオナも復帰してプレゼントを開ける。
「残ってるのは2つだから……」
「ここで交換の形になったみたいですね」
奇しくもフィオナと燐花の間でプレゼントが行きかう形になったようだ。
フィオナからはクラシックな雰囲気の目覚まし時計。
燐花の用意したのは、雪をかたどった万年筆だ。
「メリークリスマスです。今日は楽しいひと時をありがとうございます」
プレゼントを受け取って、燐花は素直な自分の気持ちを口にする。来年には自分の口下手も治るだろうか?
それは分からない。
だけど、みんなで作ったクリスマスは、彼女自身にも、そしてこの場にいる者たちに、大切な思い出として残っていくことだろう。
■シナリオ結果■
成功
■詳細■
MVP
なし
軽傷
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし
