≪聖夜2016≫孤児院の子供達にプレゼントを
●聖夜の夜に子供達と……
とある孤児院。
そこでは、10人余りの子供達が生活している。
境遇は様々な子供達だが、共通しているのは妖に家族を殺害されたこと。
それでも、子供達は前向きにここで日々を過ごしている。
「うーん……」
孤児院の院長は40代女性。ただ、スタッフの多くは20代。クリスマスには予定を持つ者も多く、この日スタッフの手が足りずに困ってしまっている。
1日くらいなら、家事が滞っても翌日に頑張ればどうにかなるだろうが……。
子供達はクリスマスを楽しみにしている。この日に子供達に何もしてやれないのは心苦しいと、院長は考えていた。
「せめて、プレゼントくらいは用意しておきたいけれど」
ただ、子供達もそれぞれ好きなもの嫌いなものはあるだろう。全員を喜ばせるようなプレゼントがあれば良いのだが……。
「うーん……」
院長は再び、頭を抱えて悩んでしまうのである。
考古学研究所にて。
師走、年の瀬ということで、皆忙しなく駆け回っている。
研究所の職員達もなかなか仕事が片付かないのか、廊下を軽く走っていた。出会い頭にぶつかる危険があるので、廊下は走るべきではないのだが。
そんな中、歩く覚者は、ばったりととある女性に出会う。
「あっ、皆さんに折り入ってお願いが……」
『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)は見かけた覚者へと声をかける。彼女はどうやら1人1人に声をかけているらしい。
この時期、皆、様々な予定があるだろう。そんな忙しい時期というのは分かった上で、お願いしたいのだと彼女は頭を下げる。
「よろしければ、私と一緒に孤児院に来ていただきたいのですわ」
話によると、静音は知人から紹介された孤児院へと向かい、そこの子供達と一緒にクリスマスを過ごす予定だという。
「孤児院の子供12人。上は14歳から、下は赤ん坊まで。赤ん坊は孤児院のスタッフが見てくれるそうですが、10人の子供達のお相手をお願いされてまして……」
子供の男女比は丁度半々。できるだけ、全員を楽しませるような催しができればいいが、子供達の考えや趣味もバラバラということもあるので、なかなか一筋縄ではいかないかもしれない。
「あと、子供達はプレゼントも楽しみにしているようですから、何か用意したいと思っていますわ」
子供達が喜ぶ何かをと、静音も頭を悩ませている。現状は料理を振舞うことでプレゼント代わりにと考えているようだ。彼女には正直、男の子が何に喜んでくれるかが分からない。参加する覚者に名案があれば、それに乗りたいと思っているのだが……。
「ご都合が合うようでしたら、よろしくお願いしますわ」
静音はぺこりと頭を下げ、その場から去って行ったのだった。
とある孤児院。
そこでは、10人余りの子供達が生活している。
境遇は様々な子供達だが、共通しているのは妖に家族を殺害されたこと。
それでも、子供達は前向きにここで日々を過ごしている。
「うーん……」
孤児院の院長は40代女性。ただ、スタッフの多くは20代。クリスマスには予定を持つ者も多く、この日スタッフの手が足りずに困ってしまっている。
1日くらいなら、家事が滞っても翌日に頑張ればどうにかなるだろうが……。
子供達はクリスマスを楽しみにしている。この日に子供達に何もしてやれないのは心苦しいと、院長は考えていた。
「せめて、プレゼントくらいは用意しておきたいけれど」
ただ、子供達もそれぞれ好きなもの嫌いなものはあるだろう。全員を喜ばせるようなプレゼントがあれば良いのだが……。
「うーん……」
院長は再び、頭を抱えて悩んでしまうのである。
考古学研究所にて。
師走、年の瀬ということで、皆忙しなく駆け回っている。
研究所の職員達もなかなか仕事が片付かないのか、廊下を軽く走っていた。出会い頭にぶつかる危険があるので、廊下は走るべきではないのだが。
そんな中、歩く覚者は、ばったりととある女性に出会う。
「あっ、皆さんに折り入ってお願いが……」
『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059)は見かけた覚者へと声をかける。彼女はどうやら1人1人に声をかけているらしい。
この時期、皆、様々な予定があるだろう。そんな忙しい時期というのは分かった上で、お願いしたいのだと彼女は頭を下げる。
「よろしければ、私と一緒に孤児院に来ていただきたいのですわ」
話によると、静音は知人から紹介された孤児院へと向かい、そこの子供達と一緒にクリスマスを過ごす予定だという。
「孤児院の子供12人。上は14歳から、下は赤ん坊まで。赤ん坊は孤児院のスタッフが見てくれるそうですが、10人の子供達のお相手をお願いされてまして……」
子供の男女比は丁度半々。できるだけ、全員を楽しませるような催しができればいいが、子供達の考えや趣味もバラバラということもあるので、なかなか一筋縄ではいかないかもしれない。
「あと、子供達はプレゼントも楽しみにしているようですから、何か用意したいと思っていますわ」
子供達が喜ぶ何かをと、静音も頭を悩ませている。現状は料理を振舞うことでプレゼント代わりにと考えているようだ。彼女には正直、男の子が何に喜んでくれるかが分からない。参加する覚者に名案があれば、それに乗りたいと思っているのだが……。
「ご都合が合うようでしたら、よろしくお願いしますわ」
静音はぺこりと頭を下げ、その場から去って行ったのだった。

■シナリオ詳細
■成功条件
1.子供達を楽しませること。
2.子供達にプレゼントをあげること。
3.なし
2.子供達にプレゼントをあげること。
3.なし
●参加方法
孤児院で、子供達のお相手を願います。
子供達はいずれも妖によって家族を失った子供達ばかりです。
赤ん坊の男女1人ずつを除いて、
子供達10人と触れ合っていただければと思います。
合わせてプレゼントの用意をお願いしたいですが、
皆、好きなものはバラバラなので、
プレゼントはうまく考える必要があるでしょう。
○男の子……赤ん坊含めて6人
・大樹(13歳、外での付き合いも多く、孤児院に煩わしさを覚えている様子)
・健(11歳、スマホゲームに夢中)
・哲平(10歳、子供達で唯一覚者。械の因子)
・拓郎(7歳、まだまだ外で遊びたいさかり)
・真吾(4歳、どこに行くにも誰かと一緒の甘えたいさかり)
・勇(1歳、赤ん坊、ヨチヨチ歩き初心者)
○女の子……こちらも、赤ん坊を含めて6人
・美咲(14歳、まとめ役。でも、年上の男性に憧れて)
・恵梨香(11歳、健が気になる様子)
・エリーゼ(9歳、フランス人。日本語は片言レベル)
・咲(8歳、お人形大好き)
・莉央(6歳、お姉さんぶりたいお年頃)
・はるか(0歳、はいはい上手)
●補足
現在販売されているクリスマスケーキ(4、6、20号)を
装備している状況であれば、子供達への好感度が上がります。
是非とも、子供達に振舞ってあげてください。
(アイテムとして使用されることはありません。
また、子供達からささやかなお礼があります)
●NPC
河澄・静音がご一緒させていただきます。
女の子となら、楽しく遊べると思っておりますが、
男の子が楽しめることまで考えて頭を悩ませております。
プレゼントは美味しい料理をと、
ローストチキン、ローストビーフなどのメインデッシュと、
ケーキ、ブッシュ・ド・ノエルなどの
デザート系を作ろうと考えております。
それでは、よろしくお願いします。
状態
完了
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
金:0枚 銀:0枚 銅:3枚
相談日数
6日
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
100LP[+予約50LP]
参加人数
4/8
4/8
公開日
2017年01月03日
2017年01月03日
■メイン参加者 4人■

●孤児院に向かって……
とある都市の郊外を1台の車が走っていく。
それには女性ばかりの5人の覚者が乗っており、とある孤児院を目指していた。
なんでも、そこに引き取られた子供達は、家族を妖によって失った子供達が生活していると言う。
「妖によって、不幸になった子供達……。せめて、クリスマスくらいは楽しい時間を過ごしてほしいわ」
『月々紅花』環 大和(CL2000477) は子供達を喜ばせる為にと、プレゼントを見繕ってきていた。ただ、男の子用は何が喜ぶかが難しいらしく、そちらは『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119) に託していたようである。
「プレゼント、お任せになっちゃって、ごめんなさいなのなの。あわわー」
野武 七雅(CL2001141) は、プレゼント選びをしていた2人に頭を下げる。凛が「気にすんな」と、そんな彼女の頭を優しく撫でていた。
「あたしは両親共に健在やから、孤児の子達の気持ちとかは想像しかでけんけど……」
弾けそうな程に胸が大きく、かなりスタイルを持つ凛だが、性格は男性真っ青なほどに男前である。ただ、手持ちで男女全員が楽しめそうなものを考え、凛はプレゼント選びに苦慮していたようだ。
「それでも、クリスマスを楽しく過ごせるように手伝えたらええなとは思うわ」
悩んでいても時間が過ぎ行くだけ。クリスマスというこの日は待ってくれない。
「とにかくやってみるか」
「ミラノもがんばるの~」
ククル ミラノ(CL2001142) も凛の言葉に頷き、気合を入れる。
「静音おねーちゃん、クリスマス会のお手伝い、なつねもがんばるの!」
七雅もまた意気込みを見せる。彼女は『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059) が用意する料理の手伝いと、孤児院をクリスマス仕様に飾り付けしたいと意気込む。
「はい、よろしくお願いしますわ」
忙しい時期に駆けつけてくれた覚者達に、静音は心強さを覚えるのだった。
●子供達との一時
孤児院に到着した覚者達はまず、院長の出迎えを受ける。その際、メンバー達は大和の用意したケーキを渡した後、子供達と対面した。
覚者の来訪に、子供達の反応は様々。年少組は覚者の姿に驚いたり、遊ぼうとせがんだり。
子供の中で唯一の覚者の哲平は、覚者の来訪に興味津々といった様子。多くは暦の因子持ちだったこともあり、明らかに獣の因子と分かる外見のミラノに興味を示していたようである。
一方で、年長組は割とドライな子が多めで、敢えてそっぽを向いたり、スマホに夢中だったり。
「ほら、覚者の皆さんが来てくれたんだから、挨拶しなよ」
年長の女の子美咲が、覚者に興味のなさそうなメンバーにも頭を下げさせる。男の子の年長組も彼女には頭が上がらないようで、渋々覚者達へと頭を下げた。
「「「ようこそ、F.i.V.E.の方々!!」」」
覚者側も各自挨拶を交わすと、凛が早速、男の子達に庭へと出るよう促し、おもちゃの刀を男の子達へと渡す。
「よっしゃ、チャンバラごっこするか? 姉ちゃんに一本でも打ち込めたらええもんやるで。全員纏めてかかって来ぃや」
これも、挨拶とほぼ同じ反応が返ってくる。年少組が率先して刀を握り、年長組は難儀そうな表情を返す。
「えー、兄ちゃん達やろーよ」
「えーもの、えーもの!」
年少組の拓郎や真吾にせがまれては、さすがに大人気ない反応をできないのか、渋々と行った具合に男性陣は外へと出て行ったようだ。
静音が院長と料理の用意へと向かうと、大和もその手伝いをと手を上げていた。
「お部屋を綺麗に飾りつけしたいの!」
七雅は部屋に残る女の子達へと呼びかける。
「折り紙でわっかを作って、クリスマスツリーを作って……、一人だと大変すぎるの!」
折角のクリスマスなのだから、部屋を綺麗に飾り付けしたいと七雅は提案する。女の子達の中に入れば、彼女も年長グループに入る年だ。
「みんなで飾りつけした方が楽しいの」
そうして、七雅は女の子達に折り紙を差し出すと、年長の美咲が彼女の頭を撫でる。
「ありがとう、のぶなが」
「のぶながって言うなー!」
そんな七雅の姿に女性陣は笑い声を上げ、飾り付けを始めるのだった。
外に出た凛と男の子達はチャンバラごっこの真っ最中だ。
おもちゃの刀で、切りかかってくる男の子達。凛は手刀のみを構え、一切手出しをしない。子供達と触れ合うのが目的だからだ。
しかしながら、男の子達は、徐々に戦いに熱を帯びてきていて。
子供達の中で唯一の覚者、械の因子を持つ哲平は自分の力がどれだけ同じ覚者に通用するか興味を抱いて全力で切りかかってきていたし、序盤乗り気ではなかった年長組も熱くなってきて、本気で切りかかってくる。
凛は頃合いを見て、何気なく一撃を食らう。それは、哲平の一振りだった。
「中々やるなぁ。そんなら約束や」
頭をかきつつ、凛が彼らに渡したのは、『ファイヴ警察24時』という古いアーケードゲーム。年少組は挙って、それに興味を抱いてプレイし始めていた。
それでも、覚者の哲平だけは、ゲームよりも覚者に対して興味を示しており、凛が見せる居合いの型に目を輝かせていたようだ。
「ほらほら、男の子達も手伝って欲しいの」
七雅はそんな男の子達へと声をかけ、風船を差し出す。彼女は膨らんだ風船や、女の子達が作った紙製の鎖を受け取り、部屋に飾り付けていく。
年長組メンバーは、年少組へと飾り付けの方法を教える。フランス人のエリーゼは意思疎通に困りながらも、上手く鎖を作って笑顔を浮かべていた。
飾りつけは日が暮れる時間まで及んで。部屋はすっかりクリスマス仕様へと様変わり。テーブルの上には、孤児院の子供達と覚者の名前が書かれた折り紙の人形が。
「『みんなで楽しい空間を作る』のなつねぷろじぇくと、お楽しみできたなら嬉しいの」
男女が、孤児院の皆が一緒になって模様付けしたこの一時。それが提供できたのなら。そして、皆でわいわいした思い出になったのならと七雅が告げると、子供達もほっこりとした笑みを浮かべていた。
飾り付けられたクリスマスツリーの下には、いつの間にか大和が女の子達に向けたプレゼントが。彼女は女の子達の為にとそれぞれ情報に応じた贈り物を用意していた。
まだ赤ん坊のはるかには、温かいおくるみ。寒い夜でも安心できるようにと配慮したものだ。歩き始めたばかりの勇が一緒に横になって、2人ですやすやと眠っている。
大人ぶりたい莉央には、ピンク色のスイーツデコレーションが可愛いらしい手鏡。彼女はそれを興味ありげに眺め、お姉さんらしい自身の姿を確認していた。
お人形大好きな咲と、フランス人のエリーゼにはお揃いの人形。2人で仲良くお人形ごっこすることで、エリーゼがもっと日本語が上手になるようにとの願いも込めている。
一緒にいる男の子が気になる恵梨香には、恋を成就する願いが込められたピンクのうさぎ。五麟学園でも人気のアイテムだからと、大和はセレクトしていたのだ。
そして、年長の美咲には、爽やかな香りの淡い色付きリップ。いつも子供達を纏めている彼女も女の子。お化粧に興味を持ち始めているだろうと大和は選んだが、彼女は嬉しそうに莉央に手鏡を借りてそれを唇に塗ってみる。その自らの姿に、美咲は顔を赤らめていた。
女の子達は皆、大和の贈り物を気に入ったようで、大和は嬉しそうにしていたようだ。
●楽しい食事タイム、そして……
「さあ、できましたよ」
「たくさん作りましたから、どんどん食べてくださいね」
院長と静音がたくさんの料理を運んでくる。それを、七雅やミラノも手伝っていた。
部屋の模様付けを頑張った皆の為にと、温かいスープ。そして、育ち盛りな子供達の為に、ローストチキン、ローストビーフといったメインデッシュが続く。
「スマホゲーばっかりしてる場合ちゃうで!」
こういうときでも、スマートフォンに夢中な健を凛が嗜めて席へとつかせる。
さりげに子供達の並びをランダムにするように見せかけ、健のそばに恵梨香を座らせると、彼女はもじもじとしながらも健と語らっていた。
そして、皆にジュースを注いでから、大和と七雅が立ち上がる。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス! 乾杯なの!」
クラッカーを鳴らし、楽しいパーティーの始まり。テーブルを囲む笑顔を、大和は微笑ましそうに見つめた。
凛はその光景をカメラで撮影する。彼女は飾り付けのタイミングでも、時折シャッターを切っていた。
食後には、静音が作ったケーキやブッシュ・ド・ノエルを口にする子供達。そこで凛は、時折顔を背ける男の子の年長、大樹の様子が気になったようで。
「あんたとは少し違うけど、あたしの所も子供の弟子とか結構おって、面倒みたりするの煩わしかった事はあるけどな」
すでに、気持ちは外へと向いている少年へ、凛は自分の言葉で想いを伝える。
「でも、それも自分の大切な人生の一部やと思うんよ」
煩わしさはあるかもしれないが、この孤児院には楽しいことも沢山あるのだと、彼はこの一日で実感したはず。
「何時かあんたもそう思えるとええな」
凛は複雑そうな表情をする大樹を、ぱしゃりと撮っていた。
(つらい記憶は残っちゃうと思うけど、少しずつ楽しい思い出も増やしていってほしいの)
食後はミニゲームを始める子供達。皆、精一杯に頑張っている。七雅もまた、もっともーっと頑張ろうと心に決めるのだった。
後日。
孤児院に送られた写真。それは、凛からの贈り物だ。
「遅くなったけれど、『思い出』のプレゼント、受け取ってな」
編集され、送られたアルバム。それは子供達の思い出として、孤児院に残り続けることだろう。
とある都市の郊外を1台の車が走っていく。
それには女性ばかりの5人の覚者が乗っており、とある孤児院を目指していた。
なんでも、そこに引き取られた子供達は、家族を妖によって失った子供達が生活していると言う。
「妖によって、不幸になった子供達……。せめて、クリスマスくらいは楽しい時間を過ごしてほしいわ」
『月々紅花』環 大和(CL2000477) は子供達を喜ばせる為にと、プレゼントを見繕ってきていた。ただ、男の子用は何が喜ぶかが難しいらしく、そちらは『緋焔姫』焔陰 凛(CL2000119) に託していたようである。
「プレゼント、お任せになっちゃって、ごめんなさいなのなの。あわわー」
野武 七雅(CL2001141) は、プレゼント選びをしていた2人に頭を下げる。凛が「気にすんな」と、そんな彼女の頭を優しく撫でていた。
「あたしは両親共に健在やから、孤児の子達の気持ちとかは想像しかでけんけど……」
弾けそうな程に胸が大きく、かなりスタイルを持つ凛だが、性格は男性真っ青なほどに男前である。ただ、手持ちで男女全員が楽しめそうなものを考え、凛はプレゼント選びに苦慮していたようだ。
「それでも、クリスマスを楽しく過ごせるように手伝えたらええなとは思うわ」
悩んでいても時間が過ぎ行くだけ。クリスマスというこの日は待ってくれない。
「とにかくやってみるか」
「ミラノもがんばるの~」
ククル ミラノ(CL2001142) も凛の言葉に頷き、気合を入れる。
「静音おねーちゃん、クリスマス会のお手伝い、なつねもがんばるの!」
七雅もまた意気込みを見せる。彼女は『頑張り屋の和風少女』河澄・静音(nCL2000059) が用意する料理の手伝いと、孤児院をクリスマス仕様に飾り付けしたいと意気込む。
「はい、よろしくお願いしますわ」
忙しい時期に駆けつけてくれた覚者達に、静音は心強さを覚えるのだった。
●子供達との一時
孤児院に到着した覚者達はまず、院長の出迎えを受ける。その際、メンバー達は大和の用意したケーキを渡した後、子供達と対面した。
覚者の来訪に、子供達の反応は様々。年少組は覚者の姿に驚いたり、遊ぼうとせがんだり。
子供の中で唯一の覚者の哲平は、覚者の来訪に興味津々といった様子。多くは暦の因子持ちだったこともあり、明らかに獣の因子と分かる外見のミラノに興味を示していたようである。
一方で、年長組は割とドライな子が多めで、敢えてそっぽを向いたり、スマホに夢中だったり。
「ほら、覚者の皆さんが来てくれたんだから、挨拶しなよ」
年長の女の子美咲が、覚者に興味のなさそうなメンバーにも頭を下げさせる。男の子の年長組も彼女には頭が上がらないようで、渋々覚者達へと頭を下げた。
「「「ようこそ、F.i.V.E.の方々!!」」」
覚者側も各自挨拶を交わすと、凛が早速、男の子達に庭へと出るよう促し、おもちゃの刀を男の子達へと渡す。
「よっしゃ、チャンバラごっこするか? 姉ちゃんに一本でも打ち込めたらええもんやるで。全員纏めてかかって来ぃや」
これも、挨拶とほぼ同じ反応が返ってくる。年少組が率先して刀を握り、年長組は難儀そうな表情を返す。
「えー、兄ちゃん達やろーよ」
「えーもの、えーもの!」
年少組の拓郎や真吾にせがまれては、さすがに大人気ない反応をできないのか、渋々と行った具合に男性陣は外へと出て行ったようだ。
静音が院長と料理の用意へと向かうと、大和もその手伝いをと手を上げていた。
「お部屋を綺麗に飾りつけしたいの!」
七雅は部屋に残る女の子達へと呼びかける。
「折り紙でわっかを作って、クリスマスツリーを作って……、一人だと大変すぎるの!」
折角のクリスマスなのだから、部屋を綺麗に飾り付けしたいと七雅は提案する。女の子達の中に入れば、彼女も年長グループに入る年だ。
「みんなで飾りつけした方が楽しいの」
そうして、七雅は女の子達に折り紙を差し出すと、年長の美咲が彼女の頭を撫でる。
「ありがとう、のぶなが」
「のぶながって言うなー!」
そんな七雅の姿に女性陣は笑い声を上げ、飾り付けを始めるのだった。
外に出た凛と男の子達はチャンバラごっこの真っ最中だ。
おもちゃの刀で、切りかかってくる男の子達。凛は手刀のみを構え、一切手出しをしない。子供達と触れ合うのが目的だからだ。
しかしながら、男の子達は、徐々に戦いに熱を帯びてきていて。
子供達の中で唯一の覚者、械の因子を持つ哲平は自分の力がどれだけ同じ覚者に通用するか興味を抱いて全力で切りかかってきていたし、序盤乗り気ではなかった年長組も熱くなってきて、本気で切りかかってくる。
凛は頃合いを見て、何気なく一撃を食らう。それは、哲平の一振りだった。
「中々やるなぁ。そんなら約束や」
頭をかきつつ、凛が彼らに渡したのは、『ファイヴ警察24時』という古いアーケードゲーム。年少組は挙って、それに興味を抱いてプレイし始めていた。
それでも、覚者の哲平だけは、ゲームよりも覚者に対して興味を示しており、凛が見せる居合いの型に目を輝かせていたようだ。
「ほらほら、男の子達も手伝って欲しいの」
七雅はそんな男の子達へと声をかけ、風船を差し出す。彼女は膨らんだ風船や、女の子達が作った紙製の鎖を受け取り、部屋に飾り付けていく。
年長組メンバーは、年少組へと飾り付けの方法を教える。フランス人のエリーゼは意思疎通に困りながらも、上手く鎖を作って笑顔を浮かべていた。
飾りつけは日が暮れる時間まで及んで。部屋はすっかりクリスマス仕様へと様変わり。テーブルの上には、孤児院の子供達と覚者の名前が書かれた折り紙の人形が。
「『みんなで楽しい空間を作る』のなつねぷろじぇくと、お楽しみできたなら嬉しいの」
男女が、孤児院の皆が一緒になって模様付けしたこの一時。それが提供できたのなら。そして、皆でわいわいした思い出になったのならと七雅が告げると、子供達もほっこりとした笑みを浮かべていた。
飾り付けられたクリスマスツリーの下には、いつの間にか大和が女の子達に向けたプレゼントが。彼女は女の子達の為にとそれぞれ情報に応じた贈り物を用意していた。
まだ赤ん坊のはるかには、温かいおくるみ。寒い夜でも安心できるようにと配慮したものだ。歩き始めたばかりの勇が一緒に横になって、2人ですやすやと眠っている。
大人ぶりたい莉央には、ピンク色のスイーツデコレーションが可愛いらしい手鏡。彼女はそれを興味ありげに眺め、お姉さんらしい自身の姿を確認していた。
お人形大好きな咲と、フランス人のエリーゼにはお揃いの人形。2人で仲良くお人形ごっこすることで、エリーゼがもっと日本語が上手になるようにとの願いも込めている。
一緒にいる男の子が気になる恵梨香には、恋を成就する願いが込められたピンクのうさぎ。五麟学園でも人気のアイテムだからと、大和はセレクトしていたのだ。
そして、年長の美咲には、爽やかな香りの淡い色付きリップ。いつも子供達を纏めている彼女も女の子。お化粧に興味を持ち始めているだろうと大和は選んだが、彼女は嬉しそうに莉央に手鏡を借りてそれを唇に塗ってみる。その自らの姿に、美咲は顔を赤らめていた。
女の子達は皆、大和の贈り物を気に入ったようで、大和は嬉しそうにしていたようだ。
●楽しい食事タイム、そして……
「さあ、できましたよ」
「たくさん作りましたから、どんどん食べてくださいね」
院長と静音がたくさんの料理を運んでくる。それを、七雅やミラノも手伝っていた。
部屋の模様付けを頑張った皆の為にと、温かいスープ。そして、育ち盛りな子供達の為に、ローストチキン、ローストビーフといったメインデッシュが続く。
「スマホゲーばっかりしてる場合ちゃうで!」
こういうときでも、スマートフォンに夢中な健を凛が嗜めて席へとつかせる。
さりげに子供達の並びをランダムにするように見せかけ、健のそばに恵梨香を座らせると、彼女はもじもじとしながらも健と語らっていた。
そして、皆にジュースを注いでから、大和と七雅が立ち上がる。
「メリークリスマス」
「メリークリスマス! 乾杯なの!」
クラッカーを鳴らし、楽しいパーティーの始まり。テーブルを囲む笑顔を、大和は微笑ましそうに見つめた。
凛はその光景をカメラで撮影する。彼女は飾り付けのタイミングでも、時折シャッターを切っていた。
食後には、静音が作ったケーキやブッシュ・ド・ノエルを口にする子供達。そこで凛は、時折顔を背ける男の子の年長、大樹の様子が気になったようで。
「あんたとは少し違うけど、あたしの所も子供の弟子とか結構おって、面倒みたりするの煩わしかった事はあるけどな」
すでに、気持ちは外へと向いている少年へ、凛は自分の言葉で想いを伝える。
「でも、それも自分の大切な人生の一部やと思うんよ」
煩わしさはあるかもしれないが、この孤児院には楽しいことも沢山あるのだと、彼はこの一日で実感したはず。
「何時かあんたもそう思えるとええな」
凛は複雑そうな表情をする大樹を、ぱしゃりと撮っていた。
(つらい記憶は残っちゃうと思うけど、少しずつ楽しい思い出も増やしていってほしいの)
食後はミニゲームを始める子供達。皆、精一杯に頑張っている。七雅もまた、もっともーっと頑張ろうと心に決めるのだった。
後日。
孤児院に送られた写真。それは、凛からの贈り物だ。
「遅くなったけれど、『思い出』のプレゼント、受け取ってな」
編集され、送られたアルバム。それは子供達の思い出として、孤児院に残り続けることだろう。

■あとがき■
皆様、お疲れ様でした。
子供達もささやかながらに、
とても嬉しいプレゼントがもらえ、
喜んでいたようです。
男の子のプレゼント、
接し方に苦慮したあなたへ、
MVPをお送りいたします。
今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!
子供達もささやかながらに、
とても嬉しいプレゼントがもらえ、
喜んでいたようです。
男の子のプレゼント、
接し方に苦慮したあなたへ、
MVPをお送りいたします。
今回は参加していただき、
本当にありがとうございました!
