この野郎 娘は貴様にやるものか
この野郎 娘は貴様にやるものか


●Romeo and Juliet
 ロミオとジュリエット。
 シェイクスピアの戯曲の中でも有名なものだろう。ざっくり説明すれば、お互いを仇と思っている二つの家の子供達が愛し合い、何とか添い遂げようとするが最後には敵わず朽ち果てると言う悲恋物語だ。
 社会というモノが築き上げた様々な障害を乗り越えようとする姿は、今も昔も変わらない。大なり小なり、恋愛は社会という壁を直視しなければならないものなのだ。相手、その家族、友人、経済、環境、そして時代――

●逢魔化日本のロミオとジュリエット
 桑野正人と高山東子は愛し合っていた。しかし二人の愛は秘さねばならない理由があった。
 桑野正人が覚者で、高山東子の父が大の覚者嫌いだからだ。父は東子に毎日のように覚者が如何に社会を狂わせているかを愚痴っていた。一説では憤怒者に出資している、とも言われている。
 しかし二人が添い遂げるには父の問題は避けては通れない。意を決して正人は父と会うことにした。
『大丈夫。誠意をもって話せばお父さんもわかってくれるよ』
 正人はそういって高山家の門をくぐる。背中の羽根は隠しようもなく、東子の父の怒りは瞬時に限界を超えた。覚者に対する憤懣を灰皿と共に投げつけ、そのまま正人を追い出した。
 一度ではうまくいかないことは分かっていた。二度三度話し、ゆっくりと理解してもらおう。正人は東子にそう告げて、この日は別れを告げる。
 二度目の正人の来訪はなかった。
 夜道に車ではねられた正人は、そのまま行方不明になったからだ。

●FiVE
「で、この車ではねたのが憤怒者なの」
 久方 万里(nCL2000005)はホワイトボードで相関図をかきながら説明する。
「この東子さんのお父さんが憤怒者に頼んで、正人さんをどか、っとするみたい。今から急げば間に合うからね」
 きゅいー、とペンを走らせて『ふぁいぶ』と書く万里。そこから矢印を伸ばして憤怒者の方に向けた。
「問題は場所かな。失敗した時に備えて憤怒者は二チームに別れてるの。戦いが始まったらそれを察して後ろから援軍が来るよ」
『ふぁいぶ』と書かれた後ろに『ふんぬしゃ2』と書いて、矢印を伸ばす。別方向から迫れば挟撃は避けれるが、そうなれば時間がかかり正人が轢かれるのは避けられない。やめた方がいいだろう。
「お父さんの出資で怖い武器持ってるけど、そんなに強くないからなんとかなるよ。頑張ってね!」
 万里の明るい声に送られて、覚者達は会議室を出た。



■シナリオ詳細
種別:通常
難易度:普通
担当ST:どくどく
■成功条件
1.憤怒者十四名の打破(降伏や逃亡も打破に含みます)
2.桑野正人の生存
3.なし
 どくどくです。
 娘はお前にやらん、なお話。

●敵情報
・憤怒者(×14)
 武装した一般人です。戦闘力的には大したことはありませんが、資金に任せて殺傷力の高い武装をしています。具体的には防刃ジャケットとかで若干物理防御力高め。
 戦闘力的には覚者に劣ります。数で圧倒するタイプです。

 攻撃方法
 金属工具 物近単 バールのようなもので殴ってきます。〔出血〕
 小型拳銃 物遠単 拳銃で撃ってきます。
 電磁警棒 特近単 身体に押し当てて電流を流す警棒です。打撃には向きません。〔ダメージ0〕〔麻痺〕

●NPC
・桑野正人
 天の翼人。男性二十三歳。職業はアパレル関係。覚者が介入することで、轢かれることはなくなります。
 神具などは所時しておらず、戦闘力は皆無です。助けられれば飛んで逃げることもできます。

●場所情報
 夜の住宅街。人通りはなく、明かりは外套だけです。足場や広さは戦闘に影響しません。
 戦闘開始時、敵前衛に『憤怒者(×8)』『正人』がいます。戦闘開始から2ターン後に、覚者後衛側に『憤怒者(×6)』が現れます。
 急いでいるため、事前付与は不可とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬モルコイン
金:0枚 銀:1枚 銅:0枚
(1モルげっと♪)
相談日数
6日
参加費
100LP[+予約50LP]
参加人数
7/8
公開日
2016年12月30日

■メイン参加者 7人■

『居待ち月』
天野 澄香(CL2000194)
『エリニュスの翼』
如月・彩吹(CL2001525)
『ストレートダッシュ』
斎 義弘(CL2001487)
『Mr.ライトニング』
水部 稜(CL2001272)
『凡庸な男』
成瀬 基(CL2001216)


 覚者憎しで、娘が愛する覚者を殺そうとする父親。
「よく聞く話ではあるけれど それが殺してやるになるものかな」
 ため息とともに『エリニュスの翼』如月・彩吹(CL2001525)が言葉を放つ。覚者が憎い人間は少なくない。憤怒者が問題になる程だ。だが、娘が結婚しようと連れてきた者を殺そうとするのは過剰と言えよう。
「覚者にも色々な方がいるとお伝えできたらいいのですが……」
 同じような表情で『慈悲の黒翼』天野 澄香(CL2000194)が憂いを含んだ声を出す。覚者は源素に目覚めた人間だ。その力を使って犯罪に走る者もいれば、人を救うために戦う人もいる。人の成りを見ずに覚者一括りで見るのは偏見が過ぎる。
「女の子として許せないです」
 きっぱりと言い放つ『音楽教諭』向日葵 御菓子(CL2000429)。愛する者同士を引き裂こうとするのは、許されることではない。ましてやそれが殺人を厭わないというほどならなおさらだ。きついおしおきを据えなくては。
「正人さんの気持ちは分からなくはないんだよね。妻の父親が、覚者嫌いだからさ」
 当時のことを思い出しながら『凡愚の仮面』成瀬 基(CL2001216)が苦笑する。妻も覚者だったため、その仲は険悪だったという。どうにかならないかと四苦八苦し、それは今も継続中だ。もっとも、殺されるというのは過剰だと言わざるを得まい。
「下らん話だ。ナンセンス極まりない」
 一刀両断する『Lightning Esq.』水部 稜(CL2001272)。法律的に言えば覚者だからと言う理由で結婚を反故できるわけもないし、ましてや殺していいわけがない。個人の感情が暴走しただけのつまらない話だ。
「そうだな。許せる行為ではない」
 それだけは確かだ、と斎 義弘(CL2001487)は告げる。憤怒者に殺しを依頼したのが愛する人の父親というのは、色々やりきれない気分になる。だが足を止めている余裕はない。今は急いで現場に向かい、悲劇を防がなければ。
「そろそろ夢見が見た場所だ。任務を開始する」
 赤坂・仁(CL2000426)は目的地が近づいたことを皆に告げる。今回の事件について思うことは多いが、それを表情に出さずに任務にあたる。重要なのは任務をこなすこと。自信の思いは二の次だ。無言で銃を構えるその態度が、言葉なくそれを告げていた。
 覚者達は翼人の男性を見つける。あれが桑野正人だ。急ぎ彼に近づき、その腕を引っ張る。突然のことで驚いて足を止める桑野。
 そこに……一台の車が突っ込んできた。そこから出てくる憤怒者達。
「おい、覚者がたくさんいるぞ」
「構わねぇ、皆殺してしまえ!」
 好戦的に武器を構える憤怒者達。困惑する桑野を庇いながら、覚者達は戦いの為に神具を構える。
 覚者と憤怒者の闘いが、今切って落とされた。


「逃げますよ!」
 真っ先に動いたのは澄香だった。桑野の手を取り、翼を広げる。そのまま翼を羽ばたかせて宙に浮いた。意図を察した桑野も翼を広げ、澄香と共に宙に浮く。このまま桑野を戦場に置いて守り切るのは容易ではない。安全な場所に移動させるつもりだ。
 空に逃げる澄香を追うように憤怒者達が銃を抜き、撃ち始める。彼らの目的は桑野の拉致。彼を逃がしては意味がない。だがその弾丸を澄香が庇って受ける。空中では満足に防御ができないこともあり、かなりの傷を負ってしまう。
「安全な場所まで、早く!」
「澄香に手はださせん」
 銃を撃つ憤怒者に向けて、稜が強く睨む。澄香の後見人として、彼女を守らなければならない。その気概にあふれていた。覚醒して髪の毛が黒く染まり、金色の瞳に戦意を込めて神具を構える。
 呼吸するように源素を展開し、その手に稲妻を集める稜。稲妻は憤怒者を威嚇するように大きく爆ぜ、そしてうねりをあげていく。光と音で相手を威嚇しながら雷の一撃が薙ぐように憤怒者に襲い掛かる。
「この雷は自由を制約する者への俺の怒りと思え……!」
「これより戦闘行為を開始する」
 銃を構えて仁が戦闘に意識を切り替える。サングラスの奥から戦場を見て、耳を澄ました。前から迫る憤怒者と、後方から走ってくる憤怒者の足音。状況は夢見から得た情報と変わらない。それを再確認し、安全装置を外す。
 仁は体内の源素を燃やし、身体能力を増す。体を熱く滾らせながら、心は冷静に戦況を見る。背後から迫る憤怒者達に向けて銃口を向け、そのまま撃ち放った。一人一人に正確に弾丸を当て、その動きを封じていく。
「数で押されれば厄介だ。ある程度は足止めしておく」
「任せた。こちらも気合を入れていく」
 義弘は敵前衛に相対しながら、背中側から聞こえてくる声に応える。この戦いが終わってもひと悶着あるのは確実だ。それを思うと気が重くなる。深くため息をついて気を切り替え、迫る憤怒者に意識を向けた。
 突き出される電磁警棒を、義弘は手にした盾で受け流す。そのまま払うように盾を動かし、憤怒者のバランスを崩した。盾が払った軌跡を追うように炎が走り、迫ってきた憤怒者を一気に焼き払う。
「ぶん殴られたくないなら大人しく縛につくんだ」
「暴行罪は確定だけどね」
 刑事である基は、憤怒者達にぴしゃりと言い放つ。車による誘拐と武器を持っての暴行。意図的であることも踏まえれば、かなりの罪になるだろう。彼らに罪を償わせるために、ここで逃がすわけにはいかない。
 天の源素を体内で回転させ、憤怒者達の視界を遮る基。そして土の加護で防御力を増した後に炎の槍を振るう。火傷を押さえて相手の戦意を奪い、仲間への傷を減らしていく。ダメージこそ微量だが、基の動きは仲間を大きく助けていた。
「さて余罪も含めて、罪を償ってもらおうか」
「武器も持っていない人を襲うとか 立派に卑怯者だよね」
 にこりと笑みを浮かべて彩吹が神具を構える。桑野は既に戦闘圏外だ。その事に安堵して刀を抜き放った。相手は覚者殺しを辞さない憤怒者だ。全力で迎え撃って戦意を削ぎ、大人しくさせてやろう。
 両手に刀を構え、羽根を広げる彩吹。そのまま翼で空気を叩き、戦場を疾駆する。高く飛び過ぎれば銃の的になる。低く飛びながら憤怒者をすり抜け様に切り刻む。刃は風のように駆け巡り、風がやむと同時に鮮血が走った。
「『目には目を』って有名な格言を知らない? あぁ、この場合『人の恋路を』が正しいかな」
「ええ。『人の恋路を邪魔する人は馬にけられて地獄への超特急便』ですよ」
 にっこり微笑み、いろいろ追加された慣用句を言う御菓子。もちろん本当に地獄に送るつもりないのだが、だからと言ってただで返すつもりはない。愛する者を引き裂こうとする者達には、きつい鉄槌をくれてやらねば。
 憤怒者達の攻撃に傷つく仲間を見ながら、水の源素を展開する。背筋を伸ばして手にしたヴィオラを奏で始めた。奏でられた旋律に源素の力が加わる。御菓子の音楽は心を穏やかにすると同時に、憤怒者から受けた傷を癒していく。
(覚者憎しという感情は、何にも優先できるものなのかな?)
 言葉なく御菓子は疑問に思う。怒りという感情は強い。だがそれは命を奪いたい、と思うほどなのだろうか。だが現実に憤怒者は覚者を襲い、FiVEの介入がなければ悲劇を生んでいた。
 否、まだ悲劇が回避されたわけではない。覚者達が倒れ、桑野が再度襲われる可能性はまだ消えていないのだ。数で圧倒する憤怒者は、押さえを突破して覚者の陣内に突撃してくる。
「あっ、いた……!」
「くっ……!」
 回復を行使する御菓子と、それを護ろうとする彩吹が命数を削られるほどの傷を受ける。
 だが覚者達の攻撃は確実に憤怒者を追い詰めていた。
「お待たせしました!」
 桑野を連れて離れていた澄香が復帰すれば、戦況は覚者側が押す形になる。凝縮した植物の香により、一気に憤怒者を戦闘不能に追い込んでいく。
「最後の憤怒者戦闘不能を確認。状況終了」
 仁の銃が火を噴き、最後まで立っていた憤怒者も倒れ伏した。


「スマートフォンでFiVEと連絡が取れるようになったのは、便利なものだな」
 仁はFiVEに連絡を取り、任務の終了を告げた。憤怒者達は全て捕縛している。多少荒っぽい所もあったが、命に別状はない。助けるべきだった桑野も無事を確認している。憤怒者を警察に渡すために、待機していた。
「依頼人は高山東子の父親で間違いないな?」
 捕縛した憤怒者に義弘が問いかけるが、憤怒者達は無言を貫いていた。その態度が状況証拠とも言えよう。もう少し痛めつければ喋るかもしれないが、義弘はそうするつもりはなかった。襲われなければ憤怒者に恨みはない。拷問などもってのほかだ。
 そして残り五人の覚者はというと、事件の背景である桑野と高山家に向かっていた。
「お父さんを警察に突き出す事もできますが、どうしたいですか? 結婚するにはその方が障害が無くなると思いますが……」
 澄香は今回の騒動の原因が高山家の父親であることを告げる。恋人の父親に殺されかけたことを知ってショックを受けた桑野だが、深呼吸した後に口を開いた。
「それが真実だとしても……待ってほしい。犯罪には違いないのだろうけど」
 予想外の答えに驚く覚者達。
「それは何故?」
「わだかまりをこういう形で解決して、結婚できるとは思えない。お父さんとはもう少しだけ話をしてみたい」
「逮捕するのがかわいそうとか、そういう事ではなく?」
 傍観していた基が口を挟んだ。正直な意見を言えば、憤怒者に頼んで殺そうとするなど悪質としか言いようがない。その父親と話し合いたいというのは、同じことの繰り返しになりかねない。
「父親を捕まえることで貴方達に被害が及ぶなら、僕はそれは最大限阻止するよ。親は親、子は子だし」
「ああ、いえ。報復とかそういう意味じゃないんです。その、結婚する以上はそこの家族との関係は切っては切れないわけで」
「本当に添い遂げたいなら親なんぞ無視するべきだ。婚姻届けと証人が要ればいい。……まあ、それが弁護士の意見ですがね」
 稜は言いながらも、結婚と家族が簡単に切り離せないことは理解していた。法に携わる以上、そのしがらみに関する事件は多く聞こえてくる。それでもあえてそう言った。あれは切り離してしまってもいい親だ。
「そうですね。それも一つの選択なんでしょう。でもまだお父さんとは十分に話し合っていません。本当にどうしようもなければ、それも考えます」
「そうね。『愛を成就させる秘訣は、おもに粘り強さにあります』って学者も言ってるもの。今は大変かもしれないけど、あきらめずにお互いを愛し合って、幸せになってくださいね」
 御菓子は論理療法の創始者の言葉を借りて、桑野を励ます。一回でうまくいくとは限らない。何度も何度も挑戦し、そして勝ち取るものなのだ。何事もたゆまぬ努力と行動がなければ成就しない。幸せになる為の方程式はないのだ。
「はい。ありがとうございます」
 御菓子に礼を言う桑野。その答えに、御菓子は満足げな笑みを浮かべた。

 桑野の意志はともあれ、憤怒者に依頼した者を放置はできない。再発防止も含めて、FiVEの覚者は高山家の戸を叩く。
 高山父の第一声は、予想通りひどい拒絶だった。
「覚者を家に入れるな! 警察を呼ぶぞ!」
「警察を呼ばれて不利になるのはそちらじゃないですか?」
「雇った憤怒者は全て捕縛したぞ」
 だが、覚者達が背後関係を知っているとわかり、警察への通報を止める。家の中には通すつもりはないのか、玄関でやり取りすることになる。
「ふん! 覚者は人間に変なウィルス細菌か放射能で変異したんだろうが! 羽が生えたり毛が生えたり、人間なのに動物みたいで気持ち悪いわ!」
 科学的根拠も何もない暴言に、覚者達は微妙な顔をした。ウィルスなのか細菌なのか、放射能は放射線を出す能力を指すんだよとか。人間もカテゴリー的には動物なんだよとか。論破できる要素はたくさんある。
 だが問題はそこではなかった。
 彼は覚者を理解しようとする気が、まったくないのである。自分の価値観が間違っていないと確信し、間違っていないから『間違っている』覚者を両親の呵責なく罵ることが出来るのだ。
 この心理自体は珍しいものではない。神秘以前に人種や肌で差別する人間はいるし、DVやペット虐待も似たような心理なのだ。
 まあだからと言って、黙って覚者に対する罵倒を聞いているほどお人よしではない。
「そちらの言い分はどうでもいい」
 彩吹は彼の発言を遮るように、言葉を挟む。鋭く、それ以上の発言を許さないと言わんばかりに。もしこれが自分の父親なら、張り倒してでも止めると言わんばかりの気概で目の前の男を睨む。
「やったことが犯罪だとわかっている? 桑野さんがその気になれば、貴方は犯罪者になる」
「きょ、脅迫するのか!? やはり覚者は極悪人――」
「脅迫じゃない。事実だ。襲った憤怒者も既に警察に連行している」
「桑野さんはそれでもあなたを訴えようとはしませんでした。家族として共に歩もうとしているんです。その意味を考えてあげてください」
 言うべきことは言った。FiVEの覚者達は背を向けて帰路につく。あとは家族間の問題だ。容易な問題ではないが、これ以上は流石にやりすぎだろう。
 覚者を憎む父親の瞳には、確かにまだ憎悪の色がある。
 だが憎悪以外の感情も、確かにそこに生まれていた。


 かくして、覚者達の戦いは終わる。
 事件の後日談として、いくつか付け加えられることがある。
 事の発端となった高山の父親は、家族を始めとした親族類全員から非難されることになる。彼なりの『持論』を口にすればするほど孤立していき、最後は説得というよりは説教になったという。
 それにより改心した……わけではないが、覚者を罵倒することはなくなったという。時間をかけて、覚者への偏見を解いていくしかないのだろう。
 偏見。
 例え法律で禁じても、たとえ常識的に間違っていても、たとえ誰かが強く止めたって、偏った価値観で判断する人間はなくならない。それは覚者誕生から四半世紀経った今でも、変わることはない。偏見はやがて差別に変わり、そして抗争に発展する。
 それが現実なのだ。隔者が人を虐げるように。憤怒者が覚者を憎むように。

 だからこそ、人は理想を抱く。
 現実の厳しさに抗うように、何時か理想がかなうと信じて。かなうことなくとも、その行動が何かを生み出せると信じて。
 覚者達に送られた葉書には、桑野正人と高山東子の結婚式の写真とその報告が書かれていた。
 それは一つの理想をかなえた証。現実に抗い、愛を貫いた一組の夫婦。
 覚者達はその現実を見て、静かにほほ笑んだ。


■シナリオ結果■

成功

■詳細■

MVP
なし
重傷
なし
死亡
なし
称号付与
なし
特殊成果
なし



■あとがき■

 どくどくです。

 どの時代でも結婚することは多くの困難を伴うというお話でした。
 まあ、この父親は行き過ぎなのですが。

 皆様のおかげで、一組の夫婦が生まれました。
 二人の子が平和に暮らせるような、そんな時代が作れるよう頑張ってください。
 ……まあ、事件を起こすのはSTなのですが。

 ともあれお疲れ様です。先ずは傷を癒してください。
 それではまた、五麟市で。




 
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