全ての決着がついてから少し未来のある春の日。
　満開に咲き誇る河津桜の中を楽しそうに笑いながら歩く着飾った女の子達の姿があった。
「つむちゃん、卒業祝いがこれでいいのですか？」
　天野 澄香（CL2000194）は終始にこにこと嬉しそうな麻弓 紡（CL2000623）に語りかける。澄香の振袖は染井吉野が画かれた薄桃と緋色の振袖。背中からちょこんとのぞく黒い羽が良いアクセントになっている。
「ふふ、いいんだよー」
　満面の笑みで答える紡。澄んだ水色の振袖には枝垂桜が咲き、襟元には白いブラウスが覗く。紡流和洋折衷──といったところだろうか。既存のスタイルに囚われない紡らしいコーデ。一面の桜の中に水色が映える。
「ほら、ボクだけ卒業、今年じゃない？　だから二人と桜の下で和装写真欲しかったンだよねー」
「そうだよ、澄香。紡も嬉しそうだし私達も楽しい。一石二鳥ってやつだね」
　二人と並んで歩く如月・彩吹（CL2001525）も楽しそう。髪飾りやリボンに至るまで全てを紫で調えた彩吹。長く艶やかな黒髪とその長身も相まって、まるで映画女優のよう。
「ふふ、そうですね」
　澄香はそんな二人の様子を見て穏やかな笑顔を浮かべる。
「ほらほら、すごくない？　桜が舞い散る中で撮る写真って」
　紡がくるりと体を回転させるとふわりと振袖が舞い、桜が舞う。
　その姿はまるで桜の精のようにも見えた。
「写真を撮り終わったら皆でお弁当にしましょうね」
　当日の朝。澄香はいつもより少しだけ早く起き、3人分のお弁当を作っていた。二人の味の好みを熟知している澄香。特製のお弁当が紡と彩吹にとって特別なご馳走である事は明らかだ。
「やったね、いぶちゃん！　澄ちゃんのお手製お弁当だよ」
「ははは、楽しみだ。澄香の料理は絶品だからね」
　彼女達の楽しい時間は終わらない。これからも、ずっと。