粉雪が降る中、白い息が華やいだ街へと溶け込む。
　歩く工藤・奏空の片手には、スマホが握られていた。

　待ち合わせの場所までは、まだ少し距離がある。

　まるで。

　思いを馳せるように――。
　降る雪に想いを乗せて、相手に届けと降り注がせるように――。

　奏空の瞳がそっと、夜空を見上げた。


『今どこにいるの？』
『会いたいね』


　連絡を取り合うスマホの画面を、賀茂 たまきは愛おしげに見つめる。

　たったこれだけのメッセージのやり取り。
　けれども互いの想いが伝わり、相手の声もが心の中で蘇る。

　白い息を吐き出す度に。
　足を踏み出す度に。

　相手への想いも、この純白の雪のように積もってゆく――。



　淡く、粉雪を被った待ち合わせのツリーの前で。
　恋人達は再会を果たす。
　
　一旦、足を止めて。
　互いに、見つめ合って。

　ほんのり染まる頬と、せわしなく吐き出される白い息は、
　急いで辿り着いたからだけではないだろう。



　時間がゆっくり流れだしたような、そんな世界の中で。
　２人の足は同時に、再び進められる。


　きっと。こんなふうに――。
　何度会っても、互いに恋をする。

　巡り逢えた喜びを、噛みしめる。


　最初に、指先が触れて。肩を、寄せ合って。
　見つめ合った瞳が、ツリーを見上げる。


　こんな、聖なる夜に。
　

　溢れてしまいそうな。
　たくさんの愛を込めて。あなたへと――。


「「メリークリスマス」」