クリスマス2018 SS


 

 2人で初めて過ごすクリスマスの場所がジャズバーとは、なかなか上出来ではないだろうか……。

 例えそれが、去年自分が助っ人で参加したジャズバーのイベントを見に行くため、というものであったとしても。

『外は寒そうだねー』

 窓から外を見て口の中だけでそう呟いた真屋・千雪は、そのセリフを言い訳に、如月・彩吹と手を繋ごうと目論む。

「そ、そと――」

 ちょっと声が上ずってしまったのはご愛敬。
 しかしその続きが紡がれるよりも早く、するりと腕へと白い手が回された。
 えっ、と白い手を見つめる千雪の様子を、彩吹は楽しむように朗らかに笑う。

 ドッキドキ。

 綺麗過ぎるその笑顔に、素直な千雪の心臓は跳ね踊り、顔はしまりなくでれでれと――。

『今日は暑いねー』

 なんて。さっきとは真逆の台詞が出そうになる。

「そういえば千雪のピアノを聞きたいな。まだ聞いた事、ないだろう?」
 今日のピアノも素敵だったけれど、と彩吹が呟く。
「えー? もしかして弾いてる間、おめかし彩吹さん独り占めできちゃうー? それは断れないなー」
 頭をかきながらの、千雪の本音。けれども彩吹は、呆れたようにため息を吐いた。
「千雪。そういうのはもっと可愛い子に……」
「だーめ、僕の心は彩吹さんにしか動きませーん」

 これだけ素直に言葉にしても、触れ合っていても。
 千雪の想いは届いてくれない。

 今日もまた、将来の義兄に泣きつくことになるのかも――。


 そうも思うけれど、仕方がない。
 だって。
 そんな恋愛音痴な彩吹さんも、僕は大好きなんだもんねー。

●発注キャラクター●
真屋・千雪
如月・彩吹

担当ST:巳上倖愛襟
イラスト:ぺいゆ

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