クリスマス2018 SS
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「緊張しちゃうなら、もうちょっと食べやすいお店が良かったかな?」
「次はもうちょっとマナーのお勉強をしておきます……」
蘇我島 恭司(CL2001015)は返す言葉を探しあぐねて、コーヒーの入った紙コップを柳 燐花(CL2000695)に渡した。
彼女とのデートで緊張していたのは自分のほうだったかもしれない。高い代金を払ったのに、燐花の表情やしぐさのひとつひとつに心奪われ、肝心の料理の味はさっぱり覚えていないのだから。
「……あ」
走り出した声につられて恭司は顔をあげた。
高台の柵の向こうに、宝石をちりばめたような夜景が広がっていた。
「此処からの夜景は綺麗だと聞いていたけど。……これは、なかなか」
燐花の隣に立って見ていると、わぁっと光が迫ってきて、まるで自分たちが空へ舞いあがったかのように感じられた。
街の灯りはけっしてネオンのように華やかにクリスマスを知らせているわけではなく、まさに宝石のように、ちょっと上品に灯っている。賑やかなクリスマスソングもここまでは流れてこない。静かなクリスマスだ。
雪が降ってきた。
風邪を引いてしまう前に、と恭司が燐花の肘を取ろうとしたその時――。
「もう少し眺めていても良いですか? すぐに帰るのが少し勿体無いなって」
「……確かに、すぐに帰っちゃ勿体ないねぇ。風邪を引かない程度に、もうちょっとゆっくり見ていこうか」
夜と雪が光から色を奪い、モノクロームの景色となって浮かびあがる。街へ舞い散る雪が、白い息の流れが、二人だけの時間を優しく包み隠した。
「緊張しちゃうなら、もうちょっと食べやすいお店が良かったかな?」
「次はもうちょっとマナーのお勉強をしておきます……」
蘇我島 恭司(CL2001015)は返す言葉を探しあぐねて、コーヒーの入った紙コップを柳 燐花(CL2000695)に渡した。
彼女とのデートで緊張していたのは自分のほうだったかもしれない。高い代金を払ったのに、燐花の表情やしぐさのひとつひとつに心奪われ、肝心の料理の味はさっぱり覚えていないのだから。
「……あ」
走り出した声につられて恭司は顔をあげた。
高台の柵の向こうに、宝石をちりばめたような夜景が広がっていた。
「此処からの夜景は綺麗だと聞いていたけど。……これは、なかなか」
燐花の隣に立って見ていると、わぁっと光が迫ってきて、まるで自分たちが空へ舞いあがったかのように感じられた。
街の灯りはけっしてネオンのように華やかにクリスマスを知らせているわけではなく、まさに宝石のように、ちょっと上品に灯っている。賑やかなクリスマスソングもここまでは流れてこない。静かなクリスマスだ。
雪が降ってきた。
風邪を引いてしまう前に、と恭司が燐花の肘を取ろうとしたその時――。
「もう少し眺めていても良いですか? すぐに帰るのが少し勿体無いなって」
「……確かに、すぐに帰っちゃ勿体ないねぇ。風邪を引かない程度に、もうちょっとゆっくり見ていこうか」
夜と雪が光から色を奪い、モノクロームの景色となって浮かびあがる。街へ舞い散る雪が、白い息の流れが、二人だけの時間を優しく包み隠した。
