バレンタイン&ホワイトデー2018 SS

 

 カクテル・グラスに口を付けるリーネ。ほのかに赤く染まった顔は、カクテルのせいだけではない。
 カウンターの向こうの赤貴へ顔を向けると、本当に幸せそうに笑った。
「赤貴君♪」
 弾む声。想いを乗せた柔らかな笑顔。
「同じのを作ってクダサイ」
「わかった」
 リーネの脚がパタパタと動く。まるで、子犬が嬉しい時に振るしっぽのよう。
 カクテルを作り続けている間も、にこにこと笑顔を絶やさないから、赤貴が口を開いた。
「見てて楽しいか」
「ハイ♪」
 笑顔の即答は好意の証だ。
 ただ、笑顔で返すのは得意じゃないから、苦笑した形になった。
「えへへ」
 それもちゃんと分かっているから、リーネは笑顔のまま。
 気持ちは繋がっていると思う。思いたい。
 素直すぎるリーネの、素直にぶつけるかどうか迷う気持ち。
「赤貴君、あとで渡したいものがアリマス」
「ああ」
 けれど、だからこそ形にしたい。
 今日は特別な気持ちを表す日だから、少しくらい正直になってもいいと思う。
 リーネの隣の席に置かれた小さな紙袋。中には、何度も練習して綺麗にラッピングされた箱。
 それは自分で作ったチョコレートなのだけれど。それがなんだか、背中を押してくれる気がして、ちょっぴり頼もしかった。

●発注キャラクター●
リーネ・ブルツェンスカ
葦原 赤貴

担当ST:春風
イラスト:ぺいゆ

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