バレンタイン&ホワイトデー2018 SS

 

 雪のちらつきだしたバレンタインの夜

 点滅したスマホを、成瀬 翔は反射的に耳へとあてる。

「今、男子寮の前にいるよ」

 耳へと突然飛び込んできた、相棒の声。

 名を名乗る必要も、「ボクだけど」の言葉なんかも必要ない。

 この耳は、すぐさま彼女の声を聞き分ける。

「男子寮の前!?」

 曇った窓ガラスを袖で擦れば、寒いはずだ。雪がちらつき始めていた。

「すぐ行く!」

 言うが早いか、上着を引っ掴んで寮の部屋を飛び出した。



 麻弓 紡の前へと、全速力で駆けてきてくれたのだろう相棒は、部屋着にダッフルコートを羽織っただけの姿。

 何も訊かなくても、これ以上ないくらいに急いで出てきてくれたのが分かった。



「本命チョコならぬ相棒チョコですよ~」



 両手を添えて差し出されたラッピングボックスを、翔も両手で受け取る。

 ずっと外にいた紡より手が微かに震えているのは、息切れだけのせいではないだろう。


「う、わ………わーっ! すげぇ、もしかして手作りか!!」


 翔は惜しみなく、感動を表情と声に出してくれる。

 その幸せに、「ふふ」とはにかんで。

 紡はこてりと首を傾けた。


「喜んでくれた?」

「おう!! しばらく食わねーで飾っとく……ありがとな!!」


 少し歪なクッキーは、チョコがはみ出していて。
 ラッピングのリボンも、よれよれだけど。


 それでも。

 相棒への親愛を、これ以上ないくらいに詰め込んで――。

●発注キャラクター●
成瀬 翔
麻弓 紡

担当ST:巳上倖愛襟
イラスト:高嶺葉樹

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