クリスマス2017 SS
桂木・日那乃(CL2000941)は雪をひとひら手に受けてから、顔をあげた。星の瞬きとともにたくさんの雪がゆっくり、ゆっくり落ちてくる。
(「今年も……あと、もう少し……」)
瞼を閉じて、頬で溶ける雪の冷たさを楽しむ。
この一年、いろんなことがあった。自分たちが思い願う平和と世の中が求める平和の間には相変わらず距離があり、それどころか少しずつずれ始めているような気さえする。人と妖。力を持つ者と持たぬ者――。ファイヴは、自分たちは一体、どこへ向かって行こうとしているのだろうか。
(「どこでも……関係、ない。わたしは、わたし……やること、に、変わりない……わ」)
人に被害が出るなら、消す。相手が妖であろうと隔者であろうと。
日那乃は指の先で雪の流れあとをぬぐいとると、学園の寮に向かって歩きだした。
公園を抜けた。道沿いの街灯がスポットライトのように降る雪を照らしだし、光の中だけ時間の流れが違う別空間のように見える。そこに浮かんだ幻は、両親の間に挟まれた翼を持たぬ自分の後ろ姿。
(「……ケーキ、買って、帰ろう」)
ひとつだけ。小さなクリスマスケーキを。
日那乃は街灯の明かりを避けて、濡れた道を渡った。
(「今年も……あと、もう少し……」)
瞼を閉じて、頬で溶ける雪の冷たさを楽しむ。
この一年、いろんなことがあった。自分たちが思い願う平和と世の中が求める平和の間には相変わらず距離があり、それどころか少しずつずれ始めているような気さえする。人と妖。力を持つ者と持たぬ者――。ファイヴは、自分たちは一体、どこへ向かって行こうとしているのだろうか。
(「どこでも……関係、ない。わたしは、わたし……やること、に、変わりない……わ」)
人に被害が出るなら、消す。相手が妖であろうと隔者であろうと。
日那乃は指の先で雪の流れあとをぬぐいとると、学園の寮に向かって歩きだした。
公園を抜けた。道沿いの街灯がスポットライトのように降る雪を照らしだし、光の中だけ時間の流れが違う別空間のように見える。そこに浮かんだ幻は、両親の間に挟まれた翼を持たぬ自分の後ろ姿。
(「……ケーキ、買って、帰ろう」)
ひとつだけ。小さなクリスマスケーキを。
日那乃は街灯の明かりを避けて、濡れた道を渡った。
