クリスマス2017 SS


 

「迷子になったらいけないからな!」

 ぶっきらぼうに差し出された成瀬 翔の掌を、麻弓 紡は見つめる。
「……ん。そうだね」
 
 たしかにこの人混みだものねと微笑んで、その手を握った。
 2人で買い出しに来たのは良いものの、人の凄さには揉みくちゃにされそうだ。
 はぐれぬように、しっかり翔は紡の手を握る。
 ふらつき歩く酔っ払いからは、相棒を庇うようにさりげなく背を向け自分が割って入った。

 紡の柔らかな手を握る右手は、熱を持っていて。
 その違和感に難しい顔をしながら、この人混みを抜けようと翔は足を速める。

 ――やっと抜けた!

 ひらけた空間に、翔は「ふーっ」と息を吐く。そうして眩しい光に、前を見た。


 2人の前に現れたのは、ライトアップされた大きなクリスマスツリー。

 キラキラと飾りが光を放って、七色に輝いている。
「すっげーな!」
 見上げた翔に、隣からは「ん」と返事が返る。
「綺麗だねぇ」
 だよな! とはしゃぎ言おうとしたその先で、紡が微笑み自分を見ていた。

 光を反射する金髪も、ゆるやかに細められたターコイズの瞳も。
 いつもよりも、なんだか眩しくて……。
「お、おう」


 何も、言えなくなった。


(なんだ、これ?)

 その隣では、紡も微笑みながら思う。
(隣にいれるのは、翔が誰かを好きになるまで、だろうなぁ……)

 自然と2人、繋ぐ手には力が込められていた。

●発注キャラクター●
麻弓 紡
成瀬 翔

担当ST:巳上倖愛襟
イラスト:高嶺葉樹

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