クリスマス2017 SS


 

 もうすぐパーティが始まる。
 そんな中――。
 赤鈴 いばらは、すぐ近くにある相手の顔をじぃっ、と見つめていた。
 集中する切裂 ジャックは、そっと彼女の顎に手袋越しの手を添えて、僅かにだけ上を向かせる。
 微かに開いた唇を、ゆっくりとなぞり辿ってゆく感触を、いばらは感じる。
 そうしてジャックは、更に彼女へと顔を近づけた。


 ――キス


 するんじゃ……。


 その場に居合わせてしまう者がいれば、そう思えてしまう距離。
 けれど2人は真剣で、互いにそんな気などはまったくなかった。

(メイクできるなんて凄いなぁ……)

 見る者が照れてしまう距離なのにも気付かずに、ジャックを見つめていばらはそう思う。
 自分でするよりもよっぽどメイクが上手く、美しく仕上げてくれる。

 ――はぁ。

 只々尊敬にも似た視線で、目の前の相手を見つめていた。

 いばらへと口紅を塗るジャックは、とても丁寧にリップブラシを動かし、いばらの唇をなぞる。
 自分の髪のセットは後回しにし、いばらを優先していた。
 これ以上ないくらいに真剣に、友人のメイクを仕上げる。

「はい完成!」

 クルリと指でリップブラシを回し、ジャックが微笑んだ。
 流石だねっ! とでも言いたげに、いばらの鎧蜥蜴の尻尾がブンブンと揺れる。

 紅の両端が緩やかに上がって。


 パーティが、もうすぐ始まる――。

●発注キャラクター●
切裂 ジャック
赤鈴 いばら

担当ST:巳上倖愛襟
イラスト:ひゅの

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