クリスマス2017 SS


 

 街は華やかなクリスマス色に染まって、
 ただでさえ気分を高揚させてくれる。
 それなのに、この手の中にある温もりが、これ以上ない幸せを鹿ノ島・遥に与えてくれていた。

「センパイ、寒くない?」

 時折振り返っては『大好きなセンパイ』を気遣う遥の笑顔に、酒々井 数多は文句を言いかけ開けた口を、しばし止める。

「寒くはないわよ。べつに……」

 結局言えなくて、「なら良かった!」と前を向いた遥から視線を僅かに逸らせた。
(もう。アホ面で笑っちゃって)
 調子狂うじゃない、と小さな文句を白い息へと紛らせる。

 でも仕方がない。私はお姉さんだから……仕方なくついて行ってあげてるんだから。

 そう思いつつも、頬が熱を持っている気がして、通り際のショーウィンドウで確認する。

 これは――そう。イルミネーションを映してるだけよ。

 きっとそう、と顔を前へと戻すと、自分の手をしっかりと握り、浮かれて歩く遥の背中。
 括った後ろの毛さえもが、楽しそうに揺れている。

「あのね、遥くん。あーくーまーでも、時間があいてるからしかたなく、だからねっ!!」

 振り返った遥が一瞬キョトンとして、満面の笑みでこっくり頷いた。
「はーい! わかってまぁーす!!」
「…………」


 ――だめだ。きっと解ってないわ……。

●発注キャラクター●
鹿ノ島・遥
酒々井 数多

担当ST:巳上倖愛襟
イラスト:あにゅ

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