「はいっ、どーぞですっ」
「むぐっ……これは」
　『独善者』月歌・浅葱（CL2000915）の生き方は真っ直ぐが信条だ。
　だから、バレンタインで友人にチョコを渡すのは当然のことだし、すぐに食べてもらいたい。結果、『雷切』姫神・桃（CL2001376）は差し出されたチョコを口に入れることになった。
　桃はチョコを飲み込むと、どう返事をしたものかと固まってしまった。正直、ここで先手を取られたのは痛手だった。
　一方、味の感想はまだかと桃の顔を覗き込む浅葱。桃はぷいと顔を背けて黙るしかない。
　少し紅潮しているあたり、桃の感想はばれているも同然だが、直接聞きたい浅葱は次の実弾（チョコ）を手に取った。
「ふふふ、美味しいですかっ。その顔は素直に喜べない乙女心と見ましたよっ。でも、まだまだあるのですよっ。あーんっ」
　そう言って浅葱は桃に食べさせる。
　口で反発しても、体は正直なもの。実際においしいのだから仕方ない。内心、自分が作ったのよりおいしいとか、素直にチョコありがとうとか思ってはいるのも事実だ。
　だけど、悔しさとか複雑な想いもあって、ついつい意地を張って答えてしまう。
「んぐっ！　別に、悔しくなんてないんだから！」
　そう言う桃の背中には、彼女の作ったチョコレートが隠れていた。