ここは五麟学園の調理室。
　覚者達はそれぞれの思いを胸に、チョコレート作りに勤しんでいた。
　『月々紅花』環・大和（CL2000477）、『紅戀』酒々井・数多（CL2000149）、『狗吠』時任・千陽（CL2000014）もそんなグループの１つだ。
　数多は大和にお菓子の作り方を教え、その横で千陽は２人のために材料を準備している。
「数多さん、ここはどうすればうまくいくかしら？」
「うん、滑らかにするなら生クリームをもう少しいれてみるといいわ」
　わいわいと姦しくしながら、大和と数多が作っているのはチョコレートマフィンとチョコレート大福だ。普段はカロリーを天敵としている大和だが、バレンタインならば話は別。バレンタインというのは、お菓子を作るにも最高の理由だ。
「おいしく作るコツはね……」
　数多は剣士として覚者として戦いに身を置く数多だが、お菓子作りの腕前は中々のものである。こうしてみると、どこにでもいる普通の女の子だ。 　見れば周りの覚者も似たようなものだ。皆、思い思いの時間を過ごしている。
「いつものことながら騒がしいですね」
　作業をひと段落させた千陽は周りを見て呟く。
　もっとも、千陽に辺りの喧騒を厭う気配は見えない。この景色は決して彼にとって不快なものではないのだ。
　そんなところに声が掛かる。
「千陽さん、味見してもらえるかしら？」
　大和だ。
　手にはチョコレート大福を載せた皿を持っている。
　千陽はその中の1つを取ると、ぱくりと食べた。
「……これは。はい。とてもおいしいです」
　千陽の言葉にほっとする大和。千陽は相変わらずの仏頂面に見えるが、それだけに、言葉は誠実なものだ。千陽はお礼にと自分のチョコ作りに戻る。
　そして、大和はチョコ大福をラッピングして、数多へと渡した。千陽のおかげで、先生に対しても自信を持って渡すことが出来る。
　作っているときは大変だったが、数多の顔を見ればやって良かったと思える。
　未来にこの日を振り返って、どのように映るのか。きっと、今と同じように輝いて見えるはずだ。