クリスマスSS 2016
とある繁華街の雑居ビル、其の2階に居を構える八重霞探偵社。
革張りソファーと黒壇の机など、事務所というより洋館のような、アンティークな場所。
主である頼蔵は黒の三つ揃えにジャケットは無し、タイを緩め、シャツの第一ボタンも外していた。
机の上には二人用のケーキや、クリスマスらしい赤ワインのボトルなどが並んでいて。それらを持ちこんだフィオナの讃美歌が、優しく室内を満たす。
(天堂君、普段とどこか違うな)
頼蔵は赤ワインが注がれたグラスを手にソファーに深く腰掛けて寛ぎ、悪党が品定めしているようなちょっと悪い微笑を浮かべていた。
向かい合うフィオナはケープを着用していて、手にしたキャンドルの炎が揺れる。髪を下ろしたせいだろうか。いつもより少女は儚い雰囲気を身に纏う。
(貴方に幸せがありますように……)
祈るように。
願うように。
届くように。
恩人への思いを込めた英語の歌詞が弾けては消えた。
普段は元気なフィオナの、少ししおらしいクリスマス。
歌に籠められた真摯な思いに、向けるべき人を間違っていると思いつつも頼蔵はグラスを傾けて『悪くない』と愉しんだ。
革張りソファーと黒壇の机など、事務所というより洋館のような、アンティークな場所。
主である頼蔵は黒の三つ揃えにジャケットは無し、タイを緩め、シャツの第一ボタンも外していた。
机の上には二人用のケーキや、クリスマスらしい赤ワインのボトルなどが並んでいて。それらを持ちこんだフィオナの讃美歌が、優しく室内を満たす。
(天堂君、普段とどこか違うな)
頼蔵は赤ワインが注がれたグラスを手にソファーに深く腰掛けて寛ぎ、悪党が品定めしているようなちょっと悪い微笑を浮かべていた。
向かい合うフィオナはケープを着用していて、手にしたキャンドルの炎が揺れる。髪を下ろしたせいだろうか。いつもより少女は儚い雰囲気を身に纏う。
(貴方に幸せがありますように……)
祈るように。
願うように。
届くように。
恩人への思いを込めた英語の歌詞が弾けては消えた。
普段は元気なフィオナの、少ししおらしいクリスマス。
歌に籠められた真摯な思いに、向けるべき人を間違っていると思いつつも頼蔵はグラスを傾けて『悪くない』と愉しんだ。
