バレンタイン&ホワイトデーSS 2016
2016VT杯、五麟バトルロワイヤル
「あいつら強いよな! 強いよな!」
とりあえず、大事なコトなので2度言った。
興奮気味の鹿ノ島・遥は、対峙する女子達を指差していた右手をギュッと握る。その気合に応えるように、右掌の紋章が、太陽の如き輝きを発していた。
「強い、には、異論ないよねー!」
覚醒した姿の御影・きせきは、赤い瞳を細めてにっこりと笑う。
双刀・鎬の柄を両の手で握ると、ゆっくりと鞘から引き抜いていった。
「楽しみだねー!」
ペグを締め弦の張りを調整していた黒崎 ヤマトは、きせきの言葉に頷いてギターから視線を上げる。
「負けるつもりはないぜ。まぁお祭りみたいなもんだし、恨みっこなしってやつだよな!」
肩を揺らしたヤマトの背で、黒き翼が揺れていた。
普段は女性に甘く、手をあげる事など考えられない御白 小唄だが、今日ばかりは特別。
笑顔を浮かべながら狐の耳と尻尾をピンと立てて、良い戦いが出来る事を願っている。
目の前にいる女の子達も、きっとそうだろうから――。
嵐の前の静けさ、とばかりに静寂が漂う中、月歌 浅葱は白いマフラーを首へとパサリとかけ直した。
ドンッ! と足を肩幅に開いて、床を踏みしめる。
「いよいよですねっ」
男子達を指差し、元気に言い放った。
その言葉に小さくこくりと頷いて、柳 燐花も目の前の男子達に視線を向ける。
「いつも通りです」
――倒される前に、倒すだけ。
ユラリと黒い尻尾を揺らして、両手に苦無を握る。
パタタ、と。子猫の黒い耳が、武者震いの如く僅かに震えていた。
目を閉じていた鈴駆・ありすは、迫り来るその刻にゆっくりと瞼を開く。
鋭く見遣った瞳か少年達を捉えると同時、額には第三の目が開眼した。
引き結ばれた唇は何も発そうとしない。だが代わりに、掌の上の炎が今の気持ちを表すように、燃え続けていた。
水端 時雨の纏うパーカーのバレンタインカラーが、今日が2月14日である事を思い出させてくれる。
浮かべた最カワ笑顔も、今日のこの日には最適。だが大事そうに抱えているのは、男子に渡すチョコではない。アンティーク調の大きな経典である事が、彼女の挑むのが恋のバトルではない事を物語っていた。
そんなこんなで、今日のこの日のガチバトル。
男子も女子も、負けられない。
中段十字の構え。
2本の刀で作られた壁は、強力なバリア。両手に握った双刀と共にポーズを決めたきせきは、無邪気な子供のような笑顔を浮かべる。
ダンッと踏み込み駆け出せば、制服のブレザーがはためき、さながらヒーローごっこをする子供のマントのよう。青い髪を揺らして、楽しそうに斬りかかっていった。
揺れる黒猫の尻尾。
軽やかな身のこなしで黒のセーラー服を靡かせる燐花は、逆手に握った苦無を振るう。刃身の差など、物ともしない。感情を映さぬ青き瞳が、刃同士が激突しようとするのを冷静に見据えた。
響くはレイジングブル。不屈の闘志――雄牛のシルエットが描かれたギターの音色は、火焔の弾へと姿を変える。ヤマトの操るピックの動きに合わせ、鋭く相手へと飛んでゆく赤き弾たち。演奏は激しさを増し、指は踊るが如く弾かれる。
楽しそうに、ヤマトが笑った。
迎え撃つように。引き結ばれたままの唇は綻ぶ事もなく、ありすの炎を宿した手が振るわれる。見据える鋭き瞳、揺れた黒コートが大きく靡いた。
炎を自在に操るが如く。薙がれた炎から生じる炎弾を、撒き散らせていった。
両手が獣化している小唄は、グッとナックルを嵌めた狐の手を握る。
しかしそれは拳を振るう為ではなく、足を踏み込む為。
床を踏みしめると、楽しそうにトンッと飛び上がる。青い瞳はキラキラと輝き、ふさふざと尻尾を靡かせて、笑顔で跳び蹴りをしかけていった。
迫る靴底を見た緑のフレームの眼鏡が、キラリと光る。時雨はパララ、と素早く経典を捲った。
パン、と掌を置き開いたページから、「届かせないっすよ!」とばかりに水礫が飛ぼうとしていた。
踊りかかるは、獣のような笑顔。
一気に間合いを詰めた遥が叩き込もうとするのは、正拳突き。拳の螺旋回転、更には腰の回転力までが加わるこの突きは、拳頭が正確にヒットすれば相当な威力となる。そしてその瞬間の手応えが、爽快なのだ。それを充分に知ってる遥の右拳。纏わり付くボロ布の隙間から、光が洩れていた。
それを真正面から受け止めるは、浅葱のナックルを嵌めた拳。
小さな体から斜め上に突き出された拳が、遥のそれと激突する。
拳と拳がぶち当たった瞬間。遥のボロ布と浅葱のマフラーが、互いの威力を誇示し合うように激しく靡いていた。
一歩も退かず、不適な笑みを浅葱が浮かべる。
そして、宣言。
「楽しみましょうっ」
勝ちたいのは、当然の事。負けたくないのは、勿論に。
けれどもそんな気持ちよりも、今、どうしようもない程に心が躍っている。
――楽しんだモン勝ち。
全員の心に、自然と浮かんだその言葉。
それは今この時を、
これ以上ないくらい、皆か楽しんでいるから――。
とりあえず、大事なコトなので2度言った。
興奮気味の鹿ノ島・遥は、対峙する女子達を指差していた右手をギュッと握る。その気合に応えるように、右掌の紋章が、太陽の如き輝きを発していた。
「強い、には、異論ないよねー!」
覚醒した姿の御影・きせきは、赤い瞳を細めてにっこりと笑う。
双刀・鎬の柄を両の手で握ると、ゆっくりと鞘から引き抜いていった。
「楽しみだねー!」
ペグを締め弦の張りを調整していた黒崎 ヤマトは、きせきの言葉に頷いてギターから視線を上げる。
「負けるつもりはないぜ。まぁお祭りみたいなもんだし、恨みっこなしってやつだよな!」
肩を揺らしたヤマトの背で、黒き翼が揺れていた。
普段は女性に甘く、手をあげる事など考えられない御白 小唄だが、今日ばかりは特別。
笑顔を浮かべながら狐の耳と尻尾をピンと立てて、良い戦いが出来る事を願っている。
目の前にいる女の子達も、きっとそうだろうから――。
嵐の前の静けさ、とばかりに静寂が漂う中、月歌 浅葱は白いマフラーを首へとパサリとかけ直した。
ドンッ! と足を肩幅に開いて、床を踏みしめる。
「いよいよですねっ」
男子達を指差し、元気に言い放った。
その言葉に小さくこくりと頷いて、柳 燐花も目の前の男子達に視線を向ける。
「いつも通りです」
――倒される前に、倒すだけ。
ユラリと黒い尻尾を揺らして、両手に苦無を握る。
パタタ、と。子猫の黒い耳が、武者震いの如く僅かに震えていた。
目を閉じていた鈴駆・ありすは、迫り来るその刻にゆっくりと瞼を開く。
鋭く見遣った瞳か少年達を捉えると同時、額には第三の目が開眼した。
引き結ばれた唇は何も発そうとしない。だが代わりに、掌の上の炎が今の気持ちを表すように、燃え続けていた。
水端 時雨の纏うパーカーのバレンタインカラーが、今日が2月14日である事を思い出させてくれる。
浮かべた最カワ笑顔も、今日のこの日には最適。だが大事そうに抱えているのは、男子に渡すチョコではない。アンティーク調の大きな経典である事が、彼女の挑むのが恋のバトルではない事を物語っていた。
そんなこんなで、今日のこの日のガチバトル。
男子も女子も、負けられない。
中段十字の構え。
2本の刀で作られた壁は、強力なバリア。両手に握った双刀と共にポーズを決めたきせきは、無邪気な子供のような笑顔を浮かべる。
ダンッと踏み込み駆け出せば、制服のブレザーがはためき、さながらヒーローごっこをする子供のマントのよう。青い髪を揺らして、楽しそうに斬りかかっていった。
揺れる黒猫の尻尾。
軽やかな身のこなしで黒のセーラー服を靡かせる燐花は、逆手に握った苦無を振るう。刃身の差など、物ともしない。感情を映さぬ青き瞳が、刃同士が激突しようとするのを冷静に見据えた。
響くはレイジングブル。不屈の闘志――雄牛のシルエットが描かれたギターの音色は、火焔の弾へと姿を変える。ヤマトの操るピックの動きに合わせ、鋭く相手へと飛んでゆく赤き弾たち。演奏は激しさを増し、指は踊るが如く弾かれる。
楽しそうに、ヤマトが笑った。
迎え撃つように。引き結ばれたままの唇は綻ぶ事もなく、ありすの炎を宿した手が振るわれる。見据える鋭き瞳、揺れた黒コートが大きく靡いた。
炎を自在に操るが如く。薙がれた炎から生じる炎弾を、撒き散らせていった。
両手が獣化している小唄は、グッとナックルを嵌めた狐の手を握る。
しかしそれは拳を振るう為ではなく、足を踏み込む為。
床を踏みしめると、楽しそうにトンッと飛び上がる。青い瞳はキラキラと輝き、ふさふざと尻尾を靡かせて、笑顔で跳び蹴りをしかけていった。
迫る靴底を見た緑のフレームの眼鏡が、キラリと光る。時雨はパララ、と素早く経典を捲った。
パン、と掌を置き開いたページから、「届かせないっすよ!」とばかりに水礫が飛ぼうとしていた。
踊りかかるは、獣のような笑顔。
一気に間合いを詰めた遥が叩き込もうとするのは、正拳突き。拳の螺旋回転、更には腰の回転力までが加わるこの突きは、拳頭が正確にヒットすれば相当な威力となる。そしてその瞬間の手応えが、爽快なのだ。それを充分に知ってる遥の右拳。纏わり付くボロ布の隙間から、光が洩れていた。
それを真正面から受け止めるは、浅葱のナックルを嵌めた拳。
小さな体から斜め上に突き出された拳が、遥のそれと激突する。
拳と拳がぶち当たった瞬間。遥のボロ布と浅葱のマフラーが、互いの威力を誇示し合うように激しく靡いていた。
一歩も退かず、不適な笑みを浅葱が浮かべる。
そして、宣言。
「楽しみましょうっ」
勝ちたいのは、当然の事。負けたくないのは、勿論に。
けれどもそんな気持ちよりも、今、どうしようもない程に心が躍っている。
――楽しんだモン勝ち。
全員の心に、自然と浮かんだその言葉。
それは今この時を、
これ以上ないくらい、皆か楽しんでいるから――。
