バレンタイン&ホワイトデーSS 2016
静かな昼下がり。冬とあって外の空気は肌寒いが、窓から差し込む光は暖かい。
小さな椅子にもたれ、うつらうつらとしていた恭司は、鼻孔をくすぐるコーヒーの湯気に頬をくすぐられ、目を覚ました。ふとその方を見れば、燐花がお盆を持って彼を見上げている。
「蘇我島さん、お疲れさまです。……それと。一日遅れですがよかったら」
恭司は軽く眼をこすり、お盆にのった、湯気をたてるコーヒーを見る。隣に置かれた小皿には、小粒のチョコレートが並んでいた。
彼は日付と、少しバツが悪そうにする少女の表情を見て、それが単なるお茶請けでないことに思い至った。
「あぁ……バレンタインチョコ!いやぁ、一日遅れのバレンタインチョコって、なんだか学生時代を思い出すよ」
「今年は既製品ですが、来年は手作りしますので…受け取って頂けますか?」
もちろんだとも。燐花の言葉に彼は頷いて、ひとつつまむ。ハートの形を模したそれを口に含む。懐かしい甘さが、彼の口を満たす。
「……お口に合わなかったでしょうか?」
不安げに、燐花が彼を見上げた。恭司は自分の眼尻に涙が滲んでいることに気が付いた。あわててそれを拭う。
「いいや。とても、美味しいよ」
言いながら、恭司はもう一つつまんで口に放る。ノスタルジーに浸るにはまだ早いと思いながらも、少女の思いが恭司の胸を満たした。
にこりと微笑む恭司に、燐花も笑い返した。
小さな椅子にもたれ、うつらうつらとしていた恭司は、鼻孔をくすぐるコーヒーの湯気に頬をくすぐられ、目を覚ました。ふとその方を見れば、燐花がお盆を持って彼を見上げている。
「蘇我島さん、お疲れさまです。……それと。一日遅れですがよかったら」
恭司は軽く眼をこすり、お盆にのった、湯気をたてるコーヒーを見る。隣に置かれた小皿には、小粒のチョコレートが並んでいた。
彼は日付と、少しバツが悪そうにする少女の表情を見て、それが単なるお茶請けでないことに思い至った。
「あぁ……バレンタインチョコ!いやぁ、一日遅れのバレンタインチョコって、なんだか学生時代を思い出すよ」
「今年は既製品ですが、来年は手作りしますので…受け取って頂けますか?」
もちろんだとも。燐花の言葉に彼は頷いて、ひとつつまむ。ハートの形を模したそれを口に含む。懐かしい甘さが、彼の口を満たす。
「……お口に合わなかったでしょうか?」
不安げに、燐花が彼を見上げた。恭司は自分の眼尻に涙が滲んでいることに気が付いた。あわててそれを拭う。
「いいや。とても、美味しいよ」
言いながら、恭司はもう一つつまんで口に放る。ノスタルジーに浸るにはまだ早いと思いながらも、少女の思いが恭司の胸を満たした。
にこりと微笑む恭司に、燐花も笑い返した。
