バレンタイン&ホワイトデーSS 2016

サプライズサプライズ

「こ、こんな、いいんでしょうか……」
 賀茂 たまき(CL2000994)は周囲を見渡しながら、落ち着きのなさそうな声で呟いた。
 ホワイトデーの名目で『彼誰行灯』麻弓 紡(CL2000623)に連れてこられたのは、外観も内装も洒落っ気に溢れたティーハウス。
 いかにも高級そうなソファに隣り合い、二人は対照的な挙動を見せる。
「いいのいいの。あ、そうだ。たまちゃん、ちょっと目を閉じて」
「は、はい。ええっと……こうですか?」
 律儀にぎゅっと閉じられた目を見て、紡は少し微笑ましい気持ちになった。
「そう、そのまま――まだ開けちゃいけないよ」
 紡はたまきの前髪を優しく手で掬い、“それ”を使って留める。
「うん、似合う似合う。見てごらん」
 目を開けたたまきは、バッグから鏡を取り出して覗き込んだ。
「わ……っ、これ、綺麗……っ」
 二つの蜻蛉玉と鈴のついた、かんざし風のヘアピン――たまきが動くと、小さな音色が軽やかに鳴り響く。
 たまきが鏡に見入っている間に、紡は店員に目配せをした。
 間もなくバースデーケーキの乗ったプレートが運ばれてくると、たまきは再び目を丸くする。
「ちょっと早いけど……ハッピバースデー、たまちゃん」
「……あ、りがとうございます」
 驚きの連続に、たまきは半ば涙目になる。
 まさか誕生日まで祝ってもらえるなんて、彼女は考えてもみなかった。
「はい、あーん」
「あ、あーん……」
 嬉しさと恥ずかしさで真っ赤になりながら、たまきは口を開く。
 口に入った苺は甘酸っぱさの他に――少しだけ、しょっぱい味がした。

●発注キャラクター●
麻弓 紡(CL2000623)
賀茂 たまき(CL2000994)
担当ST:さくらもみじ
イラスト:甘栗

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