バレンタイン&ホワイトデーSS 2016
お裾分け
バレンタインデー当日。
夕暮れが迫る陽を映しキラキラと光る噴水は、透明な色をこの時ばかりは柔らかなオレンジ色へと変えている。
「……ボク、とっても頑張りました」
その噴水の縁に座り、身を乗り出すようにジィ、と見つめる麻弓 紡の視線の先には、軍服を纏った少年の顔。
「ええ、とても嬉し……」
言いかけた時任・千陽は言葉を止めて、紡へと問いかける。
「ああ、えっと……食べますか?」
「食べる」
もちろん、と言うように笑って、目を閉じて。
「あーん」
お口を開けると、お強請り待ちを。
「!!」
開封済みの小箱へと添えていた千陽の手に、籠もったのは僅かな力。
「……まったく、君という人は……」
溜め息と共に力を抜いて、トリュフを1つ摘んだ。
ペンチョコで描かれた可愛い花の乗るそれを差し出せば、半分だけが齧られる。
残る半分を紡の指が取りあげて、本来の持ち主の口に押し付けた。
驚きながらも、甘いトリュフは千陽の口の中へと消えてゆく。
「……おいし?」
首を傾げた彼女の前で、少年の片手が己の顔を覆った。
「っっ! ……はい、おいしいです……」
手が隠すその奥で、照れた顔が赤く染まっている。
嬉しそうに千陽の顔を覗き込み笑う紡の頬も、同じ色へと染まっていた。
夕暮れが迫る陽を映しキラキラと光る噴水は、透明な色をこの時ばかりは柔らかなオレンジ色へと変えている。
「……ボク、とっても頑張りました」
その噴水の縁に座り、身を乗り出すようにジィ、と見つめる麻弓 紡の視線の先には、軍服を纏った少年の顔。
「ええ、とても嬉し……」
言いかけた時任・千陽は言葉を止めて、紡へと問いかける。
「ああ、えっと……食べますか?」
「食べる」
もちろん、と言うように笑って、目を閉じて。
「あーん」
お口を開けると、お強請り待ちを。
「!!」
開封済みの小箱へと添えていた千陽の手に、籠もったのは僅かな力。
「……まったく、君という人は……」
溜め息と共に力を抜いて、トリュフを1つ摘んだ。
ペンチョコで描かれた可愛い花の乗るそれを差し出せば、半分だけが齧られる。
残る半分を紡の指が取りあげて、本来の持ち主の口に押し付けた。
驚きながらも、甘いトリュフは千陽の口の中へと消えてゆく。
「……おいし?」
首を傾げた彼女の前で、少年の片手が己の顔を覆った。
「っっ! ……はい、おいしいです……」
手が隠すその奥で、照れた顔が赤く染まっている。
嬉しそうに千陽の顔を覗き込み笑う紡の頬も、同じ色へと染まっていた。
