バレンタイン&ホワイトデーSS 2016
バレンタインの不意遭遇
町中を歩いていた和泉・鷲哉は、前へと降り立った白き風に足を止める。
「………………」
否。
風ではなかった。
不意に塀から降りてきたのは、正義の白マフラーを靡かせる月歌 浅葱。
こちらが驚きに動きを止めれば、腕一杯に義理チョコを抱えた浅葱もまた、動きを止めて見上げてきた。
足を踏み出す格好のまま止まった少女と、見つめ合うこと数秒間。
山程の義理チョコに一瞬の視線を向けて、ツッコミを入れたげに見た鷲哉へと、浅葱はにっこりと笑う。
たたっと近付いて。
前に立つと義理チョコの1つを差し出した。
「はっぴーばれんたいんっ、ちょこですよっ」
手をめいっぱい伸ばして。自信満々な不敵な笑みを浮かべながら、ヒョコヒョコと揺らす。
鷲哉が受け取ると、ご機嫌で少女は駆け出した。
「とうっ」
塀から屋根へ。屋根から道へ。
現れては消え、消えては現れる少女の背を、片手にチョコレートを持った鷲哉が呆然と見送る。
シュタタっ!
元気よく走り去った浅葱に、
「……まぁ、いいか」
そう呟いて。
「ありがとうな」
鷲哉は明らかな義理チョコをモッズコートのポケットに入れて、歩き出した。
――まさか。
この1時間後にまたバッタリ遭遇する……なんて事も知らずに。
「………………」
否。
風ではなかった。
不意に塀から降りてきたのは、正義の白マフラーを靡かせる月歌 浅葱。
こちらが驚きに動きを止めれば、腕一杯に義理チョコを抱えた浅葱もまた、動きを止めて見上げてきた。
足を踏み出す格好のまま止まった少女と、見つめ合うこと数秒間。
山程の義理チョコに一瞬の視線を向けて、ツッコミを入れたげに見た鷲哉へと、浅葱はにっこりと笑う。
たたっと近付いて。
前に立つと義理チョコの1つを差し出した。
「はっぴーばれんたいんっ、ちょこですよっ」
手をめいっぱい伸ばして。自信満々な不敵な笑みを浮かべながら、ヒョコヒョコと揺らす。
鷲哉が受け取ると、ご機嫌で少女は駆け出した。
「とうっ」
塀から屋根へ。屋根から道へ。
現れては消え、消えては現れる少女の背を、片手にチョコレートを持った鷲哉が呆然と見送る。
シュタタっ!
元気よく走り去った浅葱に、
「……まぁ、いいか」
そう呟いて。
「ありがとうな」
鷲哉は明らかな義理チョコをモッズコートのポケットに入れて、歩き出した。
――まさか。
この1時間後にまたバッタリ遭遇する……なんて事も知らずに。
