普段は極度のめんどくさがりである永倉 祝であったが、大切な人へとチョコレートを手作りする。
　チョコを彼好みの甘さに整えて、ハートの型に流し込む。
　そして鈴白 秋人もまた、愛する人へのマカロン作りに励んでいた。
　マカロンは手間がかかってもカラフルで、たくさんの味が楽しめるものを。

　大事な日の為に、相手への想いを込めた贈り物が、仕上がってゆく。

　２月14日の当日は。
　違いに向き合い、見つめ合って。
　祝はリボンをかけた箱に入ったチョコレートを差し出す。
　柔らかな微笑を浮かべる秋人が差し出したのは、色とりどりのマカロンと。
　ピンクの薔薇、白い花、ブルースターがあしらわれたプリザーブドフラワー。
　そして祝が好きそうな、安眠枕。
　彼女が幸せに寝られるようにと贈る、可愛らしい羊のそれにもラッピングリボンが結ばれていた。
　互いに差し出し合った真心のカタチを、交換し合う。
　それはまるで、愛を誓い合う指輪交換のように。
　祝は両腕でなければ持ちきれない程の秋人の想いを、抱き締める。
　頬に触れた羊の安眠枕が、心地良かった。
　秋人は祝が両手を添え差し出してくれた想いを、しっかりと受け止める。
　彼女のチョコを口に含めば、甘く、優しい味が広がった。