（「あの人はどんな顔をするかな。眼鏡の似合うあの子は、いつも明るいあいつは――」）
　チョコレートを溶かし混ぜながら、鐡之蔵 禊は頭の中にあるリストの顔を一つ一つ確認した。ラッピングしたチョコ手渡したとき、彼、または彼女たちはどんな顔で受け取ってくれるのだろう、と思いながら。
　強いインパクトなんてなくてもいい、ただ余韻の長い味わいのチョコを食べてもらいたい。このファイヴに集う仲間たちのように、あたしのチョコは全ての材料が手をつなぎ合うような味わいに仕上げよう。
　味の異なる数種類の板チョコを刻んでボウルに入れ、湯煎する。
　禊は指の先でレシピ本をめくった。
「ふむふむ……玉ができないように……丁寧にかき混ぜて、と」
　あとは用意しておいた型に流し込んで冷やすだけ。
　ちゃんとわかっている。こっちが面倒を見ているようで、実はみんなに支えられているってこと。だから感謝の気持ちをいっぱい溶かし込んだチョコレートの形はハートにしようと決めていた。男女関係なく、あたしはハートのチョコレートにピンクのリボンととびっきりの笑顔を添えて差し出すのだ。

　ありがとう。これからもどうぞよろしく！