
漆黒の一月事件終幕
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七星剣『禍時の百鬼』と『東小路財前』の激突を『FiVE』が鎮静化させてから数日が明け、中 恭介(nCL2000002)は読んでいた新聞を手元に置いた。
「流石だ重鎮、事への根回しが早いな……」
恭介が目を通していた新聞には、『東小路財前! 七星剣を退かす!!』と大大的なヒーローとして扱われている。
確かにあの時、あの場所に財前が居た。彼へなんらかの対応は可能であったし、試みた覚者も少なくは無かった。
だが、一般人が避難した直後から彼の姿も綺麗さっぱり消えていた。
手柄を横取りされた事に聊かの不快を覚えるのは最もだが、それよりも納得がいかないのは彼を裁く方法が遠い事である。
財前は裏で糸を引く、極悪人だ。
表では善人であれ、裏では多くの血を流させている。
それは東小路財前の周囲に『居た』人物や、泣き寝入りを強要された女性たちから聞けた事であり、禍時の百鬼を仕向けた逢魔ヶ時紫雨の怒りをもって確証したFiVE独自の情報に過ぎない。
段階さえ踏めば、財前を炙り出す事は可能だろうが、FiVEとして、あらゆる業界に名の知れた財前を敵に回せばどうなるのか予想は容易く。
世間的に超越した英雄的存在である一般人を、覚者(武力)だけで抑えてしまえば、一片して悪になるのはこちらだ。
メディアや世論が財前の味方である以上、一組織が声を荒げて真実を語れども、それが偽りとされてしまうのは目に見えた結果だろう。
「今は様子を見るしかない……な。奴が裁かれる日は必ず訪れる」
諦めるのでは無く、機会を伺うのだ。
鳴かぬなら、鳴くまで待つのだ。鳴かせられる、その時まで。
それよりも――今は、別件の事態が急速に動いている。
『暁』小垣斗真(nCL200135)がFiVEの監視を振り切り、五麟市内から姿を消した。
彼の素性を知らぬ存ぜぬを突き通す黎明であるが、黎明自体も混乱しているようだ。
斗真への対応は既に覚者十名が向かってくれている所である。
その結果を待つ今。
久方 相馬(nCL2000004)が足早に恭介を訪ねて来た。
「どうした、相馬君」
「嫌な……夢を視てさ」
相馬は若干青ざめた面持ちで、恭介の手前の席に座った。
「夢か……聞かせて貰っても?」
「いつ起こるのかはわからない。でも……五麟が……」
「五麟が?」
「燃えてた、真っ赤に。皆、攫われたり、ころさ……いや、うん」
相馬はそう言ってから、あとは分らないと顔を横に振った。
恭介は、一瞬驚いたように身体を震わせ、そして突き動かされたように新聞を手に取る。
関東方面で『血雨』という現象が多発している事。その発生場所が徐々に西へ向かっている事。もし、血雨がこの五麟を目指しているとすれば――。
「まさか、紫雨が仕向けているのか……いや、そんな事はあるはずが無い。紫雨には血雨に近づけない呪いが掛かっている。だからこそ血雨討伐を我々に託したはずだ」
ならば何故、この時点で相馬はそんな夢を視るのか。
そもそもその夢の元凶は一体誰なのか。
未だFiVEは見逃している事は多いのかもしれない。
杞憂に終わればいいのだが、そうなってしまう段取りは既に分岐を終えて、結果に向かっているというのか。
「とりあえず今は出来る限りの備えをするしか無い……か」
一晩で全てを血へと帰す厄災。
恭介は拭えぬ不安を肌で感じ取っていた。
「流石だ重鎮、事への根回しが早いな……」
恭介が目を通していた新聞には、『東小路財前! 七星剣を退かす!!』と大大的なヒーローとして扱われている。
確かにあの時、あの場所に財前が居た。彼へなんらかの対応は可能であったし、試みた覚者も少なくは無かった。
だが、一般人が避難した直後から彼の姿も綺麗さっぱり消えていた。
手柄を横取りされた事に聊かの不快を覚えるのは最もだが、それよりも納得がいかないのは彼を裁く方法が遠い事である。
財前は裏で糸を引く、極悪人だ。
表では善人であれ、裏では多くの血を流させている。
それは東小路財前の周囲に『居た』人物や、泣き寝入りを強要された女性たちから聞けた事であり、禍時の百鬼を仕向けた逢魔ヶ時紫雨の怒りをもって確証したFiVE独自の情報に過ぎない。
段階さえ踏めば、財前を炙り出す事は可能だろうが、FiVEとして、あらゆる業界に名の知れた財前を敵に回せばどうなるのか予想は容易く。
世間的に超越した英雄的存在である一般人を、覚者(武力)だけで抑えてしまえば、一片して悪になるのはこちらだ。
メディアや世論が財前の味方である以上、一組織が声を荒げて真実を語れども、それが偽りとされてしまうのは目に見えた結果だろう。
「今は様子を見るしかない……な。奴が裁かれる日は必ず訪れる」
諦めるのでは無く、機会を伺うのだ。
鳴かぬなら、鳴くまで待つのだ。鳴かせられる、その時まで。
それよりも――今は、別件の事態が急速に動いている。
『暁』小垣斗真(nCL200135)がFiVEの監視を振り切り、五麟市内から姿を消した。
彼の素性を知らぬ存ぜぬを突き通す黎明であるが、黎明自体も混乱しているようだ。
斗真への対応は既に覚者十名が向かってくれている所である。
その結果を待つ今。
久方 相馬(nCL2000004)が足早に恭介を訪ねて来た。
「どうした、相馬君」
「嫌な……夢を視てさ」
相馬は若干青ざめた面持ちで、恭介の手前の席に座った。
「夢か……聞かせて貰っても?」
「いつ起こるのかはわからない。でも……五麟が……」
「五麟が?」
「燃えてた、真っ赤に。皆、攫われたり、ころさ……いや、うん」
相馬はそう言ってから、あとは分らないと顔を横に振った。
恭介は、一瞬驚いたように身体を震わせ、そして突き動かされたように新聞を手に取る。
関東方面で『血雨』という現象が多発している事。その発生場所が徐々に西へ向かっている事。もし、血雨がこの五麟を目指しているとすれば――。
「まさか、紫雨が仕向けているのか……いや、そんな事はあるはずが無い。紫雨には血雨に近づけない呪いが掛かっている。だからこそ血雨討伐を我々に託したはずだ」
ならば何故、この時点で相馬はそんな夢を視るのか。
そもそもその夢の元凶は一体誰なのか。
未だFiVEは見逃している事は多いのかもしれない。
杞憂に終わればいいのだが、そうなってしまう段取りは既に分岐を終えて、結果に向かっているというのか。
「とりあえず今は出来る限りの備えをするしか無い……か」
一晩で全てを血へと帰す厄災。
恭介は拭えぬ不安を肌で感じ取っていた。