クリスマスSS 2015

(偽)聖ニコラウス様御降臨

 今日はクリスマス。それに際して、企画されたちょっとしたボランティアイベント。
 それは、この場にもいる『雨後雨後ガール』筍 治子(CL2000135)の母の発案でもあった。
「………………」
 この場には、何故か絶句している治子を含め、『コルトは俺のパスポート』ハル・マッキントッシュ(CL2000504)、『ハイパーメディアホームレス』人生谷・春(CL2000611)の3人の『F.i.V.E.』の覚者達が集合場所にやってきている。偶然なのか、3人とも『ハル』という名を持つメンバーだ。
 3人の役割、それは、ちょっとしたプレゼントを参加者の子供達に配るというスタンダートなものだ。
 彼らはボランティアの為に、赤いサンタの衣装を纏っていた……のだが。
(なんで、こいつらを野放しにしたんだろう……)
 治子は心底、この2人と一緒にやってきたことを後悔していた。
 覚醒するとハイテンションになる治子。ただ、普段は比較的常識的な彼女だ。ソバカス、眉太目、憂鬱そうな暗い顔、小さめだが目を細めており瞳が目立たないのは、眼鏡が先に目を引くことも関係しているのだろう。
 そんな比較的地味目な治子は、いたって普通のサンタコス。右腕には、『ボランティア』と書かれた腕章も身につけている。白い口ひげは直前につけるつもりなのか、首から垂らしている。
 やや後方に下がる治子の前には、2人の男性がいるわけだが、そのうちの1人、ハルが身につけているのは、女性用のミニスカサンタ衣装。露出の多いちょっぴりセクシーでコケティッシュな1着。ちなみに、治子の母によって強要され、彼はしぶしぶ身につけている。
 しかしながら、見た目美少年なハルは見事に着こなし、可憐さすら漂わせている。
 それもあって、ハルは恥じらって赤面し、俯いていた。だが、それがまた、あざとさを感じさせる。……本人にその気は一切ないだろうが。
 これだけなら、治子もしらけはしないだろう。
 問題は春だ。彼の衣装だけは奇抜さで群を抜いている。
 頭には、十字をあしらったミトラ……司教冠を被り、礼拝で用いられる白いローブ……アルバの上から、十字の刺繍をあしらった赤い帯……ストラを首から掛けている。
 これはサンタクロースというよりも、その起源とされている聖ニコラウスを彷彿とさせる衣装だ。
 彼は2人を連れて、とあるマンションの一室を訪ねると、にこやかな顔をしてポーズを取る。右手は、人差し指と中指を揃えて立て、小指と薬指は曲げ、親指は広げたハンドサイン。左手では、聖書らしき本……いや、聖書に見せかけて、『食べれる野草、食べれない野草』というタイトルの本を抱えている。
 顔には全てを赦すようなアルカイックスマイルを浮かべ、背にはキラキラと後光すら纏っており、拝みたくなる……かもしれない。
 男性2人を冷静に眺める治子。もはや、悟りすら開いていそうだ。普段は内向的で、自己批判を行う彼女だが……。
(こいつらぶん殴って、縛ってその辺に転がしといて、後は自分1人だけで行こうかな)
 本気で覚醒して始末してしまおうかと、白い目で男2人を見つめ続ける治子なのだった。


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