クリスマスSS 2015
昼間のショッピングモール。家族連れが、カップルが、日常の賑わいとはほんの少し異なる空気を醸しながら往き来する。『イッパンジン』風織 歩人(CL2001003)も、そうした小さな非日常の空気にあてられてやって来た一人だ。
「あっ、あゆにぃ!」
噴水の縁に腰掛けて一休みしていた歩人は不意にかけられた声に気が付いて視線を上げた。藍色の勝気そうな瞳に橙色の髪。歩人を兄貴分として慕う、『極道【浅葱組】の若様』浅葱 枢紋(CL2000138)の姿がそこにあった。いつもとは違う非日常にあてられた少年がここにも一人。イベントに参加する者特有の感情の高揚。その共有相手を見つけたこと、そして小脇に抱えたプレゼントの包装袋を見て、微笑を浮かべる。
「おや。奇遇ですね」
「確かに。あゆにぃ、こういうイベント事、苦手かと思ってた」
屈託の無い枢紋の言葉に、歩人はほんの少しだけ眉根を寄せてみる。
「人混みは得意ではありませんが、年に一度ですし、楽しまないのも損でしょう」
それを言うなら。歩人はそう言葉を切った。いたずらっぽいを浮かべ、冗談めかしたようすで続ける。
「極道もクリスマスを祝うものなのですね。普段の持っているものと違うから、一瞬誰かと」
プレゼント包装されている以上、手元にあるものは別の誰かに送るものであることは明らかだ。その送り主を聞かれたことで、枢紋は頬をかいて歩人から視線を逸らした。ほんの少しの気恥ずかしさを滲ませながら、枢紋の視線が一瞬宙を泳ぐ。
「それだと、俺がいつも刀だと持って暴れてるみたいじゃないか」
「違うのですか?」
「違うってば! なんか今日のあゆにぃ、意地悪じゃねぇ?」
「最初に人を見かけで判断するようなことを言ったのは、そっちが先でしょう?」
歩人の言葉に、枢紋は「うっ」と呻いて黙りこくった。一瞬の沈黙。やがて、歩人は噴き出した。
「っふふ……冗談ですよ」
「なんだそりゃ」
ガクリと肩を落とした枢紋を見て、歩人はそろそろいいだろう、とからかうのを止める。そこまで行って、ようやく自分がこのクリスマスというイベントで浮かれていることを自覚した。
「そう言えば、アレ。まだ言ってませんでしたね」
「アレ? ……ああ。なるほどね。じゃ、せーので言おうぜ、あゆにぃ」
「ええ。それじゃあ……せーの」
ショッピングモールの喧騒の中、二人の声が同時に溶けてゆく。
――メリークリスマス
「あっ、あゆにぃ!」
噴水の縁に腰掛けて一休みしていた歩人は不意にかけられた声に気が付いて視線を上げた。藍色の勝気そうな瞳に橙色の髪。歩人を兄貴分として慕う、『極道【浅葱組】の若様』浅葱 枢紋(CL2000138)の姿がそこにあった。いつもとは違う非日常にあてられた少年がここにも一人。イベントに参加する者特有の感情の高揚。その共有相手を見つけたこと、そして小脇に抱えたプレゼントの包装袋を見て、微笑を浮かべる。
「おや。奇遇ですね」
「確かに。あゆにぃ、こういうイベント事、苦手かと思ってた」
屈託の無い枢紋の言葉に、歩人はほんの少しだけ眉根を寄せてみる。
「人混みは得意ではありませんが、年に一度ですし、楽しまないのも損でしょう」
それを言うなら。歩人はそう言葉を切った。いたずらっぽいを浮かべ、冗談めかしたようすで続ける。
「極道もクリスマスを祝うものなのですね。普段の持っているものと違うから、一瞬誰かと」
プレゼント包装されている以上、手元にあるものは別の誰かに送るものであることは明らかだ。その送り主を聞かれたことで、枢紋は頬をかいて歩人から視線を逸らした。ほんの少しの気恥ずかしさを滲ませながら、枢紋の視線が一瞬宙を泳ぐ。
「それだと、俺がいつも刀だと持って暴れてるみたいじゃないか」
「違うのですか?」
「違うってば! なんか今日のあゆにぃ、意地悪じゃねぇ?」
「最初に人を見かけで判断するようなことを言ったのは、そっちが先でしょう?」
歩人の言葉に、枢紋は「うっ」と呻いて黙りこくった。一瞬の沈黙。やがて、歩人は噴き出した。
「っふふ……冗談ですよ」
「なんだそりゃ」
ガクリと肩を落とした枢紋を見て、歩人はそろそろいいだろう、とからかうのを止める。そこまで行って、ようやく自分がこのクリスマスというイベントで浮かれていることを自覚した。
「そう言えば、アレ。まだ言ってませんでしたね」
「アレ? ……ああ。なるほどね。じゃ、せーので言おうぜ、あゆにぃ」
「ええ。それじゃあ……せーの」
ショッピングモールの喧騒の中、二人の声が同時に溶けてゆく。
――メリークリスマス
