クリスマスSS 2015
十年後設定】クリスマスプロポーズ
●『十年後設定】クリスマスプロポーズ』
遠くに見えるのは、街の光――宝石のような夜景が広がる丘の上で、ふたりは静かに寄り添っていた。
手編みしたマフラーを、ひさめが枢紋の首に優しく巻いて。すると彼は懐からそっと、指輪を取り出して彼女に告げたのだ。
『お前が幸せになるなら、ずっと俺の隣で笑ってくれないか?』
――ぽろり、と。その言葉にひさめの瞳から、大粒の涙がひとしずく零れる。それはどんな宝石よりもうつくしく、かけがえのないもので――彼女はこくりと頷くことで、枢紋のプロポーズに応えた。
『……ありがとう。うれしい……っ』
恭しく左手の薬指に結婚指輪をはめてから、枢紋はひさめを抱き寄せ、互いの額をくっつけて微笑む。嬉し恥ずかしの笑顔と泣き顔が向かい合い、何時しかふたりは手を取り合って、時の流れを噛みしめていた。
――あの頃よりも伸びた髪。けれど彼の浅葱色の瞳は、変わらぬ輝きを宿していて。そして恥ずかしがり屋だった少女は、可憐な淑女へと成長したものの、その相貌には当時のあどけなさが残っている。
そんなふたりの想いはただひとつ――それは枢紋を、ひさめを――互いを愛していると言うこと。
――これは十年後のクリスマス。もしかしたらふたりに訪れるかもしれない、少し未来の物語。
遠くに見えるのは、街の光――宝石のような夜景が広がる丘の上で、ふたりは静かに寄り添っていた。
手編みしたマフラーを、ひさめが枢紋の首に優しく巻いて。すると彼は懐からそっと、指輪を取り出して彼女に告げたのだ。
『お前が幸せになるなら、ずっと俺の隣で笑ってくれないか?』
――ぽろり、と。その言葉にひさめの瞳から、大粒の涙がひとしずく零れる。それはどんな宝石よりもうつくしく、かけがえのないもので――彼女はこくりと頷くことで、枢紋のプロポーズに応えた。
『……ありがとう。うれしい……っ』
恭しく左手の薬指に結婚指輪をはめてから、枢紋はひさめを抱き寄せ、互いの額をくっつけて微笑む。嬉し恥ずかしの笑顔と泣き顔が向かい合い、何時しかふたりは手を取り合って、時の流れを噛みしめていた。
――あの頃よりも伸びた髪。けれど彼の浅葱色の瞳は、変わらぬ輝きを宿していて。そして恥ずかしがり屋だった少女は、可憐な淑女へと成長したものの、その相貌には当時のあどけなさが残っている。
そんなふたりの想いはただひとつ――それは枢紋を、ひさめを――互いを愛していると言うこと。
――これは十年後のクリスマス。もしかしたらふたりに訪れるかもしれない、少し未来の物語。
