クリスマスSS 2015

 クリスマス。
 それは2人が、普通の姉妹のように過せる日。
「あーん」
 自宅のリビング。姉の膝の上に頭を乗せて、七十里・神無は大きく口をあける。
「はいはい」
 じゃれつく神無に優しく笑って、七十里・夏南はフォークに取ったケーキを妹の口へと入れた。
 幸せそうな神無の頭を撫でて、もうひと口与える。
 普段は同じ物を食べるのも上手くいかない2人だが、今日くらいは神無がお菓子で満腹になってしまうのも許してあげよう、と夏南は
20号の特大クリスマスケーキを用意していた。
 ――その代わり、お風呂嫌いを我慢してもらって徹底的に綺麗にしてあげよう。
 密やかな姉の計画をつゆ知らず、妹は無邪気に楽しんでいる。
 手を伸ばして、今はヘアピンが外されている桃色の前髪を、遊ぶように揺らした。
「こぉら」
 コツン、と。
 手袋をしていない手で、額を軽く叩く。
 神無が楽しそうに笑うから、こちらも思わず笑ってしまう。
「そうだ交代」
 フォークにケーキを取って、「あーん」と神無が近付けてくる。
「いや、私はいいから……」
 つつ……と、照れて離れる夏南に笑って、再び膝の上へと頭を乗せた。

 過去は、変えられないけれど。
 戦いは、明日からも続くけれど。

 今は、このひと時を。
 大切にしたい――。


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