クリスマスSS 2015
聖夜の配達人たち
幸せあふれるクリスマスの夜。
透き通った冬の夜気をふるわす天使の合唱と星をしるべに、足を痛めてしまったトナカイとプレゼントを抱いて、翼を広げたサンタが飛ぶ。
三島 椿はこの状況を大いに楽しんでいた。
自分がサンタクロースになってプレゼントを配るバイトなるなんて、そうあることじゃない。サンタの格好をして、店先に立つのとはまるで違う。加えて――
「ふふ、どじっ子さんね」
「あ、あの……私、大丈夫ですから」
腕の中でもぞもぞと、トナカイに扮した七海 灯が恥ずかしそうに身をよじる。
暗がりで気がつかなかったのだろう。灯は配送先の一段高くなった玄関にけつまずいて転び、足を痛めていた。
なんともない、と灯は言い張ったが、椿は有無を言わせずパートナーを腕に抱きかかえて空へあがった。
お届け先はもう一軒残っている。
「いいから、いいから。じっとしててね。このままプレゼントと一緒に運んじゃうから」
「え、でも。私、トナカイなのに……」
申し訳なさそうに俯く灯が、椿には可愛くてしかたがない。
見上げてごらん。
今年の聖夜は満月にトナカイを抱いて飛ぶサンタのシルエットが見えるから。
透き通った冬の夜気をふるわす天使の合唱と星をしるべに、足を痛めてしまったトナカイとプレゼントを抱いて、翼を広げたサンタが飛ぶ。
三島 椿はこの状況を大いに楽しんでいた。
自分がサンタクロースになってプレゼントを配るバイトなるなんて、そうあることじゃない。サンタの格好をして、店先に立つのとはまるで違う。加えて――
「ふふ、どじっ子さんね」
「あ、あの……私、大丈夫ですから」
腕の中でもぞもぞと、トナカイに扮した七海 灯が恥ずかしそうに身をよじる。
暗がりで気がつかなかったのだろう。灯は配送先の一段高くなった玄関にけつまずいて転び、足を痛めていた。
なんともない、と灯は言い張ったが、椿は有無を言わせずパートナーを腕に抱きかかえて空へあがった。
お届け先はもう一軒残っている。
「いいから、いいから。じっとしててね。このままプレゼントと一緒に運んじゃうから」
「え、でも。私、トナカイなのに……」
申し訳なさそうに俯く灯が、椿には可愛くてしかたがない。
見上げてごらん。
今年の聖夜は満月にトナカイを抱いて飛ぶサンタのシルエットが見えるから。
