そこは、酒々井兄妹が住居として借り受けている、喫茶店「茂美路メトロ」。
　小さく寂れたその店は、とても繁盛しているとは言えないが、そのアンティークな雰囲気を好んで訪れる常連客もいる。
　その日の営業を追えた後、兄妹２人は制服姿のまま、店内のソファに横並びで腰掛ける。
　妹、『紅戀』酒々井 数多(CL2000149)は、両サイドのもみ上げを黒く細いリボンで結んだポニーテールが特徴的で、頭の上にも細いリボンをつけている。ピンクを基調としたウエイトレス衣装が実にキュートだ。
「はい、にーさま、あーん。これは、にーさまへ特別に作ったケーキよ」
　数多は小皿に切り分けたケーキを左手に持ち、右手のフォークで一口大の大きさにして兄へと差し出す。その表情は非常に楽しそうだ。
　一方の兄、『行く先知らず』酒々井・千歳（CL2000407）。平均的な身長で中肉中背といった風貌の彼。長い黒髪を後ろで束ね、前髪が左目を隠している。ウェイターの制服を着ていることもあるが、全体的にシックで落ち着いた印象を与える少年だ。
「はいはい、慌てなくてもちゃんと食べますとも。メリークリスマス」
　千歳はそう妹に告げ、差し出してくれたケーキを口にする。その味が美味しいからなのか、それとも妹とのひと時が嬉しいからなのか、彼もまたとても楽しそうだ。
　２人は誰もいなくなった店内で、しばらく兄妹水入らずのひと時を過ごすのだった。