F.i.V.E.ファーストコンタクト



 覚者となって歩む道は様々だ。
 源素を持って妖に対抗するものもいる。
 愚昧に力を振るうものもいる。
 AAA、七星剣……そういった覚者組織に入るものもいるだろう。
 そんな中、FiVEに所属する覚者がいる。今は小さく、芽吹いたばかりの組織に。
 何故その道を選んだのだろうか?
 

「というわけで、インタビュー開始だぜ」
 マイクを持った相馬が談話室に集まった人たちに聞いていく。
「ハロー、ニューワールド!」
 ハイテンションで手を振り上げる百道 千景(CL2000008)だが、その内心は戦闘への怯えで震えていた。自分がやらないといけないと奮い立たせるためのハイテンション。
「はろー……じゃあ次」
「皆の千景ちゃんが来てあげ……って無視しないでくださいよー!?」
「目の前で、全てを失って……その時に覚者として目覚めました」
 あの日のことを忘れない。瑠璃垣 悠(CL2000866)は重々しく言葉を吐く。FiVEのスカウトにそれを見られ、勧誘されたという。
「どうしていいか分からなかったから……野垂れ死ぬよりは、マシかと思って」
「儂の妻と息子夫婦も妖に殺されたんじゃ」
 妖の犠牲者は四半世紀立った今でも後を絶たない。木暮坂 夜司(CL2000644)もその犠牲者の一人だ。瀕死の重傷を負いながら、幼い孫娘を助けることしかできなかった。
「以来、抜け殻のような時期が続いたが……ある日夢枕に伴侶と息子夫婦が立ってのう。今のままでは亡き身内に、そして生き残った孫娘に顔向けできんと一念発起したのじゃ」
「敬愛する兄を喪い、僕は覚者として発現した」
 男らしいしゃべる形をする三間坂 雪緒(CL2000412)。因子発現時に失った兄の口調を引き継いだ形だ。兄を失った傷は。平穏な日常が少しずつ癒してくれたという。
「その日々を守っていく事が出来ると聞いて、僕は迷わずFiVEの誘いを受けたんだ。……兄も、それを望んでいる気がしてね?」
「……皆、色々あるんだな」
 相馬自身も両親を妖により喪っている。この時代、妖に家族を奪われる人間は少なくない。

 だが、妖に襲われても何とか助かったケースもある。
「私も妖に襲われたのがきっかけで因子が発現しました」
 神城 アニス(CL2000023)も妖に襲われた経歴を持つ。最も彼女はそこで因子が発現した為、家族を失うことはなかった。一年ほど入院し、兄に迷惑をかけたとうなだれてはいるが。
「お兄様にも随分とご心配をおかけしてしまいましたわ」
「俺の場合は仲間と弟と出かけていた時に妖に襲われて、近くにあった鉄パイプを持ったときだな」
 次期極道の長である浅葱 枢紋(CL2000138)は鉄パイプを握ったときに前世の記憶が目覚めたという。やってきたFiVEの人と妖を撃退し、事なきを得た。
「そんで色々あって今に至る。この力でアイツ等を護れるなら、安いもんだな」
「そっか。皆強いんだな」
 力強い決意に頷く相馬。逆境をバネにして立ち上がる。その心の強さが覚者にある。
「私は、生まれた時からこの力を持ってたんです。だから、ごく自然にこの力を使って、みんなの役に立てたらって考えたんだと思います」
 生まれたときから身体に紋様があった鋼・境子(CL2000318)。彼女はその力を世間の為に役立てたいと思っていた。人を襲う妖を、源素を使い私欲を肥やす輩を倒そうと。
「最初は高校を卒業したらAAAに入ろうかと思ってたんですけど、その前にFiVEの人に誘われたら、いてもたってもいられなくなっちゃって」
「力に気付いたのは、去年の事でした」
 真っ直ぐに前を見て上靫 梨緒(CL2000327)が言う。FiVEのことは知っていたが、自分には無関係と思っていた。戦うことは怖く、また大学受験が控えていたこともある。
「でも、受験も迫ったある日、親友が妖に襲われて大怪我をしたんです。私はその場にいなかったけど、FiVEにいれば何か出来たかも知れない。妖に襲われる人を減らせるかもしれない」
「アタシはフランク、もとい育て親の後任っつー形でやって来たぜ」
 赤い髪を書き上げながらジア・朱汰院(CL2000340)が語る。フランク、というのは彼女の育ての親である大伯父のことだ。昔、後先考えずに暴れまわっていたジアは、自分の行動で妖を呼び込んでしまう。そのとき大怪我をしてまで助けてくれたのが大伯父だ。
「派手にやられたフランクは当分再起不能。そんならアタシが手伝ってやろうか、ってぇこった」
「うちの家族はみんな覚者なんです。その力で時折襲ってくる妖から家や灯台、そして周りの人々を守っていて。
 家族みんなが覚者であるが故に、経験の浅い私は守られる存在でした」
 それではよくない、と七海 灯(CL2000579)は発起し彼女は家族の庇護を離れる決意をした。いつか強くなり、彼女自身が灯火となることを目指して。
「大したものだぜ。俺、感動した!」
 その志に心震える相馬。自らの力に対する思い。この力でできる事。助けてもらった人に対する思い。覚者が戦いに挑む理由は様々だ。

 また、FiVEを戦う拠点と見るものもいた。
「FiVEに来た切っ掛けは、まぁありがちね。様々な戦闘支援や武具の提供を受けられるし、安全な寝床も確保できる数少ない大御所と聞いていたから」
 宇賀神・慈雨(CL2000259)は憤怒者に対し、怒りを感じている。そのための力とバックアップを求めてFiVEに身を寄せた。
「癒やすべきを癒し、屠るべきを屠る。その為には、当たり前だけれど鍛錬を積まなければならないもの」
「そうですね。流石に最早一人でゴミの掃除は難しいですし、覚者の集まりに加われば武装の調達や私自身の強化も捗るでしょう」
 妖や憤怒者に強い怒りを感じているアーレス・ラス・ヴァイス(CL2000217)。彼は『組織に対抗する為に』組織に入ったに過ぎない。
「私に万一があっても彼らの庇護に入れば子供達のその後も安心出来ますし、意地を張るより素直に利用すべきとしましょうか」
「アヤカシ、リジェクター……連中を屠れる力に目覚めた時は狂喜したものだ」
 因子が発現した時、黒神 シドウ(CL2000020)は喜びを感じていた。世を乱す輩に振り下ろす鉄槌。それを手にれたからだ。
「然し、おれは源素の扱いに関しては未だ無知だ、故にFiVEの存在は丁度好かった」
 後顧の憂いも含めて、組織に属することのメリットは大きい。
 また、戦いそのものを求める者もいた。
「昔から剣術、戦いが好きで暴れてたが、因子が発現してからは妖狩りを楽しんでた」
 刀を手にそう語るのは諏訪 刀嗣(CL2000002)。幸運なことに――刀嗣からすれば不幸なことに強い妖と出会うことはなかった。
「仲良しこよしでやる気はサラサラねぇけど、強ぇ妖やら隔者やらと会える可能性が高いってのは気に入った」
「俺はたいした事情なんてないぜ? ちょっと老後の嗜みに剣を振るう場所を探してただけってやつだ。ボケ防止のカルチャースクールみたいなもんだ」
 御堂 東眞(CL2000816)は幼少のころから刀を振るい、今は人ではなく妖を切る為にFiVEに所属したのだとか。
「早く切ってみてえな……妖ってやつを」
「ほら、覚醒しちまうと普通の人とは全力で組手もできなくなるじゃん? 同じような連中が集まるなら手加減しなくて済むし、オレより強いのもいっぱいいるんだろうなって」
 戦闘大好きな鹿ノ島・遥(CL2000227)にとって、重要なのは喧嘩できるかどうか。これからが楽しみだと拳を握る。
「オレとしても、能力を持て余してたとこだったし、渡りに舟だったかなー。これからが楽しみで仕方ないぜ!」
「お手やわらかに頼むぜ」
 仲間として頼もしく思う反面、血の気の多い発言に苦笑して答える相馬であった。


「万里ちゃんだよー。元気よく行ってみましょう! FiVEに来たのはどういう経緯なんでしょーか!」
 マイク片手にとてとてと歩く万里。元気よく突き出し、質問を投げかける。
「両親を亡くしてから高校、大学と五麟学園で学んでおりましたので。在学中にはもうすでに発現しておりましたので、多分そのつながりで」
 答えたのは職員室に弁当を運んでいたる飯原 春哉(CL2000123)。覚者の力を振るうでもなく眠らせていた春哉だが、勧誘を受けて断る理由もなく引き受けた。
「僕個人ではこの力をどう扱えばよいかわかりませんからね」
「学園の覚者からスカウトされた方もおおいようですね」
 落ち着いた口調で言葉を継ぐのは新田・成(CL2000538)だ。五麟大学で教鞭を振るう成は、その縁故でFiVEに勧誘される。二十五年前に因子が発現した成だが、力に関してはあまり興味を持たず眠らせたままだった。
「己の道を拓こうとしている若い覚者達を見て、老骨ながら助力させていただくことを決めたのです。確か木戸くんもそうですよね?」
「FiVE設立以前から学園には居ましたからね。話は直ぐ僕の耳にも入ってきましたよ」
 少しゆっくりとしたしゃべり方は、子供に分かりやすいように。五麟学園商学部担任の木戸 志織(CL2000808)は頷いて言葉を続ける。教師との両立は難しいと返答を避けていたのだが、
「……覚者と一般人の軋轢、僕もどうにかしたいですから……」
「先生も大変だね」
 沈痛な表情を浮かべる志織を前に、相槌を打つ万里。然もありなん。彼女は生まれたときからそれが当たり前の世界なのだ。『差別があって当たり前』の価値観。それがさらに教諭たちの顔を重々しくさせる。
  
 五麟学園に源素の知識を求めてやってきた者からの転向も少なくない。
「アタシさ……正直、信じられないんだよ。何がって? 源素の存在に馴染んじゃってる世の中のが、だよ!」
 興奮したように観嶋・亜李果(CL2000590)が叫ぶ。源素の存在が認識されてから四半世紀。それを当然のように受け止めた今の流れが信じられない。
「FiVEに誘われたのはラッキーだよね。源素の神秘を目にできる、最前線に立つことができるんだから!」
「ボクも元々は五麟学園では覚者研究を行われているって聞いて、入学したんだよね」
 資料をまとめたバインダーを手に四条・理央(CL2000070)は語りだす。考古学関係の飼料を探していたところ研究所の存在を知り、そしてFiVEの存在を知った。
「ボクが調べたい事とFiVEの活動の一部が一致してたし、所属に関しては問題なかったね。覚者だということを告げたら、すぐに採用されたよ」
「ヘー。でも怖くなかったの? 妖とか強いんでしょう?」
「強いだろうな。だからやつらのことに関する知識が必要なのだ」
 両親を妖に殺された風次郎は、その頃から妖と戦うことを決めていた。だが一人では限界がある。どこかの組織に所属するかと思っていたところ、FiVEの存在を知る。
「奴らとの戦いを優位に進めるには、まず奴らについて知る必要もある。それで奴らに勝てるかどうかは別の話だろうが、勉学を積むことに越したことはないだろう」
「そうですね。この日本のみで覚者や妖が出ている理由を含め、妖や源素についてはまだ分からないことばかりです」
 煙草を指で挟みながら神幌 まきり(CL2000465)が言う。現在禁煙中。でも吸いたい。そんな葛藤に悩んでいる状態だ。
「ベタですけど、五麟大学に進学したら学内でFiVEのことを耳にして。ここならもっと知ることができるかも、と自分から扉を叩いて所属することに決めたんです」
 この力は何処からきて、何処にいくのか。それを求める者は後を絶たない。
「僕はこの国だけに見られる『力』の探求がしたくて留学してきました。神秘研究と言えば五麟大学と聞いていたので、学校選びも迷いませんでした」
 アイルランド出身のイニス・オブレーデン(CL2000250)は日本で発生している現象を聞いて、来日する。そのまま五麟大学の話を聞いて編入した。妖と戦うかもしれない、と念押しされて戸惑いは舌が、
「僕自身はあまり、戦ったり争うのは好きじゃありません。だけど、『力』を高める事が探求にもなると思って、頑張っていこうと思っています」
「私がFiVEに来たきっかけは、力の発現でした。因子の力。正しく扱えば、救うことも、護ることも出来る力です」
 長い黒髪をなびかせて御神楽・晴(CL2000187)が言う。源素を得たときの反応は人によって様々だ。晴のような気持ちを抱けるのは、さぞ素晴らしい教育を受けた結果だろう。
「それを活かさなくてはいけない……そう思って、此処に来ました。此処が、一番だと思って」
「皆すごいんだねー。一杯難しいこと考えて」
 まだ十歳の万里からすれば、力の意味や理由など想像の範囲外だ。そんな人たちに触れ、万里は尊敬のまなざしを向けるのであった。


「次は私ね~。どんどんいっちゃいましょ~」
 間延びした口調で真由美がマイクを持つ。頬に手を当てて、インタビューを開始する。
「僕と妹が発現したのは昨年の夏。それは代々続く赤鈴の家には重大な事態でした」
「いきなりゴツい尻尾が生えてきて、ビックリしちゃった!」
 答えたのは赤鈴 炫矢(CL2000267)と赤鈴 いばら(CL2000793)。赤鈴家は部門の家系である。幼い頃から一族の武を継ぐ者として教育されたのだが、妹と共に覚者に目覚める。その事実に一族全員が驚愕し、どうするか話し合ったのだ。
「覚者の世界を知る為の修行とここへ送られました」
 苦笑しながら炫矢が答える。覚者になった彼を追放したともいえる仕打ちを受けたが気落ちはしない。ただ鍛練を重ねるだけである。
「話し合いの詳しい内容とかは知らないけど、お兄ちゃんと一緒にいる時間が増えて嬉しいし、特には気にしてないかなっ」
 一族の為に、そして兄の為に。いばらは慣れない鍛冶に悪戦苦闘しながら、今日もポジティブに頑張っている。
 炫矢やいばらのように、複数でFiVEにやってきたものもいる。
「ここに来たのは葵に連れられてじゃ」
「ある時にふと、此処の噂を聞いてな。天音を引っ張ってここにこれば、少しはのんびり安全に出来るかと想って此処に来たんだ」
 火紫 天音(CL2000422)と月城・K・葵(CL2000423)は全国を転々としているときにFiVEの噂を聞いたという。
「『危なっかしい』と説得を受けてしぶしぶ来たものの…ここはよいところじゃの。わしのような未熟者でも受け入れてくれて、ありがたいことじゃ」
 受け入れてくれた恩には報いねばならんの、と天音は頷いた。恐らくここが終の住処となるだろう。その覚悟を受け入れ、そこを護るために。
「実際の所、此処にきたおかげでのんびりとできるようにあったし、俺は幸せなんだよなぁって。だから此処には恩返しで何かできることあるなら手伝うつもりだ」
 けしてはなれぬ強固な絆。それを思わせる覚悟と決意がそこにあった。
 絆の形は様々だ。
「うちの家系は昔から古妖と戦ってたんです。
 それなのに頭の硬い家の長達は『都を守るのが定め、外に出てはならない』って。こんなに妖が日本中に溢れてるのに、覚者も普通に生活し始めてるのに」
 だから家を出たんです、と葛葉・あかり(CL2000714)は言う。両親の許可を得て五麟学園にはいり、そしてFiVEに。沢山の人を助けるため、あかりは符を手にする。
「出身に関してはあかりちゃんが話してくれたとおりです」
 語るのは姉の葛葉・かがり(CL2000737)。かがりは世の変化にあわせて、急に自分たちのやり方を買える必要はない、と主張する。
「ウチ本人は『全然』来るつもりはなかってんけど、『しゃあないから』おっかけてきた、ちゅう事です。ホンマにもぉ昔っから鉄砲玉な子ぉで、心配で心配で……」
「お姉ちゃんは心配しすぎです」
「あかりちゃんはまだまだ未熟者やさかい、心配で敵わんわ」
 喧嘩しているようで仲がいい。そんな葛葉姉妹や、
「自分が発現したんはわりと早かったな。ええっと……二十五年前か」
 光邑 研吾(CL2000032)の因子が発現したのは、覚者が世に出始めた頃。散発的に沸く妖を、町内の有志をあつめて懲らしめていたとか。特に覚者として名を上げるつもりもなく、平穏な日々を満喫していた。
「FiVEのことを知ったんはつい最近ですな。あるお寺さんで山門の新築工事を請けてたときに、そこのご住職から教えてもらいまして」
「そしてケンゴに連れられてFiVEを訪ねたのヨ。ちょっとしたデート気分で」
 光邑 リサ(CL2000053)はFiVEに来たきっかけをそう語る。四十三年前に研吾に一目ぼれし、一度刃帰国したものの諦めきれずに再来日。そのまま押しかけ女房になったのだ。
「ふだん知りあえなかったような人たちとも仲良くなれるから、FiVEに入ってよかったワ」
 並ぶ二人は正に仲睦まじい。そんな光邑夫婦や、
「んーと! 私がFiVEに来たのは、覚者になったから、かな!」
 元気よく語りだすのは久遠寺 星羅(CL2000144)。アイルランドの血が混じっているのか、薄い青を湛えた月長石の目が特徴的な少女だ。
「ここだけの話、じいやの言う『久遠寺の次期女当主として』ってのにまだまだイマイチぴんとこないのは内緒だよ」
「こんな所に居たのですかお嬢様! ……おや、インタビューですか?
 私はお嬢様が参加すると仰いましたからね」
 烏丸 響悟(CL2000406)は久遠寺家に仕える執事である。若い頃、その家に命を助けてもらったことから、付き人として働いている。星羅と共にこちらにやってきた形だ。
「旦那様からお目付け役として一緒に参加しておいて欲しいと言われました」
 星羅や響悟のような始終関係もいる。
「おにーさん、初めて日本に来た時にさ、不覚にも妹と一緒に迷子になっちゃってねぇ」
「二人途方に暮れている時に、妖と出会ってしまって……」
 フランスからやってきたオリヴィエ・L・巴(CL2000292)とクラリス・A・巴(CL2000804)。 慣れぬ土地を彷徨ううちに妖に出会ってしまい、そのときのショックからか因子が発現する。未知の力に戸惑うばかりだった。
「FiVEの覚者の助けが間に合ってねー。ふたりともなんとか無事だったのさ」
「その後の事は……良く覚えていません。ただ、私と兄は覚者という物になったのだと助けてくれたらしいFiVEの覚者さんに説明を受けました」
 その後二人はその後本国に帰り、両親を説得して再来日する。そんなオリヴィエとクラリスのような関係もある。
「仲睦まじいですね~」
 春の陽気のような声で真由美が微笑んだ。

 しかし絆が強固とだからとはいえ、それがかみ合わないケースもある。
「力が発現したのは妖に襲われた事件の直後だったわ」
 酒々井 数多(CL2000149)という覚者を語る場合、どうあってもこの『事件』を避けることは出来ない。一年前の交通事故。
「妹が長い間塞ぎ込んじゃってたからね」
 酒々井・千歳(CL2000407)はそんな妹を見て、肩をすくめた。妖が原因といわれる事故で二人の両親は命を失い、千歳は病床に伏すことになる。数多は兄が伏す一年間、ずっと一人で塞ぎこんでいたのだ。
「私は妖が大嫌い。だから全部、斬るわ」
 両親の仇をとる。そのために数多はFiVEに。
「妹にいろんな友達を作ってあげたくてね。似た人が多いここなら友人もできるだろう」
 妹に元気を。そのために千歳はFiVEに。
「ここに来る前、私とお母さんは遠くの町に暮らしていて、お父さんはお仕事のために五麟町に住んでいたのです!」
 まだ幼い金剛寺 ルイ(CL2000256)は父親不在の寂しさに悩むときがある。父がいない生活に少し悲しみを感じることがあった。
「ちょっと、さみしくて、お友達がほしいと願っていたら小鳥さん……エミールがやってきたのです!」
 守護使役の『エミール』……それが見えるということは覚者になったということ。父はそれを受けてルイを五麟市に呼び寄せたという。
 しかしその父はというと、
「俺は先祖代々武道家の家系で生まれ育ち、金剛寺の道場の跡継ぎでもあった。だがある日突然覚者になって以来、道場の居心地が悪く感じるようになった」
 覚者に対する蔑視。金剛寺 元直(CL2000647)はそれを受けた人間だ。自分自身に向けられる分にはいい。だが妻や子供にその目が向くのは耐えられない。
「だから俺は妻や子と別の場所……五麟町に住み、今でもFiVEとして仕事をこなしている」
 だが娘が覚者になるとは予想してなかった、と元直はため息をつく。五麟市に呼んだのは已む無き手段なのか。
「お姉ちゃんが行くっていうから、ついてきたの」
 七十里・神無(CL2000028)はゆるりとした口調で語りだす。その頭を虫系守護使役『もぐ』が齧っているのは友愛の証だろうか? 
「その前はどうしてたっけ。……忘れちゃった。まあどうでもいいかそんなくだらない話」
「……神無がずっと父親の亡骸から離れようとしないものだから、後始末に困っていたところにあっちから来た」
 妹とは違いキビキビした口調で七十里・夏南(CL2000006)がいう。肉親をなくし、身寄りがないところでFiVEのスカウトがやってきたと言う。そういう意味では渡りに船だったといえよう。
「二人揃って身寄りが無くなってしまったから、他に選択肢は無かったとも言えるわね」
 妹との関係は悪いと思ってる夏南。姉との関係はいいと思っている神無。ギクシャクしているように見えるが、
「皆すごく仲良しなのね~」
 真由美から見れば仲良しに見える。本当に嬉しそうに、彼らの仲を見て微笑んでいた。
 かみ合わなくとも絆はある。


「一周して次は俺のターンだ! 次は……」
「わたしがFiVEにいる理由……秘密、なんだよ」
 ファル・ラリス(CL2000151)は言って優しく微笑む。金髪碧眼。その格好から外国人なのだろうが、彼女がいつからFiVEにいるかは不明だった。自らを『願望器』と名乗り、誰かのやりたいことを支えるファル。
「皆が何か成したい事があって、そのために集まってきたみたいだから。やりたいことをするための熱、みたいなのがわたしを呼んだんだと思うよ」
「……え? あの」
「僕が、瑞光の使徒『エル・モ・ラーラ』だからです」
 唖然とする相馬の毎期を手にして新田・茂良(CL2000146)が語る。ま札を張った壷を手に、どこのラノベ設定かと疑うようなことを言う彼だが、要するに中二病患者である。まだ十歳だけど。
「おおよそ文字にしたところで皆様に伝わるのは難しいでしょうね。それほど高尚なことであり、子供である僕ですr(省略)」
「なんだぁ!?」
 慌てて脱する相馬だが、時すでに遅し。謎の集団に囲まれていた。
「あー、なんか、ばーってきたから、ぐわーってなって、どばーってなってから、ぴかーってなったら、しゃきーんってなもんよ」
 前世持ちは力が発現しても断片的な夢を見たように曖昧な印象しかない。目覚めたのだということは分かるが、それでも抽象的な印象になる。まあ、坂上 懐良(CL2000523)の場合は彼自身の性格にも夜のだろうが。
「んでもって、がしーんってなったら、ぴきーんってなって。……分かる?」
 わからん、と首を横に振る相馬。
「純粋に拾われた感じじゃな! 妾には身寄りがない故、仕方あるまいて!」
 拾われてきた、という割に強気に胸を張って瀬伊庭 玲(CL2000243)は言う。玲は吸血鬼の末裔を自称したり、謎の組織に狙われたりと色々自称している。
「こうなったのも何かの縁! 妖共に、妾の名前をとどろかせて見せようぞ! にゃーっはっはっはっは!」
「お、おう。じゃあ次は……」
「……私みたいなクズは、何もせずにのうのうと生きてちゃいけないんです……」
 震えながら語る筍 治子(CL2000135)は、なんというかネガティブ思考だ。だがスカウトに来た人間は別の理由で驚いたという。現の因子をもつ治子は、覚醒時に姿だけではなく性格も一変すると言う。ハッピートリガーなハグ魔に。
「妖を退治する事 で、誰かの役に立てるなら。少しでも、私が、私なせいで撒き散らした負債を、返せるなら……」
「ふはははは、この《黄薔薇色の死眼》野茨がFiVEに来た時の武勇伝を聞きたいという事だな! スカウトされたのだ!」
 野茨・幸(CL2000301)……と呼ぶと怒るので『黄薔薇色の死眼』と呼称する。ともあれ彼女はスカウトを受けてFiVEにやってきた。武勇伝とは何だったのか。
「ふふふ、あのスカウトも見る目がある……いや、この死眼を隠しても溢れ出るKARISUMAのせいだろうな!」
 眼帯をさすりながらドヤ顔をする『黄薔薇色の死眼』。ちゅーに真っ最中である。
「わたくしを拾い育てて下さった神父様が言いました。『日本、今、とてもホット』と」
 パン、と手を合わせてキリエ・E・トロープス(CL2000372)が口を開く。親とも言える神父の命により日本にやってきたキリエ。おめめぐるぐる。
「はるばる船旅にて日本につき間もない頃、私のお腹に不思議なタトゥーが! これはきっと私の神様がくれた試練であることです。力の大元を知ること、私の神様に近付くこと、同じになります」
 目玉をぐるぐるさせながら語るキリエに、相馬もたじたじだった。


「相馬お兄ちゃんに厄介そうなのを押し付けて万里のターンです! それではどうぞ!」
「在学中に急に覚者となった私は、これまで以上に人を避けるようになっていました」
 覚者に対する意識の壁は四半世紀経った今でも続いている。宮川・エミリ(CL2000045)もその被害者の一人だ。他者と違う力。元々人付き合いが上手くない彼女は、さらに孤立していく。
「元々人付き合いが苦手な人生を送っていた私が、普通の人とは違う力を手にしてしまったから、余計に交流をどうしていいのかわからなくなってしまったからです」
「あたしはある日、何の前触れもなく覚者の力が発現したわ。それが原因で周囲から色々と陰湿なイジメを受けたりしたんだけど……思い出すだけで腹が立つわね」
 普通の学生だった一文字 椿(CL2000779)は、因子発現により理不尽な差別を受ける。それが原因で引きこもるが、ずっと理不尽に怒りを感じていた。
「部屋に閉じこもってたあたしの所に黒スーツの怪しげな奴が訪ねてきて、それがFiVEのスカウトマンだったのよ」
「私も元いた学校ではそれほど周りに馴染んでいなかった……というより、割とハードに虐げられていたの」
 要するに苛められっ子ね、と肩をすくめる津島 陽子(CL2000515)。苛められていた陽子は守護使役や本や携帯を友として、他人と距離を置いていた。
「それから校内でちょっとした騒動を起こしてしまって、FiVEの人達に説得されて。いま私は、こうして生きていられているわ」
「……アタシ、子供の頃から……友達いなくて……」
 おどおどと口を開く明石 ミュエル(CL2000172)。覚者という以前に日仏ハーフである彼女は、その容姿から上手くコミューンに混じれなかった。機の因子が発現してからは彼女自身から皆に混じることを拒否し始めた。
「FiVEに来たら……外国の人とかも、いっぱいいて……アタシみたいなハーフでも、特別視されない……」
「特別扱いか、オレもそうかな。オレいきなり発現しちゃってわけ分かんなくてさ、目立つしどーすっかってなってた所でFiVEの事教えてもらったのよ」
 潮見 一流(CL2000091)の頭には兎の耳。ウサミミが原因で家族に大爆笑され、多感な心を持つ一流は家を出て友達のところに転がり込んでいる。まあ両親知っているわけだし、なんら問題はない。そのままスカウトを受けて今に至る。
「同じ様な境遇の人がいるってだけで大分心強いよなー」
「そっか……よかったね!」
 FiVEに覚者の仲間を求めてやってくるケースは多数だ。それはそれだけ覚者に対する蔑視が強いということの裏返しである。力に対する恐れ。そして不安。それを気にしない人間は、そう多くはないのだ。
 仲間といえば、
「一緒に音楽できる仲間が欲しいなぁって思ったの」
 楠瀬 ことこ(CL2000498)の理由は、実に年齢相応のものだった。ならば向かう先は学園の部活棟なのではないかと思うが、ことこは背中の羽根を揺らしながら言葉を続ける。
「だったら同じような人と一緒にバンドとか組めたらいいなって。そしていつか『あいどるでびゅー☆』とかできたら素敵でしょっ」
「昔から、私は『ヒトならざる、異形の存在』というものに強く惹かれやすい性質でねェ」
 そう語るのはファッションデザイナーの梅崎 冥夜(CL2000789)。因子発現前から『覚者のための服』を考え、特に付喪の四肢が如何に映えるかをコーディネートするためにその才を発揮する。
「そんな私の身体にも猫の耳と尻尾が生えてきたなら、もうFiVEに入るより他はないとは思わないかい?」
「私の服も作って~」 
 ことこや冥夜のように、自分の趣味にあう仲間を探しに来るものも居る。覚者集まるコミューンだからこそできる文化もある。

「どんな経緯でFiVEにやってきたんでしょうか?」
「はじまりは去年の誕生日。村の祭りの一環で、仔牛を――『送る』、最中に発現して」
 北海道のアイヌ文化を受け継ぎし古い集落。金木・犀(CL2000033)は因子発現時に色々あって故郷を飛び出した。慣れぬ地でどうしたもかと二の足を踏んでいたところ、FiVEの存在を知る。
「覚者の力を揮いさえすれば扶助を受けられる、と。そんな訳で、門扉を叩かせて貰った次第かな」
「そっかぁ……オイラがいた村なんだけど、オイラが生まれるずっと前に破綻者ってやつに焼き尽くされて、ものすごく悲惨なことになったんだってさ……」
 百の村のように、源素持ちそのものに対する憎しみを持つコミューンは少なくない。そんな村で因子が発現した鯨塚 百(CL2000332)は。逃げるように住んでいた村を離れ、彷徨っていた。しかし十歳の子供の持つお金では限度がある。
「行くあてはないしお金も食い物もすぐに底をついて、腹減りすぎて行き倒れてたとこを偶然FiVEの人に拾われてここに来たんだ」
「ああ。FiVEに来た時は、びっくりしたな。飯を出してくれるとこもそうだが、同じような奴らがこれだけ居たとはな」
 トール・T・シュミット(CL2000025)は、FiVEの印象を聞いてそう答えた。覚醒時、トールは二十六歳の金髪男性から十歳の少年になるのだ。それを受け入れてくれるのは、本当に嬉しかった。
「オレの変身みても特に驚かないどころか、普通にしてたのは嬉しかったぜ」
 FiVEの生活を受け入れる者には、犀や百やトールのように衣食住を求めるものも多い。地域によって様々だが、覚者に対する蔑視はまだ払拭されていないところもある。そこから逃れる意味合いも強かった。

 また、覚者と非覚者の壁を憂いているものもいる。一人ではどうにも出来ない『常識』という壁を打ち崩そうとFiVEに身を寄せる。
「初めて覚醒した時は、能力を制御できなくて暴走させてしまったの」
 新田・恵梨香(CL2000015)のようなケースは、それほど珍しくない。だが周囲の批判や情報不足から彼女は自分を呪われた子だと思い込むようになった。
「ここには自分と似たような境遇や能力の持ち主がいるから、差別や偏見とも離れて暮らせるからいいわね」
「世間の人達と覚者の垣根を取り払って、誰もが優しく暮らせる社会になって欲しい。だから、悪さをする妖を懲らしめて皆を守りながら、音楽の架け橋を掛けてきました」
 覚者によるマーチングバンドに所属していた守衛野 鈴鳴(CL2000222)。妖退治と市民警護、そして音楽による架け橋により覚者とそうでない人の融和を目指している。そんな彼女がFiVEのスカウトを受けて、五麟市にやってくる。
「素敵な理念に共感して、ここに出向させてもらう事にしたんです」
 世間の波は多いく残酷でも、その手はきっと何かに届く。


「あら~。また私の番? それではどうぞ~」
 微笑みマイクを向ける真由美。だがこのグループの表情は一様に硬かった。
「大きな声では言えないけど、わたしの両親は反覚者組織の協力者だったの」
 語る当宮 水曜(CL2000805)の表情は複雑だ。その両親は組織に娘の因子発言を報告することなく、水曜を五麟学園に入学させたという。
「まぁ、そういうワケで学園に来たんだけど、暇だったし。せっかくの力があるんだから使わないと勿体ないじゃない?」
「自分がFiVEに来た理由も似たようなものですね。少しばかり古巣で揉めましてな。出奔して来てしまったのであります」
 犬童 アキラ(CL2000698)の『古巣』は憤怒者の組織である。覚者を恨む者の中で因子が発現し、昨日の友に敵として追い掛け回されることになる。そこでFiVEのスカウトを受けたのだ。
「ご飯は腹一杯頂けるし、朝は日が出ても寝かせてくれる。おまけに望めば勉学の機会も与えられるとあれば、文句などあろうはずも無く」
「かつて私はⅩⅠに所属していた。反社会的覚者……こちらで言う隔者に対抗する部隊として、信頼する仲間と共に戦っていた」
 湊・瑠衣(CL2000790)はかつて憤怒者の組織『ⅩⅠ』に所属していた。自分の周りのものが力ある者の被害に会い、憤怒者となる。
「いつしかⅩⅠの思想が覚者の根絶へと変わり始めた頃合いに私の因子は発現した」
 瑠衣は組織を脱し、FiVEに所属する。かつて仲間だったⅩⅠの暴走を止める為に。
「まぁ……それは大変でしたね」
 因子発現の法則性は全く分かっていない。発現により突如仲間が敵となるのだ。生活が一変してしまう。
 そういった反覚者組織からFiVEに転向してくるケースも、少なくなかった。大抵はそれまでの経緯から反社会的な覚者組織に入るのだが、それでもFiVEを選ぶ理由がある。

 反覚者組織以外にも、様々な組織からやってきたものも居る。
「あれはあたしが所属してたある組織……から大人の事情で抜け出して、街から街を旅する放浪のメイドを決め込んでた頃でしたね」
「流浪のメイドですか~?」
 首を傾げ真由美をよそに、モップ片手に町田・文子(CL2000341)は語る。しかし世間の風は冷たく、夜露を凌ぐのも難しかった。
「色々あってダンボールの中でうとうとしてたんです。そこを木の枝か何かでつんつんって起こしてくれたのが、FiVEのスカウトの人だったようで」
「私の場合は、AAAに所属していた両親の知人から誘われたからだ」
 太刀風 紅刃(CL2000191)の両親はAAAだ。不幸なことに両親は殉職しており、FiVEへの誘いも両親の事情を鑑みての行動なのかもしれない。最も彼女自身は両親の死を割り切っている部分があった。
「剣術により磨きを掛けて、己の目指す剣の道を追求するには良い環境だと思ったのでな」
「自分はAAAに属していたのでFiVEの存在は事前に知っていた」
 元AAAの赤坂・仁(CL2000426)はAAAの情報網からFiVEのことを知る。怪我で一線を引いていた仁がAAAではなくFiVEを選んだのは、AAA内部がまだ混迷していたからだ。
「今だリハリビ中だが、よろしく」
「よろしくお願いしますね~」
 様々な組織の人間が集うFiVE。新たな血はどのような変化を生み、組織を発展させていくのだろうか。


 妖討伐抗争。
 第一次は妖に対抗する下地を。第二次は紅蜘蛛討伐。第三次は新月の咆哮との戦い。多くの犠牲を生み出した戦いだ。
 その戦いで家族を失ったものも居る。
「んーそうやなぁ。あの時はまだ若かった頃やけど、抗争に巻き込まれて怪我負うたのがキッカケやったか」
 お腹を手でさすりながら瑛月・秋葉(CL2000181)は語る。第二次妖討伐抗争と呼ばれる戦いに巻き込まれ、怪我を負ったときに因子が発現したという。
「覚醒してもうた時はびっくりしたで。んで、色々あってFiVEの存在を知ったっちゅう感じや」
 当時を回顧し、煙草を揺らしながら言う秋葉。今から十八年前の話だ。その傷跡はけして浅くはない。
 だがそれより深い傷がある。一年と数ヶ月前の第三次妖討伐抗争――
「私には生きる資格がありません。そして死んで家族の元に行く資格すらも。だから此処に来たんです。死ぬ為に生きる為に」
 武蔵ヶ辻 かえで(CL2000005)は第三次妖討伐抗争で家族を失っている。そのとき因子が発現し、彼女はそれを『罪』と認識していた。その罪を断ずる為にFiVEに所属して、戦いに身を投じることを決意する。
「大丈夫です、生き急いだりはしませんから。私はただ、見てみたいんです。自分の罪の向こう側を」
「両親の死の報に接した時にいのりは因子に目覚めましたわ。怒りか、哀しみか、何か引き金かは解りませんが」
 秋津洲 いのり(CL2000268)の両親は第三次妖討伐抗争で亡くなった。参戦に反対していた祖父はいのりを覚者の道から遠のけようとFiVEの誘いを断っていたが、
「いのりは『力を人々の為に役立てる』という両親の意思を継ぎたかったので、お爺様を説得してこちらに参りましたの」
「我が一族は、誇りと使命感から独自に戦っておりましたが……第三次妖討伐抗争で、戦人のほぼ全員が力及ばず全滅しましてな」
 そう語りだすのは藤城・巌(CL2000073)だ。退魔の一族であった彼は一族総出で第三次妖抗争に参加していだのだが、彼を残して全滅する。生き残った彼は一族の代表として戦うことになる。だが、
「只でさえ非才たるこの身で、単騎の活動など無謀を通り越して稚気の沙汰。スカウトの方の誘いを渡りに船と、何とか老人方を説得しまして……」
 罪を見る者。意思を受け継ぐ者。一族を背負う者。
 戦争は百害あって一利なし。そんなことは誰だってわかっているのに。否、そんなものだと誰もが分かっているから――
 平和を求めて覚者は妖に抗うのだ。


 かくて扉は開かれた。
 それぞれの思い、それぞれの理由を元に彼らはFiVEに居る。
 その思いが、成就されることを願って。


< ST/どくどく

※一定基準の掲示板での発言を元にインタビュー形式で文章化されています。
本文章限りの特別演出としてお楽しみ下さい。


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