小湊拓也 (こみなとたくや)
クリエイター登録:2016-12-15 16:05:29
自己紹介 2019年02月10日 更新
今更ですが、小湊拓也と申します。物書きのくせに自己PRが苦手なもので、今まで放置しておりました。
基本、好き勝手に書かせていただいております。
PC様のプライベートにもガンガン踏み込んで行きます。
白紙系プレイングの場合は100%、小湊の好きなように書かせていただきます。
よろしくお願い申し上げます。
基本、好き勝手に書かせていただいております。
PC様のプライベートにもガンガン踏み込んで行きます。
白紙系プレイングの場合は100%、小湊の好きなように書かせていただきます。
よろしくお願い申し上げます。
担当NPC
雑記 2019年02月10日 更新
NPC語りを更新しました。
●
あれから数百年を、老人の姿で生きている。
不死、という事はないであろう。殺されれば恐らく死ぬ。
試した事はない。
つまり私はきっと、まだ死にたくはないのだ。
乙姫より賜った、この得体の知れぬ生に、未練がある。
初めて出会った頃の彼女は、私にとって、ただひたすら美しいだけの女性だった。私も若かったから夢中になった。
彼女が人間ではない事には最初から気付いていた。何しろ、海の底に住んでいるのだから。
乙姫のあの真の姿も、私はさほど気にならなかった。竜宮における、悦楽と惰眠を貪る日々が、私の何かを麻痺させていたのかも知れない。
その悦楽と惰眠が、私は恐くなったのだ。
乙姫は、完璧な統治者であった。
竜宮の女王として毅然と艶然と振る舞いつつ海の政務をこなし、時には恐るべき真の姿を露わにして外敵との戦に臨む。
対して、私はどうなのか。
海の底の楽園で、美しい女王に甘やかされ飼われるだけなのか。
地上へ戻る事を決意した私に、乙姫は餞別の品をくれた。決して開けてはならぬ、という言葉を添えて。
その言葉に背いた結果が、今の私の姿である。
「おい、どっか行くのか爺さん」
五麟学園。
通用門から外出しようとする私に、火行彩の五樹影虎が声をかけてきた。
「七星剣の連中がうろついてる。出来たら、あんまり外へ出ねえで欲しいんだが」
「ちょっとした買い出しですよ。工具類で、いくつか揃えなければならないものがありまして」
そういったものを揃えておくのも、用務員たる私の仕事である。
「心配は御無用です。七星剣とて忙しいのでしょう? 私など狙うはずがありませんよ」
「……あんた、竜宮の関係者だろ。大いに狙われると思うんだがな」
この五樹影虎という少年は、意外に心配性なのである。
「まあ充分、気を付けてくれよ。護衛してやりてえとこだが、俺も今から出動でな」
「五樹君こそ、お気を付けて。女性隔者の色仕掛けには、特にね」
「ほっとけ!」
五樹影虎は、駆け去って行った。
老人が、大荷物を携えて、ホームセンターから出て来たところである。年寄りにしては、なかなかの力だ。
俺たちは路地裏に潜み、暗殺の機会を窺っていた。
「何の変哲もねえ、ただのジジイじゃねえか」
藤倉が言った。
「あんなのブッ殺したところで、本当によ……そんな大事に、なるってのか?」
「知らん。とりあえず殺す。何も起こらなかったら、それはそれで仕方がない」
古妖を、暴れさせる。古妖どもに、人間への敵対行動を取らせる。
それが現在、俺たち七星剣が総出で取り掛かっている作戦なのだ。
「あのジジイが死ねば、竜宮が動く……地上の人間を、皆殺しにするためにな」
永井が言った。
「……って話だ。本当かどうか、まあ殺してみればわかる」
「殺す……か。おとぎ話の、主人公をなあ」
それも、本当かどうかわからない話だ。殺してみれば、わかる話だ。
「よし、とりあえず殺そうぜ」
「待て桑野。もう少し、人通りのない場所で」
「見られたら見られたで構わねぇっての! 俺たちゃ隔者だぜ? 見た奴が、この世から消えるだけだって」
喚いていた桑野が、まずはこの世から消えた。首から上が、綺麗さっぱり失せていた。
蛇のような鞭のようなものが宙を泳ぐ様を、俺は辛うじて視認した。
びっしりと吸盤を備えた、触手。それが桑野の生首を絡め取っている。
「……目の付け所は、悪くないわね」
涼やかな、女の声だった。
「あの方に万一の事があれば……確かに私は、貴方たち七星剣のみならず、人間という種族そのものを許せなくなるでしょう」
永井が、藤倉が、砕け散った。人体の残骸が、路地裏にぶちまけられていた。
巨大な、巻き貝。
ドリルのような貝殻が猛回転し、隔者2名を穿ち砕いたのだ。
その女は、いつの間にか、そこにいた。
ひらひらとした衣服のあちこちから、頭足類の触手が幾本も現れ伸びて禍々しくうねる。
たおやかな肉体の一部が変異膨脹して硬質化を遂げ、回転する巻き貝と化している。
「竜宮の軍勢で、覚者たちに戦争を挑む……私、そのような愚行に走ってしまうところだったわ。危ない危ない」
「貴様……」
古谷が『炎柱』を放った。猛火の渦が、女を呑み込んだ。
その炎を蹴散らしながら、頭足類の触手が跳ねる。
古谷の身体は一瞬にして巻き取られ、締め上げられ、潰されていた。消化器官か心肺か判然としないものが、古谷の口から溢れ出して宙を舞う。
その間、俺は抜刀して女に斬り掛かっていた。必殺の地烈。
その斬撃が、砕け散った。女のたおやかな腕が、俺の剣を打ち砕いていた。
否、それは人間の女の細腕ではない。
巨大な、蟹の鋏。
それが、俺の胴体を両断していた。
地上での戦いにも、慣れてきた。
それを実感しつつ海原遼子は、隔者たちの返り血にまみれたまま、老人の後ろ姿を見送っていた。路地裏から、気付かれる事もなく。
「貴方は……また、行ってしまわれるのね……」
その声は、しかし老人には届かない。
この場にいない者には、しかし聞かれていた。
『今になって未練を抱く……それならば何故、あの男を竜宮に引き留めておかなかったんですの?』
「あの方の意志を……変える事など、出来はしないわ……」
雑居ビルの外壁にすがりつきながら、遼子は呻いた。
「私たちに近しいものへの変化を……絶望の中で、受け入れる……そのための玉手箱、だったのに……」
『竜宮へ戻りませんでしたわね、あの男』
とある博物館に展示されたまま、彼女は思念だけを遼子に送りつけてくる。
『だからと言って今更……まさか乙姫様、あの男を竜宮へさらって行こうなどと、お考えではありませんわよね』
「決して開けてはならないものを、絶望の中で開けてしまう……それでこそ、あの方の……人の世への未練を、断ち切ることが出来る……はず、だったのに……」
『回りくどい事なさるからですわ、まったく』
説教が始まった。
『もう間もなく七星剣は滅び、あの男が狙われる事もなくなりますわ。そうなったら乙姫様、早急に竜宮へお戻り下さいませ。同胞の魂を地の底より解放なさる、それもあらかた済んだところで古妖狩人関連の騒動、そして七星剣の策謀……それらも終息の時を迎えつつある今、もはや貴女が地上にとどまる理由など何もなくてよ。わかっておられるのでしょうね? まさか、わからぬふりをしておられる? 乙姫様ともあろう御方が、まさか竜宮へ戻らぬ理由を、子供の屁理屈の如く捻り出そうとしておられるわけでは』
聞き流しながら遼子は、遠ざかって行く老人の背中を見送り、涙を流していた。
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あれから数百年を、老人の姿で生きている。
不死、という事はないであろう。殺されれば恐らく死ぬ。
試した事はない。
つまり私はきっと、まだ死にたくはないのだ。
乙姫より賜った、この得体の知れぬ生に、未練がある。
初めて出会った頃の彼女は、私にとって、ただひたすら美しいだけの女性だった。私も若かったから夢中になった。
彼女が人間ではない事には最初から気付いていた。何しろ、海の底に住んでいるのだから。
乙姫のあの真の姿も、私はさほど気にならなかった。竜宮における、悦楽と惰眠を貪る日々が、私の何かを麻痺させていたのかも知れない。
その悦楽と惰眠が、私は恐くなったのだ。
乙姫は、完璧な統治者であった。
竜宮の女王として毅然と艶然と振る舞いつつ海の政務をこなし、時には恐るべき真の姿を露わにして外敵との戦に臨む。
対して、私はどうなのか。
海の底の楽園で、美しい女王に甘やかされ飼われるだけなのか。
地上へ戻る事を決意した私に、乙姫は餞別の品をくれた。決して開けてはならぬ、という言葉を添えて。
その言葉に背いた結果が、今の私の姿である。
「おい、どっか行くのか爺さん」
五麟学園。
通用門から外出しようとする私に、火行彩の五樹影虎が声をかけてきた。
「七星剣の連中がうろついてる。出来たら、あんまり外へ出ねえで欲しいんだが」
「ちょっとした買い出しですよ。工具類で、いくつか揃えなければならないものがありまして」
そういったものを揃えておくのも、用務員たる私の仕事である。
「心配は御無用です。七星剣とて忙しいのでしょう? 私など狙うはずがありませんよ」
「……あんた、竜宮の関係者だろ。大いに狙われると思うんだがな」
この五樹影虎という少年は、意外に心配性なのである。
「まあ充分、気を付けてくれよ。護衛してやりてえとこだが、俺も今から出動でな」
「五樹君こそ、お気を付けて。女性隔者の色仕掛けには、特にね」
「ほっとけ!」
五樹影虎は、駆け去って行った。
老人が、大荷物を携えて、ホームセンターから出て来たところである。年寄りにしては、なかなかの力だ。
俺たちは路地裏に潜み、暗殺の機会を窺っていた。
「何の変哲もねえ、ただのジジイじゃねえか」
藤倉が言った。
「あんなのブッ殺したところで、本当によ……そんな大事に、なるってのか?」
「知らん。とりあえず殺す。何も起こらなかったら、それはそれで仕方がない」
古妖を、暴れさせる。古妖どもに、人間への敵対行動を取らせる。
それが現在、俺たち七星剣が総出で取り掛かっている作戦なのだ。
「あのジジイが死ねば、竜宮が動く……地上の人間を、皆殺しにするためにな」
永井が言った。
「……って話だ。本当かどうか、まあ殺してみればわかる」
「殺す……か。おとぎ話の、主人公をなあ」
それも、本当かどうかわからない話だ。殺してみれば、わかる話だ。
「よし、とりあえず殺そうぜ」
「待て桑野。もう少し、人通りのない場所で」
「見られたら見られたで構わねぇっての! 俺たちゃ隔者だぜ? 見た奴が、この世から消えるだけだって」
喚いていた桑野が、まずはこの世から消えた。首から上が、綺麗さっぱり失せていた。
蛇のような鞭のようなものが宙を泳ぐ様を、俺は辛うじて視認した。
びっしりと吸盤を備えた、触手。それが桑野の生首を絡め取っている。
「……目の付け所は、悪くないわね」
涼やかな、女の声だった。
「あの方に万一の事があれば……確かに私は、貴方たち七星剣のみならず、人間という種族そのものを許せなくなるでしょう」
永井が、藤倉が、砕け散った。人体の残骸が、路地裏にぶちまけられていた。
巨大な、巻き貝。
ドリルのような貝殻が猛回転し、隔者2名を穿ち砕いたのだ。
その女は、いつの間にか、そこにいた。
ひらひらとした衣服のあちこちから、頭足類の触手が幾本も現れ伸びて禍々しくうねる。
たおやかな肉体の一部が変異膨脹して硬質化を遂げ、回転する巻き貝と化している。
「竜宮の軍勢で、覚者たちに戦争を挑む……私、そのような愚行に走ってしまうところだったわ。危ない危ない」
「貴様……」
古谷が『炎柱』を放った。猛火の渦が、女を呑み込んだ。
その炎を蹴散らしながら、頭足類の触手が跳ねる。
古谷の身体は一瞬にして巻き取られ、締め上げられ、潰されていた。消化器官か心肺か判然としないものが、古谷の口から溢れ出して宙を舞う。
その間、俺は抜刀して女に斬り掛かっていた。必殺の地烈。
その斬撃が、砕け散った。女のたおやかな腕が、俺の剣を打ち砕いていた。
否、それは人間の女の細腕ではない。
巨大な、蟹の鋏。
それが、俺の胴体を両断していた。
地上での戦いにも、慣れてきた。
それを実感しつつ海原遼子は、隔者たちの返り血にまみれたまま、老人の後ろ姿を見送っていた。路地裏から、気付かれる事もなく。
「貴方は……また、行ってしまわれるのね……」
その声は、しかし老人には届かない。
この場にいない者には、しかし聞かれていた。
『今になって未練を抱く……それならば何故、あの男を竜宮に引き留めておかなかったんですの?』
「あの方の意志を……変える事など、出来はしないわ……」
雑居ビルの外壁にすがりつきながら、遼子は呻いた。
「私たちに近しいものへの変化を……絶望の中で、受け入れる……そのための玉手箱、だったのに……」
『竜宮へ戻りませんでしたわね、あの男』
とある博物館に展示されたまま、彼女は思念だけを遼子に送りつけてくる。
『だからと言って今更……まさか乙姫様、あの男を竜宮へさらって行こうなどと、お考えではありませんわよね』
「決して開けてはならないものを、絶望の中で開けてしまう……それでこそ、あの方の……人の世への未練を、断ち切ることが出来る……はず、だったのに……」
『回りくどい事なさるからですわ、まったく』
説教が始まった。
『もう間もなく七星剣は滅び、あの男が狙われる事もなくなりますわ。そうなったら乙姫様、早急に竜宮へお戻り下さいませ。同胞の魂を地の底より解放なさる、それもあらかた済んだところで古妖狩人関連の騒動、そして七星剣の策謀……それらも終息の時を迎えつつある今、もはや貴女が地上にとどまる理由など何もなくてよ。わかっておられるのでしょうね? まさか、わからぬふりをしておられる? 乙姫様ともあろう御方が、まさか竜宮へ戻らぬ理由を、子供の屁理屈の如く捻り出そうとしておられるわけでは』
聞き流しながら遼子は、遠ざかって行く老人の背中を見送り、涙を流していた。
依頼結果
完了依頼数:95 ( 難:14 普通:76 簡単:5 )
成功:95 MVP:0
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