●シングルベッド 「あぁあ……ぅあああ……」 暗い部屋、冷たいベッドに一人虚しく寝転がる。 豊かな肢体を横たえて長い脚をバタバタさせる女は歳の割には大分あざとく此の世の無常を嘆いている。 世の中には因果応報という言葉がある。良くも悪くも因果は巡りやがて自分に返ってくるという元々は仏教用語から広まった実に有名な四字熟語である。 「……バレンタイン、バレンタイン、バレンタイン…… 猫も杓子もイチャイチャイチャイチャ……心が寒、寒い……」 そう。呟く女――『塔の魔女』アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア(nBNE001000)程、この言葉が似合う人物は居ないだろう。齢三百年以上を生 きる『乙女』のままごとに伝説的殺人鬼が素直に応えたかどうかは別にして。連れ合いの有無を言うならば、今年の彼女は一人である。 ……『自業自得な彼女』が一人で過ごす羽目になった理由はまさに全く自滅である。例年通りならば「くだらねェ、馬鹿かテメェは」等と汚い悪態を吐きながら何だかんだで一緒に位は居てくれた粗暴で不器用な男の命脈を完膚なきまでに断ったのは他ならぬ彼女自身なのだから。 「……これは誤算でした。ぬるま湯になれてしまうと独り身が本気で辛い」 華やぐ街の空気を嗅いでしまえば、とうに諦めた筈の古傷がじくじくと痛みを取り戻してしまう。 やはり女は何年経っても女のままか、とアシュレイは遠い目で天井を見上げていた。しかし、少しやさぐれた彼女の頭の中に突如閃いたのは会心の思いつき。 「バレンタイン、中止にすればいいじゃないですか!!!」 全くフィクサードというヤツは。世界にその名を轟かせるバロックナイツの一員である彼女が昨年全く同じ発想で『水っぽい千葉辺りのテーマパーク』を襲撃した三下共と発想を同じくしたのはまさに業である。 「しかし、アークとの協定を破る訳にはいきません。うむむ」 やはりあざとく説明調の台詞を吐き出すアシュレイ。ある程度の弾力性は認められているとは言え、アークと協定を結んだ彼女である。彼等が本気で怒り出すような規模の直接行動は危険を伴うのは確かである。 「うむむ……」 唸るアシュレイ。 「むうう……そうだ!」 そして、暫し。再び点る雑な電球。 「どうせ悪い夢ですし、片棒を担いで貰いましょう。 否、これは聖戦です。アークお得意の多数決、正義の味方のデフォルト、ジャスティス! そうです、赤信号皆で渡れば怖くない! 多数決なら怒られないに違いありません!」 アシュレイは一人で納得してアトリエをがっちゃがっちゃと漁りだす。神秘の奥義を数多く所有する彼女にはこんな時、頼るべきアーティファクトに覚えがあったのだ。 「魔女の大鍋~♪」 何処ぞの便利ロボットの声真似等をしつつ埃だらけになった彼女が発掘を果たしたのは彼女自身の作品。 「このアーティファクト『魔女の大鍋』は半径云十キロの強力な思念を拾いまくり、煮込んで熟成させて相応しいモノを召喚するとゆー素敵アイテムです! 今なら蓋もついて29800円!」 それも力作。使い道も無いので長らく放置されていた傍迷惑なアイテムであった。 「三高平でお世話になっているアシュレイちゃんは、皆さんの為に素敵なバレンタインを演出しようと思いました! 皆さんがハッピー★なバレンタイン を過ごす為にならアシュレイちゃん、どんな協力も惜しみはしません!!! きっとこの鍋からは皆さんの心を反映した綺麗で素敵な奇跡が溢れ出すに違いあり ません! 例え!!! 何かの不幸な間違いで!!! 鍋が負の思念を拾いまくったとしても!!! アシュレイちゃんは全くそんな事想定していないので、不 幸な事故だと思います!!! 弁解終わり!」 アシュレイが誰に向けて解説してるのかは知らないが、兎も角何だ。そういう事である。通常の人語ならぬ詠唱を口の中で呟いた彼女に応えて大鍋が怪しい光を放つ。 果たしてバレンタインに降るのは恋人達への祝福か。 はたまた聖戦士達の遠大なる悲願、やった中止のお知らせか―― |
■シナリオの詳細■ | ||
■ストーリーテラー:YAMIDEITEI | ||
■難易度:へっぽこぷー | ■シナリオタイプ:無料イベント | |
■参加人数制限:??? | ■シナリオ出発日:2月14日23時59分 | |
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●熟成・一年モノ 華やいだ街では小娘に小僧共がピーチクパーチク騒いでいます。 クソ寒い真冬の平日にも関わらず余所行きの格好でそわそわした顔をする男の子は「興味ねぇよ」みたいな顔をしながら「本当に貰えないのかな」と様子を伺い、薔薇のようなほっぺを何時もよりも赤くした女の子の方はと言えば『そのチャンス』を大いに待っているのであります。 「――がっでむ! って、いてててて……」 地団駄を踏んでみたら運動不足が祟ってちょっと腰が痛くなりました。 寒気の流れ込む部屋に一人寝は第一健康に良くありません。歳は取りたくないもので、ええ。この私も云百年前には花も恥らう乙女も乙女。大好きな『あの人』の前では借りてきた猫のように乙女でしたとも。当時はチョコレートがどうだとかそんな軟派で凡俗な風習ありませんでしたけどね。少なくともお肌も水を弾いたし、腰が痛くなる事もありませんでしたとも。その辺はほら、肉体年齢がどうこうの話じゃなくて、専らメンタルが理由な気もするんですが……ええい、これ以上語らせるんじゃありません! 私は一人遊びに疲れて窓の外の景色を眺めます。 一年の時間が流れようと、一年の時間が流れた以外――三高平(このまち)は変わっていないようにも思えました。 自分で言うのも何ですが希代の魔女――裏切りの魔女アシュレイを受け入れてくれたお人よしの街。私は今も昔も『こんなの』なのにまるで『オトモダチ』のように接してくれる皆々様方。柄にも無く苦笑いを浮かべればその意味の大きさに驚くのです。 ……私の想いが本当で無いのかと問われれば、決して違うのです。 今、私が述べたのは正真正銘アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモアの中にある気持ちであると言えば気持ちであるに違いないのです。 蓋のされた鍋がゴトゴトと音を立てています。 しかし、突然鍋とか言い出せばここまでの前振りがある種の現実逃避である事を理解なさる方も居るでしょう。 一年前のバレンタイン――私は鍋を『火に掛けた』のです。全ての混沌を内包した神秘の鍋です。情念を吸い込み、熟成させ、何らかの神秘を生み出すそんな鍋です。自棄酒のまま『火に掛けた』事を忘れしまいこんで一年経った――それを今覗かねばいけない私の気持ちを皆さんもきっと理解してくれる事と思います。だって、皆さんは優しいから! ちなみに『火に掛けた』とは純粋な火気を指してのものではありません。悪しからず。 「いいでしょう。これが世界の選択なら」 取り敢えず、大仰な台詞と共に遠い目をすれば色々許される筈だと昔の偉い人も言いました。 アーティファクト『魔女の大鍋』。封印された悪夢のような熟成をついに私のこの手が開けようとしているのです。 それは希望の失せしパンドラの箱か、それとも天の福音か――運命が幾度私を裏切ろうとも! 「――この罪だけは、神にさえも許させはしない!」(ドヤ) ●お鍋の中の戦争(※以下個人のお名前は全て本人ではなく彼等に似た思念体さんの出演となります) 「節分の残りの豆マシンガンを喰らえええええええ! メエエエエリイイイイクリッスマアアアアアアアス!! ひゃーーーーっはっはっはっはっはーーーーーァ!!!」 「うははー、ばれんたいんでーはチョコを食べる日なのだーちょこよこせーちょこたべさせれー!」 壊れた関 狄龍(BNE002760)を向こうに回して高笑いするのは風芽丘・六花(BNE000027)。 「お相手がいる方々は、どうせ年中贈ったり贈られたりしているのですから、目くじらを立てるほどのことではないと思います。 むしろ、お相手を探している方や、お相手になって欲しい人がいる方が勇気を出す日だと思うのです。 わたしですか? それはもう色々と差し上げているのですが…… わたしが魔眼で一般人を操ってチョコを買い占めてそれを転売して暴利を貪っている? そんなことありえませんよ。あははは……」 門真 螢衣(BNE001036)の言葉の真偽はさて置いて、たかがバレンタイン。されどバレンタインである。 「俺がいた国では、お世話になった人へ本を贈ると言うのがこの日だった。どうして中止にしたいんだ?」 レン・カークランド(BNE002194)は心底それが分からなかったが、そこはそれ。魚心あれば水心である。 乙女の戦場と言うべきそれはこのお鍋の中では全く別物に姿を変えていた―― 「メルクリィと初めて過ごすバレンタイン、只大切な者と共に過ごす時。 メルクリィを抱きしめ手を取り踊り、二人揃って『デスゾ』と言い合って笑う光景。 チョコを分け合い二人で笑みを浮かべる光景。皆の騒ぎを共に眺め楽しむ光景。 おもむろに取り出した手編みの真空管カバーを二つ被せ『これで何時でも共に在る』と囁く光景。 日常でも行えようが斯様な時節を経る事により両者の心に鮮やかに記憶となろう――」 「まおは気づきました。チョコレートは美味しいから、甘い気持ちをチョコに閉じ込めるんだなって思うのです」 反応に困る古賀・源一郎(BNE002735)のバレンタインの一方で、しみじみと言った荒苦那・まお(BNE003202)の言は詩的でさえある。 「【中止】繰り返す【中止】! 繰り返す!! 【中止】!!! 繰り――うわあああああ――」 「――メディーック!」 「皆さん幸せですか? 心の怪我でも治療しますよ」 「おのれ、幕府の犬!」 悲痛なるラシャ・セシリア・アーノルド(BNE000576)が木っ端微塵に吹き飛ばされた十凪・創太(BNE000002)の姿に涙を湛えた絶叫を上げた。満面の笑みを浮かべた氷河・凛子(BNE003330)は肯定派。即ち彼女らの敵だった。 「バレンタイン・イズ・デェェェェェッド!」 二十二年間(当時)の人生の中で只管続いたノーチャンス。どれ程願っても届かざるある種の夢は彼女に――同志達に圧倒的な兵力・戦力差での闘争を望んだのである。一年もの長きに渡り我々が戦い続けられたのは何故か。敢えて言おうカスであると! 「リア充の宝くじ外れろー! リア充のほくろから毛生えろー! リア充の定食屋で頼んだ注文忘れられろー! リア充の撮られた写真の顔変な感じになれー! リア充の好きな漫画ハリウッドで実写化されろー!」 「バレンタインね、バレンタイン。よかったねバレンタイン。おめでとうバレンタイン。朝起きてバレンタイン。寝る前のバレンタイン。夢にまでバレンタイン。一富士二鷹バレンタイン。三四なくても五バレンタイン。ウイスキーもバレンタイン。お空の上でもバレンタイン。地獄の底でこそバレンタイン。ええ、付き合ってあげるわよ。最後まで。果てるまで」 「ははは……、バレンタインなんて、もうどうでもいいッスよ…… このままあたしは、この薄汚いアパートの一室で、一人寂しく朽ちていくッス。 誰にも愛されないまま、ダンゴムシのような一生を終えるッスよ……」 「それにしても酷い事しやがる……!」 暗い目で呟いて体育座りをするのは曳馬野・涼子(BNE003471)、更には九曜 計都(BNE003026)。一方で高橋 禅次郎(BNE003527)が戦々恐々と呟いていた。 「『本命』に『義理』に加えて『友』チョコだと……っ、まるで広範囲制圧兵器のバーゲンセールだ! ……えげつない事をしやがる!」 「さおりんとらぶらぶする為に中止にされたら困るのです。 というか、さおりんとらぶらぶできるのでしたら別に中止なら中止でも構わないのですが……恥ずかしい><」 「私自身がどんな目的で生きている心算でも、この身体に流れる血は浪漫を求めて止まない。 私が口にする言葉は愛を語る為にあるのだから。この身を焦がす貴方への想いに抗える筈も無く。つまりは――」 彼が見たのは『肯定派の白黒悪魔』こと悠木 そあら(BNE000020)、宵咲 氷璃(BNE002401)その人であった。 絶望に見えた戦況に颯爽と現れたのは、 「愛情を告げたいなら物品や状況等に頼らず、己が身一つで当れば良いではありませんか」 イケメン・イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)である。 僻みでもなく嫉みでもなく、多くに慕われ、普通にしていれば間違いなく勝ち組な――或いは正真正銘凡俗のお祭りごとに興味の無い彼は他の皆さんとは全く一線を画した最高の説得力をもって訥々と語り出した。 「それに夾雑物を混ぜるのは、蛇足以外の何物でも無い。 聖人に祈りを捧げるならともかく、特別な信仰を持たぬ方にとって今日は何でも無い日の筈です。 中止、と言う表現すらが既におかしい。一体何を拠として今日をバレンタインとしているのか。 もし説明出来る方が在るならば説明して頂きたい。『貴方方のバレンタイン』等、元より何処にも存在しない」 押し黙る肯定派達。一気に押し戻された戦況に平然としているのはやはり悪魔達であった。 「でもさおりん好きですし……」 「愛が理屈で定義出来るなら、そんなに簡単な事はないわ」 「だってー。今は一人だけど、バレンタイン中に素敵なおじ様と運命の出会があるかも知れないし!」 「モノマ先輩とチョコを食べるんだもんわたしが作った大きなチョコをね、わたしは先輩が食べてくれてるのを見る係りなの、撮影したら怒られちゃうかな、だって先輩がチョコ食べてくれてるんだよ、貴重な映像だよね、今年のバレンタインは今年限りだし、チョコだって毎年違うしね、今年は愛をそのまま形にしてみたよ、ああ、先輩がわたしのチョコを持ってるのを想像するだけでもわたし昇天しちゃうやっぱり先輩を撮影しなきゃ!」 「無くならせるわけにはいかないわ。だって、バレンタインにかこつけてイチャイチャ出来るのよ?」 「恋する乙女が、世の男性が、ドキドキわくわく仲睦まじい恋人達が、お互いの愛を深め合う……こんなに素敵な日が、他にある?」 「桜ちゃんが言いたい事、込める願いは唯一つです。伸暁さんがチョコレートを受け取ってくれました。 とっても嬉しかった。凄く幸せです。元気充電120%です。 分かりますか? 文句なんか言わせない。邪魔もさせない。一切の異論は許さない。 桜ちゃんは絶対に正しい。バレンタイン万歳! バレンタイン万歳! バレンタイン万歳バレンタイン万歳バレンタイン万歳! 恋する女の子は無敵なんです、誰にも止められはしない――あと誰が何と言おうと伸暁さんは格好良いっ!」 夢見るアリステア・ショーゼット(BNE000313)、羽柴 壱也(BNE002639)、斬風 糾華(BNE000390)、蘭・羽音(BNE001477)、譲葉 桜(BNE002312)といった乙女達は意気高く。 「……そうですか。それは良かった」 理屈もへったくれもない最強無比の結論に思わず黙る神父。戦術的撤退というヤツであろーか。 「千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂 千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂 千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂千堂」 ↑バランスの良い形状。ちなみにロッテ・バックハウス(BNE002454)が乙女的に猟奇的なのは何時もの事だ。 「良いか、良く聞け! リベリスタの仕事ってのは明日も生きてるとは限らねえ。そうだよな? でもよ、俺達はリベリスタである以上に人間だ。人間である以上、人間を愛し愛されたいもんじゃねえのか。 じゃねえなら手前ら何の為に戦ってんだ。人の愛し合う時間を守るのが、俺達の仕事だろう! 違うのか!なあ、手前ら!」 そう言いながら貰ったチョコを隠したのは雪白 凍夜(BNE000889)である。 最早作業のように淡々と自陣を蹂躙する『敵』は開戦当初より圧倒的であった。 効率よく敵を虐殺する兵器を備えたリア充共は昨今は『ホモチョコ』なるものも開発しようとしているらしい。別に誰も得しない気がするチョコレートな気もするが、そこはそれ全力で製菓会社の陰謀に踊らされまくった彼等が如何に浮つききっているかを示す証左には十分であると言えるだろう。 「中止! 中止! 中止! 私の前でいちゃいちゃ禁止!! ハイハイ。どうせ私は独り身ですよ。友チョコもろくに貰えませんよ。 製菓会社の陰謀がどうのとか全然関係ない立場ですよ!」 「恋人とか、そんな贅沢なことは言いません。 せめて、チョコをくれるようなおともだちがほしかった。ほしかった、なあ……」 「ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)――!」 聖職者・ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)は駄々をこね、『三高平一寂しい男』の目が静かに閉じた。 彼はもう動かない。もう、動けない。 「奪え! 愛もチョコも! 奪われたのと同じだけ!」 津布理 瞑(BNE003104)の腕の中でもう二度と目を開ける事はない。 「思いっきりシングルだけど、バレンタイン無かったら美味しいチョコ食べられなくなるじゃない。 カップルは放っておいても勝手にくっ付いたり離れたりするでしょ」 「そういう問題じゃないんだ! 貴様等、全てを灰になれ!」 冷めた六・七(BNE003009)の一言に人が変わったような斎藤・なずな(BNE003076)が噛み付いた。 血で血を洗う闘争に――一方的な戦争に何時も『勝利者』たちは余裕の顔を崩さなかった。 「どうせ中止側は努力もせず恋人を探さなかった者たちであろう?」 オーウェン・ロザイク(BNE000638)は戦場の炎に火を注ぐ。 「妬みとは、また醜い感情を出してきたものだ。男性友人とチョコ交換等行えばよいのではないかね。 ……おや、怒らせてしまったか。何故そんなにこっちを強い目で見る?」 プロフェッサー!!! 歴史が常に証明し続けてきた通り、持てる者は持てぬ者の気持ちを知らない。その逆もまた然り。僅かなボタンの掛け違いが生んだ悲劇は何時だって人同士の争いをこの世界に強いてきたのだ。まるで、宿業であるかのように―― 「うふふふ……またこの季節。長いのね、一年って。 ……365日……8760時間……525600分……31536000秒…… そりゃあ人間だもの。一年あれば少しは変化はあるわ。それはとてもとても嬉しいことよ。 あげる相手のいないお姉ちゃんだって、チョコもらったんだもの。 友チョコ? なのかな。 ……でもさ……オカマから先制でもらうって……! ああああああああああああああああ中止ィィィィィィィィィィィッ!!!」 「みんな ばかだなあ ばれんたいんは じぶんへの ごほうびに ちょこを じぶんに あげるひだよ。 ふふふふふ! 中止中止中止中止 滅びろ滅びろ滅びろ滅びろ! ねえ、なんで三高平こんなにカップルばっかりなの? 死ぬの? ねえ死ぬの? ギギギギギギギ!」 「でも、続けていいと思いますよ。 邪悪ロリとしては、イベントにかこつけて相手のチョコがほしいというおもいに漬け込みいろいろなさくぼうをくりひろげるチャンスなんですから。 だからこういうイベントはおおいほうがいい。そう思います。 おもうんですって。無理して邪悪っぽさをえんしゅつしたりしてないです。ほんとです。 そんな疑う目でみなくても――」 発作を起こしたメリュジーヌ・シズウェル(BNE001185)、ウェスティア・ウォルカニス(BNE000360)、実は多分心優しく愛らしいスイートエンジェルな(※風評被害)エリエリ・L・裁谷(BNE003177)は可愛いなあ。 「中止というか滅べ××○○、▲▲共……」 烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)の台詞は伏せなければ掲載出来ません。 「一方的な恋だとしても、好きな人に手作りチョコあげるのってドキドキするなぁ……」 少しはにかむ白雪 陽菜(BNE002652)は女の子そのもので。 「チョコ? ああ、貰えたぜよ。 男から詳しく語るとアレでソレなホワイトチョコ…… 撮影やからしゃあないけんどな、悲しゅうなるわ、ほんま……」 坂東・仁太(BNE002354)とBNEちゃんの潜在ホモ力(外河家々ST定義)は何時だってバリバリ高かった。 「想いの強さが奇跡を呼ぶというのならば! ここは! ひとつ! おれの! 本気を! みせる! うひょおおお! イヴたん! 今年こそは俺にチョコくれるよね! 俺とイヴたんはもう仲良しを超えて愛を深めあったものね! 数々の時を共に過ごし、もう、家族とも言うべき存在だ! 俺の事をお兄ちゃんって呼んでくれても! 甘えてきなさい! チョコのように甘く! そしてちょうだい! チョコを!」 「……阿鼻叫喚な負け犬の悲鳴が楽しいな? 私はどっちでも良いが、こっちの方が良い悲鳴が聞けそうだ」 心なしか結城 竜一(BNE000210)を見るユーヌ・プロメース(BNE001086)の目が冷たい。 「お兄ちゃんが他の女の所に行くバレンタインなんて中止! 絶対中止!」 その彼がスタンガンを握り締めた結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)から熱視線を浴び、何処からとも無く突然現れた真白智親にそれはそれは見事なDDTを喰らったのはちょっとした余談である。 「明日になればチョコレートが半額で売られるですぅ。 そんな美味しい日が待っているのに中止にしてはいけないのですぅ。 逆らうやつは『破滅のオランジュミスト』くらわせてやるですぅ!」 マリル・フロート(BNE001309)(笑)は兎も角、 「今年はね、ちょっと勇気を出して気になるあの人にチョコを送ろうと思うの 中止って言われるとね、折角のイベントなんだし、面白くないでしょ? あ、ちなみに沙織さんにあげたチョコは義理だから……///」 桜田 京子(BNE003066)さんの乙女モードには流石の魔女も駄々を踏む…… 「あの、初めてのバレンタインなので…… 出来れば中止にはして欲しくないなあ、と…… まあバレンタインでも、そうでなくても関係なく一緒に居れば良い話なのかもしれないのですが。やっぱりこう、その……」 カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)――聖女さえ、僕を私を裏切った! 「……フフ、面白くなってきましたよ。滅びればいいんじゃないですかね? 設楽悠里(BNE001610)! あと、私復活とか出来ませんかね! 塔の魔女!」 アンタ比較的良く戻ってくるじゃないか――地獄の釜の蓋も開く! 「もう帰れよ!? お前!」 「お断りします」 「そうだ。設楽悠里。これがお前の業なのだ」 「霧也君も帰ってよ! 中止なんて認めない! 生まれて二十二年! 初めて彼女がいるバレンタインだぞ! 僕はもっと天使とイチャイチャしたいんだ! いや、続行なんて生温い。むしろ――」 「――むしろ延長で!」 悠里の言葉を繋いでコールしたエナーシア・ガトリング(BNE000422)はドジっ子である。 「『※トレード不可、装備中、プレイング送信時(依頼出発前)に装備しているアイテムは表示されません』とあるのに! 出発してもチョコが表示されないで送れないのです><。 このままだと智親さんが何者かに呪殺されかねないので、バレンタインの延長が大決定なのだわ。 終わらせはせん! 終わらせはせんのですよ、此のチョコを渡すまでは! 誰か仙人ぽい人が『もうちょっとだけ続くんじゃ』とか言ってくれないかしら。あと――」 えなちゃんはドジっ子である。 「――今回に限っては全くドジっ子とか無関係なのだわ、うぎぎ……」 「ばれんたいんはいちゃいちゃだけじゃないわ。 おいしいチョコ!チョコが溢れる日でもあるのです。 世の中おいしいと幸せでみちみちちゃうのです。 それにしても、するめとかえびせんとかじゃなく、贈るのがチョコってところがいいと思うの、うん。 華やかだし、あまいし、バリエーション豊富で――」 「――バレンタイン・イズ・デェェェェェッド!」 絶叫と共に単身ほんわかハッピーそうなニニギア・ドオレ(BNE001291)殴りこむレイ・マクガイア(BNE001078)の瞳から血色の涙が宙を舞った。嗚呼、何時だって人は分かり合えないものだった。どれ程にそれを望んでも、全ての人間が融和する事は無い。横たわる冷たい大河は今日も誰かと誰かの運命の意図を無慈悲に冷たく絶ち切ったのだ。 だが、レイの場合、仕掛けた相手が悪かった。ムカつく位に清々しい顔で「続行! 続行!」と事態を肯定していた 「俺がこれを食べる日をどれだけ待ち望んだか分かってんだろうな? ああん?」 強面を凄絶に歪ませたランディ・益母(BNE001403)のその顔はさながら血の滴る闘争を前にしたバイデンの如しである。この当時バイデンなんて影も形も無かったが、それはもうこの際置いといてまるでバイデンのようだった。 「中止を叫ぶ哀しみに満ちた者達を成敗せねば。 既に汚れた手とはいえ、哀しきことに御座る……しかしこれも忍びの仕事…… とりあえず貴殿ら、KUBIKIRIで介錯仕る故、そこに直るがいいで御座る!」 目が割とマジな忍者――黒部 幸成(BNE002032)。 「うわあああああああああ!」 「今感動してんだからあっちいけ! しっ、しっ!」 それでも吶喊するレイ。微妙に腑抜けて対応の温いランディ。 「そうそウ、我輩こう見えてもリア充なのダ。 家に若い女の子3人もいるのダ。ピチピチのピヨピヨなのダ。美女揃いなのダ」 焦げたレイをつんつんと突きながらカイ・ル・リース(BNE002059)が娘の自慢をしている。 「なんか……ね。とある人が…何かあるたび、俺の彼女可愛いって、言うんです…… 正直、うんざり、ですよね……だから、ぶち壊してあげるんです。その笑顔を……うふふふふふ」 この頃は大分後ろ向きな、きわめてえっちなリンシード・フラックス(BNE002684)さんである。 「見ろ、あれが漢達の流す涙の――魂の煌きだ」 斜堂・影継(BNE000955)は、一人静かに呟いた。 頬を濡らす熱いものの正体を中二病――もとい闇の戦士であるシャドウブレイダーが知る事は無い。 迸る熱い感情の正体に振り向いてしまったならば彼はきっと戦えなくなるだろう。 唯、友と呼ぶべき――今は亡き英霊の為に彼が出来る事は最初から決まって唯一つ。 「巡り廻れ『魔女の大鍋』! 粛清と血の惨劇でバレンタインを滅ぼせ! チョコを貰えない奴を惨めにするだけの製菓会社の陰謀なぞ、消えるべき時だ! さあ千葉辺りの黒き禁じられし鼠よ! 我らに力を与えたまえ! 去年やれたんだから今年もきっと出来る筈!」 「そうはさせない!」 「何ィ!?」 「闇を切り裂く銀の閃光……メタルブレイダー! 見参ッ! お前の好きにはさせんぞ! 三高平のバレンタインはこの俺が……爆発させるッ!」 「メタルブレイダー……お前……」 「フッ、皆まで言うなよ、シャドウブレイダー!」 「あー、まぁ……どっちも頑張れ」 新たに参戦したツァイン・ウォーレス(BNE001520)を含めた二人を眺める上沢 翔太(BNE000943)のやる気の無さは今回に限ってはガチである。 「去年のバレンタイン、私は病院のベッドの上で恋人の居る患者達がいちゃいちゃするのを横目で見ながら静かに本を開いていたわ。 一昨年も一昨々年も。病弱少女と少年のロマンスとか窓を叩いて君を救いに来たよとか、そんな物語の様な出来事は一切存在しなかった。 ええ、別に良いわよ。どうせ私は兵器だものバレンタインとか関係無い。関係無いんだから別に壊しちゃっても良いわよね。 そこの男共一列に並びなさい。殲滅砲台がお相手してあげる――!」 「人生初・義理と哀れみに塗れていない異性からのチョコを頂戴した記念すべき日を中止になんぞさせるかぁぁぁぁぁ!!!」 クリスティーナ・カルヴァリン(BNE002878)の裂帛の気合が迸り、富永・喜平(BNE000939)の絶叫が惨憺なる戦場に木霊した。 「……いやまあ、わらわも一人身じゃからアシュレイの気持ちは嫌って程分かるんじゃがの?」 ……レイライン・エレアニック(BNE002137)(裏切り者、2013・2現在)が何か言っておりますですよ? 「中止になんてさせないわ。普段はリア充なんて見たらヘドが出るけれど、今回は別。 だって御厨くんとべろちゅーする約束だから」 「おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい」 「くっ……また……暴れだした……し、静まれ……わたしの心よ……嫉妬を静めろ! わたしが……『ヤツ』を抑えている間に……、みんなはバレンタインを!」 源兵島 こじり(BNE000630)、誤魔化した御厨・夏栖斗(BNE000004)とか、小芝居・戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は、もうこの際ほっとけよ! 「私も一年程前までは、好きあった男がいた。毎晩毎晩、それは激しく愛し合ったものよ。 だが今では、あの星空よりも遠い場所にいる。だからこそ見ていたいのだ。これは憧憬、なのだろうな……」 小さく漏らしたアイリ・クレンス(BNE003000)の言葉は『深い』。 「続行、続行だ。まったく、自分が寂しいからって人様に迷惑かけるとはいただけないな。 例え製菓会社の陰謀であったとしても、勇気をもらえた人間は大勢いるだろう。 だからこそ、そんな希望を潰すわけにはいかねえよ。柄じゃない? ほっとけよ」 「もちろん続行だぜ。つーかもうチョコ貰っちまったしな! 今更大好きなあっくんとの思い出を無くすなんてことはさせねえ!」 祭 義弘(BNE000763)が不敵に笑い、焦燥院 フツ(BNE001054)が吠えた。 「――バレンタイン中止を防げなくて、バロックナイツが倒せるかってんだよ!」 か、かっこいい! 「チョコっておいしいよね。僕だいすき!」 そうだね、花屋敷 留吉(BNE001325)さん。 「今年のバレンタインには、三千さんという心から愛する人が隣にいるの。 それだけじゃない。親しい友人達とだって温かな時を過ごしているわ。 大切な友人達とのひと時を邪魔立てする様なら、フィクサードは当然、リベリスタであろうと容赦しないわ」 「ご馳走様。とりあえず私の方は――友達には配りたいので。ああ、忙しいので後の事はどうでもいいですわ」 ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)に応えた大御堂 彩花(BNE000609)、一年越しの『ですわ』口調がいとおかし。 「口調が違うのはその方が楽な事に気付いたからですね。これだからパッケージ詐欺のファンディスク商法ヒロインは」 モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)よ、オマエはルート無い癖に一年何ら変わらないな! 「何を言っているのですか」 最近、そうじゃないよね。おぜうさま。はい、悪いのは全てアシュレイだった! 「恋にときめく女性達の、そして期待に胸を膨らませる男性達の。 そんな皆の大事なイベント、中止になどさせやしねぇ! ちなみに今年初めて妹から手作りもらったんだが、ちょっと崩れてるけど一生懸命作ったってのが伝わって来て、ソレを照れながら渡す表情がまた……」 お前がしっかりしねぇから俺の黒レイたんが触手に興味持つんだよ! 「持ってねぇよ! それは別人の性癖だ! ていうかお前のじゃねえよ!」 エルヴィン・ガーネット(BNE002792)が何か騒いでいる。無視。 「――俺はリア充を憎まない! その傲慢を憎む!」 うるせぇ、童貞(23)! 「シュゴシンッ!」 はい! 新田・快(BNE000439)今死んだ! 「俺? 俺は自分の店で過ごすよ、面倒くさい。 こういうお祭りはね、蚊帳の外から我関せずで眺めるのが楽しいものだよ」 はい。今、坂本 ミカサ(BNE000314)が何か言いましたよ。 面 倒 く さ い 「……言ったけど?」 今何か言いましたよ! ――俺は今、幸せな気持ちになったから……響希ちゃんを苛めるのもここまでにしておこうかな―― ※『ROUNDEL』坂本ミカサ2013 「……俺は、時系列を無視するのはとてもアンフェアだと思います」 はい! 死んだ! サジ投げた! 「いや、最初はこんな浮ついたイベント、無くなったほうが皆の気持ちが引き締まっていいかと思ったんだが…… ……十個くらい、もらっちゃったんで……こういう日もアリかなあ、なんて……」←楠神 L☆S 風斗(BNE001434) ……ねぇ、このハーレム殴っていい? 「もう366日バレンタインでいいじゃない。人類年中発情期だもの。みんな虫歯になってしまえ」 「バレンタイン。聖人が没した日だというが、同時に大切な人に感謝を伝える日でもある。 ならばワタシは伝えねばならないのだ、地球(テラ)へと愛を。美しいこの星へと。 だからワタシは毎年苗木を植えている。植生を乱さない、その土地の木の苗木をだ。 さあ皆もバレンタインに感謝を述べるのだ、地球へ。無償の愛を注げば無限の愛を返してくれる事だろう」 「1929年2月14日にシカゴで起きた非モテ集団によって起きた虐殺事件。 別名、聖バレンタインデーの悲劇、血のバレンタインとも呼ばれる。 それ以降な2月14日には気をつけろ、アベックたちの熱気が頂点に達した時 ジャック・"マシンガン"・マクガーンがやってくるって米じゃ恐れらているんだぜ 人類は同じ過ちを繰り返してはならない、故に中止が無難じゃねぇのかな」 もうそれでいいよ。 害獣――ウーニャ・タランテラ(BNE000010)は温く笑い、キャプテン・ガガーリン(BNE002315)に晦 烏(BNE002858)が無駄に壮大なストーリーをでっち上げた。 まぁ、ジャック某さんガーデニングに夢中だけどさ。 ●以上、前回までのあらすじでした。 「はい! 私は悪くない!」 「等と容疑者の女(300(仮))は意味不明の供述を行なっており……」 「何でナチュラルに居るんですか」 「……話は署で聞きましょう」 犬吠埼 守(BNE003268)様を貰いもののおまんじゅうで買収しつつ……私は開いた鍋の中に覗く風景を心の底に封印する事にしました。 一年の時が流れ、2013年はもう始まっています。鍋の中に切り取られた思念概念達は時間の経過に気付かず永劫の闘争を繰り返す事でしょう。よくよく考えたら落ちのつけようもない程に酷い混沌は始まった時から約束されておりました。 私は『塔の魔女』。決してくたびれたOLではありません。 私は裏切りを司る残酷な女。収拾をつけられないからなかった事にする訳ではないのです。 私は薔薇。きっとそう。棘が無くてはアシュレイ・ヘーゼル・ブラックモアは成り立たない。 「……さて」 大きく伸びをして私は2013年のバレンタインのその夜を満喫するのです。 「カップラーメン作りましょ……」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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