遥か欧州では、バロックナイツの円卓が嘲り笑っている。 聖夜決戦で辛くもジャック・ザ・リッパーを破ったアークの元に欧州同盟組織オルクス・パラストの協力で新たなる力・ダークナイトが加わった。 強襲バロック事件後に行方を眩ませた『塔の魔女』アシュレイと交渉する事で、一時的に『閉じない穴』の脅威を食い止める事に成功したアークだったが、一息を吐く暇も無く彼等の元に再び不穏な情報がもたらされた。 西日本――岡山県を中心とした一帯に『鬼』と呼称されるアザーバイドによる危険な事件が広がりを見せていたのだ。 戦略司令室長・時村沙織によれば彼等はこの世界に留まったまま、これまでは何らかの封印で休眠していた古きアザーバイド達であるらしい。更にはこれまで事件を頻発させてきた『下っ端連中』に引き続き、何かを企む特別な個体の出現が確認されたと言うのだ。 吉備津彦神社を舞台にした鬼の企み。連想するのは言わずもがなの桃太郎。 日本古来の寓話が現代の危機に如何なる関連を見せるのかを理解している者は無かったが…… 急ぎ現場に向かい事態を確かめんとしたリベリスタ達は、アークとは別のアプローチで事件の収拾を図る名門リベリスタ・クェーサー家の娘、深春・クェーサーとの邂逅を果たす。 成り行き上の協力関係を結んだ両者は吉備津彦神社を襲撃した鬼――禍鬼を撃退する。 神社に祀られていた祭具の類を破壊した彼の行動とオーウェン・ロザイク(BNE000638)の読心から――戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は、彼の行動を緩みかけた鬼の封印の完全破壊と推測する。 岡山県を中心とした一帯には吉備津彦由来の史跡や祭具、神器が多数存在するらしい。 これ等はアザーバイド『鬼道』の封印を補強するものである。『閉じない穴』の影響で不安定化した日本の神秘状況が彼等の復活を促しているのはほぼ間違いない状況だった。 封印の緩みから勢力を増す鬼道は未だ枷の中に居る王の復活を目論んでいた。 先に復活を果たした禍鬼に加え、四天王と呼ばれる三匹の鬼。 それぞれ、豪鬼、烏ヶ御前、風鳴童子と呼ばれる有力鬼の頂点に立つのは日本書紀にその名を綴られる鬼の中の鬼、温羅である。 彼等の完全復活を阻まんとするリベリスタ達は豪鬼の復活を阻むも、残る二天の復活を許してしまう。 更に温羅復活を目論んだ禍鬼により、鬼ノ城及び温羅は不完全ながら現世に舞い戻る事となってしまったのだ。 鬼ノ城を中心として日本に再び覇権を唱えんとする鬼道に日本中が震撼する。 しかし、真白イヴを中心としたアークのフォーチュナとアシュレイはこの状況に対抗策を見出していた。 強大な温羅に対抗する『吉備津彦のアーティファクト』の存在を探知した彼女等は、この奪取計画を考案する。時同じくして温羅も仇敵の波動を探知していた…… かくて人間と鬼の間で逆棘の矢の争奪戦が開始される。 激烈を極めた争奪戦の結果は二勝三敗。 優位では無かったがリベリスタ達は勝利への道を繋いだ。更に日本を取り巻く厳しい状況にこれまではアークと一定距離を保っていた深春が遂に全面協力を決意した。 拙速は時に巧緻を上回る。早い準備から鬼ノ城攻略作戦を発動したアークと鬼道の決戦が遂に始まった。 四天王烏ヶ御前を仕留め損なうも、深春の作戦指揮の下、禍鬼、風鳴童子、そして鬼道官吏・鬼角……鬼ノ城各所で強敵を連破したアークは鬼の王・温羅と相対する。 圧倒的な暴虐を誇る温羅に危機を迎えるリベリスタ達だったが、この苦境を跳ね返したのは古きリベリスタ――吉備津彦の執念と今を守らんとする現代のリベリスタ達の矜持だった。 『逆棘の矢』の使い手となったレナーテ・イーゲル・廻間(BNE001523)、望月 嵐子(BNE002377)をリベリスタ達が守り抜く。彼女等の咆哮が温羅の無敵の肉体に痛打痛撃を刻み込む。 我が身さえも捨てて駒井・淳(BNE002912)は満足に逝く。 自身の運命を焼き尽くし、敵を討たんとしたクリス・ハーシェル(BNE001882)、マリー・ゴールド(BNE002518)の魂の一撃が運命を穿つ。 定められた結果に抗うリベリスタ達の戦いはやがて絶望色の戦況を別のものへと塗り替えた。 「チッ、封印なんて甘っちょろい、さあ行けよ! 行ってみせろ!」 空より降る付喪 モノマ(BNE001658)という雷撃は鬼ノ城で奪った逆棘の『おかわり』だ。 「雷光閃……撃ッ!」 ――口惜や。我、今一度人間(ひと)に敗るるか…… 口惜しや。うぬ等、せめてこの後敗れるな。冥土にて再びまみえるその時までは―― 鬼ノ城が揺れ、王の巨体が崩れ去る。 穏やかな焦燥院 ”Buddha” フツ (BNE001054)の念仏が、伝承の終わりとその夜の勝者を告げていた―― ★登場人物・重要事項Check! 深春・クェーサー 名門リベリスタ。クェーサー家の現当主にして最後の生き残り。 クェーサー家は神秘撃滅を最上とする家訓を持っており、その為の手段は選ばない。クェーサーの血族は、命を惜しむ事無く、極めて執念深く任務を遂行する事から多くのフィクサードに恐れられていた。 レイザータクトと呼ばれる異能技術群を創始したのは初代クェーサーであると言われている。 現在のバロックナイツである『塔の魔女』アシュレイを地の果てまで追い詰め、最強の当主と呼ばれた父はハインツ・クェーサー。母は深雪・クェーサー。何れもナイトメア・ダウンでの戦死を遂げている。 古代のリベリスタ『吉備津彦』 所謂桃太郎。 古代において鬼道と壮絶な戦いを繰り広げた偉人。 その執念は現代のリベリスタの力ともなった。 『逆棘の矢』 吉備津彦の残したアーティファクト。 温羅に対して特別な攻撃力を発揮する。 自身が倒し切れなかった温羅の復活に備え、未来に託した意志でもあった。 鬼ノ王『温羅』 極めて明晰な頭脳と強靭な肉体を持つ鬼道の王。 ミラーミスの落とし子とされ、通常の鬼(アザーバイド)とは別格の力を持っていた。 古代のリベリスタ『吉備津彦』の封印により長らく眠らされていた。四天王の一である禍鬼の暗躍により復活を遂げたが、アークのリベリスタの奮闘によりその復活は不完全なものとなった。 故に本編での温羅は胡乱としており、本来の高い知性を発揮する事は出来なかった。 全ての攻撃を正面から受け止める王の矜持を持っていた。 アーティファクト『逆棘の矢』は彼に特別な攻撃力を発揮する鬼札。 鬼道官吏『鬼角』 鬼道の内政や術式を請け負う名門当主。 四天王ではないが、幹部としての役割を負っていた。 四天王『禍鬼』 封印の緩みを突いて最初に復活した鬼道の幹部。 卑怯で悪辣な性格をしており、呪い返しのような能力を持っている。 温羅に心からの忠誠を誓ってはおらず、隙あらば下克上を狙っている。 逆棘の矢を自身が隠し持つ事により好機を伺っていたが、結局はアークに討ち取られた。 四天王『豪鬼』 鬼道四天王最強の鬼。 暴虐を極め、同じ鬼道にも他四天王にも忌み嫌われ、恐れられていた。 リベリスタの活躍により封印は死守され、現世への復活を果たす事は出来なかった。 四天王『風鳴童子』 子供に見える鬼。四天王の中では若年。 外見の愛らしさに反して鬼道の中でも高い実力を持っていた。 狡猾だが時に感情的で性格面は未熟が見える。温羅に対して強い忠誠心を持っていた。 鬼神楽と呼ばれる笛を携えており、鬼の楽士という一面も持っていた。 四天王『烏ヶ御前』 流麗なる女性鬼。四天王の紅一点。櫻(ゆすらうめ)という。 常に迷い、惑い、揺れる女らしい鬼である。 彼女の美しくも苛烈な運命は決戦の後にも流転する事となる…… →<鬼道喰らわば>Pigeon Blood 『恋ひ患ひ』 →<混沌組曲・急>おわったはずのこいのうた →<混沌組曲・急>ゆめからさめて、もういちど |