●壮絶な捕獲タイム
10月31日。
まさしく世間もろともハロウィンであるその日。三高平市――の某所にて、
「人間様舐めてんじゃねぇぞカボチャ共――!」
轟音がカボチャ達の列を薙いだ。
狄龍が横合いから殴りつける形で攻撃したためである。カボチャの残骸が宙を舞えば続く形で、
「競争しよ! 誰がかぼちゃ一番多く捕まえられるか! ベベは罰ゲームねー」
「ほう、いいだろう。受けて立とうじゃねぇか」
「ハッハッハ! 真のリア充たる俺の前に現れたかカボチャーズ! 一つ残らず捕まえて……うっぉお!? な、何故に俺に向かってくる――!?」
壱也と龍治、そして竜一が一斉にカボチャに襲いかかった。競う様に、というか競う目的でカボチャ共を粉砕し、ロープやら投網で捕獲し、そして竜一はうっかりリア充という言葉を口にした為か逆に相手に狙われていた。
まぁカボチャ達の性能はガチで塵と言うほど低いので、簡単に返り討ちに出来ているが。空舞うカボチャはきたねぇ花火だぜ……
ともあれ、だ。一旦現状がどうなっているのか簡潔に説明しよう。それは――
「ア、ハ、ハハハ! 虐殺ですッ★」
で、ある。農場経営のセルマは、自身の所のカボチャが混ざっていないか若干不安もあったが、いざ闘いが始まってみればノリノリでカボチャ達を潰しまくりだった。一連の工程に手並みが良く感じられるのは流石農場所有者と言った所か。え、関係無い?
  「わぁセルマさん鮮やかな手際――! あ、そっちにもいますよランディ頑張って!」
「始末するのは任せろー。おらぁあああ――!」
後方で崩れたカボチャを運搬しながら若干サボ……応援を行うニニギアの視線先ではランディが暴れている。闘気も漲らせてオーバーキル中だ!
左脚を踏み込み、野球のバットを振るう様に己が剣を横薙ぐ。さすれば飛ぶ飛ぶ、カボチャの中身が。
「ぬぉっ、少しやりすぎちまったか! これは、つまり、なんだ――疾風居合い切りの方じゃないと駄目か!」
「ランディくんランディくん! 僕思うにそれあんまり結果が変わらないと思うな! コナゴナよりはマシかもだけど!」
“雪女”のコスプレ――では無くて“雪兎”の格好をしている光。
雪兎であると言う事を全身全霊を持ってアピールしているのだが、いかんせんミニスカ風白の小袖の所為でどう見ても雪女です本当に有難うございました。
「ゆ、雪兎だよッ!」
本当に有難うございました状態の光はさておき、
「らいよんちゃん! デッカイのがそっち行ったですよ! 多分ジャックかもです!」
そあらが走りまわる。カボチャ達を追いかけ、雷音と共に追い詰めているのだ。
両者ともに超直感を使っての行動は中々に効率的。超直感に超直感が合わさってその力を増大させているのだろうか。それすなわち、
「無・限・直・感……! そあら、こっちはばっちりなのだ! タイミングを合わせるぞ! いっせぇ――」
「のぉ――」
「せぇ――!」
ごちーん。(´;ω;`)
何があったかはお察し頂きたい……! 天使の息ふーふー、傷癒符ペタペタ。
「弱ぁ!? ちょ、話には聞いてたけど弱すぎないかい?! ……まぁいいか、KABOTYAゲットだぜぇ!」
固まっていたカボチャを月龍丸で一掃する御龍。予想よりもあまりに脆すぎてバラバラになっている固体もあるが、まぁ気にしない。弱い方が悪いのだ!
 「あはははは! さぁ、さぁ! 逃げまどいなさい! 全部狩り取ってあげるから、さぁ逃げ切って見せなさいよ!」
そして超ノリノリでカボチャをまさしく“狩る”久嶺。何が彼女をそこまで駆り立てるのかよく分からないが、きっと、あれだ。狩猟本能に火が付いたのだろう。時々攻撃が当たらず「ちょろちょろ鬱陶しいわね! 大人しく当たんなさいよ!」とヘッドショットキルしているが狩猟本能なので仕方ない。粉微塵だけど。
「久嶺さん、カボチャが木端微塵に成っているので八つ当たり気味のヘッドショットはおやめ下さい。今現在7連続ヘッドショットで楽しいのは分かりますが――あ、8連続になった」
「いや、なんて言うかアイツら結構躱すから……うわぁ。これ食べれるのかしら?」
目に付くカボチャを片っ端から捕まえている香夏子は、粉微塵になった残骸も回収して行く。
……生でも行けるでしょうか? 後で味見してみましょう。
そんな事を思いながら、ちらりと視線を傾ける。するとそこにはもう一人の八つ当たり者が居て。
「やあやあ、カボチャの諸君! オレは仲間だぜ――おいおいどうして逃げるんだ!」
カボチャ騎士の恰好をした静が、巨大な鉄槌片手に無双していた。流石に鉄槌持ってる者を仲間とは思わなかったらしく、カボチャ達は全力で逃走している。しかし、
「フゥーハハハハハッ! リア充がなんだー! 相方が居たって一緒に来れないことだってあるんだよー! あああ、いらん事思い出させやがってこのカボチャめ! 全部つぶしてやらぁああイィ――ヤァフゥゥゥゥウ――!」
怒りの力か悲しみの力か良く分からないが、とにかくハイテンション全開であった。
「我は幽玄に吹く破壊の旋風。覚悟せよ異界の徒……」
……なんかテンション高い人多くない?
そんな感じでこっちはウイスキーボンボンを大量摂取したが故に別の方向にハイテンションな喜平が居た。少し酔ってるみたいだが、残影剣発動させた上で影にも手伝わせてバッサバッサなぎ倒している辺り、目的は忘れていないらしい。
「ああしかし派手に焼けるねぇ。うんうん、フレアバーストの火加減も調節出来てるし、こりゃあ良い焼きカボチャが出来そうだよ」
とある一角では追い詰めたカボチャを付喪がフレアバーストで加熱中だ。表面が焦げる程度に威力を止め、“加熱”まがいを再現中である。まぁ厳密には攻撃と言えば攻撃なのだが細けぇこたぁいいんだよ!
「あんまり食べるのに向いてるとは思えないんだけど……本当に食べれるのコレ?」
少々の疑問を含みながらも気糸の罠を射出し、カボチャらを捕える彩歌。
「んー大丈夫じゃないかな――多分」
瞑は瞑で良いカボチャか悪いカボチャかの区別がつかないので、とりあえず袋の中に投げ込んで捕獲中である。
「ま、そんなの捕まえてから考えようぜ! ほらほら見て見てーカボチャの散歩ー!」
と、周りのリベリスタに捕まえたカボチャを終は見せる。ロープで順にくぐり付けているソレはカボチャの散歩に視えない事も無いが、どちらかと言うとカボチャの鵜飼いに近いんじゃないだろうか。
まぁそれは良い。……いや良いのか微妙だがともかく、何故捕まえたカボチャ達に“カボチャパイ”だの“クッキー”だの“サモサ”だの名札が付けられているのだろうか。
「いやこういうのはさ、ちゃんと名前付けておかないと分かりにくいだろ。――ホラ、後があるんだしさ。後が」
オブラートに包んだがそれは調理の事か。
少しばかり察したカボチャ達の抵抗が激しくなるが、終は冷静にロープをきつく絞めて抵抗を鎮圧する。そしてそのまま調理場へと歩いて行った……
「これはあれか。俺、お経でも上げた方がいいんかな――ドナドナの方が的確だけど」
その後ろ姿を見据えながらフツは南無阿弥陀仏と言うべきかドナドナドーナーと唱えるか悩んでいた。まぁ彼の楽しみは食事だ。捕まえる事に関しては式神に任せているため、気楽な様子である。
「それにしても……ジャックでてこないね」
捕まえたカボチャをぽこぽこ叩いていた小梢は例のKABOTYAが出てきていない事に気付く。そあら達の時にそれっぽいのが居たには居たが、
「やはりこれはおびき寄せる必要があるな……二人とも、GO!」
喧騒の中で身を潜めていた快の一言と同時――
「翠華。君の猫耳は今日も一段と麗しい……君の為にあのカボチャを刈り取ろう
そして俺の為に、お手製のパンプキンパイを作って欲しい
最高に甘い一時を、二人の手で作り上げよう」
やたら甘い空間が広げられた。
……動揺を見せてはならないッ!
優希の心中は慣れない出来事をやっている為か滅茶苦茶揺れ掛けていたが、それはそれ。動揺を見せては全てが台無しになると考え、彼は彼なりに完璧な演技を目指していた。
その結果が故か、
「そっ、そっ、そんなに煽てても何も出ないんだからね! ……まぁ、でも、その……パイぐらいなら、その……作って上げても良いけど……」
もはや演技では無く素で真っ赤に成っている翠華が彼の隣に居た。彼女は招き猫を模した衣装で着飾っているが、色的に赤猫になりつつある。
くそうリア充爆発しろ。例え演技であっても――と、その時だった。
「貴様らぁああああ俺の前でリア充だなんて良い度胸してんじゃねぇかアアッ!?」
甲高い声が響き渡ったと思えば、一際大きなカボチャが彼らの目の前に現れた。
まさかこれが、
「リア充なんてのはなぁ……間違って生まれてきた存在なんだよッ! それをこのジャック様が証明してやらァ!」
周囲から、おおっ! とか、心の友よ! とか賞賛の声が聞こえるのは、まぁ置いといて。お目当てのジャックが出てきたのはどうやら間違いなさそうだ。
「よし、出てきましたね! 周りの雑魚は任せてください……全て私が片付けて見せますよ! ゼェアアアア――!」
掛け声一つ。ゑる夢の進撃が始まった。
彼女は一度仲間の方向を振り返り、マスクの下で無駄にキリッとして、
「さぁ皆さん今です! 今の内にジャックを仕留めて――!」
チェーンソー片手に大上段から振り下ろせば「ギャアアアア!」というカボチャの悲鳴が。勢いが強かった為かカボチャの血しぶき……ではなく中身が飛び散るが、彼女は気にしない。ついでにどこぞの怪人を彷彿させるが、アレはチェーンソー使ってなかったからノーカンだろう。
「カボチャは大人しく料理されてしまえば良いんだ……! これだけシェフがいるんだから美味しく出来上がるさ。だから諦めろジャック!」
レンもまたジャックに対し攻撃を仕掛ける。
ただ、攻撃する前に何故か近場のリア充に対して攻撃スキルをマジ掛けしてから、
「――あ、間違えた間違えた」
短い感想と共にジャックに集中した。本当に間違えただけか!?
「いやーそれにしても縁起の良くない名前だよなぁ。こいつを喰って、ジャックザなにがしへの景気付けとしてみますか!」
アキツヅが構えるは新調した銃だ。彼がカボチャ討伐に参加した理由は二つあり、その一つが新しき武器の性能確認。そしてもう一つは、
……そろそろ砂糖水とレタス生活に飽きてきたんでな。カボチャ食わせろカボチャ!
「十字照準――ジャスティスキャノン!」
声と同時、力強い十字の光がジャックを見事撃ち抜いた。しかし、どうやらジャックは一撃では倒れず、踏みとどまったようで、
「ヒャッハァ! あぶねぇあぶねぇ……だがこんの冷静なジャック様はそんな程度の攻撃で――」
「フッ、貴様の殺意はその程度か。これだから非リアは……」
「んだとテメェ!? ぶっ殺してやらぁ!」
優希の簡単な挑発に即座に乗った冷静(笑)のジャック。
そして、その一瞬の隙を見逃さない者が居る。
「やっぱ狙うなら一番美味しい所だよね。ジャック、その命貰い受ける……!」
潜んでいた快が跳躍一閃。逆手に持ったナイフでジャックの体を――
「おおっとぉ、そう簡単にはいかねぇぜ!」
――切り刻めなかった。
間一髪。ジャックは快の殺気を読み取り、回避したのだ。
「な、なんと!? 快さんの攻撃がミスった? ――やはり!」
「だ、誰だ今やはりって言ったの――!? くそ、まさか躱わすとは……!」
ジャックの素早さは、カボチャ達の中ではかなり素早い方である。
故、攻撃を躱わす可能性が無い事は無かったのだがまさかこの絶妙なタイミングで躱わすとはお天道様の気まぐれが凄まじい。ともあれ、
「まぁそれならもう一度」
「追撃すれば良いだけの話だよねアハハハッハハ!」
余裕の出来た翠華と何故かトリガーハッピー状態の烏頭森が、回避行動を行ったジャックに対して連撃を仕掛ける。特に烏頭森はテンション高めで、
「私もリア充は嫌いだぞ! でもお前は討つッ! なぜならこれって悲しいけど戦争だからだアハハハハハハ――!」
「グ、グアァアア! こんの、畜生がぁ!」
皮を削られて行く。
ジャックもこれは躱わせずみるみる内にその行動が鈍くなっていた。
「リア充嫌いの性質……あぁ、その気持ち俺も分からなくはねぇぜ。――撃つけどな」
そこに狙い澄ましたかのように魔弾を加える龍治。衝撃でジャックの体が揺らぎ、さらに隙が出来た所を、
「ジャァァァック! お前の恨みつらみを受け止めてやるぜ! 俺が、俺たちが――リア充だっ!」
竜一が心の底からの渾身の叫びと共に――ジャックを、叩き斬った。
●阿鼻叫喚の調理タイムと危険物混じりの食事タイム
「Eeny, meeny, miney,「ギニャー!」 mo,Catch a pumpkin by「うぼぁー!」 the toe「たわらば」,If he hollers, let「\上町屋/」 him go,Eeny,「ありえん(笑)」 meeny, miney, 「はにゃーん」mo……ふむ、これは中々楽しいですね。オートで合いの手が入りますし」
カボチャの阿鼻叫喚をBGMにエナーシアは数え歌を歌いながら調理をしていた。と言っても彼女が今行っているのは調理しやすいように切り分けている作業だが。
ここは調理場。捕えられたカボチャ達の行きつく――最終地点である。
「調理人の皆さーん。追加のカボチャです。仲間を取り戻そうとしてきたのを仕留めてきたよ!」
最終地点にさらにカボチャが追加された。とらが、不殺属性を持つ攻撃でカボチャを捕まえてきたのである。断末魔の数が増えたのは自明の理だが、とらはそんなの気にしない。じゅるる♪
「阿鼻叫喚なんて知らねぇな! 煮込めばいいんだよこんなモン!」
満面の笑みと共に御龍は次々とカボチャを鍋に投入。
本来のカボチャのスープと、このカボチャで調理したらどうなるのか――比較しつつ、想像を働かせながら調理中であった。
「さーてコイツらはどう調理した事か……スープとか煮物とか、後はシチューにケーキでもしてみるかねぇ。本読めば作れるだろ――作ったこと無いけど」
「フラグなのかフラグじゃないのか微妙な所ね……オーブンあるみたいだし、私はグラタンでも作ってみますか」
付喪は本を読みつつ調理を進め、彩歌はカボチャに加え、玉ねぎやホワイトソースを使ってグラタン作成中。
「カボチャカレー作るよー当たり外れ分かんないけど頑張って作るよー」
「小梢さんそちらはお願いしますね――ああ、ところで久嶺さん。一足先にカレー味のカボチャがあったので食べてみますか? 美味ですよ?」
「カ、カレー味のカボチャ!? よくそんなのあったわね……あ、や、ちょっと待って私はいらな、待って無理無理! ……も、もがが――!」
小梢がコトコトとカレーをじっくり作り上げている中、久嶺と香奈子は味見中である。……カレー味のカボチャって分類は危険物だろうか? まぁなんにせよ楽しそうで何よりだ。
「こいつァ料理のし甲斐があるぜ! なんだいなんだいトチ狂ってお友達にでもなりに来たのかい? ハハッ――どうだいオーブンレンジの味はぁ! 美味しい立派なパイになっちまいなこのカボチャがぁ――!」
やたらテンション高いセルマはオーブンレンジにカボチャを叩き込みながら満足そうに完成を待っていた。なぜこんなにテンションが高めなのかというと、
「ああ、そういえばさっき味見としてカボチャを一つ口に入れてたなぁ。当たったんじゃねぇか危険物に? なんか口調がどこかで聞いたことのある感じになってるが……ま、そのうち治るだろ。……それよりも、だ」
一方ランディは冷蔵庫を開けて、お目当ての物を取り出していた。
それは先ほど彼が丹精こめて作り上げた物。とろける様な甘みを持つ、その食品は、
「だ、大好物のかぼぷり~! お、美味しい! ランディ、これ美味しい!」
「そーか旨いか。そりゃあ良かったぜ。作った甲斐があるってもんだ」
ランディの作り上げたカボチャプリンを満足そうな笑顔で食べるニニギア。
「皆ー! 美味しいパイが出来たぞー! ぼくが作って味見もしたから危険も無いよ! 一緒に食べよう!」
「わぁ! 光ちゃんのも美味しそうなパイ! いい焼き色、甘~い匂いっ!」
さらに並ぶは光作成のパンプキンパイだ。
生地から丁寧に作り上げ、カボチャの種を乗せたパイは見栄えも良い。
「サァ、こっちも出来たのダ! トリカボチャ型スゥイートパンプキン、召し上がれ~なのダ!」
「美味い! ホクホクで甘くて温かくて、今の季節に最高だね。カボチャの自然な甘みだから、いくら食べても食べ飽きないよ!」
「う、うま……頬が落ちるとはこのことか……!」
さらに調理場から運び込まれてくるのはカイの作ったスイートパンプキン。
柔らかくなるまで茹でて潰して作ったソレはまさしく絶品。素材の良さも相まって、さらなる旨さへと昇華しつつあった。早速食した快とレンはその感激に実が震え、レンに至っては、
……この旨さと栄養なら明日にでも身長が伸びてるかもしれないな!
と、いう考えにまで至っていた。……いくらなんでも明日に伸びるというのは流石に儚い希望と言わざるを得ないが。
「……はい、出来ましたよ……危険物と判明したものを……パウダー状にしました……どうぞ……これなら食べやすいかと……」
「うふふふふふ有難うございますセシウムさん。これで野菜が食べやすくなる上、良い武器が手に入りましたうふふふふふふふ……」
食事場の一角ではセシウムがわざわざ危険物KABOTYAを粉にして、マリスとアキツヅに配っていた。マリスはその怪しい粉を他のパーティに使うようだが、もはや嫌な予感しかしない。
「笑顔こえーよ。しかし何で食事場でコレ作ったんだ? 調理場があるだろ?」
「……いえ、あの……うめき声が……その……」
瞬間、調理場の置くから「ギャアアア!」という悲痛な声が響き渡った。
どうもセシウムはあれが恐ろしかったらしい。……いや、セシウムでなくともあの阿鼻叫喚の場は恐ろしく感じること必至だが。
「残り一割のスリル……カボチャは好きだがどんな危険があるのかッ。ええい、せっかくだから私はこの赤いカボチャをえらぶぜ!」
数秒後、盛大なフラグを立てたブリリアントが倒れる音が聞こえた。無茶しやがって……!
「はーい最下位の結城くん? たーんとお食べ!」
「く、そう……ジ、ジャックまで討ち取った俺が何故最下位……! あ、わ、笑いが止まらなうひゃひゃひゃひゃ――!」
そしてグループを組んで行動していた壱也と龍治の二人は――当初の取り決めどおり最下位の者に対して危険物を食べさせるという罰ゲームを執行中だった。
対象となったのは竜一。何故彼が最下位かというと彼にカボチャ達の攻勢が集中してしまったからだ。攻撃を凌ぐのは容易かったのだが、次から次へと現れてくるために捕獲の段階で手間取ってしまった。故に最下位となってしまったのだ。
「残念だったな竜一。ま、こういうこともあるだろ――ぐぉあおあああッ?!」
「ど、どうしたのりゅーちゃん――くぁwせdrftgyふじこlp;@!?」
と、その時だった。勝者として、危険物ではない“筈”のカボチャを齧った二人がどういう事かいきなり倒れた。
何が起こったのか。その詳細は、竜一が語ってくれた。
「あ、あひゃひゃ……み、道連れだ……せめて道連れを作ってやる……八雲ォ、お前もだ!」
「なっ?! ま、待ちたまえ竜一! 危険物を食べたくないから私は空気と化していたのだぞそれなのに食べたらぐぁああ!」
もはや逃れえぬ。散々傍観に徹していた八雲もまた危険物の餌食となり果てたのだ。
「皆さーん、ミキサーで混ぜた作り立てのカボチャジュース如何ですかー? 大丈夫大丈夫見た目はグロイけど味は大丈夫ですよ――危険物混ざってるかもしれないですけどねアハハハハ!」
「……だから何故今回テンション高い者がこんなに多いのかね。え、ええい。そこまで言うならまず君が飲んでみたまえよ」
「え、私がですか? そんなぁ(ゴクリッ)――撃っちゃいますよもう、バキューン――!」
「ま、待て何故撃つという結論に――ぐぁ!」
危険物の影響で再びトリガーハッピー状態となった烏頭森。その余波で再び八雲が額に被害を負ったが、まぁそれはどうでもいいだろう。うん!
さて、危険物のせいで段々とカオスになりつつある食事場。――そこに、最後の混沌を巻き起こす出来事が突然投下された。
「た、大変なのダ――! 調理場のKABOTYAが反乱を起こしたのダ――!」
カイの言葉とほぼ同時、その脇を一つの影が通り過ぎる。生きるために必死の反乱を起こしたカボチャである。
「リア充死すべし! 二代目ジャックここに参じょ、ギャアアア――!」
「よし! 一代目はミスッたけど、二代目は仕留めたぞ――! カイさんスイートパンプキン追加――!」
「快さん油断しないで! カボチャの反乱が続行中です!」
まさかのカボチャ達の反乱だったが、パンプキンキラーを自称するゑる夢にとっては目を輝かせる事態。即座にチェーンソーを持って鎮圧へと向かった。
「ああ“クッキー”に“サモサ”お前ら逃げ出したのか! 全く――もう一回つかまえてやるよ!」
「安心しろ全部逃がさず潰してやるー! 八つ当たり魔人の力、もう一度見るがいい――!」
終と静の二人も……色々恐ろしい言葉を吐きながら続いて、
「とらも手伝うよー! また神気閃光バラ撒いて捕まえてやるんだー!」
「もう一度数え歌を歌う必要がありそうですねこれは……フフフ天ぷらの準備は出来てますよ」
「ああ……エリュシオンが……見えます……」
「…………ふ、はは、ははは、カボチャ、カボチャの顔が……ふっふはははっは」
「うーんカレーとサフランライス……合うねコレ」
とらが調理場で神気閃光放って、エナーシアが天ぷらの準備をして、セシウムと彩歌は危険物に当たって、小梢は出来上がったカレーを試食中で……と、とりあえず現在の状況を簡潔に纏めると、
・食事場でカボチャ達の反乱が起こって、それを鎮圧する人がいて、
・片隅では危険物の被害に苦しむ人と、カボチャ料理を普通に楽しむ人がいて、
・調理場では再び阿鼻叫喚の調理タイムが整いつつある――という状況である。
「あぅあぅ。頭、らいよんちゃんとぶつけちゃったのです……って何ですかこの状況!? な、なんか大変な時に帰って来ちゃったですよらいよんちゃん!」
「落ち着くのだそあら――こういう時こそ落ち着いてメールをするのだ! そあらの鼻が真っ黒わんこさんなのを沙織に伝えてやるのだ!」
「そ、そう言うらいよんちゃんだってお顔が泥んこだらけなのです!」
そういって雷音は養父と沙織に、そしてそあらも沙織にメールを送る。
KABOTYAが写るように写真をパシャリ。添付して送信だ。勿論、顔はお互いに笑顔の表情で、
「カイのスイートパンプキンも旨かったがこの変な味のも旨いな……なんか気分が乗ってきたんで――謎かけでもするか! では早速、初デートと掛けて10月31日の出来事と解きます」
「おおーフツがカオスな流れの中でノリノリなのダ。なんか酔ってる様な感じがあるけど……ではその心ハ?」
「あぁきっとどちらも――」
一息。
「――良かれ悪かれ、忘れられない思い出になる事だろうさ」
ハッピーハロウィン。10月31日、KABOTYAとの出来事でしたとさ。
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