●平和な工場のとあるやり取り 「なぁ、そう言えばさ」 「どうした」 「あの急遽出荷が取り止めになった商品って結局どうなったの?」 「あー、アレなー……なんか丸ごと買い取られたらしいぜ」 「マジで?」 「マジ。詳しくは知らねーけどさ……」 ●X人前 ブリーフィングルームに入ってみたら何だかヤケにラーメンっぽい匂いがする。 と、思っていたらフォーチュナがカップラーメンを食べていた。周りにどっさりダンボールを積み上げて。 「……サテ」 スープを飲み干し空になった容器を手に、手の甲で口元を拭いつつ事務椅子をくるんと回して振り返ったのは『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)。 かつて無い状況にざわつくリベリスタを見渡すなり、一言。 「モルゲンですぞ皆々様、毎度お馴染みメルクリィですが今回はカップラーメンを死ぬほど食べて頂きますぞフフフ」 こいつサラッと本題まで喋りやがった――というツッコミすら忘れて、目を点にするリベリスタ達。 そしてフォーチュナはと言えば、その反応を楽しむかの様にニヤニヤと一同を見渡している。 「『これ』がですね」 言いながら卓上に空容器と蓋を置く――『THE☆Big首領』(ざ・びっぐどん)という名の、何ら変哲もないカップラーメンだが。 「革醒しちゃったんですよねー」 それもこんなに。と、手を広げるメルクリィの周りには……嗚呼、さっきからリベリスタの視界にも入っている大量のダンボール。 ていうか大量すぎないか。と言葉を失うリベリスタを余所に、機械男は開いたダンボールの中身をゴソゴソ取り出しながら説明をする。 「一般人が誤って食べてしまったらその人が革醒しちゃうかもしれませんのでね、皆々様は何が何でも『今ここで』食べ切って頂きますぞ。 エリューションであるリベリスタ皆々様の胃袋なら何ら問題はありません。毒とかもないですしクソマズイ事もありません。ノブ様的に言うならばGreatでDeliciousですぞ。 論より証拠、さっき私が普通ーに食べてたでしょう?」 メルクリィがドヤ顔で不敵に笑う。こいつは変な所でしたたかだから困る。 「誰かの手に渡ってそれから一般人の手に、って事を防ぐ為にもテイクアウト厳禁。 大事な事なのでもう一回言いますが『何が何でも今ここで食べ切って下さい』ね。約束ですぞー。 彼がそう言い終わる頃には四つのカップラーメンが並んでいた。醤油味、豚骨味、塩味、味噌味の四つだ。 「『THE☆Big首領』――ボリューム満点具沢山こってり系のガッツリ系、どんなハラペコもパツイチのコロイチ間違いナシ! ……と、蓋に書いてありますな。ダイエット中の女子の天敵ですなァ~。女子の方はカロリー表記を見ない方が良いかも? そうそう、お湯やお箸や調味料とかはこちらで完備しとります。お水も飲み放題なんで。 お好みで何か色々持ってきてもオッケーですぞ。特製調味料とかライスとか胃薬とか。 要は食べ切りゃいいんですからァ。結果です結果。 残さず食べて下さいね。それから食べ物で遊んじゃ駄目ですぞ? そしてゴミはゴミ箱へ。 ――はいっ、以上で説明はお終いです。 それじゃ皆々様、」 徐に、ナチュラルに、メルクリィが席を立つ。ニコニコと。 「頑張って下さいねー ってちょっ! 待ッ!!」 逃がすかこの野郎。出口へ歩き出そうとしたフォーチュナを総員で取っ捕まえておいた。 連帯責任は大切なのだ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年12月02日(金)23:56 |
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■メイン参加者 0人■ |
●お湯を入れて 広い部屋。集まったリベリスタ達。大量のラーメンTHE☆Big首領。 3、2、1―― タイマーが鳴った。 ●イタダキマス \ラーメン/\ラーメン/\ラーメン/\ラーメン/\ラーメン/ 気合い十分。 「ふぁいとっふぁいとっ。ミーノも頑張って食べるの~」 応援も十分。いただきますとミーノは手を合わせた。 「らーめんに賢者の石とか入れたらどうなるんだろう? まぁ、謎は謎のままが美しい事もあるよね」 そんじゃま、一つ頂きますか。りりすはほこほこ湯気を立てるラーメンにバターと缶詰コーンを投入する。手間をかけてちょっと贅沢なカップ麺も悪くないが、この手のものは手軽に腹を満たすのが醍醐味であろう。 「引きこもり料理すきるは、またの機会に発揮するとして。それはそれとして」 「これからもっと外にでろ!」 カップから出し鍋で茹でた麺を湯切りしている光の容赦ない一言。おそとは怖い事や辛い事がと垂れる鮫を余所に、光はお湯・鶏ガラスープ・昆布だしの素・中華スープの素を適宜入れたカップに湯切りした麺を、そして葱油と醤油で味を調整、輪切り葱、叉焼、メンマを入れて……完成した熱々のそれを一気に啜る! 「インスタントでもちょっと工夫でこのうまさだ! 出汁が濃厚! インスタント麺でもこれならどんどん食べられるな!」 そんな彼女の傍らでは桐が豚骨ラーメンを食べている。たまに食べると美味しいものだ、既にお湯を注ぎ済みである二杯目へ目を遣りながら。 「早いですか? 替え麺文化の福岡では食べ終わる前に頼みますから似た様なものですよ?」 二杯目用の辛子高菜を準備しつつ。ちなみに三杯目は紅生姜の心算。普段大量に食べる事は無いからこそ今回は気にせず食べれそうだ。 「高カロリー? 動くから問題ありませんよ」 「カロリー? ちゃんと気にしていたわよ、主に如何に足らせるかの方で」 バリバリバリバリ。エナーシアは火薬と粉末スープを乗せた未調理麺をそのまま食べている。この文明の利器には昔よく世話になったものだ。 インスタントラーメンを食べる。女性でなくてもなんか地味に辛い辛い気が、なんて思っていた孝平はその様子に呆気に取られている様だ。気分的な問題で選んだ塩ラーメンの湯気に眼鏡が白くなっている。 「何? 即席麺の製造時のかけらを元にしたお菓子もあるのだし、この食べ方も美味しいわよ。 何より普通に食べるより遥かにお腹に溜まらないので4食ぐらいなら余裕だわ」 バリバリ。熱湯を準備するのって人里離れた場所や廃墟だと意外と手間がかかるから慣れたのよね。次の味の袋を開けながら。 孝平も気を取り直す。 小食ではないが食べ過ぎないよう気をつけないと。 (味噌と豚骨のどちらを〆にするか……味噌にしておきますか。 それぞれ食べる間隔も30分くらいはあけておきたいところですね) なんて考え、黙々と。 リーゼローットもズズズと豪快に音を立てて黙々と。食べて食べて、食べるのみ。健康面で心配ではあるが、それを上回るほどにタダメシほど美味しいものはない。次に湯を入れ、心の中で時間を計り、黙々々々。夏明も黙々一心不乱に、一心不乱に、一心不乱に、一心不乱に一心不乱に一心不乱に一心不乱一心不乱一心不乱一心不乱一心不乱一心不乱一心不乱 一 心 不 乱 。 冥真も静かに土鍋を見詰めていた。 土鍋には一箱分の塩味。野菜としらたき入りの鍋。傍には鍋を作る際に予め取っておいたスープで味付けした玉葱入り塩焼きそば。微妙に甘いものも用意して胃袋に余裕をもたせることも視野に入れて。 んで食う。 しかし一人じゃ食べきれないので黙々チームへ目を向けたがとても黙々していらしゃった。 ぼっち飯上等。 「ところで、豚骨醤油ないの? 私横浜系が好きなんだけど、無いの……?」 一方そんな事を呟くウェスティアであったが、その右手には豚骨味、左手には醤油味が。 そんな訳で至高の味を求め究極合体。 食べ物で遊ぶな?馬鹿ッッ! ラーメンは遊びではない……至高の嗜好品ッ! 「私ってば天才だよね!」 そんなこんなで頂きます。あ、普通に美味しい。しかし足した二個で満腹になってしまいそうだ。 「甘い物ならいくらでもなんだけどなあ……後でアイスでも食べにいこっと」 ふー、熱々ラーメンに息を掛けながら。 「カップ麺が覚醒って、初めて聞いたぜ」 守夜は豚骨ラーメンを食べつつ。博多ラーメン大好き。勿論ちゃんと食べきる為に野菜等の準備も万全だ。鍋とかもいいかもしれない――視線の先にはぼっち飯の冥真、一緒に喰おうぜと声をかけてみる。 「メシを食うだけで報酬が貰えるんだろ? アークさまさまだぜ、なんてラッキーなお仕事だ」 しかもカップメンときた。味も問題ないんだろ?極楽じゃねえか!八郎はサングラスに隠れた目をニヤリと笑ませる。 「『うっかり八郎』と呼ばれた俺の食いしん坊っぷりを見せてやるぜ!」 なんて、その手にはしっかりと胃薬が。 「頂きます!」 合掌、砂糖水に始まってクソ甘いレタスにハロウィンのかぼちゃにと、そろそろ塩っ気も欲しくなってきた。そんなアキツヅは可能な限り小さく小さく食べ進める。 ラーメンは小麦、スープを吸うと途端に大きく膨れ上がるので水は厳禁。 いかにスープを飲まずに麺を素早く食べるか、それに合わせて口に運ぶ時に小皿を用いて冷ます。冷まして且つスープを切る。 啜るのもダメ。啜って食ったら空気も一緒に吸ってしまって腹が膨れる。 との事。 「先天的にも後天的にも才は無いが、大食いにゃあ技術面で自信ありさ」 でもスープも飲み切って下さいねByメルクリィ。 「カップラーメン……アタシャ生まれて初めてだよ、食べるのは。テレビとかでは知ってはいたんだけどねぇ」 いんすたんとってやつは今まで食べる機会が無くてねぇ。富子の前にはカップ麺、そして富子自身はゴッドタンにRストマック――食事といえども仕事、きっちり役目を晴らしてみせる。 準備完了覚悟完了、さぁどんと来なっ!! というのが少し前の出来事で。 「この味に至るまでにどれだけの開発者達の苦労があった事か……わかる……アタシャわかるよ……」 はらはら、涙を流しながらラーメンを大事に大事に噛み締める。 涙は愛の隠し味――…… 「お湯を掛けて3分……」 マリーは神妙な面付きでTHE☆Big首領を見据えていた。 得た知識、今こそ振るう時。お湯でボトボトになった未開封のカップ麺。 お湯を掛けて3分――開封、そこには麺とはとても言えない水分0の塊が。 「うぅム……やはり固形になってしまう」 何か特殊な技能が要るのだろうか。取り敢えずアルデンテどころじゃない麺をガリガリ。 そしてマリーは見た、見てしまった――カップの中、麺以外にある付属調味料を。 「なんと……新種か?」 世界は広い。 なにやら気合の入ってる人達もいるみたいだけど。 「私には関係ないね、食事は救われてないと駄目なんだ。優雅で、静かで……」 有紗はお湯を入れた待機中麺の香りを優雅に楽しむ。待ってる時が一番香りを楽しむ時だよね。 そしてタイマーは2分30秒を告げる。2分30秒、これがポイント。麺やや固め、この歯ごたえがインスタント。 「うん、美味い。こういうのがいいんだよ、こういうのが」 ニコニコもぐもぐ、次のラーメンにお湯を入れながら。これで隙なく食べ続けれる。 選んでエリューションを殺す事を高尚とも上等とも思わぬ、ただただ殺す。 敵は殺す、ただただ殺す。敵は殺す。 煮え滾る泉水を以て、飢えた臓腑に慈悲を啜るだろう。 見よ、芳しく残酷にとろける肉を。脂を。哀れな豚どもの体液を凝縮したその精髄を。 緩やかに伸び果てる前に喰らい、喰って喰って喰らい尽くした果てに、それでもなお、底が無いが故に奈落が如き底無しを垣間見せよう。 「最も強い恐怖とは未知なるものの恐怖である」 引用言葉で、ヘノシディオは塩ラーメンをもぐもぐ。 「……自宅で一番大きい鍋を持ってきた。これで食う」 デン。鷲祐の前には大型カセットコンロに乗った調理用の寸胴鍋。それに叩き込まれ煮込まれている大量のTHE☆Big首領(味不問)。チマチマカップごとに分けていられるか! しかし味の希薄化を防ぐ為に顆粒の鶏がらスープを加え、肉屋で購入した豚バラブロックを炙り入れ、更にネギ・もやし・キャベツ・煮玉子を加え、煮込み上げる。 以上――な訳ない。この鍋一杯では足りない。作り増して増して増しまくるのみ。 「この俺が、食においても重要戦力であることを示しておこう――(大食いと言う名の)修羅場を抜けた数が違うッ!!」 雷 光 神 速 ! ねぇ知ってる?コモドドラゴンは体重の80%程度は食べれるんだよ。 (あっ、司馬さん、さすが、いい食べっぷり……!) 負けないわ。ニニギアは張り切って髪を後ろでぐいっと結んで臨戦態勢。今こそ大食いな自分の出番! 「いただきまーすっ! 普段以上にいっぱい食べるわよ!」 普段、攻撃力ではへぼへぼだけど、食べる件に関しては主力になれる筈。喰らい尽くせー! そんな素晴らしい食いっぷりを眺め、エリスはマイペースにラーメンを食べる。因みに自分は一つで十分だが……皆が美味しそうに食べるのを見てから判断しよう。 それにしても色々な匂いが混ざりすぎてそれだけでもお腹いっぱいになりそうだ。 「そう言えば……このラーメン……何か懸賞に……応募できないかな?」 メルクリィさんにプレゼント出来るかも。蓋を見てみる。 『蓋のマークを集めて応募! 今ならもれなく携帯ストラップをプレゼント!』 きゅぴーん。エリスの目が光ったのは言うまでも無い。 ●いつも無茶振りに応えてくれる凍夜さんに贈る愛のヌードル開発部 ぐるぐと糾華による研究会。美味しい味を、感謝の味を求めて。 「目指せ、至高の味!」 言葉と共に糾華は味噌味をベースにネギをドシャッと。焼きおにぎりとか食べるラー油とか明石焼きとか遠慮なくドシャッと。ドカ盛りドシャッ。味噌だと和が合いそう。ドシャッ。 一方のぐるぐは醤油味をベース、たこ焼きとかフライドポテトとかアロエとかを盛り盛り。意外とイケそうなモノ(ぐるぐ的に)をちょびちょび入れつつ味見しつつグッドチョイスを探す。 「糾ちゃんあーん」 「ぐるぐさんあーん」 偶に交換し合いっこして試食して。 かくしてそれは爆誕する。 絶妙ブレンドの至高なる一品。カオスの香りしかしない。 それにぐるぐはメロンで愛という名のぶち壊し品。糾華は生クリームと苺で感謝の心のスペシャルトッピングどーん。 「え? 台無し? 聞こえなーい」 そして二人で目を合わす。試食でお腹いっぱいになったので――二人して夏栖斗に視線を。 「おい! 想定外の伏兵きたぞ!」 なんて夏栖斗の前にデデェーン。 「お残しだめだもんね」 「エシューションだから全部食べてね?」 「マジで? はしご?」 で も い く 。 PPG(PonPonPeinGuard=胃薬)を使ったのは言うまでも無い。 「美味しそうね、頂くわ!」 残りはニニギアさんが美味しく頂きました。 「全部食べてごちそうさまっていうの!」 プハァ、麺を飲みほし幸せそうな笑顔で。 ついでに夏栖斗へブレイクフィアー。 ●S.A.L.T. ……という夏栖斗の予想外のダメージも有りつつ。 三人の男達は静かに燃えていた。 目的は一つ。たった一つ。 塩を極める。 「阿呆と後ろ指指されようが、この生き方は変えられねぇんだ」 『塩の龍』武臣を導き育てた男は言った、『ラーメンの道に近道なし』と。 準備したのは乾燥桜えび、茹で野菜、岩のり、味玉、カリカリ揚げネギ、ライス(冷メシ&電子ジャーにて温メシ)。 塩の三戦士が一人にして薬味担当の快も黙って頷く。いりゴマ+ごますり器、柚子胡椒(九州産)、刻み青ネギ(地場産)、フライドオニオン(淡路産)――抜かりはない。 「シンプルだからこその奥の深さってもんだな」 配膳担当の夏栖斗は氷水を皆の前に。 「ところで、お湯入れて3分待つ派? それとも硬め派?」 「俺は2分30秒くらいで蓋を開け、後入れ火薬等を残り30秒間で入れる」 言いながら快はなんら躊躇することなく蓋を開ける……! 立ち上る湯気。時間は刻一刻と減って行く――一秒たりとも無駄には出来ない。シンプルに茹で野菜のみを入れれば時間ジャスト、計画に狂いは無い。 武臣はそのままで、夏栖斗は胡麻を。 手を合わせる。「いただきます」この一言なしには始まらない。 熱い――が、冷めるまで待っていては折角の麺が台無しだ。 「胡麻の香りが漂う幸せ……快マジ天才だな」 その次からは様々なトッピングを。一杯ごとに表情を変える塩ラーメンを演出する。 味玉、岩のり等の具材でバリエーションを展開。 柚子胡椒の深みとすりごまの鮮烈な香り。 躍動し連携しあう具材達――他の薬味でラーメンはどこまでも進化する。 RRM(Ramen Rice Management)も忘れず、CROP(Cat Rice OPeration)すら視野に。 ――それは無限なる可能性。 男達は麺道と云う名の小宇宙を浮遊する―― 「塩味の中に海老の香ばしさと旨みが……広がっていく……!」 「……活きてやがる、喜んでやがるぜ、THE☆Big首領がよ……!」 「やっぱさ、湯で野菜には塩が一番似合うな……!」 己が運命と共に。 塩ラーメンと共に。 何杯でも食べれそうな勢いだ。 そこにお前(THE☆Big首領)がいる限り――! さぁ、深淵にて遥かなる混沌を超え、無限の境地へ…… そんな彼らの傍らにはテトラが塩ラーメンをもぐもぐもぐもぐ。もぐもぐもぐさとうもぐもぐもぐもぐもぐさとうもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐさとうもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐさとうもぐもぐもぐもぐもぐもぐさとうもぐもぐもぐもぐもぐもぐさとうもぐもぐもぐ。 というのを見守りつつ。 「頂きます。」 雷音は醤油味を前にのんびり手を合わせて。 エリューション化したとはいえ、美味しいラーメンには感謝の気持ちを。 汁が跳ねるのはちょっと嫌だが……あまりカップラーメンは食べる事が無い雷音にとっては何だか新鮮な気分だ。 おいしい、と綻ぶ唇で呟いた。 ●らららラーメン 「ほわわーラーメンいっぱい、人もいっぱいや」 ラーメンたらふく食べタイガー☆と、ころなは賑やかな周囲にうきうきと笑う。その視界に桐と光が映った。 「こちらも美味しいですね」 「違う味も美味いな! ちゃーしゅうめぇ!」 食べ合いっこ中。ころなはそれにとてとて近寄り、 「天月さんや、やっほー。何味食べてんの?」 「ころなくんやっほーなのだ~! 醤味だぞっ」 「醤油? おいし? ほなボクも醤油しょ」 近くにあった醤油THE☆Big首領を手に。ころなは二人を見た。一緒に食べてええ?と聞けば勿論、と。 「えへへ一、一人で食べるん寂しなーおもてててーん」 尻尾をふりふり。皆で食べたらもっと美味しい。 「交換なのだ~」 食べ合いっこも楽しくしながら、幸せラーメンタイム。 このまま食べるもありかなところなはエナーシア式(又はマリー式)にガリガリ齧ってみたり、持って来たマタタビを掛けてみたり。 「うーおいし……ひっく、よっぱらったーえへへへへーがおがおー。 ボクまだまだたべられるでー、どんだけ食べられるかトライや~☆」 なんて、グッスリ眠りながら寝言で。 「カップラーメンは時々……うん、時々食べるし。味に耐性はある方よ」 湯気に曇る眼鏡を拭きつつ、バランスを保つために野菜を脇に置いてアンナはごくごく普通に黙々食べてゆく。一人暮らしで買い置きが普通にダース単位になってるのは秘密だ。 その傍らでは明奈が、ラーメン界に新風を吹き込むべく調理道具一式とサラダ用野菜を前に。 「先ずはこのサラダ用野菜各種を手でちぎり! 次に器に盛り付け! 更に水に戻す前のラーメンを砕いてふりかける! そうすれば! ラーメンサラダ(っぽいもの)の完成だー!」 在庫処理と味の変化を同時に満たすサラダ。「みんな、ラーメンに飽きたらつまむといいぜ!」……という明奈をスルーしアンナは黙々、飽きても黙々。 (混ぜて更に酷くなったらどうするんだっ。 インスタントラーメンを混ぜて食べるレシピなんてドコ探しても載ってないわよっ!) ずぞぞぞぞ。 しかし明奈はラーメンを口にしていない。サラダの葉っぱをもぐもぐ。 「え? ワタシ? いやほら、カロリーとか怖いし、うん。アンナはよく食べられるなあ……」 「え、カロリー……んー、あんまり気にしたことないわね、そう言えば。どこにいってるんだろう……」 「はっ。まさか、そのカロリーが、そこに!」 明奈の指差した先――たゆん。おっぱいがめいっぱい。 「ギギギギ。プロポーションを取るか、胸を取るか……!」 直後、アンナのチョップが明奈の脳天に突き刺さったのは言うまでも無い。 ●イシュター三姉妹 「いい? 私は2分30秒。これは譲れないの。 2分30秒でふたを開けてから、混ぜて食べはじめるまでに30秒は経過するの。 フタをあけた事で落ちる温度なんて、フタの上で温めた液体スープを後から入れるのとそう変わらないのよ。 そして液体スープのないこのカップラーメンは、その分は冷めないということ。 だから2分30秒。くすくす……おわかりかしら?」 銀髪を掻き上げ、塩ラーメンを前にした次女イーゼリットは高らかに。 「厳しい戦いとなるだろうな。だが私は剣姫。この戦! 負けるわけにはゆかぬ!」 まずは醤油から血祭りにあげてやろう!と醤油ラーメンを手に取るは長女イセリア。 「ひとーつ! ……次は味噌だな。 ふたーーつ!! ――他愛も無い。どんどん往こう。進撃!」 「あはは! 完璧ね」 「はっ! どうした豚骨よ。それでもう終りか。みいーーーっつ!! ――ならば次! 塩!! 手ぬるい! よおーーーっつ!!」 「天にまします我らの父よ。頂きます」 「くっ……一向に減らぬか。この数は手強い。おそらく、私がこれまで戦ってきたどの敵よりも……。 だが! 負けるわけにはいかんのだ!! 多勢に無勢!? 笑止! ならば二つ同時に開封しよう!」 「……カミサマなんて信じてないけど――熱っ!」 「この両手の箸で手をクロスして一気に食べてくれよう! これが必殺! デュアルストライク!」 「ねえ名古屋さん。ところでお汁はどこに流せばいいの? ……まさか、飲むの……?」 「ふっ、完璧だ……」 「え、ほんとに飲まなくちゃいけないの!? 『モチのロンですぞー』って、ちょっと!」 「――な、なに!? くっ……誰か、み、水を……う、ぐ ……無念……」 「リベリスタの仕事って、つらいものね……」 頽れるイセリア。給食が食べきれない小学生のような表情で隅っこにてラーメンと格闘するイーゼリット。 そして三女イーリスといえば。 いっこめ! とんこつたべるのです! にこめ! しょうゆでさっぱりといくのです! さんこめは! ここでみそなのです! のうこうでほうじゅんなのです! よんこめ! ふたたびとんこつ! はんぶんたべたら! おにぎりなのです! すーぷ! おにぎり! すーぷ! めん! さらに! たべられるらーゆであじにばりえーしょんをもたせるのです! ごこめ! しおでしょうきゅうしなのです! そしてっ! ろっこめ! がつんととんこつなのです! わたし! とんこつすきなのです。 こんどはたべおわったら! おにぎりを! しずめてくずすのです! じゃじゃん! ぞうすいけいかく! たべつくしてやるのです! ばばーん! 「というけいかくをたてたですが……いまさんこめなのです……うぐぐ」 姉妹仲良く頑張ってね。 ●ユーガにラーメン 「普段こういう食品を口にする機会が無いので興味がありますわ」 「私もカップラーメンってほとんど食べた事ないのよね。良い機会だし、楽しみだわ」 そう言うのは彩花とミュゼーヌ、カップ麺は馴染みがないTHE☆おぜうさまチーム。 「どうせ食べる以外に処分の出来ない物ですし」 彩花は取り敢えず全部の味を持って来て。 「こういうのって、きっちり3分じゃないといけないのよね」 ミュゼーヌは塩味を前にAF兼携帯電話の時計をじっと見詰めてしっかり3分。わざわざ0秒になるのをしっかり待って、しっかり作り方を確認し薬味をしっかり投入。 そしてレンゲに麺を取り分け、スープが跳ねたり音を立てない様に上品に――カップラーメンを上品に食べようとする辺りのズレをツッコむ者は残念ながら居らず。 彩花もしっかりとお行儀よく、お上品に、一先ず全部の味を気の済むまで。 カップ麺を食べているだけなのに溢れ出る気品。 スーパーお上品タイム。 ●リアル充実 わいわいどんちゃん、楽しげな食宴を眺めて。 拓真と悠月は隣同士の席。 「しかし……悠月は、こういった物は殆ど食べないんじゃないか?」 「急ぎの時とか便利そうだな、とは思った事はありますけれど。 食べた事は……無いですね。……それに、ラーメンそのものもあまり……でした」 答えながら、悠月はパートナーが塩ラーメンを手際良く作っていくのを見守り。 「味は意外と悪くは無いな」 味見をした彼は彼女の黒い瞳へ目を遣った。薄く微笑み「食べてみるか」と。はにかみながら「それでは少し」と。 「御裾分けだ。……少しくらいなら、食べても大丈夫だろう」 自らのラーメンを悠月と分けっこ。 準備が出来たら、 「「いただきます」」 一緒に手を合わせて。 先に食べたのは悠月。ふぅ、と熱い麺に息を掛けて一口。 「……手軽に食べれてこれは、すごいですね。これはこれで……美味しいですね」 「ん、そうか……それなら、良かった」 ゆっくり静かに食べてゆく。互いを微笑み見守って。 彼は思う。少しでも喜んで貰えれば、と。 彼女は思う。こういう風に過ごすのも悪くない、と。 正直、浪漫の欠片も無いけれど―― (この二人で居られる時間を……俺は大切に思う) (私が作った訳ではないけれど、……一生懸命食べている姿を見ていると、幸せな気分になります……) お互いが、お互いの、大切。 染まる頬はラーメンの熱気の所為だけじゃない。 「玲はどれにする? 塩ラーメンにバターを溶かして、コーンを乗っけると美味いんだぜ!」 「じゃあ、それっ!」 静と玲の間にも笑顔は絶えない。 いただきまーすと手を合わせて、はふはふちゅるちゅる! 「静さんと食べるラーメンはおいしいね!」 「玲と一緒にご飯を食べられるのが、一番美味しくなるスパイスだぜ!」 目が合えばニッコリ、心も身体もホッコリ。 静は美味しそうに食べている例の顔を眺め、微笑みと共にその頭を撫でた。 「玲と一緒に、色々な料理を食べたいな。色んな味を知って、自分の店に生かしたい。一緒に手伝って」 言うなり、顔を寄せてペロリ。丸いほっぺについていたスープ。 「ひゃう!」 玲の耳も尻尾もピンと、それから笑いかける静を見るや、はわはわと顔がどんどん真っ赤っ赤。 恥ずかしい、でも、とっても幸せ。 胸を張って言える。僕らは幸せです、と。 ●ラー麺 「日本人みなラーメン好きすきねー。中国3千年? 4千年になったんだっけ? のキックを喰らってあの世まで飛んでいくねーっ」 何が言いたいかと言うと。狄龍はガタンと立ち上がるや、 「ラーメン狩りじゃああー!!」 ガリジャー ガリシャー ガリシャー エコーを響かせストンと着席。 「ラーメンを好きなだけ食べて良いだなんて……アークに来て本当に良かったな。 『メンクイ少女』の名に懸けて、思いっきり食べちゃうよ!」 尻尾をふりふり、この日の為に前日からお腹を空かせていたこのはは準備万端、「もし良かったら好きなだけ食べてくださいね?」と用意した焼豚や食べラーなどを皆にお裾分けしつつ。 「こっちは、こっちで準備万端だもんな。……趣味で焼き豚作る、って……料理が趣味なんか……?」 「その焼き豚に食べラーは趣味の手作りか? く、やるな。……豆板醤、いるか?」 猛はこのはの焼豚に感心し、優希はさり気無く辛党仲間を増やそうと目論み、豆板醤を配り。 「味は豚骨か塩かで迷うトコだなー……シンプルに醤油もいいよなぁ。味噌味ってのも男の子だよな! いいねぇラーメン」 そんな狄龍を(こいつも4種類全部食べるつもりなのだろうか)と凝視しつつ、優希は豆板醤を狄龍に。 「持参の豆板醤が器に入りきらん。いるか? で、まさか4種類全部……」 「おぅ! ありがたく頂くぜー。……え? 4種頂くますよ? なんたってメタルフレームだからな!」 ※狄龍さんのモツは生のままです 「ところで焔が犠牲になると聞いたんだが」 「誰が犠牲者だ!」 そんなやりとりをニヤニヤ眺めつつ、猛はタイマーへ目を。 「さて、つーことで後3分……待ち遠しいねぇ……」 すでに彼は何倍か平らげている。食って食いまくるのみ。狄龍は豆板醤をブチ込み激辛ラーメンを美味しそうに食べ、このはも全種制覇を目指してもぐもぐ。チマチマ食べ進め中の優希の視線にこのははエヘンと胸を張り、 「これ位なら大丈夫ですよ? 好きな物は別腹って言うじゃないですか!」 へぇ、と感心し……味噌味に豆板醤と七味を山盛りにした激辛風味の自分のラーメンを見、3分経ち蓋を開けた猛を見遣り、喧嘩腰に。 「なあ葛木。俺がいつも前線で押し飛ばされるのは何故なのだ。 体重が軽いからか。このラーメンを全部制覇すれば重心が安定するのだろうか!?」 「体重が重けりゃ良いって問題じゃねぇと思うけどな。基本的に、戦闘なんざ驚異力高い奴から落とすんじゃねえの?」 「そ、そうなのか?」 「しっかし、お前ら本当辛い物好きだよな? ……俺にゃ真似出来ねーわ、それ……」 「うるさいな!」 そんな喧嘩腰会話にも猛はいつも通り、動じず自分の言葉。 ま、楽しく腹一杯食えりゃ満足だ。 そんな猛の視線の先、そっぽを向いた優希の仏頂面――その下には皆でラーメンを食べる場も楽しいと思う本音があったとか。 そして優希はラーメン一種でギブしたとか。 狄龍は食べ終わった容器を捨てに。 その最中、見かけたフォーチュナに声をかけた。 「あ、名古屋さんチッス! 肩のアレ、脂で汚れてたら拭――」 フリーズ。 視線の先はカオスしかなかった。 ●758と!怒涛編 「実はルカあんまりたべたことないのよね。食べようとしたらねーちょんにぱーんってされるの」 メルクリィの横にちょこんと座ったルカルカ、その前にはお湯を注ぎ終わったラーメン。 「テバサキ、はやく。はやく。まつの? もうたべていい?」 「ルカルカ様、タイマーを御覧なさい? まだ15秒しか経ってませんよね?」 「ラーメンラーメンラーメンラーメン。最速の羊にさんぷんもまたせるなんてひどいのよ」 「修行だと思えば……アイタタタ腕引っ張らないのっ!」 角を掴んで引っ剥がされた。なら肩の輪状アンテナをぎりぎり。 「まだなのまだなの早くするの」 「イテテテテまだですってば……真空管をもぐもぐしないっ」 また角を掴んで引っ剥がされた。機械男はフリーダムな羊に溜息を吐くや、もう二分でいっかと蓋を開ける。そもそも何で私が作ってるんだ。 「あーん」 なんて食べさせるよう要求するルカルカの口へ、 「熱いのでガッといっちゃ駄目ですぞ」 ふぅと軽く冷ましてから――を待たずにルカルカはガッと。「あつっ」と。 「あついのー、てばさきがルカいじめた」 「言わんこっちゃない……ちゃんと冷ましたげますから待って下さい」 そもそも何で私が食べさせてるんだ。 「でもね美味しかったわ」 スープを飲み干した満足気な顔に、まぁいっかなんてメルクリィが微笑んだ矢先。 「全種類食べるの。もぐもぐするの」 つまり次を作れと。ハァ。新しいのにお湯を注ぎ待っている間、自分の傍にあったラーメンを食べ進め――そう言えばコレいつ作ったけ?さっきもあったような。 (よし間に合った、さぁ食べるがいいですよ!) 訝しむメルクリィの傍、エーデルワイスは椀子傍よろしく彼の傍に出来たてラーメンを量産中。 (メルクリィが一杯食べるのに約189秒! ……!? メルクリィのペースが落ちた! 推定286秒) このままでは……! 「味を変えてペースアップです」 取り敢えず近くにあった変な液体をラーメンへドボボっと。 期待の眼差し。機械男が一口。 「グフッ」 ドサリ。 「どうしたですかメルクリィ! 口から泡をはいて……誰か! 衛生兵ー!?」 「呼んだか」 やって来たのはホーリーメイガス俊介、ラーメンを食べつつ机に突っ伏したメルクリィへ一直線、ここぞとばかりにメカボディを触る触る。 「よ! 戦闘用フォーチュナ! 遊ぼ遊んで遊べ」 「ちょ、待……盛られた ってか誰が戦闘用ですか」 「どーなってん? すげーな、固そうな」 「そんな触ると触り返しますぞ」 「これ肩の光るん?」 「それは電球ではなく真空管なので光りませんぞ」 「これ回るんだっけ? 回して!」 「肩アンテナですか、勿論」 「おお! すげーな!! かっこいい」 「ドーモ、ですぞ」 マジで天使の息とかして欲しい、と青褪めた顔で俊介の頭を撫で撫で。彼は無邪気な笑顔でこういった。 「そういや、割ると痛いんだっけ?」 「は?」 「割ってみる!」 「ちょ」 パリーン。 「グフッ」 ドサリ。 「こんな事されたの二回目……グフッ」 血の海に沈んだメルクリィに俊介は愕然、ガッツリは機械男の傍にしゃがみ込み、自前のタイマーを無事な方の肩へ。 「なごやんの肩にタイマーがくっつくか実験もしてみたいお……くっつかないお。あ、3分経ったからラーメン食べるお」 そのまま蓋を開け、テレキネスで中身を浮かせてズズズッ。 「一回やってみたかったんだおー」 幸せそうに食べながら――新しいラーメン制作。 「ところでラーメン食べてるとソフトクリームを食べたくなるのはあちきだけかお? 外食でラーメン食べると絶対ソフトをデザートで食べるんだお。これ常識だお」 2、3杯食べてから食べるおとソフトクリームぎっしりクーラーボックスを傍らに、機械男を余所に、フリーダム。 俊介はグッタリ名古屋へ慌てて天使の息を施そうとしたが、彼を押しのけ『うっかり八郎』参上! 「俺は優しいからな、他の参加者にも胃薬を提供するさ。有 料 で な !」 ばぁーん。剥き出しのチンピラ根性。 「くくくく、さあ胃薬が欲しくば俺様に金を払――」 「あ、下さい」 フリーズした八郎の視線の先。グロッキーな機械男が無骨で巨大な機械ハンドを伸ばしてきて…… 「ギャー!」 逃げた。転んだ。 「えーと、ごめん! 遊んでくれてありがと!」 その間に俊介は天使の息でメルクリィの回復を、そのままそそくさっと向こうの方へ。 ●758と!まったり編 「また足を運ばせて貰った、誘い合わせに感謝する」 隣に腰を下ろしたメルクリィへ源一郎は声をかける。いえいえ、と機械男は彼とその横の瀬恋へ笑いかける。 「名古屋のニーサンと古賀のニーサンが一緒なのは割りといつもの事だけど今日は流石にヒトが多いね」 「賑やかなものだ、本腰を入れて挑む者在れば競う様に挑む者在り。 食べ尽くす必要はあれど、肩の力を抜くには丁度良い一幕となろう」 なんて談笑しつつ、タダメシ万歳と瀬恋は塩味を手に。 「古賀のニーサンはどれ食べるよ?」 「我は豚骨味を所望する」 「了解。いつも茶を出して貰ってるしまぁ、湯ぐらいは注ぐよ」 「済まぬな坂本。では言葉に甘えよう」 頷く源一郎の傍には持参の紅生姜。瀬恋とメルクリィにも分け、三人で手を合わせ頂きます。 「名古屋のニーサンって普通のメシ食うんだね。温めた重油とか飲むのかと思ってたよ。顔怖いし」 「飲みませんよ食用油で限界ですぞ!」 「確かに違和感は余り無い」 「油で火ィ吹きますぞ」 「然し共に食を取れるのは幸い也、この様な時間を楽しめるのだから」 「……、そですな」 薄笑み、視線の先のリベリスタ。 「然し食していると他の味が気になってくる。良ければ一口交換と行かぬか」 「一口交換? ん、構わないよ。ほれ」 平和な様子をほのぼの眺め、ふと感じた気配に反対側を向けばクリスの姿が。 一緒に依頼に行く、言わば戦闘メンバーの皆との交流は多いがフォーチュナとの交流は少ない。 (戦場や方法は違えど、彼らも一緒に戦ってくれる仲間だと言うのに) そんな思いを胸にクリスは彼の傍に座る。こんにちはという言葉を同じ言葉で返しながら。 「私達が戦闘で勝利できるのはフォーチュナのおかげだ。ありがとう」 「いえいえ、お互い様ですよ。視えた運命が変えられるのも皆々様のお陰ですぞ、ありがとうございます」 「名古屋、これからもよろしく頼むぞ」 「喜んで、クリス様」 その一方。 「……たくさん食べらたら身長も伸びるかもしれないし、頑張ろう」 お湯を注いだ塩ラーメンを見詰め、レンは呟く。待つだけなのか、簡単だ。 「男は黙ってとんこつだ!! 角煮うめぇ!」 傍のジースはもぐもぐと。その横では姉のルア。 「ほわ~♪ 私は醤油らーめんね!」 楽しげにはしゃぎ、ふと横のとらを見てみると、味噌ラーメン……の蓋からはみ出している大量のワカメ。お湯を入れる前に鷲掴んでドンと入れたモノ。 「ひゃー!? と、とらちゃん!? わ、わかめがみっちりっていうか、はみ出てる!? モゾモゾ増えてる!?」 「ぎゃー! 何だそのわかめ! お前バカだろ蓋閉まってねぇよ! ほんと自重しねぇな! コイツ!」 姉弟揃ってツッコミ。 しかしとらはドヤ顔で蓋をオープン。フッフーン♪漂う磯の香り。 「細けぇことはいいんだよっ☆ これぞ、食物繊維やミネラルを摂りながら飲むスープの量を極限まで減らす画期的アイディアなんだから!」 こぼすリスクも最小限に出来るよ☆なんて、さぁ完成したらフォーチュナの元へ。 名前を呼んで、ルアととらは振り返った彼の膝の上を占領。 「ルア様、とら様! ハローモルゲンですぞー♪」 きゃっきゃとじゃれつく二人の少女を長い機械腕でぎゅーっと抱き締め。 「レンは俺の膝!」 「お、俺はメルクリィの隣りでいい! うわ、ジース! 何するんだ! 隣りでいいってば!」 ジースは嫌がるレンを抱え込んで着席。 「えっ!? 俺の嫁!?」 「ちげーよルア」 「膝と嫁って似てるよねっ!」 「何処が!?」 抜け出そうとするレンへとらとルアは笑いかける。 「レンちゃんも来る?」 「レン君も一緒においでよ~」 「フム、ちょっと定員オーバーですなフフフ」 レンは沈黙。しかも抜けられそうにない。まぁ、どこでも同じか。 「えへへ~、とらちゃんがお婿さんかぁ」 ルアはとらのほっぺをツンツンしつつ。それからラーメンを食べっこ。 「はい♪だーりん♪」 「はい、あーん☆」 とらは巣で自己主張する雛鳥のよ如く。それを見てジースはしれっと、 「あっさりしてるけど意外といけ んむぐっっ」 塩ラーメンを食べていたレンの口の中へラーメン。 「レン君もあーん!」 「あーん☆」 ルアもとらも推参。 「な、なんだ!? 誰だ……さ、三人とも!? 口の中がいっぱいだっやめろ! お、俺はゆっくり、ラーメンを、た、たのしみたいだけ、なのに」 グフッ。 満腹KOなレンに合掌。そんなこんなのラーメンタイム。 「メルクリィさんも、あーん♪」 「はい、メリクリーさん、あーん☆」 「はいー♪」 燃費のクソ悪い身体で良かった、と思うメルクリィなのであった。 ジースは平和な様子を眺める。そこへスイッと差し出されるのはラーメン、その奥に姉の笑顔。 「ジース、あーん」 「お腹、いっぱいになったんだな?」 「 」 答えなかったが、彼女の分までジースは完食。 体重増加の効果が発動! 愛されバディに近づいた気がするぜ! ●ロットバトル! 「皆の衆、最早言葉は要らぬ――限界まで、喰らえ。そして競い合うがいいのじゃ! 自己の記録を追い求めるもよし、近くの者達と競争するもよし。戦い方は無限大なのじゃ!」 審判員レイラインの言葉に盛り上がる一同。 「まさかこの、三高平の地で……それもアーク本部でロットバトルをやることになるとは思わなかったぜ。 坊主になったオレにも、まだバトルをしたいという想いが残っているとは、な。 ――いや、「あの頃」はバトルではなく、デュエル、と言っていたか」 そこまで呟き、フツは「おっといけねえ」と苦笑する。 (バトルの前に感傷に浸るとは、オレのロット力も錆びついたかな) だが丁寧に錆を落としていく時間はない。 ここはもう、戦場。 数多のロッターが集う『どんぶり』と言う名の戦場。 カンは実戦の中で取り戻していくしかない。 「来いよ……オレを喰らうつもりで来い。オレもそのつもりだ。フェイトを使う準備はできてる……!」 静かに燃える僧侶の傍ら、疾風はループ用にと大量のカップ麺を置き並べてゆく。 「スーツアクターの仕事の後だから、結構お腹空いてるんだよね。全味制覇してみるか」 一般人が覚醒すると厄介、それは食い止めねば……お腹も空いたし。 「ココかい? 戦いの現場は……」 不敵な笑みを浮かべ、火車参上。返される好戦的な瞳に口角を吊り上げた。 「ははあ、なるほどアンタ等も……か。 じゃあ始めるか、ロットバトルを――かかって来い豚野郎共!」 それは早技!誰もが蓋をしている1分30秒! 自前で『大次郎』と書かれたドデカどんぶりへ醤油味豚骨味をだばぁっ!更に煮ただけ野菜とニンニクを乗せて、勝負ッ! 「はっはっは! 先手必勝! カップ麺は麺がほぐれてからすぐだろうがぁ!!」 馬鹿な、コイツなんて荒業を――!凄まじい先手攻撃に驚愕する一同。 だが、猛者は居た。 「ファーストロッターは……俺のものだ!」 真っ先に粉末等を入れて豚骨味をかっこむ竜一。 ひたすらに目の前のブツをかっこもう。食えるだけ食うのみ。 残すのはギルティだ! 「始めようか。僕達の聖戦(ジハード)を」 悠里の前には豚骨と醤油を混ぜたモノ、に野菜と摩り下ろしニンニク盛り沢山。とんでもない事になっている。だがそれがいい。作ったラーメンをひたすらかっ込む。 (濃! 味濃! なんか油がギトギトしてるし野菜盛り過ぎてるし!) だがそれがいい。 「喰って喰って――喰らい尽くして進ぜるのである」 いざ尋常に\ラーメン/、恵の瞳がキラリと光る。 「コケコ! 地元で『早食いの恵ちゃん』と呼ばれた私の実力に、恐怖するが良いのである!」 がちん。 「こ、コケ!? 嘴の所為で上手くラーメンが啜れないのであるー!?」 これはまずい!嘴の所為でモタモタしてたら周りにドンドン差を付けられてしまう。 「このままではマズイのである!かくなる上は――起死回生、秘技・カップラーメン一気飲みなのである!」 んゴフッ。 ラーメンの熱さ、一気飲みした苦しさ――恵の鼻から麺、悶絶――リタイア。 「一年、いや一生分のラーメンを食べる勢いで行きます!」 亘はひたすら醤油味をかっこむ。キングオブ醤油ラーメンの称号を目指して。先ずは醤油次に醤油全部醤油、しょうがないよね好きなんだから。 三分待たずに二分で。スープを楽しみ一気に麺を!ラーメンはやはりワイルドに食べないと。 キツくなったら最終兵器ブラックペッパー――醤油の甘さと胡椒の辛さがマッチして絶妙な美味しさに! (これであと五カップはいけますよ) 一方モヨタは『味噌ラーメンコーン増し増しバター多め』で勝負をかけていた。やっぱ味噌にはこの組み合わせ。 「育ち盛りの子供の食欲なめんなよ! 大食い、早食いならお手のもんだ! スープの一滴まで飲み干して、限界まで食らってやる!」 天辺のコーンをスープとかっこみ、あとはひたすら麺で具を掬いつつまとめてがっつく!飽きてきたら別の味にもチャレンジ! しかし。 (う、食べ過ぎて鼻から麺出そう……こんなんクラスの奴に見られたら変なあだ名つけられちまう!) 耐えろ、耐えて喰い続けるんだ……! 「おっと、レイラインの姉ちゃんは一緒に食わないのか」 どんなものでも食べるとディートリッヒの傍には大量のラーメン。視線の先にはレイライン。 「ふっふっふ、無論、わらわも食べまくるぞよ!」 ならば、と獣達の目にギラリと光が宿る。 「食うぜ、食うぜ。食って食って食いまくるぜ!」 「上等じゃ! 捻り潰してくれようぞー!」 正々堂々大激戦。これも一つの戦いだ。 ディートリッヒはリミットオフ、レイラインはトップスピードを発動して。 あぁ、ラーメンの良い匂いがッ! 「運動後のラーメンは止められないんですよね」 未來は豚骨、味噌のローテーションで攻める。カロリーなんて内燃機関で全部燃やし尽くしてしまえ。 「これも戦いなれば、天なる神々よ御照覧在れ!」 ガリガリガリ。出たァーッエナーシア式(又はマリー式、ころな式)! 「ん、結構美味しいですよコレ。お八つ感覚で新食感かもしれません!」 盛り上がるバトル。熱い戦い。 「大丈夫かな? 無理はなさらぬように。美味しく食べるのが一番だものな」 雷音は皆へ水を持って行き、早食い大食いが苦手なユーヌは隅の方で慎ましく冷えて伸びきったラーメンを食べている。参加した理由:必死な食べっぷりを眺めたいだけ。 「そもそもロットバトルって何だ? あと、伸びきったラーメンもこれはこれで味わいがあると思うんだがな」 サテと一息、やる気のある人用にお湯を注いで回ったりお代わりの準備をしたり。厚切りチャーシューやもやしもガッツリ追加。 勿論恋人の竜一にもガッツリガッツリ。 「この豚野郎どもめ。多めの方が良いと思ったが、まだ足りないのか。人間の食い物とは思えないな? こんなものを喜ぶとは、豚の方がまだお行儀が良いな」 「あ、竜一くん、ユーヌちゃんが応援してるよ」 色々とアレな竜一の気が緩んだ瞬間、悠里は今だと彼の器に麺を移し。流石にあの量はキツかった。 ユーヌと竜一の目が合う。がんばれー。無表情ユーヌさん。チャーシューモヤシをガッツリ追加する手は止めず。止めず。 ――禁断の技の封印を解くしかない。 竜一は包帯に封印したソレを握り締める。 両手に箸を。積み上げられたヤサイと豚と麺の下へ。 刹那、自らの麺を掬い上げ!颯爽とレイラインの器へ! 「秘儀『ツバメ返し』――数多くのロットバトルを俺ははこれで乗り切ってきた。 一言だけ言うと、『勝負す「がんばれー」を選べ』」 ユーヌさんマジぱねぇっす。 「自分の麺をわらわの器に入れるなどと言う姑息な手段はわらわの胃袋で断ち切ってくれるわ!」 一方のレイラインは増えた麺を豪快に啜り。麺が減ってヤッターな悠里、を、狙う壱也の眼光。 ラーメンが食べれると聞いて! はいはーい!わたしとんこつ醤油がいいでーす!!え?ない?ラーメンといえばとんこつ醤油、こってりのとんこつがあっさりの醤油をさらにおいしくしてくれる魔法のスープ!!とんこつ醤油がなければ作ればいいじゃない!!豪快?ラーメンなんて豪快でもおいしいものなの!……なんてはしゃげてた時期が私にもありました。 大きな容器には大量の麺。 そして見たのは悠里の戦法。 これだ――これしかない。 「ええいっ!」 悠里の器へとびっきりのドーン。 「ふぅ、これで勝つる!!」 壱也→悠里→竜一→レイラインルートのでっきあがり。 戦いは後半戦に差し掛かっていた。 「……っ!? 烏龍! 烏龍茶はねえのか!!?」 油にやられた火車の速度が落ちる。 (くそっなんて事だ! 水を飲むと体積がますます……しかしこのままでは口の中が重圧でうぐぉぉ……) しかし吐き出す直前で何とか完食。でも暴満感によりしばらく動けないだろう。 未來も部屋の隅へ筋トレ、消化促進。 「にしても凄まじい量だなぁ。一人で食べろって言われたら……うう」 皆がいて良かった。 そして、戦いを余所に。 「うむ、飽きたのじゃ。もう喰えぬ!」 瑠琵の身体では豚骨と醤油でお腹一杯。 「私も」 偶には食べるけれどこの大きさだと一つしか。氷璃も箸を置いた。 さて、後は皆に任せるとしよう。 二人の前には大量のカップラーメンの空の器。 「今こそ超直観とハイバランサーを駆使する時! バベルの塔も真っ青なタワーを作り上げるのじゃ!」 「どんなゴミでも活用すればリサイクルよ。まぁ、最終的には捨てるけれど。だって、ゴミだし」 なんて、器を積み上げ積み上げ積み上げ三高平タワー。 まだまだ積むよ! 「むむ、そろそろ崩れそうじゃのぅ」 瑠琵がそう言った矢先。グラリ、傾く三高平タワー。 「くーずれーるぞー♪」 瑠琵は暢気に警告する――勿論、逃げられぬタイミングで。 そしてロットバトルに夢中だった(しかも後半戦でグロッキーだった)彼らがそれに気付けただろうか? 答えは、否。ドンガラガッシャン。 「高く高く積み上げられた塔は崩れて倒れる運命……」 氷璃のアンニュイな溜息。その先ではカップの海から起き上がったレイライン。 「そ、そこ! 罪(ギルティ)じゃ、罪なのじゃーー!!」 「何人か巻き込まれるのも、多分きっと運命なのよ」 「にゃぎゃーー!」 ●ごちそうさまでした あんなに沢山あったラーメンだったが、見渡す限り空の容器。 冥真はシメに雑炊で、他の者もラストスパートを駆け抜ける。 「ふう。暫くカップラーメンはいいや」 疾風は用意した胃薬を飲みつつ苦笑い――とうとう彼等は食べ切ったのだ。 「これで食べ物の覚醒が終わるとは思えない。第二第三の……」 何となく食べ物覚醒シリーズのフラグも忘れずに。 「次はアレかね。クリスマスっぽく七面鳥とか覚醒したりすんのかね? ふぉあぐらとかも喰った事ないから喰ってみたいけど」 ま、タダで喰えりゃ概ね何でもいいけどね、僕は。りりすは食後の一服、紫煙を吐いて。守夜はせっせと後片付けを行ってゆく。 「いんすたんとってやつも悪くは無いねぇ。だけどもやっぱり、もうひと味だねぇ」 ごちそうさまでした。からから笑い、富子は手を合わせる。 夏明もアキツヅも手を合わせる。 「……ごちそうさまでした、これで明日までは持ちそうです」 「ご馳走様でした!」 ヤレヤレ、ミュゼーヌは少し疲れた様子だ。因みに少食故に2杯でギブアップ。 「確かに美味しかったけど……ちょっと、体重が気になりそうだわ……」 満腹なお腹を擦り。一方の彩花はケロリと。 「あら? 食べ過ぎて体重は平気か、ですって? 大丈夫大丈夫。わたくしは消化器官も機械化しているのでエネルギーに変換されますし、そのエネルギーも余剰分は体外に放出されるようになっていますので。 余分な脂肪が身体に溜まる事はありませんわ」 「良いわね、太らない体質とか……うぅ」 しばらくヘルシーな食生活を送ろう。 エナーシアは容器を捨てつつホッと溜息。 (……何とかなったのです。凄い猫舌ですのでここで普通に食べて舌を火傷なんてしたら末代までの恥でしたのです) ><。 良かったねエナーシアさん。 後片付けは着々と、皆でやれば早いものだ……一部、グロッキーで動けなかったり満腹で寝てたりする者もいるが。 「うまかった……THE☆Big首領、いつか、またな」 別れの言葉と共に容器をゴミ箱へ。仁義の赫を靡かせ振り返る――『スープこぼしァがってダァホが!』と聞こえた気がしたが気にしない気にしない。 快と夏栖斗、戦友達に声をかける。 「腹ごなしだ。うめえ塩の屋台があるんだ、付き合えよ、カイ、カズ」 勿論、頷く彼ら。塩道の道は果てしない―― 「サテ」 メルクリィは一同を見渡した。最後はやっぱり、皆で手を合わせ。 「ごちそうさまでした!!」 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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