下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






<ハロウィン2011>゜*:。+゜;.期待☆接待☆大喝采.;゜+。:*゜

●テレフォン新世界1

 RRRRR……

 ガチャ。

「ハイもしもし! こちら伍長であります!!」
『オヤ伍長サンこんにちは。私は公爵デス。大佐サンに代わって頂いてモ?』
「ハッ! 了解であります! ……父ちゃ~ん! コウシャクさんから!」
「ん、分かった。 ――はい、代わりました大佐であります」
『もしもしコンニチハ大佐サン』
「…………。 どちら様……でしょうか……?」
『キミ達のチャンネルからは随分と上にあるチャンネルの公爵デス。いやぁ実はネ、キミと娘サンをボトムチャンネルに――『異世界』に連れて行ってあげようと思ってデスネ』
「!!? は、はい!?」
『今度ネ、ボトムチャンネルに行ってハロウィンパーティなるモノをしようと思っテ。だから大佐サン、お菓子と仮装の準備をヨロシコ。あ、モチロン伍長サンもですヨ?』
「え、えぇえ!? ちょっと色々質問がッ……」
『詳細は後で送りマ~ス』

 ピッ!
  プーッ、プーッ……

「………………。」
「父ちゃーんどうした?」
「……父ちゃんカオスを垣間見たよ……」
 それは戦争のチャンネルにて。大佐は伍長の頭にポンと手を置いて項垂れた。

●テレフォン新世界2
 それは帰り道。
 日が沈むのが早くなったなァ、夜は冷え込むなァ、あの依頼成功して良かったなァ……なんて、そのフォーチュナは平和に思いながら三高平の道をゆっくり歩く。星々が煌めく三高平の夜空、澄んだ空気を肺に満たし。

 かくして、そんな時である。
 彼の携帯電話が鳴ったのは。

「……… え?」
 携帯を見て、フォーチュナは思わず目を見張った。 

 ――文字化けしてる……!?

 画面に表示されているのは奇妙な、モザイクの様な文字の列。まさか壊れたのだろうか?いや、ついさっきまで普通に使えていた。そんなに古くないし、水に着けた覚えも地面に落とした覚えも無い。
 携帯電話は鳴り続ける。まるで彼を急かす様に。
「……。」
 意を決して恐る恐る通話ボタンを押した。耳に添えた。
「――もしもし?」
 呼びかけてみる。

『もしもし?』

 答えた。陽気な声。
『君は第@∴*ボトムチャンネルのフォウテュニャ~……、えっと、フォーチュナ? だネ?』
「……!? えっと、あの、確かに私はフォーチュナですが、どちら様でしょうか?」
『お菓子の世界、というチャンネルの公爵デス。キミ、私を視た事があるだろウ? あの後、第γζコードに交渉して調べたのデスヨー。キミ達の事とかをネ。
 あ、ついでに今は$5*端子でキミに別チャンネルからιΩを媒体に干渉しているのだヨ』
「!? !!? えっと、えっと、エェ!!? なんか色々アレですけど貴方まさか、あの……お菓子の公爵様!?」
『ピンポンぽーん』
「わぁあ!? ちょっ、私どんなリアクションをすれば……!?」
『まぁテンパらないで聴いておくれヨ。キミ達、もうすぐハロウィンパーティなるものがあるんだろウ? 調べたのデス。
 それでだネ、キミ達のチャンネルでまたパーティしようと思っテ』
「マジですか!」
『マジデスヨ! あ、それでデスネ? ついでにキミ達のチャンネルに来た事があるアザーバイドも連れてったろって思ってるんデスヨ。何ていったかネ。大佐と伍長だったかネ。まぁそんな感じデス。
 そうそう、ロストコードやカタストロフについては心配しなくっていいデスヨ。そんな短時間じゃ何もないデス。大丈夫デス。
 ……あー、えっと、ちょっと後ろに並んでる方が早く代わって欲しそにしてますんでそろそろ切りマスネ。場所とかの詳細は後でγ@∴で送りマース♪』
「ちょっ! ちょっと待って下さい公爵様! γ@∴って何――」

 ピッ!
  プーッ、プーッ……

「………………。」
 フォーチュナは呆然と携帯電話を眺め続けた。

●トリックオアトリートですぞ
「……カオスを垣間見ましたぞ……」
 事務椅子に座り込んだ『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が苦笑を浮かべて体験した出来事を締め括った。
「そんな訳でして、皆々様にはアザーバイド『オカシな公爵』『大佐』『伍長』様方とハロウィンパーティをして頂きますぞ。なぁに気張らなくっても大丈夫、皆様良い方ばかりです。彼らの詳細についてはそこに過去報告書のコピーを用意しといたんで、宜しかったらお眼通しを」
 と、メルクリィが目を遣る卓上には報告書のコピーが積まれている。暇があったら目を通すとしよう、フォーチュナへ視線を戻すと彼は常の薄笑みを浮かべて説明を続けた。
「皆々様がすべき事は超絶にシンプル。『仮装する事』『お菓子を食べる事』……以上です。皆々様が楽しんで頂くとアザーバイドの方々もお喜びになるでしょうな。
 お菓子ですが、それぞれ持って来て下さるそうですぞ。こっちも何かしら持っていくと楽しいでしょうな。皆々様のセンスに期待しておりますぞ!
 それと仮装もお忘れなく。折角のパーティなんですから、恥ずかしがっていては損ですぞ? 踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々……ってどっかの偉い人も言ってましたし。フフ。
 サテ次に場所についてですが、後で公爵からファックスで送られてきた情報によると――」
 言いながらメルクリィが機械の指でモニターを手早く操作する。映し出されたのは穏やかな丘――麗らかな草原は寝転ぶと気持ち良さそうだ。
 ていうか、件の『γ@∴』ってファックスの事だったのかよ……というリベリスタの突っ込みを余所に。
「三高平市郊外の丘です。場所作りや飾り付けなどは既に公爵がやって下さるそうですぞ、楽しみですな。
 時間帯は夜ですが、ジャックランタンとかいっぱいあるんで大丈夫だって公爵が仰ってましたぞ。星や月も出てますし。
 そうそう、『アザーバイドはフォールダウンはしませんが、崩界へ加担する為、排除するか元の世界に戻す事が必要になります』って良く言われてますが、アザーバイド様方がおられる間の崩界加担については問題無いですぞ。そんな短時間じゃ世界に悪影響を与える事はありませんので。
 それとバグホール等についてですけど、公爵が『異世界を渡る能力』を持っておられるのでブレイクゲート等は不必要ですぞ、ご安心あれ。もうアザーバイドがチートすぎて絶句せざるを得んですな! ハッハッハ」
 サテ。一頻り笑った所でメルクリィが事務椅子から徐に立ち上がった。
「説明は以上です。ハロウィンパーティ、思いっ切り楽しみましょうね!
 ――あ、ついでに私も行きますからね! フフフフフフハーーッハッハッハッハァ!!!」
 機械の両手を広げて哄笑するその様はなんだかフォーチュナと思えなかった……すごく三下の小悪党っぽかったが、黙っておくとしよう。
 さて、楽しいパーティとシャレこもうじゃないか。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ガンマ  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年11月07日(月)22:53
●目標
 楽しいハロウィンパーティとシャレこもう!

●登場
アザーバイド『オカシな公爵』
 圧倒的上位チャンネル『お菓子の世界』からやって来たアザーバイド。おえらいさん。
 色々チート。
 争いや死という概念が無いドドド平和な世界の住人。大らかで温厚、異文化に興味津々!
 指パッチンでお菓子を作り出す事が出来る。死ぬほど美味しい。でも見た目がグロイ(例:なにやらモコモコムニムニとしたショッキングピンクの球体、ポコポコと気泡が立つドドメ色のクリームらしき物体が乗ったメタリックな銀色の板、鮮やかなブルーのテカテカヌルヌルした立方体にハラワタの様なぐちゃっとしたモノがかかっているブツ など)
 言葉は通じる
 仮装しなくってもボトムチャンネルでは地の格好が仮装状態だ って事で仮装してませんが服装がハロウィン使用です(黒+橙系の服)

アザーバイド『大佐』
 黒軍、白軍という二つの勢力に分かれて戦争をし続けている世界の軍人(黒軍)。おえらいさん。
 全身兵器。神秘的事象にはあんまり詳しくない
 正義を愛する熱血漢の愛国者。真っ直ぐな気性をした優しい良い人。
 『オカシな公爵』に強制的に連れてこられた。
 娘ラブ。娘に手を出す不埒な輩には容赦無くロケット断罪パンチ
 言葉は普通に通じる
 黒軍が開発した携帯食料を持ってきてくれるらしい。(見た目は悪いしオイル臭いしクソマズイ)
 仮装……ってカモフラージュの事?とステルス装置と消音装置を装備して来ちゃったそうです

アザーバイド『伍長』
 黒軍、白軍という二つの勢力に分かれて戦争をし続けている世界の軍人(黒軍)。大佐の愛娘。
 全身兵器。神秘的事象にはあんまり詳しくない
 曲がった事は大嫌い、正義を愛する熱血家の愛国者。でも年齢相応。
 『オカシな公爵』に強制的に連れてこられた。
 父ちゃん大好き。
 言葉は普通に通じる
 自チャンネルのお菓子を持ってきてくれるらしい。(見た目は悪いしオイル臭いしクソマズイ)
 仮装が良く分からないのでお気に入りのキャスケットを被り、お気に入りの香水を振ってオシャレして来たそうです。両方とあるリベリスタから貰ったそうな。服装は軍服(スカートタイプ)

メカフォーチュナ『名古屋・T・メルクリィ』
 毎度おなじみメカフォーチュナですぞ。
 隅っこの方でのんびりお菓子食べてます。
 カッとなって液体プロテインを持って来ちゃったそうです。(チョコ味、バニラ味)
 勿論言葉は通じますぞ!
 吸血鬼とミイラ男コスを魔法使い風で割った様な仮装をしてます。頭には先日とあるリベリスタから貰った武者兜

●場所
 三高平市郊外の丘の上。公爵が作り出した大きなテーブルと大量の椅子がある(お菓子なので食べれます)
 周りはふかふか原っぱ
 時間帯は夜。満点の星空で三日月。周りにいっぱいジャックランタンや蝋燭があるので明るいです(ちなみにこれもお菓子なので食べれます。が、火傷注意)

●その他
 公爵が『異世界を渡る能力』を持つのでバグホールなどについては問題なし
 アザーバイドらがボトムチャンネルにいる間の崩界加担については問題なし(滞在時間が短い為)
 アザーバイド達、というか公爵が満足したら大佐達を引き連れて帰ります。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。

●注意など
 このイベントシナリオに参加したキャラクターがハロウィン専用SD商品を所有している場合、挿絵として挿入される可能性があります。
 著作権に触れる様なお菓子の名前は描写できません。
 著作権に触れる様な仮装、コスプレ名については描写できません。
 グループで何かしらをやる場合は全員がグループ名を【】で括って下さい
 誰かと一緒に参加される方は、お相手様のフルネームをお互いのプレイングに記載して下さい
 未成年の飲酒喫煙など、公的秩序に反する様な行為や他の参加者様の迷惑になる行為は描写しません
 他の人との絡みOKの場合は【絡みOK】と記載して下さい
 このイベシナにはNPC名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が参加します。絡みはご自由に!

●STより
 こんにちはガンマです
 初イベシナです。ハロウィン異文化パーティです。
 アザーバイド達については、当方作
  『タイサ・エクス・マキーナ』
  『オカシな公爵とオカシなパーティ』
  『ゴチョウ・エクス・マキーナ』
 をご覧いただくとより分かるかと思います。
 思う存分楽しく可笑しくはっちゃけちゃって下さい。なんせパーティなのですから!
 宜しくお願い致します。
参加NPC
 


■メイン参加者 0人■
■サポート参加者 38人■
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
スターサジタリー
エナーシア・ガトリング(BNE000422)
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
石川 ブリリアント(BNE000479)
ソードミラージュ
天月・光(BNE000490)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
デュランダル
鯨塚 モヨタ(BNE000872)
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
ナイトクリーク
五十嵐 真独楽(BNE000967)
ソードミラージュ
紅涙・りりす(BNE001018)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)

星観坂 雅(BNE001276)
覇界闘士
花屋敷 留吉(BNE001325)
インヤンマスター
龍泉寺 式鬼(BNE001364)
ソードミラージュ
ルア・ホワイト(BNE001372)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
覇界闘士
衛守 凪沙(BNE001545)
マグメイガス
土器 朋彦(BNE002029)
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
覇界闘士
後鳥羽 咲逢子(BNE002453)
ソードミラージュ
ルカルカ・アンダーテイカー(BNE002495)
クロスイージス
ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)
デュランダル
ディートリッヒ・ファーレンハイト(BNE002610)
プロアデプト
柚木 キリエ(BNE002649)
クリミナルスタア
古賀・源一郎(BNE002735)
クリミナルスタア
関 狄龍(BNE002760)
クリミナルスタア
幸村・真歩路(BNE002821)
クリミナルスタア
桐生 武臣(BNE002824)
クリミナルスタア
烏頭森・ハガル・エーデルワイス(BNE002939)
ホーリーメイガス
天船 ルカ(BNE002998)
クリミナルスタア
ミーシャ・レガート・ワイズマン(BNE002999)

津布理 瞑(BNE003104)
インヤンマスター
マリス・S・キュアローブ(BNE003129)

アルジェント・スパーダ(BNE003142)


 奇々怪々、三日月の夜、年に一度の不思議な一日、可笑しな宴。

「皆サン! 良く来てくれたネ――ハッピーハロウィン!」

 笑顔で迎えてくれたのはお菓子の世界のアザーバイド。その周囲にはキラキラ煌めくパーティ会場がリベリスタ達を待っていた。早くおいでとニコニコ笑う、可笑しなお菓子のパーティ。
 さぁ皆で声を合わせよう。

「Trick or Treat!」

 公爵の指が鳴る。大量のお菓子が現れる。
 今日はハロウィン。
 楽しいパーティを始めよう。


 ジャックランタンに照らされるのは様々な仮装、ハロウィンの華。
「がおがお、地獄の番犬ケルベロス参上よ!
 みっつのお口で死ぬ程美味しいお菓子をたーくさん堪能、って兄弟! 寝てる場合じゃないのよ!」
 真歩路は肩のわんこを揺さぶって一人コント。
「雪兎だぞ!」
「シーサーです。寒暖コンビですよ?」
 光はミニスカ風の小袖で雪女風、桐はシーサーコスプレで決めっ。
「いよーし、たくさん食いまくるぞー!」
 兎耳モヨタは嬉々と席に着く。
 他の仲間達も次々と席に着き、公爵が作り出したお菓子へ目を遣った。
 そして、表情がフリーズ。

 グロイ。

 鮮やかな蛍光色。何か蠢いているブツ。不気味な光沢、現代アートも真っ青な造形。

 ……グロイ。

「う゛っ……お、おかしいわね。いつかの偏食家が喜びそうなモノが見え、え、これお菓子? え?」
 菓子を前、真歩路の表情は笑顔のまま冷や汗が流れ、
「え゛ こ、これ食べれ、……?」
 いつもの改造巫女服に龍のコスプレである御龍も狼狽を隠しきれない。
 と、彼女らの間に死人メイド仮装のエナーシアが何処からともなくニョキッと顔を出した。
「エナーシアでございます。私にお任せ下さいませ」
 自分的にこのお菓子は『とても可愛い』と思うのだが……ニッコリ手際良く、パイや牛皮や饅頭などでお菓子を包んでから視覚的にソフトになったそれを手渡してゆく。
 ソフト外見なお菓子を受け取った御龍はエナーシアの笑顔とそれを交互に見比べた。
「い、いただきまぁすぅ……」

 一口。
 途端に口内に広がるのは――楽園、天国、極楽!?

「うーまーいーぞぉーーー!」
「うー・まー・いー・よー!!」

 黒い軍服を着た凪沙も背景を爆発させるが如く、舌から神経を突きぬける美味に声を漏らす。
 上品でいて馨しい味わい。風味の重奏、思わず感嘆の息が漏れてしまう。
「死ぬほど上手い菓子……」
 ゴクリ。グロテスクなそれを手に、孫悟空仮装の狄龍は高鳴る鼓動を抑えつつ、ぱくっ。

「ぎゃーーーー!!!」

 ばたり。
 美味しすぎてひっくり返った狄龍は思った、『本場の孫悟空も死ぬぜ』と。

「これ、すごいわね……食べれるのかしら」
 木の実の妖精姿のあひるは手に持ったお菓子をしげしげと眺めながら呟く。
「でも、せっかく頂いたんだもの。全部いただく……! 留吉! いっせーので、食べましょ……!」
 お菓子の見た目に吃驚していたと猫又仮装の留吉は一瞬間を開けるも――あひるくんにカッコイイとこ見せるため!掛け声に合わせて……ぱくっ!
「にゃ?」
「あれ……?」
「おいしい!」
「んまーい……♪」
 綻ぶ表情、浮き立つ気分。お互いに分けっこをして一口、更に一口。
 なんだか不思議な気分だけれど、決して悪い気分ではない。

 笛吹き男衣装の終は公爵へと笑顔で話しかける。
「ハッピーハロウィーン♪ オカシ公爵さん、いらっしゃーい☆ 一回会ってみたかったんだ、オレは終って言います☆」
「終君かネ。覚えたヨ、ヨロシク!」
 満面笑顔で超よろしく!と答え、公爵の前に出して見せるのは栗の渋皮煮入りのパンプキンパイとタルトタタンのサワークリーム添えである。
「オカシ公爵さんのお菓子超楽しみにしてたんだ☆ 今日はオレの自信作持ってきたから、ぜひ食べて!」
 おぉ、と嬉しそうな表情を浮かべるアザーバイド。その傍ら、ルカも南瓜製の菓子を手に微笑を浮かべる。「先日は楽しい宴をありがとうございました」と礼を述べるミーシャに続く。
「トリックオアトリート。またお目にかかることができて、光栄です。ハロウィンを楽しんで頂ければ幸いです」
「あ、キミは! 久しぶりですネェ。エェ、とても楽しいデス!」
 公爵との邂逅は二度目であるルカにとって公爵製菓子を食す事には何の躊躇いも無い。身に着けた黒猫衣装の尻尾を揺らしながら不思議菓子を美味しく頂いてゆく。
「とある大魔王謹製、特大南瓜ケーキです。ニャーンと鳴くうさぎさんが食べ切れないと、少々分けて頂いたものです」
 シンプルな魔女装束のマリスはデンと特大ケーキを置き、
「自分にも絶品お菓子を貰えませんか?」
 青い羽根を活かした全身鳥人間の仮装の亘は目を輝かせる。
 終とルカの菓子を美味しそうに食べていた公爵は亘へニッコリ笑いかけた。鳴る指、亘の手の上に現れる怪奇なお菓子、そして答えるのは『お菓子の世界はどんなに夢が溢れるか』という亘の質問。
「夢が無い所なんて無い、私が言えるのはそれだけデスヨ」
 成程、と頷いた亘は躊躇いも無くお菓子を一口――項垂れた。

「ぐすん、自分は今神の味を知った」

 感動。その後に彼はハロウィン用に作った青のクッキー(青い食紅を使ったものと青汁を混ぜた物)と和菓子とをプレゼントしたのであった。

「全身兵器のアザーバイド……! 前々から気になっていたのだっ」
 ブリリアントはもう二人のアザーバイドを探していた。が、見当たらない。その全身兵器っぷりを間近で見せて貰おうと思っていたのだが。
 だが引き下がってたまるか。

「石川ブリリアント、推して参る!」

 そしてその目に映ったのは――椅子。オカシな公爵が作り出した、誰も座っていない椅子。
 これ、ちょう気になる。
 なので眺め回してから一口。美味しい!もう一口……と思ったその瞬間だった。
「おい、私の椅子を食べてくれるな」
 苦笑交じりと共にブリリアントの頭に乗せられた掌。
 彼女が見上げた先。そこには何も無い空間、からステルス装置を解除して現れた黒い軍服のアザーバイドが。
 どうやらブリリアントは大佐が座っていた椅子を齧ってしまったようだった。どうしたの、と伍長も物珍しさにジャックランタンを抱え戻ってきたが、今は一先ず観察タイム。
 と、そこへ黒軍服を身に着けた咲逢子が駆け寄って来る。軍人達の前で止まるや、敬礼を一つ。
「お久しぶりです大佐! 久しぶりだな伍長! 後鳥羽咲逢子少尉であります!」
「少尉! まさかまた会えるとは。達者な様で何よりだ」
「しょっ少尉殿! お久しぶりであります!」
 大佐は柔らかに笑いかけ、伍長は抱えた南瓜も構わずに敬礼を捧げる。お陰で南瓜は落っこちたが。
「え、えーと、私は、もう会えないと思っていたから二人にまた会えて嬉しいです!
 そして今日はハロウィンのパーティです! 良かったら私がハロウィンのパーティのことをわかりやすくご教授しましょう!」
「うむ、是非頼む。我々の世界にこういったモノは無いからな……あの不思議な恰好を見せ合い、菓子を食すのが『ハロインパーテー』なのか?」
「少尉殿! この巨大な果実は何でありますか!」
「えぇっと、取り敢えず順に説明してゆきますね!」
 苦笑交じりにノートパソコンを取り出し、電子の妖精で接続する。その間「もうお腹いっぱいかも知れんが、もし良かったら食べていってくれ!」と手作り南瓜パイを差し出して、ハロウィンについての説明をしてゆく。
「成程なぁ……世界は、広いな」
「じゃっくらんたん美味しいであります!」
 公爵の作り出したジャックランタン。美味しいランタン。その光に照らされて、凪沙ととんがり帽子魔女の岬がやって来た。
「あ~、やっと大佐見付けた~。久しぶりー」
「ヒャッハー、大佐お久ー元気だったー? ドコいるんだろ―って思ったよー」
「あぁ、君達か! あの時は世話になったな、元気そうで何よりだ」
 大佐こそ―と微笑んで、岬はジャックランタンを齧っていた伍長へと目を遣った。
「んー、黒尽くめだしキミが伍長の人かなー? 初めましてだねーヨロシクー」
 その最中、大きな声が聞こえてくる。

「大佐ー! お久しぶりでーす! ってどこに居るんですかぁー!?」

 黒軍服のツァインがあちらこちらを見渡し大佐を探していたのだった。割と近くで。
「見つけるので一苦労だよッ ……って大佐! そこにいらしたのですか!」
「ははっ、君も来ていたのか」
「黒スジハードの方でありますか!?」
「黒……あぁ、伍長殿、お噂はかねがね、大佐がこちらにいらした時にご一緒したツァインといいます!」
「伍長であります!」
 敬礼をしながらの挨拶、ツァインも同じく敬礼でそれに応えた。
 と、伍長の視線が机の方へ、飲み物の方へ。咽が乾いたのだろうか。
「あ、飲み物でしたら自分が……」

 あっ。

 手が触れた。
 伍長が同時に手を出したから。
 目が合った。

「伍長殿……」
「貴様ァア差し詰め娘を手篭めにする気だな!? ――我が娘の敵は破壊あるのみ!」
「ウゴフッ!?」

 大佐のロケット断罪パンチ。
 突如襲い掛かる衝撃に錐揉み大旋風、ぶっ飛ばされたツァインはキラめく一番星になりましたとさ……
 それを見遣りながらやって来た学ラン姿のノアノアは伍長へと視線を戻した。
「よう! マキーナちゃん、久しぶりじゃねーか」
「あ! お久しぶりであります!」
「おう、久しぶりついでにあれ行くぜ? 一緒に行くぜ? せーの」
 ノアノアは不敵に笑むや――学ラン前全開け!お胸様こんちゃっす!

「ブレイクッッ! フィッアアアアアア!」

 ※ブレイクフィアー=邪気を退ける神々しい光を放ち味方全体を苛む危険を打ち払う技

(全ッ然神々しくねー……)
 フランケンシュタイン仮装のディートリッヒは眉根を寄せるのであった。一方、あースッキリしたとノアノアは良い笑顔。
「ああ、そうだ、これ、やるよ」
 キョトンとしている伍長へ脱ぎ払ったガクランの上着をプレゼント。
「こ……これはガルガンチュア・クラウン・ランサーと言う部隊の軍服通称ガクラン! 良いのでありますか!?」
「いーっていーって。ばいばい! またな!」
 敬礼!そして、水着を着た羊仮装な妹のルカルカと共に歩いて行く。
「ねーちょん、お腹すいたの。その机たべるの。あーんして、ねーちょん。ねーちょんが口にしたのしかたべちゃだめっていわれてるからもう48時間たべてないもの」
 なんて会話しながら。

 ディートリッヒはアザーバイド達へ向いた。
「よ、元気か伍長」
「ディートリッヒ様! ……あ、その、トリックオアトリートであります!」
「おう、食ってけ」
 たった今咲逢子から教えられた言葉、初めての言葉。照れながらの様子にディートリッヒは笑みを浮かべ、袋入りのチョコ菓子を彼女に手渡した。
 ありがとうございます。娘が世話になりました。いいってことよ。なんて会話。

「PMC『マシンヴァルキリーズ』広報部所属ミーシャ・レガート・ワイズマン少尉であります」
 MS―18EケンプファーのMS少女風の出で立ち、ミーシャが大佐達に敬礼をする。
「とりっくおあとりーと! なんか頂戴ー」
 岬も大佐を見遣れば、その手に置かれる黒軍レーション。他の者にも、とアザーバイド達は周りの者に自チャンネルのモノを配ってくれた、が、如何せん。
「うん、個性的なお菓子ですね……昔、中東の砂漠で戦車をやっつけた後の食事に似ています」
「……うん」
「う゛ あ、いやおいしいですぅ。はい」
 見た目は悪いしオイル臭いしクソマズイ。ミーシャは遠い目、凪沙はノーコメント、御龍は堅い笑顔。
「オイル臭い方のは要らぬ。ただでさえ美味くないと評判の式鬼の茶が余計悪うなりそうじゃ」
 公爵のお菓子と自分で用意した茶を手に式鬼。
「何これ―、油臭くて美味しくない―。これがお菓子ってサイボーグは粗食の晩餐なんだねー」
 兄由来で自分は意味分ってないが、岬は遠慮なく感想を述べた。黒軍達はそれに驚きが隠せないらしい。呆然としている。
 口にあうかわかんないけど。そんな彼らへ岬がまとめて手渡したのは駄菓子屋で買える様な飴玉達。

 そんな最中にも、猛者はいた。
「あ、この味、好みです。大魔王南瓜ケーキと交換しませんか? ……こういう味が何か好きみたいです」
 笑顔でレーションを頬張るマリスである。
「嗚呼、このオイル臭さに、カロリーを追求したようなレーション味。
 変ですね、苦手なお野菜よりおいしくないと思いますが親しんだ味というのでしょうか」
 おみやげに持って帰りたいくらいです。もふもふ食べる。

 のんびりお菓子を食べながら、わいわいお喋り。
 ミーシャは伍長と実弾兵器とビーム兵器の好みなどについて、凪沙は『白軍』について大佐と話し込んでいる。
「朋彦様特製コーヒーは如何でしょうか」
 給仕として立ち回っていたエナーシアが現れる。かと思った頃には手際良く並べられていた珈琲、彼女の肩越しには朋彦が柔和な笑みを浮かべていた。
「名古屋さんの御用命とあらば、一肌脱がない訳にはいかないね。お菓子にぴったりなビターブレンドを作ってきたよ」
 会場の一角にてテイクアウトのコーヒーブース、腹に焙煎機を抱えた焙煎士はニッコリ笑う。
 エナーシアという強力な助っ人が居るので朋彦は気兼ねなくドリップに専念できる。サイフォンを三つ並べて一気に9杯分――見事な手際だな、と大佐は感心の息を吐いた。
「風味を感じとってくれれば嬉しいなあ。いえ、分析ではなくてですね?」
 このアザーバイド達に珈琲は未知の飲み物だろうか。朋彦が見守る先で彼等は珈琲を一口――感想は聞くまでも無い。
「このチャンネルの飲食物は何故こうも美味いのだろうか」
「父ちゃん私レーション食べれなくなっちゃいそう」
 しみじみと。
 そんなやり取りをする彼らの元へ。伍長の下へ。久しぶり。声をかけるりりす、振り返る伍長。
「思ったより早く約束を果たす時が来たみたいだね。僕の胸に飛び込んで来てくれて構わないよ?」
 どう反応したものか、少女ははわはわ。腕を広げたりりすは「再会を喜ぼうじゃないか」「帽子も良く似合ってるよ」「今日も可愛いね」なんて。
「……お 久しぶりであります、お元気そうで嬉しいであります」
 真っ赤な顔を深く深く被ったキャスケットで隠し、毒突く様に一言。
「こら、ちゃんと御挨拶しないと駄目だろう」
「うー」
 父の窘めに伍長は顔を逸らす。そんな彼女にりりすは笑って南瓜のプディングを手渡して、ついでにキャスケットごとその頭を撫でて。
「それ食べながら、お父さんを応援してあげてね」
 そして、見遣る。全身兵器の偉丈夫。下見たってしょうがない。上位世界の相手。どの程度通用するか。
「手合わせしていただいても?」
「構わんが?」
 闘争。本質は同じ。立ち上がって離れた場所へ歩き出しながらりりすは薄笑む。
「僕が勝ったら、もっと娘さんといちゃこらさせてもらうよ」

 かくして繰り広げられる激戦を遠目に、伍長はのんびり朋彦の珈琲を啜る。
「カッコいいパパで素敵だね! 伍長もパパも仲良しなんだな!」
 その傍らの席にストンと座った真独楽が伍長に笑いかける。仮装はセクシーな女海賊船長、「まこもパパのコトは超大スキ!」と戦う大佐を見遣り。
「大佐は優しい? やっぱり強い? 守ってくれる?」
「勿論! 世界で一番の父ちゃんだよ。まこの父ちゃんも優しくって強くって、守ってくれる?」
 勿論だと真独楽ははしゃぐ。いつも一緒に遊んだり、お休みの日はデートもしてくれるんだから。
 そして、彼女の気持ちが分かるからお友達になりたい。
 トリックオアトリート、お菓子を交換して。
「伍長のお菓子は……超個性的でエキサイティングな味だなっ」
「まこのお菓子も美味しいぞ!」
「えへへ、また会えるとイイね」
 はにかんで、手渡すのはたくさんのお菓子を可愛くラッピングした、詰め合わせの袋。
 仲良しの証に、はい!


 宴は続く。
 朋彦が対面で淹れた珈琲を美味しそうに飲む公爵、見た目が可愛いとその傍に付くエナーシア、「いつも何して過ごしてるの?」と凪沙の質問にお菓子を食べているヨと答える。
「私もお菓子を作ってきたのでどうぞ」
 桐は作って来た様々な物(パイ、焼き菓子、ゼリー、羊羹や和菓子)を卓上に広げ、傍の光は前にあったアザーバイトの話などをしたり、逆にオカシな公爵から様々なアザーバイドについての話を聞いている。
「公爵くんはどういうオカシが好きなのだ?」
「『お菓子』が好きデス」
「スゴイ格好いいな!」
 会話のお礼に南瓜プリン。

「この透明な球に金色のドロドロが入ったのはすっげークリーミーだし、こっちの赤黒いブヨブヨに蛍光グリーンのブツブツがびっしりついたやつも、見た目は不気味だけどフルーツみたいでうまいぜー!
 お、その青いピカピカはどんな味すんの?」
 モヨタもすっかり仲間達とお菓子をエンジョイ中だ。
「さぁ、公爵。お菓子をプリーズです! 貴方のお菓子食い尽くしてくれようぞー! お菓子の貯蔵は十分かー!」
 漆黒の魔女服に頭部は南瓜の着ぐるみなエーデルワイスもノリノリだが、公爵の指パッチン一つでデデンと前より増えたお菓子にリタイア(満腹)。ここまでですか。
「こんなに沢山の笑顔を作れるパティシエって凄いな」
 会場に溢れる笑顔を見渡して、真歩路は憧れの言葉を。
「久しいな公爵、壮健の様子で何より。此度も絶品の菓子を味わえる事を嬉しく思う」
 普段の着流しにふわふわ毛並の三角犬耳に犬尻尾、源一郎は公爵へと挨拶を。
 それから、とガムを取り出し公爵に問うた。
「噛んでいると味が無くなってしまうものだが、味が続く物を作れれば是非にお願いしたい。
 無論無茶を言っている事は分かる、無理であれば――」

 パチン。

 それは一瞬、掌にどっさり不思議なガム。視線の合った公爵がニッコリ微笑んだ。

「生きてる間に、また会えるとは思わなかったぜ大佐」
 会場の隅、煙草を吹かす武臣の隣には大佐。足下には酒。そうだな、と嬉しげな大佐の頬には一筋の掠り傷が合った。
「傷を負うなど何年振りだろうか」
 その視線の先にはロケットパンチで伸びてしまったりりす、心配そうに覗き込む伍長。
「娘サン?」
「可愛いだろう」
「フフ。大佐のカミサンが随分美人サンだってことがよくわかるな」
「我が総帥は世界で一番美しいからな」
 笑い合う。そんな武臣の手にあるのは大佐の世界の煙草であった。向こうの世界の煙草を吸ってみたいと言うと、「言うと思った。」
 酒と煙草をお供に、お互いの近況をゆっくり話し合う。
「誰とはなしに一緒に騒いでメシ喰って、こういう時間を大事にしたいよな」

 気絶から目覚めたツァインの目の前には伍長 ではなくカオスな格好のメカが。
「ぎゃぁー! 殺されるーー! って名古屋さんかよ!」
「捕って喰いやしませんよ!」
 全く、と息を吐くメルクリィ。取り敢えず一緒に菓子を食べようと席に着く。その傍にはカボパン王子と塗り壁が。
「あいかわらず味噌カツさん…じゃなくて名古屋は見るからに怪しい風体だな。お前は一体、何処を目指してるんだ」
 まあ、コンニャクぬりかべも大概だけどな。竜一の視線の先には快のドヤ顔。
「塗り壁は俺にぴったりって桃子さんも褒めてくれたんだ。サンドバッグ、ってな……」
 凄いぞ僕らの守護神。
「トリックオアトリート! 一緒に異界の菓子食べようぜ手羽先さん ちがった名古屋さん」
「勿論ですぞ千堂様 違った快様」
 手に取るのは異界のお菓子、グロイ菓子。
「これが噂のお菓子かあ。でも見た目がグロいもの程美味しいって言葉もあるし、目を瞑って食べれば……!」
「俺は、味はいい、この見た目はアレな一品をいくぜ! グルメってのはゲテモノに至ると聞いたし!」
 快の横では竜一がもぐもぐとお菓子を食べてゆく。そしてメルクリィの前には竜一が置いた黒軍レーション。
「オイル味とか、メカに丁度いいだろ、名古屋。構わん、いけ」
「いっぱい食べないとおっきくなれませんぞハハハ」
 竜一の前に戻されるレーション。オイル臭い……あ、なんかコレは危険な気がする。
(守護神、DTだけじゃなく俺のお腹も守ってくれ、ぐっばい……)
 快の皿へ移されるレーション。気付かず守護神はそれを口へ。

「ねっとりと喉に絡みつくいがらっぽさ、むせ返るような錆とオイルの匂いは下町の工場を思わせて、独特の……毒々の……シュゴシン!」

 凄いぞ僕らの守護神。すごしん。

「メルクリィさーん!」
 そこへルアがぶんぶん手を振って駆けて来る。はしゃぎながらフォーチュナの周りをてこてこ回り、正面にてスカートの端をつまんでお辞儀。今日はいつもと違う水色のアリス服。
「トリックオアトリート! お菓子をくれないといたずらしちゃうの♪」
「やあ、名古屋さん! COOOOL!!」
 笑顔で静もやって来た。
 トリックオアトリート、互いに菓子を交換して。
「はいっ! うさぎさんの形のクッキーも入ってるの」
 ルアは手作りクッキーの包みをポシェットから取り出して、
「プロテインって美味しいのか? それ食べたら、名古屋さんみたいにかっこよくなれるのか?」
「勿論ですとも静様。ルア様もどうぞー」
 静の差し入れである南瓜味のマカロンの箱詰めを片手、ルア製クッキーを食べながらメルクリィは笑う。
 そんな彼の背後からTrick or Treatを呼び掛けたのはあひると留吉である。其々アヒルクッキーとシンプルな金平糖を差し出して。
「久しぶり、メルクリィ……! 喉が渇いたから……チョコレートドリンク、頂きに参った!」
 どーぞどーぞ、渡されるプロテイン。ざわざわ、これは噂に聞くむきむきになる不思議なのみもの……留吉は興味津々。

 それでは皆で、乾杯を。

「いやぁ変わった人たちだねぇ……まぁあたしたちも人のこと言えないけどさぁ」

 御龍もプロテインを片手、メルクリィに話しかける。そうですな、とディートリッヒの挨拶に応えた彼は苦笑を浮かべた……その手にはルカが持ってきた超グロ見た目なお菓子、もう片方の腕にはヒャホーイとぶら下がる静が。「腕がすっげかっこよかったから、ぶら下がってみたいってずっと思ってたんだ」との事。

「てばさきー! ねーちょんテバサキの反対の腕もって」
 静を下したメルクリィの元へアンダーテイカー姉妹が一気に接近する。
 其々が困惑する彼の腕を持つや、強制ウェーブ。
「ひゃっほー! 腕ちょー面白ぇ!」
「ちょっ 待ッ ルカルカ様にノアノア様~!?」
「トリックオアトリート? 問答無用のトリートなの。答えは聞く前にトリートするのがジャスティスなの」
「ルカ、トリックな、うん、賢くなった、偉いぞ」
「ワァアアア」
「ねーちょん、今だ」
「せいほー!」

 魔手。

  パリーン。

 アッー。

 砕け散った機械男の左右の真空管。
「ねーちょんはいたーっち!」
 うつ伏せに倒れた彼を構い無く、姉妹でハイタッチ。
「ぱいたーっち! くそでけえな」
「らめぇ! あれ、アイツなんか犯された後みたいになってる?」
「……こんな事されたの初めて……グフッ」
 割れた肩のアレから血がいっぱい出ているのはさておき、回復技持ちがいたからさておき。
「アザーバイドは風変わりじゃな……しかし、名古屋が傍におるとあまり違和感が無いのう。
 式鬼が思うに、名古屋は住む世界を間違えておるのではないか?」
 式鬼の一言もさておき。


 宴は続く、続く。
 ゴシックな黒装束のレン、同じくゴシックな黒ドレスのキリエは目配せをして頷き合った。
 手には薔薇の飴細工が入ったバスケット、口元には笑顔。
 展開される闇の世界。
 急な暗闇に皆がどよめく。

 ハッピーハロウィン、良い夜を。

 暗闇に乗じて、レンは女性の髪に、キリエは男性の胸に薔薇飴を挿してゆき。
 楽しいハロウィンになるよう祈りを込めて。背の低いレンは精一杯背伸びをして。
 驚いた顔、溢れる笑顔。誰も彼も。薔薇の輝き。

「屈んでもらえる?」
 回復したメルクリィの前、キリエは微笑む。思った以上に背が高い。
 勿論ですぞと同じ高さに視線を合わせた、彼へ。

「いつもありがと」

 胸に花を、頬に接吻を。
 機械男はちょっと目を見開き、それから緩く笑って、その頭を優しく撫でた。
「どう致しまして」
 それからやって来たレンへとニコヤカに振り返る。
「ハッピーハロウィン、ささやかだけどいつものお礼だ」
 共に戦ってくれる戦友へ。薔薇を差し出すレンに礼を述べ、高い高いしているメルクリィを見てキリエは思う。
(いたずらを未来視で察知していただろうか?)

 まさか、ね。

「これからもよろしく!」
「こちらこそ!」
 視線の先では、高い高い。


 そして別れの時間が近付く。
「また来てくださいね、絶対ですよ♪」
 公爵にどら焼きの詰め合わせを渡す真歩路ははしゃぎ気味。
「超おいしかったです、ごちそうさまでしたっ。
 ついでと言ってはなんですが公爵ー、なんか保存のきくお菓子をくださいです」
 お土産用。エーデルワイスが持参タッパーを差し出せば、笑顔の公爵はそれをお菓子でパンパンにしてくれた――グヂュリとしたお菓子で。
「こういう来訪ならいつでも歓迎ですよ」
 朋彦は珈琲豆とドリップセットをお土産に。
「異世界は面白いし興味深いなぁ」
 光は桐とのんびり雑談を、あひると留吉は星空を眺めている。
「12月にクリスマスってのがある。公爵サン、覚えといてくれよな」
「また来て下さいね」
 武臣とルカは公爵へ再会を願う。
 それから武臣は大佐へと煙草を一箱、投げ渡してから薄く笑った。
「そっちの世界もまだまだ大変だろうけどよ、お互い達者で戦ろう。
 じゃぁ、いつか、またな」
「うむ。……また」

 メルクリィは別れの挨拶をしている者達を離れた場所でほのぼのと眺めていた。
 その横に源一郎は座り、目が合うや笑いかける。
「以前は土産を貰いそびれたが此度は忘れず持ち寄ったぞ。暫し二人で味わおう」
 差し出すのはガム、味が消えない公爵製の代物。
「似合ってますぞわんこ仮装、フフ」
「然様か、良かった。……ガムの味は如何か」
「美味しいですぞ、勿論」
 のんびりと静かな時間。ガムを咀嚼して、甘い味を感じながら源一郎ははっきり告げた。
「祝い事を共に祝う者が傍に居る事は、人生に於いて幸いだ」
 言わずとも分かるだろう。

 この先も共に祝える仲で在りたい。

 煌めく景色。不思議な一時。
 ルアは上方に浮かぶジャックランタンに手を伸ばした。届かない、けれど。

「見てるだけでも素敵な光景に笑顔になるの」

 そして、皆へ声をかけたのはカメラを手にしたツァインだった。
「やっぱこれだよな!」
 最後は皆で。一緒に並んで。笑顔を浮かべて。

 ハイ、チーズ。

「ハッピーハロウィン!!」




『了』


■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
メルクリィ:
「皆々様、お疲れ様でした! いやー楽しかったですな! それに美味しかったですな!
 良い思い出ができましたでしょうか? フフフ。取り敢えず私にとっては忘れられない一日になりましたぞ。
 ……サテ! それではゆっくり休むとしましょうか。」

 だそうです。お疲れ様でした!
 如何だったでしょうか。

 初イベシナ……! ドキドキすると共に、ニヤニヤしながら執筆しておりました。
 ちなみにあの後、『会場』は公爵が指パッチンで奇麗にお片づけしてくれました。
 大佐・伍長も無事自チャンネルに帰ったそうです。
 大佐は「その傷は誰に付けられた!女か!」と奥さんに小一時間問い詰められたそうな。一緒に煙草で仲直りしたそうですが。
 アザーバイド達が貰ったお菓子などはそれぞれ美味しく頂いたそうです。

 お疲れ様でした、ご参加ありがとうございました!