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リベリスタなら、なんと言うことはない簡単な仕事です。

●誰にでも出来る簡単なお仕事です。
「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。
 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。
 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。
 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。
「お願い。あなた達にしか頼めない」
 苦しそうに訴える幼女、マジエンジェル。 
 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。

●お仕事内容は錆落としです。
「錆びてるの」
 開口一番、イヴはそう言った。
「多岐に亘って存在するアーティファクト。アークでは見つけ次第、なるだけ穏当な手段で回収している」
 それで、と言って、モニターに建物の写真。
「ここ、地方のとある好事家の遺産保管場所。先日お亡くなりになったんだけど、遺族との話し合いがついてアークが全部引き取ることになった」
 三高平市民族資料館とロゴの入った作業着が机の上に並べられる。
「その刃物系が錆びてるの」
 それと、この作業着に何の関係が?
「だから、砥石で錆を落とすお仕事」
 更に並べられる掌サイズのセラミック砥石。
「色々話しかけてきたり、誘惑してきたりするから、気をつけて」
「それって簡単じゃなくない? なくない?」
 簡単な仕事って言ったじゃない。
「オルクス・パラストの協力の下、封印のお札も配布する。件の好事家、革醒者ではなかったんだけど、とってもいい人で、それは大事に手入れなさってたみたい。それで、癖のあるアーティファクトも大人しくしてた。でも、長患いで、ここ数年は満足に手入れされてない。多分、今頃退屈してるだろうし。一般人は危険。リベリスタの根性と献身に期待している」
 それに。
「事前に悪さすると手入れして差し上げられない、よろしくお願いしますって、担当者がタワー・オブ・バベル使って挨拶入れてきたから。刃物たるものピカピカでいたいのは生物における本能」
 え、それって蔵の中の物に言ってきたの? 普通に?
「昔話に付き合ってやってもいいと思う。敬老シーズンだし」
 イヴはそう言って、カレンダーを指差した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:田奈アガサ  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年09月28日(水)22:03
 田奈です。
 封印のお札を貼りつつ、刃物系アーティファクトの錆び落としするお仕事です。
 EASYです。つまり「自重しないぜ、ヒャッハー!」です。
『こんなしゃべる物品はいやだ』祭りで、かつ『もうこんな仕事いやだー! ここから出せー、俺を番号で呼ぶなー!』祭りです。
 リベリスタさんには、楽しく錆び落とししたり、ヨレヨレになったり、説教されたり、昔話されたり、励ましあったり、妄言はいたりしていただきたいと思います。  
 もちろん下僕状態や口がいつまでかかるかわからないとぎ作業を「われわれの業界ではご褒美です!」と楽しんでいただいても結構です。
 今回の作戦は蔵の中なので一般人の目はありません。
 アークの機密漏えいの心配なし。安心ですね。

 蔵の中身については、お任せします。
 縛り「錆びる刃物」
 適当にでっち上げてください。
 可能な限り拾います。
 戦闘? なにそれ。重傷者が出たら、失敗ですよ。
 三高平市の嘱託職員として入りますから、責任問題になっちゃいますよ。 
 操られて刃物振り回したりしないようにね。
 お札は、各種取り揃えられ、事前にどのアーティファクトに何を貼ればいいか指定されています。安心。
 補充も余るくらいあります。  
 渡された資料に載ってる写真の番号とお札につけられた番号を照らし合わせて貼るだけ。
 簡単だよ。簡単だからね。
 まあ、チェックに越したことはありません。
 半分以上が「番号確認済み」と書けば大丈夫です。

 そのあと、セラミック砥石でこすって下さい。
 アーティファクトは神秘ですので、セラミック砥石ごときには負けません。
 半分以上が「研ぎ残しチェック済み」と書いてくれれば大丈夫です。

 毎度のことですが、
 心を折らないように、方策を相談しておくのもいいかもしれませんね。
 修羅場を体験すると、人間、連帯感を増すといいます。
 チームの皆さんと仲良くして下さいね。
 サポートさんは諸般の事情で途中でくじけます。
 適当に理由をでっち上げてください。
 要するに、リタイヤ組の役です。
 印象的に落伍すると、本参加者さんの頑張りが引き立ちます。 
 
 はっちゃけ大歓迎ですが、小さなお友達も読んでいい全年齢対象ゲームですので、田奈の「そういうのいけないと思います」カウンターに抵触した場合、マスタリング対象になります。
 
 それでは、楽しい研ぎ出しタイムを。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
一条・永(BNE000821)
インヤンマスター
御子柴 若芽(BNE001964)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
ホーリーメイガス
月杜・とら(BNE002285)
覇界闘士
浅倉 貴志(BNE002656)
インヤンマスター
朝霧 楔(BNE002914)
デュランダル
有馬 守羅(BNE002974)
マグメイガス
白刃 悟(BNE003017)
■サポート参加者 4人■
ソードミラージュ
戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)
デュランダル
ランディ・益母(BNE001403)
スターサジタリー
結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)
クリミナルスタア
稲野辺 雪(BNE002906)


「一条永でございます。皆様、よろしくお願い致します」
 『永御前』一条・永(BNE000821)、蔵の中から返事が聞こえてくる2秒前。

「せーしんしゅーよーと聞いてっ。Mにお勧めの簡単なお仕事と聞いてっ。黄色い救急車を呼ばれないようにみんな頑張ろうねっ。」
『定めず黙さず』有馬 守羅(BNE002974)、正しい伝聞とその対策。


「戦う……のは……苦手だけど……これぐらいなら……私……にも出来……るはず。多分。…………頑張る」
『暗い日曜日』朝霧 楔(BNE002914) が、静かに闘志を燃やす。
「刃物に魅入られる。って本当に喋ったりするんですか?」 
蔵の扉が開けられる前にそんなことを言っていた『悪夢<不幸な現実>』稲野辺 雪(BNE002906)は、中に踏み込んだとたん、黙り込んだ。
 さんざめく気配が、人ならざる気配がする。
 値踏みされているようなぶしつけな視線。視線?
 その脇をすっと大男が通り過ぎた。
「俺はプロアルバイター、ランディだ。どんな仕事もスマートにこなすぜ」
『悪夢の残滓』ランディ・益母(BNE001403)。
 昨晩、メンバーは事前知識として一晩ランディの刃物のとぎ方レクチャーを受けた。 
 というか、ランディが打ち合わせ中に唐突に始めて、誰も逃げられなくなったのだ。
 簡単な仕事は現場に入る前からお仕事です。
 きちんと几帳面かつ丁寧に分類された刃物。
 蔵の持ち主がどれだけ愛情注いでいたか、蔵の空気でわかる。
 そして、今。
 久方ぶりの「話がわかる」人間の来訪に、刃物達はてぐすね引いて待ちかねていたのである。
 音のない笑いの気配が、蔵の中を満たしていた。 
 

「9月は敬老感謝の日……!! 大丈夫……! オレ、福祉ボランティアの経験あるっすから!!」
『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)、セラミック砥石に相棒と話しかけながら。

「……すっごく時間かかるんだけど。何これ、全然簡単じゃないよね」
『気紛れな暴風』白刃 悟(BNE003017)、一本磨いたあとに。


 刃物と一言で言っても、人の営みが開始された打製石器の時代から、まさしく切っても切れない仲となった道具は、生物のごとき進化を遂げている。
 リベリスタ達はそれぞれ好みの刃物の元へ向かった。
 御子柴 若芽(BNE001964)は、肉厚の刃……曲刀や青竜刀のある一角に陣取った。
(血生臭そうなのが良いですかね、面白い話が聞けそうです)
 丁寧に砥石をかけながら、ゆっくりと刀の話に耳を傾ける。
(武器は手足の延長にして実体的な害意。人の愛憎が絡む話は嫌いじゃないですよ)
 若芽は聞き上手だった。
 絶妙の相槌、相手の話す気を引き出す間。
 刀達は興に乗って話し出す。
 残念なことに、若芽は話を適当に切り上げるのは苦手だった。
(いや、サボってるわけじゃないですよ?)
 誰とも知らず、言い訳めいた言葉が浮かんでくる。
 とにかく作業を終えねば帰れないというのが、簡単な仕事の怖いところだ。
 いつ果てるとも知れないおしゃべりと研ぎ出し作業は始まったばかりだった。
「少し研ぎ減りしておりますね。ご苦労なさったのでしょう」
 若芽に言わせれば、正統派。
 日本刀や薙刀が並べられた一角に来たのは、永だった。
 和気藹々と慣れた手つきで刀の手入れに勤しんでいる。
 自分で持ち込んだ幾種類かの砥石を駆使し、慈しむ様子は、先の持ち主を髣髴とさせ、刃物たちを和ませた。
「貴女も薙刀ですね。うちの子と、お友達になってくださいませんか?」 
 永の周りには気がつくと、永の姿が見えなくなるほどの刃物が集まっていた。
「あ~大分錆びちゃってますね~。すぐにきれいにしますよ~」
 終の背後に和やかな老人ホームの談話室が見える。
「え、ワシの番はまだかって? 菊蔵さんはさっき砥いだばかりですよ~ほら! ぴかぴか!」
 菊蔵は、その昔は菊の手入れさせたら日本一と言われた方の持ち物で、菊を切らせりゃ天下一品の和鋏。
切られた菊は他の何倍も長持ちしたそうでございます。
「世界の半分をやろう? はは、ボクみたいな青二才じゃ覇王さんの右腕にはとてもとても……」
 明滅の覇王は、今をときめく拵え職人さんが中二病を患っていた頃に趣味全開で拵えたもので、刀身こそ模造刀ですが、拵えは贅を極めております。ただそのときの気持ちまで複製されたらしく世間話のように世界征服を持ちかけてくるのがご愛嬌。
「また血がみたい? 一伍さんってばまだまだお若いなあ……」
 逆に拵えは地味ですが、「百五十人斬りの一伍」といいまして。元は下級武士の無実の罪を着せられた持ち主が逃走のため、藩の郷士を斬りに斬ったり、百五十人。それでも一人も死なせなかったと、絵草子にもなったのでございます。
 刃物に歴史あり。
 そんな感じで、自慢話系の刃物は終の前に列を成すことになった。

(必要なのは、手袋、バケツ、くじけない心。やり方はしっかり聞いておかないと。作業はリズムよく、鼻歌混じりで)
 作業に前向きな守羅の担当したあたりは、なんか剣呑。
「えっと、由緒正しい丑の刻参りに使われた五寸釘」
 それ、刃物ですか。あるもんは仕方ないけれども。
「スペインの蜘蛛、猫の足。マニアックな」
 拷問具……なんで知ってるの、守羅さん!?
「いいよね、日本刀。昔話とか喜んで聞いちゃう。ツンなのは人間に対してだけ」
 子猫とか子犬に話かけちゃうタイプですね。
 日本刀研ぎはじめた。
 笑顔。
「で、やっぱり人を斬りたかったりするのかな?私の手首位だったらオートキュアーあるし、斬ってもいいんだけど。落としちゃダメよ?」
 殿中でござる! 任務中でござる! リベリスタは自分の体を保全する義務がありますー!
 自傷行為、だめ、絶対ー!
「部屋は汚さないようにバケツ用意。それとも血で切れ味鈍るとダメなタイプ?」
 日本刀、誘惑しちゃだめー! 衛生兵~! 精神衛生兵~!
「スローイングダガー、手裏剣、飛苦無にチャクラム、ヴェリトゥム、ウォシェレ」
 浅倉 貴志(BNE002656)は、投擲武器を手に取った。
 傍らの音楽プレイヤーからジャズが流れ、心穏やかに作業が続けられる。
「トマホーク、フランキスカ……」
 世の東西を問わず、形状もさまざま。
 敵に向かって投げつけられるということだけが共通点。
 覇界闘士の貴志とはあまりご縁がないのだが、楽しそうに次々と磨いていく。
(ウォシェレなんて形状が変わっていて面白いですよね)
 三方に向かって刃が伸びる凶悪なフォルムが一部に大人気の「アフリカ投げナイフ」をピカピカにしながら、貴志は部族間の争いを八代前にさかのぼったところから聞かされ始めていた。
『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)は、歴史的カトラリーを手にしていた。
 タイタニックからサルベージされた、銀製のカトラリー。
 重曹を強奪してきて、磨き始めた。
「ああ? フォーク、何勝手に話しかけてきてるワケ? 敬老の日? しょーがないなぁ」
 英国生まれのカトラリーも、「敬老の日」を覚える程度にこの蔵にいるという訳だ。
「ふふふ……素敵よ~、見違えるみたいね。さすが豪華客船から引き揚げられただけの事はあるわー。
いいね~、いいよぉ~」 
 一点の曇りなく磨き上げる楽しみを覚えた者は、もう磨きクロスを手放せない。
 カトラリーの話を聞きつつ、負けない勢いで話し続ける。
 タイタニック沈没時、悠然と葉巻を吸いながら最期を迎えた大富豪とその執事の話とか、そういう話が好きそうな「腐」とはいかなる存在なのかとか。
「……って、聞いてんの? ナイフ。最近の若い者は?」
 アヒャヒャ☆ と、とらは笑い声を上げた。
「どんなに頼りなくとも、その若い者達に世界の命運は託されているのだよ。まぁ、沈まない船の夢でも見ててよ」
 世界を沈ませないため命を張るのが、リベリスタなのだから。


「あ、おやつの時間だし~! ちゃんとペロペロキャンディ持って来たよ。12本だけどね」
『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)、約三人の表情がこわばる中、笑顔で。

「ティータイム……あるなら……お菓子……持っていくわ。甘いの……たくさん。しょっぱいの……はいらない」
『暗い日曜日』朝霧 楔(BNE002914)、低く笑いながら。


(あっちでは優雅にティーブレイクかい。お菓子なんて持ち寄ってさ)
 悟の機嫌はよろしくない。
 中学二年生がモノローグを始めたら、要注意である。
(そうだよ僕、癒すアイテムなんて忘れてきたよ。だって簡単だって聞いてたんだからさ、冗談じゃないよ!)
 更に逆切れし始めると、なかなか手がつけられない。
(だけど「お菓子を分けてくれないかな」なんて言いにいけるわけない。僕ツンツンだし。追い詰められた時ほどツンってなるんだよ)
 ここで遠巻きにされて、ボッチになってしまうのが通常の流れ。
 しかし、おっさんだのこわもてのアンちゃんだとわかってて「ペロペロキャンディー」を「人数分」用意する訓練されたリベリスタに、そんな繊細なツンの気持ちとか建前とか通用しない。
 悟の目の前に、笑顔で差し出されるペロペロキャンディー。 
「爆発したりしないから、安心して。くふふ……」
 とらの含み笑いがちょっと怖い。
「いらな……」
「食べるのも仕事の内だよ~? いつ終わるかわかんないし、終わるまで帰れないよ?」
「聞いてないよ!?」
「『簡単な仕事』じゃ通常仕様だから、イヴちゃんも最近じゃわざわざ言わなくなっちゃったよ? だから、はい」
「はいはい、その前におしぼりで手を拭いてね」
 終が、ひんやりとしていい匂いがするおしぼりを悟の手の上に広げて乗せた。
「ストレッチもいいものですよ? 凝り固まった体の血行をよくするのもいいです」
 わらわらと悟の周りに人が集まってきた。
 貴志などは、問答無用で悟の肩をもみだした。
「え、何……」
「脱落者は少ない方がいいんだから、声掛け合って頑張らないと……」
 守羅は、紙皿の上に氷砂糖を載せて配って歩いている。
「はいはい、お砂糖入れたお茶だよ、水分水分、糖分糖分」
 終が今度は紅茶の入った茶碗を握らせる。
「お弁当作ってきたのですけれど、皆さん和風幕の内はお好きですか?」
 目の前に広げられる永作のお重箱。
 気がついたら、悟は割り箸を握らされていた。
「ん……ふふ」
 楔は甘いお菓子を口に運びながら、笑みを浮かべる。
 簡単な仕事は、仲間同士の連帯が大事。
 いつ終わるとも知れない長丁場を乗り切るためには、孤立しがちな中二男子一人っ子さびしんぼも、ご近所の底力的に巻き込んで無理やり休憩させちゃうのだ。


「時には語りかけてくるアーティファクトの話し相手もしてあげるのも良いかもしれません。意外なお話が聞けるかも? 場合によっては延々と聞かされる可能性も無きにしも非ずですが」
 浅倉 貴志(BNE002656)、部族間の争いの話が五代前まで到達した頃。

「私はこの一行の中では一番の小物という奴です。負けても誰かが何とかしてくれるでしょう」
 御子柴 若芽(BNE001964)、背後の古強者を指差して。


 作業にも慣れ、休憩し、再び作業に入ってしばらくした頃が、一番脱落者が多い時間帯だ。
 一度緩んだ緊張の糸が再び張り切るまでのわずかな心の隙間に、何かが忍び込んでくる。
「あぁこんな刀振り回してみてぇなぁ」
 雪がぽろっと言った言葉に、蔵の空気が凍りついた。
「危ない思考がダダ漏れに。誰かぼくを外まで……このままだと危ないです」
 雪が研ぎかけていた刀には、急いで符が貼り付けられた。
 念のため手を拘束された雪は、蔵の入り口で待機していた別働班に引き渡された。
 これから感情探査やブレイクフィアーなどで精神の安定を図ることになる。
「リベリスタなら」と但し書きが付いているのは伊達ではないのだ。
 訓練されたリベリスタでも、たまたまめぐり合わせが悪い場合もある。
『猟奇的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)が、痴情のもつれで使われたのこぎりだの包丁だの一団と遭遇したのは、まさにそのタイミング。
 徐々に打っていた相槌が熱を帯び、変な光を宿し始めるオッドアイは、ハイライトが消えるのとはまた違う方向で怖い。
「お兄ちゃんどいてそいつ○×△●▲!」
 と奇声を発したところで、捕縛専門別働班がニコニコしながらやってきた。
「可哀想に。心の隙間を突かれたんだね」
 そう言って、作業はそのままそのままとにこやかに虎美を運び出していった。
『戦姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)も相手が悪かった。
 その刀、銘は「世之介」。  
「研鑽……、良い言葉ですね。刃は己の心を映す鏡。こうして刀を研いでいると、自然と心まで磨かれるようです」
 アーク屈指のソードミラージュの心の隙間に忍び込む百戦錬磨の色事師の心を待つ刀からの精神攻撃!
「磨かれて、心の奥底の……、ジブンヲ トキハナツ!」
 とり憑かれたぞー!!
「ヒャッハー! かーわいこちゃんに、脱衣しながらダーイブ!!」
 らめえ! ここにいるかわいこちゃんは喜寿前とツンデレと不思議ちゃんとオカルト系よぉ!?
 ちなみにブラコンは、先程搬出されました。
(……って、男の子もいっぱいいるのに、下着姿でジャンプとかしちゃだめぇ!!)
 脳内戦闘に勝利したはいいものの、不自然な体制から床に激突。
 なんかいろいろいたぁい。
「うう、もうお嫁にいけません……」
 しくしく泣きながら、アークのお姉さんに付き添われて舞姫退場。
 だって、まだ十四歳なんだもん。
 辺りが徐々に暗くなってくる。
 時折ぼそぼそという話し声。
 次第にしょきしょき、しょきしょきと刃物を研ぎ出す音が響くようになる。
(研ぎ仕事とは嬉しいねぇ、普段から大量の武器の手入れをしてるから望む所よ。実力というものを見せてやる、女の肌を撫でる様に丁寧に、そしてスピーディに。何を研ぐかって? 斧に決まってんだろ。この肉厚の刃……惚れ惚れするぜ)
 斧の辺りになんか濃密な空気が。
 低い笑い声とリズミカルな研ぎ音が。
 あそこにいる大男、何かにとり憑かれてませんか。あれはあれで通常仕様ですかそうですか。

 ぼーん! ぼーん! ぼーん! ぼーん! ぼーん!

 眠気を吹き飛ばす柱時計の音。どうして。朝から今まで一度も鳴らなかったのに!
「っと定時だな、俺は帰る!」
 タイマーかよ!
 ランディさん、やおら荷物をまとめると、速やかに退場。
 説明しよう! 
 プロアルバイターのランディさんが簡単な仕事のサポートに来るのは、あくまで技術指導のため。
 定時で帰宅と契約事項に載っているのだ!
 だって次の仕事が待ってるし……、え、今日は帰ったら爆睡なの? 昨日徹夜したから、ドタキャンするの? だったら残業していか……ない。あ、はい。そんなご帰宅の邪魔したりしませんよ。
 お疲れ様でした~。
 

「……喋る……武器なんか……も……いいわね」
「ねえ、剣のおじいちゃん達さ。こんな僕をどう思う? 損な性格だって思う?」
「で、今日で何日目?」
「持ってきたお菓子みんな食べちゃった……」
「話し相手になってよ。今僕、ぼっちなんだよ」
「私でよければお手伝いしますよ?」
「このCD、何周聞いたかわからなくなった」
「この街に来たばかりだしさ。ほら、孤独なんだよ。慰めてよ」
「……いつでも……話せる……相手……素敵だ……わ」
「お札の数が減らないんです」
「シンクロでの連係動作もお手の物です」
「喋れるんだろ? もっと本気だして会話してみてよ」
「家族に電話だけさせて下さい」
「……なんだか……変な気分……に……なってくるわ……」
「君達の実力はそんなもんじゃないだろ熱くなりなよこっちだって真剣なんだから!」
「このリスト、後何ページあるんですか?」
「めんどくせ~けど、欲しくなる魔力っ☆」
「あ……話し……すぎ……ると……手放す……のが辛く……なりそう」
「おじいちゃん、さっき磨いたばかりでしょ!?」
「その分ワタシが困った時には存分に手を借りますがね!」
「ねえ、この刀とか、うちの子にしちゃっていいかな?」
「ちょっと……名残……惜しいかも」
「剣の君達だって友達になってあげてもいいよ」
「子って言うには年齢的にアレだけどお婆ちゃんって言うと怒るし」
「仕事……じゃなかったら……持って帰る……ん……だけど」
「一本くらいなら失敬しても……いあいあ、良くないね!」
「責任持って大事にするから」
「超幻視で着服するのも考えたけど後が怖いし正直に」
「「これが……お仕事……なのは……ちょっと……辛い……わね」
「遠慮するなよ錆を取って欲しけりゃイエスだね! って言ってよね!」


 リベリスタ達の「おうちに連れて帰ってもい~い?」というかわいいお願いに、
「研究が終ってからならいいけど、しばらく時間かかるよ。それでもい~い?」とアークは答えた。

「貴方々は、蔵で眠るのが良いのかもしれません。博物館を飾るのが良いのかもしれません。ですが、もしも戦の場へ出る事があったなら……助けてあげてください、貴方々に命を預ける者を」 

 永が丁寧に蔵の出口で頭を下げる。
 彼らはもうすぐ三高平市にやってきて、民族歴史資料館に展示されることになる。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リベリスタの皆さん、お疲れ様でした。
 なんかいつになくアットホーム。
 あれ、これって簡単な仕事……うん、簡単な仕事。

 という訳でですね。
 あの子がほしい。な感じになったので、この話ちょっと続けちゃいます。
 詳細はまた来月あたりに。
 ゆっくり休んで、次のお仕事頑張ってくださいね!