●誰にでも出来る簡単なお仕事です。 「仕事としては、すごく簡単。だけど、多分すごくつらい」 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、しばらく目を閉じていた。 これからリベリスタが受ける苦しみを、わずかでもわが身に受けようと天に祈るかのように。 これからリベリスタを過酷な現場に送り出す自分に罰を請うように。 やがて、ゆっくり目を開けると、ぺこりと頭を下げた。 「お願い。あなた達にしか頼めない」 苦しそうに訴える高校生、マジエンジェル。 だが、断る。なんて、言えるわけがなかった。 ●お仕事内容は、玉結びをいっぱいこしらえることです。 「今回みんなにしてもらうのは、E・フォースを消滅させる為の下準備」 モニターに、貫頭衣から鎧武者、果ては陣笠かぶった鉄砲兵から、近代兵まで。 「いわくつきの古戦場。死者が生者を招き、さらに新たなる死者を生み出す」 ガチガチに固められた負の連鎖はちょっとやそっとでは解けない。 練り上げられたE・フォースの壁は、数回の失敗を生んだらしい。 「という訳で、まず成仏でも昇天でも冥途に旅立ってでも何でもいいから、このE・フォース集団からはがせるだけの思念体を引っぺがす」 はい。 「そのために、みんなにちょっとお裁縫をしてもらおうと思う」 はい? 小首をかしげたリベリスタのために、イヴはモニターに写真を出した。 さらしに赤い虎の刺繍――にしては点で構成されている。 「千人針。本当は、千人の女の人に作ってもらうもんだけど、リベリスタだから祈念は百人力。効果に支障はない」 この赤い点々、被服で一等最初に習う玉留めかぁ。 「男子でも出来ないとか言わせないから。小学生レベルだから」 ボタンを一人で付けられないのが許されるのは、小学生までだよねー。ぷーくすくす。 「一枚千個、全部で百枚。図案の点のところに玉留めを作るだけの簡単なお仕事」 いや、簡単だけど、腱鞘炎になりそうだ。 「この間の魔神戦で、結構みんなぼろぼろ。二線級の子達の負担を軽くしたい」 分かります。 ぶっちゃけ、100枚の千人針を縫いきるまでは帰れません。 逆に言えば、それさえ済ませてしまえば、おうちに帰れる。 「戦闘にはならない。ばかばかしいと思うのもわかる。ストレスがたまると思う。でも大事な仕事」 イヴは、もう一度頭を下げた。 「お願い」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:田奈アガサ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2013年10月11日(金)23:00 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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● 「ええ、私も幼い頃に針を通したことがございますよ。祖母などは日露戦争でも作ったそうです」 『永御前』一条・永(BNE000821)、昭和一桁。 「懐かしいのう。私はあの頃年端もいかぬ子供だったがの。確か、父の為に縫った覚えはあるぞ」 『雪暮れ兎』 卜部 冬路(BNE000992)、かろうじて昭和二桁。 「本当に、懐かしいです。千人針。贈りもしたし、贈られもした。やー、ステイシィさんは覚悟未完了でクビになっちゃいましたけどねい!」 『リピートキラー』ステイシィ・M・ステイシス(BNE001651)、昭和一桁。 「はっきりしとる訳ではないが、ヤガも生まれは日本だった覚えがある。時代が時代ゆえ、誰ぞと一緒に同じような事をやっていたかもしれぬな」 『必要悪』ヤマ・ヤガ(BNE003943)、昭和一桁。 ● それはわりと和やかに始まったのだ。 大正ロマネスクから、古きよき昭和。 回顧と郷愁の匂いあふれる一針一針。 「裏側の処理どうなってるのかわかんなかったから、まず経験者っぽい人達の作業を見学させてもらうよ~」 「あらあら、ここはこうするんですよ」 「あ~、そうなってんのかぁ。勉強になりました☆ 死線を越える五銭硬貨とか苦戦を超える十銭硬貨とかないのかな?」 「おお、念のため、持ってきておるぞ」 声だけ聞いていれば、キルトパーティ。なごやかな女子会である。 材料が、さらし布に赤い木綿糸、古銭でなければ。 布に虎のプリントがなければ。 あの時代を象徴する一品、千人針でなければ。 集まったのは、うら若き外見のおばあちゃん達である。 かの大戦をそれぞれ生き抜き、今、ここに終結した。 「ええ、こんなんでも昭和一桁世代です。今日だけは、銃後の桃子さんとして頑張りましょうか。戦う生き神様と、死せる英霊のために」 相好を崩すステイシーは、口調がマジになってしまったと照れ笑いをする。 そして、最近の若い者である。 戦争を知らない子供たちの孫でもおかしくない年回りだ。 「集中力が高まるし頭も心もスッキリするということで、ローズマリーとレモンバームをブレンドしたお茶も持ってきましたよ」 『天の魔女』銀咲 嶺(BNE002104)、女子力高め。 「この千人針の出来映え次第で、他の皆様のお仕事が上手く行くかも左右されるのですから責任重大です」 手に編み物の段数カウンター握り締めて、嶺さんは決意を新たにする。 そうなのだ。作ればいいという訳ではないのだ。 適当に作ると、これを頼みにE・フォースを討伐に行く別チームが危ない。 戦場にいく兵隊さんの無事を祈る心を凝縮させなくてはならないのだ。 そのためになら、ある程度の体力と気力を注入することなどたいしたことではない。 「一人で千針縫ってもご利益が減るじゃろう? リベリスタは百人力! と、イヴが言っておるからな。十人で百針ずつ縫って影響を分散させる、いわゆる「ろーてーしょーん」作戦じゃ! 十人割ったら余裕のある者が多めに縫うのじゃ!」 冬路が御厳父より譲り受けて仕立て直した軍服を着て、拳を振り上げる。 「……む。ローテーションか」 「ダメかえ?」 「いや、しかしヤガの針が他の面子に交じるのは些か験が……」 職業凶手の手で作られた千人針なぞ……と思いかけ、しかし。 (…考えて見れば、全部縫ったのを渡されるよりはマシか) 「わかった。多少面映ゆいが混ざるとしよう」 そんな女子のきゃっきゃうふふの中、女の中に男がひとりーとハーレム状態じゃないか、いいなこのこのと言えない。 所在無さげな『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)の爪の間が真っ赤に染まっている。 話は数分前に遡る。 「い、糸が針穴に通らない……!」 ちなみに、それは針と糸の太さによる選択ミスである。 絹縫い針に木綿糸が通る訳がない。しかも二本取り。 (糸通し?いやいや、俺は老眼じゃなければ老人でもない。これは意地だ。やり通す!) 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。聞けば、おばあちゃんたちがその針じゃダメだと教えてくれただろうに。 人間、意固地になったときはろくなことが起こらない。 「ぎゃああああああっ!?」 爪の間に刺さる、細い針。 最も痛覚が過敏な部分にそんなもの刺さったら、腹の底から声も出よう。 そして、今。 なんとも優しいおばあちゃまから注がれる視線。 無理しなくていいのよ? それに男の子に縫われた千人針に効力あるのかちょっと審議中。 適材適所。君に出来ること、ちゃんとある。というか、君の力を期待している。 笑顔を浮かべた女性陣からの無言の強要。 あるだろ、素敵なあれが。この地獄を支える素敵なあれが。 「新田P、ラグナロクをかけるだけの機械略してRAG☆マシーンでお願いしますね!!」 すがすがしく言い放つ嶺。 そして、彼は。 「対最終戦争用加護、発動~」 彼は、銃後の守りを担うことになった。お部屋の隅で。体育座りで。そんな気分だった。 「何言ってんだよ~。真ん中、真ん中! ちゃんとみんなに届くようにしないとー」 アメリアがずるずると円陣を組んだ真ん中に快を引っ張ってくる。 「それいけ、ラグ☆マスィーン!」 サイバーアダム。神経は鋼。ハートはガラス。呪文は、涙で出来ていた。 ● 「特に妹の力を集めることに強い意味があるらしい……虎美ちゃんの効きそうだ!」 『箱庭のクローバー』月杜・とら(BNE002285)、調べてきた知識披露。虎美のやる気が68上がった! 「さーて、今回の簡単なお仕事は?」 アメリア・アルカディア(BNE004168)、訓練されたリベリスタが言いがちな台詞。 ● 「色々調べてきたよー」 形から入ると、とらは手ぬぐいを姉さんかぶりしている。あんまり似合わない。 「虎の絵は千里を行き千里を帰るって意味なのかー。何で糸は赤なのかなー」 その辺りについて語りだすと日が暮れるが構わないかね。 「とらの絵じゃ、意味がないだろうな。ぷぷー」 (きっと気ままな風来坊になってしまうに違いない。餌を食べる時だけ、帰ってくるぬこみたいな……) ああ、うん。それは向いてないな、軍隊向いてない。 「大事な人が無事にいれますようにって祈る気持ちは良くわかるよねー。心を込めてレッツ千人針」 『狂気的な妹』結城・ハマリエル・虎美(BNE002216)は、お裁縫だって上手なんだよ。 「お兄ちゃんが親衛隊の残党狩りに行くみたいだし、その気持ちを込めて死ぬ気で縫うよ。大丈夫だって信じてるけど念の為って事もあるしね」 いいお嫁さんの条件だよね、お兄ちゃん。 「虎の模様に添って縫い玉を作るし、個数を書いた紙も添えておけば分からなくなる事はあるまい。個数に自信が無ければ多めに縫っておけば良いのじゃよ」 冬路、亀の甲より年の功。 糸切りは前歯。げっ歯類。 「糸の扱いは慣れておるわな。針穴通しはプロアデプトの面目躍如といったところだ」 ヤガは、すいすいと糸を針に通す。 「ピンポイント・スペシャリティの要領でなどとは言わんが、普段の狙い撃ちを思い浮かべればそう難しいことではない」 老眼鏡要らないよ。 「ちぃと色気を出して、細かい部分を担当させてもらおうかの」 虎の黒目に十個の結び目だとぉ!? なんだか、虎の目がキラキラしい! 「あ、裁縫は得意だよ? アーク来る直前とか自分の服縫い直したりしてたし。そもそもシスターに教わったしね。シスターってのはあたしを育ててくれた人で……ね――」 針仕事を始めると、女は饒舌になるものだ。 アメリアの止め処もないおしゃべりに、うんうんとうなづく面々。 「お裁縫ですか……実は初めてなので……」 『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・丸田(BNE002558)、お料理上手が裁縫上手とは限らないのだ。奥深いな、生活科! 「上手に出来るかどうか……不安ですが……これも良い機会……」 さらしを持つ手が震えていますが、針はそんなに怖くない。 「それにもしかすると……日本の古くからの慣わしである花嫁修業にも通ずるかもしれません」 昔は、浴衣は縫えないととか言われてましたね、そういえば。せめてオムツくらいは……というおばあちゃま方の昔語りに、顔色がなくなっていく。 「縫い目も太刀筋も、ためらいながら通せば曲がります。数をこなして慣れることです」 永は孫に教えるように丁寧に、リサリサに教え始めた。 「気持ちさえ込めたなら、ひたすらひたすら、体に覚えこませるのみ」 永の教えに大きく頷くと、リサリサはとにかく誠心誠意、一生懸命、一縫い一縫い丁寧に糸を針に巻いていく。 (たくさんは出来なくてもサポートとしての役目を果たします) 「ってさっそく指刺しちゃったはーい! 高速再生も惜しい位に痛いですよう……シリアス顔って保たないなぁ」 自分で指を吸いながら、ステイシィが笑う。 「さて、問題はメリハリです。気持ち的にも物理的にも、惰性でやっつけられない仕事ですからね」 「手縫いというのはこんなにも大変なのですね……」 リサリサが思わずこぼした言葉に、おばあちゃま方は顔を見合わせて笑った。 ● 「新田がラグ☆マスィーンなら、私はお兄ちゃんの無事を祈りながら縫い続ける機械になる!」 虎美、愛、極まりて。 「リベリスタ娘。実年齢はともかく、外見が年長の私はビミョーな予感がひしひしと……いえ、なんでもありません」 嶺、ポジション初代リーダー。 ● ――などと、アットホームだったのは各々三枚縫うくらいのあたりまでだった。 「みなさん、ふぁいとぉ」 定期的に嶺がかけるプロジェクトシグマが沈みかける気力を奮い立たせる。 「一つ縫うては人のため、二つ縫うては二親のため、三つ縫うては皆のため」 永が呟く数え歌が、地蔵和賛のように聞こえてくる。 やってもやっても鬼が夕方に突き崩す。父上こいし母恋し。ヘルプミーお地蔵様。 だんだん目が渋くなる。 (あ、今までのとはまた違うキツさのお仕事だ) アメリアは、後方支援のお仕事初めて。 今は小学校への編入手続きのため、危険のあるお仕事はダメよって、事務の人に言われたのだ。 包帯グルグルの転校生は、三高平でもちょっとセンセーショナル。 目がしょぼしょぼでも十分センセーショナルかもしれないが。 糸を手巻く針を押さえる親指が赤く腫れてまいりましたよ。 「――精密機械の称号を持つ私を舐めちゃいけない」 ぼそりと、虎美が呟いた。 いえ、誰もなめてない。というか、触らぬ神に祟りなしと思ってる。 「お兄ちゃんが無事に帰ってきますように――」 以降、まったく息継ぎなしで繰り返されるお題目唱和の嵐をお楽しみ下さい。 「――ついでにここのフォースも成仏しますように皆にもきっと私みたいに案じてくれた人はいるはずだしそもそもその人達ってもう死んでるよねさっさと成仏して会いに行ってあげた方がいいと思うんだお兄ちゃんが無事に帰ってきますように――」」 時々混じる本筋。 「まあなんだ、フォースも戦闘で倒すより、こういうので昇華出来るんなら、そうしてやりたいよね。フォースになっちゃう程、強い想いを残してるって、きっと可哀想な人なんだろうし」 切りのいい数ごとに待ち針をうって数を数えている、意外と地道なとらが言う。 みんな、目の下に隈ができ始めている。 「こういう作業は眼が疲れるからね、目薬用意しておいたよ。あと、眼を冷やすシートね」 アメリアの準備が、どんどん訓練されてきている。 「休めるものから休むがいい」 冬路が促す。 「体力も気力も削れる仕事じゃから、倒れぬようにろーてーしょーんを利用して」 外来語がひらがなになるのは許してあげてほしい。 「何せ私は歴戦の……歴戦の、えー……お、お針子じゃからな! うむ!」 おぉお。と、普段起こりえぬ憧憬のまなざし。 (いやあ。今の服を仕立て直すの恥ずかしうて、自分でやってる内に上手くなったなんて言えぬしの……) 冬路の言い出せない呟きを吹き飛ばす勢い。 「きえええええええええっ!」 一針一針裂帛の気合を込めて、アル・シャンパーニュ。 いや、マジで。金色の飛沫が飛んでるもん。 『赤錆皓姫』戦場ヶ原・ブリュンヒルデ・舞姫(BNE000932)は、がんばっていた。 (家庭科の成績は「がんばりましょう」だったけど、あふれかえる女子力でがんばるよ!) しかし、玉留めというのはつけばいいってもんではない。 突いたら、糸を絡めて指して、糸を切らねばならん。 (うごご、一針縫うごとに、精神力(EP60)が削られる) アル・シャンパーニュとかするからじゃないかな。 (だ、だめよ、舞姫! こんなことで、わたし挫けないもの! 戦場に向かうみんなのために、とどけ舞姫ちゃんのLOVE!) 戦場にLOVEを運ぶのも、戦う美少女のお仕事です! しかし、舞姫ちゃんは、ラグ☆マスィーンのバックアップをもってしても縫いきることは出来ませんでした。 生活科(被服)、がんばりましょう。 「ふっ、ふふふふ……ノルマ! 素晴らしい!」 『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)、こういう生産活動大好き。 (しかもルーチンワークに陥ってはならない。英霊への鎮魂も忘れずに、一針一針!まさに一糸乱れぬとはこの事よ) 分厚い手袋を脱ぎ捨て、科案にさらしに立ち向かう。 その手元は、その、なんだ。布に刺すより、自分の手を縫う回数の方が多い。 しかも、なまじ勢いつけるから、ざっくり刺さっている。 さらしが血染めになるでぇ。 「いったああい!!」 縫い針が刺さる痛さは先頭の痛みとは別格である。あれはあれ、これはこれ。 はっきりいって、戦闘不能に陥る痛みである。 (くっ、これしきの事でリタイアするわけには……せめてこのリズムを仲間に伝えてから……!) 「忘れるな、速さでも上手さでも無い。リズムと真心だ! ぐふっ」 めでぃーっく。慣れない痛みでショックに陥ったぞー。めでぃーっく。 「――千と縫うては千本桜」 永が、ぷつんと糸を切る。転がっているリベリスタ娘。 「夜食はおむすびにいたしましょう。腹が減っては戦はできません」 「それじゃ、お茶でも……あっ」 腰を伸ばして立とうとしたステイシィが転倒した。 とりあえず、なぜか正座していた全員は自分の足をもみ始めた。 ● 「決して犠牲が出ぬように……無事に戻るように……」 「ここまで来たら出来るところまでやるだけか」 「華々しく活躍しろとは言わぬ。大怪我せず、息災であれ」 「精魂使い果たして意識が朦朧と……」 「………目が痛い。手首が怠い。肩が動かぬ。流石に歳かの」 「意地でも倒れぬぞ」 「毒にゃならんが薬にはなるそういう仕事だ。体の保つ限りはやらせて貰う」 「そうそう、予定数超えてもギリギリまで作り続けるよ?」 「この老女の運命ひとつで助かる者がおるのなら、良い取引ではないか?」 「お、起こひて……腰が……」 「今日は、定時に帰れそうにありませんね……」 「だって実際に任務にいく人の安全がかかってるんだよね?」 「消耗は運任せとなれば、後は普段の行いが物を言うか」 「明日は、定時に帰れると思いますか」 「……うむ。清々しい程に全くこれっぽっちも自信がない!」 「ならできる程度の無理はしないと。強制はしないけど」 「そもそも、いつになったら帰れるんでしょうね」 「朝蜘蛛は鬼でも生かせと言うでな。生かしてもろうとる分は返さにゃの」 「そういうわけだから……追加、ちょうだい?」 「ああ、御先祖様と源太郎さんがお迎えに……」 ● 快の手から、気付けのハーブティー入りの湯飲み茶碗が転げ落ちた。 「作戦班、出発の時間が近づいてきました。皆さんのお仕事はここまでです。お疲れ様でした」 地下では、今何時か分からない。 「終わり?」 「はい」 リベリスタが縫った千人針をせっせとダンボールに入れ、「重要! 作戦番号*******」と赤マジックででかでかと書いて、台車で搬出していくスタッフが大きくうなづく。 「仮眠室、開けてありますから、どうぞお休みになって下さい。お食事の用意もしてあります」 ふらふらとリベリスタ達が作業室から出て行く中、虎美は私物の糸と針と布を取り出す。 「虎美ちゃん、終わりだよー?」 とらが、虎美の背に声をかける。 「一枚、私物で縫いたいんだよ」 高まりきったテンション。今縫えば、最高の一枚が仕上がるに違いない。 「丹念に時間を込めて血で染めた赤い糸を使って縫った千人針をお兄ちゃんに贈るんだ泣いて喜ばなくてもいいんだよ、お兄ちゃんっ☆」 きゃはぁっ! と、笑う虎美を置いて、とらは急いで扉を閉めた。 どうか、成仏してください。いや、マジで。 ちなみに、逃げおくれたラグ☆マスィーンがカウンセリングの予約をとったかどうかは、本案件ではどうでもいいことなので割愛する。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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