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brillante

●『華やかに』
 殺人、殺しというのは華やかな舞台だ。
 自分の為に与えられる舞台。
 その舞台を如何に魅せるかというのが我々の仕事なのだが。
「詰まんなくなっちゃったのね」
 小さく笑って、少女はナイフを付き立て続ける。芸術的な殺しは常に陶酔感が得られるはずだったのに。
 ソレがどうしてだろうか、今は何も感じない。
 人の脈動が段々と小さくなっていく様も、怯える声を聞いた時のあの高揚感もまるでない。
 人が死んでいくだけ、死ぬだけ。
 単純なその作業は『殺人業者』としてのルーティンワークみたいなものだ。
『殺人クラブ』――彼女の願う華やかな舞台からは離れた様な、まるで、小学生が夢を見て作ったかのような名前の場所こそが彼女の職場だった。
 殺して殺して殺して殺して――幾度も繰り返して、殺し続ける。 
 殺人を華やかに見せる事が目的の少女にとって殺人こそが『仕事』だという『殺人クラブ』は居心地が良かったのだろう。
「あ、もしもし? 今、チョード良い所なの、ごめんなさいね。ユータ君もお仕事終わったって?
 ――あー……今ね、素敵な『お客様』がいらっしゃっていてね、あたし、忙しいのよ」
 少女の眼が、ちらり、と『舞台』に現れた『珍客』を見詰めていた。
 その姿に小さく笑みを零すのは仕方がない事だろう。手にしていた殺人用ナイフを足蹴にした男に突き刺して、クロスを握りしめた少女は小さく微笑んでいた。
「……詰まんなくなっちゃったの」

 殺人という華やかな舞台に昇る事を諦めたみたいで、何だか悔しさも胸に募りだす。
「あなたは人を殺した事はある? セイギノミカタって悪だと殺して良いんでしょ?
 息の根を止めた事は? この両手で首を絞めた事は? 段々と小さくなる脈動を掌で感じた事はある?
 抉る様に差し込んだナイフが臓腑を傷つけた時の気色の悪い感触を知ってる?
 溢れてる血が水に溶かしたインクの様に鮮やかな色をしていたのに酸素に触れた途端に黒く変色するその様子だって素敵でしょ?」
 少女は飽きてしまったとばかりに一般人の男の体を投げ捨てる。
 ナイフを引き抜いてへらへらと笑った少女はリベリスタ、と小さく呼んだ。

「セイギノミカタって何でも殺して良いんでしょ。
 だって、正義だもんね。あたしは悪だよ。ワルイヒト。あなたはイイヒトね。
 さあ、遣りあいましょうよ。あたし、あたしはラッヘン・フラウ。――一寸した犯罪者よ」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:椿しいな  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2013年09月17日(火)22:28
こんにちは、椿です。

●成功条件
 ラッヘン・フラウの撃退及び敵性エリューションの討伐

●『殺人業者』ラッヘン・フラウ
 ヴァンパイア×インヤンマスター。長い髪をした少女であり、『殺人クラブ』と呼ばれるグループの一員だと言う事のみ判明して居ます。
 魅せる様な殺人を行う事を目的としており、彼女自身は『自分が死ぬスリルを味わいながらも人を死に貶める』事を幸福だと感じているようです。
 人を殺す用のナイフは『殺害用ナイフ』と名付けられたもので魔的な能力は持っておらず、戦闘にも使用しません。

・アーティファクト『嗤哭』:ラッヘン・フラウの所有するクロス。先端部分は赤黒く染まっています。
・EX:殺人作法A(神遠範囲 麻痺)

●エリューション・フォース『殺害対象』×6
ラッヘン・フラウがどこかに身につけている『殺人クラブ』の一員の証がエリューションを操る能力を与えています。
フェーズ2が2体とフェーズ1が4体の構成で有り前衛を務めます。
フェーズ1の個体は防御に優れませんが攻撃に長けております(フェーズ進行に寄り防御が其れなりに整えられます)
ラッヘン・フラウを援護するほか、何れかの1体が増殖性革醒現象を所有しています。
3T経過するごとに周囲の殺意(ラッヘン・フラウ及びリベリスタ等)に反応し、エリューション・フォースが生み出されます(この増加は増殖性革醒現象を所有するエリューションを撃破することでなくなります)

●『殺人クラブ』
 その存在は明らかにはなっていませんが、ラッヘン・フラウが所属しているフィクサード一派です。

どうぞ、よろしくおねがいします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
クリミナルスタア
エナーシア・ガトリング(BNE000422)

葛葉・颯(BNE000843)
クロスイージス
ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)
ダークナイト
逢坂 黄泉路(BNE003449)
クリミナルスタア
遠野 結唯(BNE003604)
ソードミラージュ
紅涙・いりす(BNE004136)
ソードミラージュ
殖 ぐるぐ(BNE004311)


 少女の笑い声を聞き一人、無表情の中で沈黙考察を行っている『アヴァルナ』遠野 結唯(BNE003604)はFaust Rohrを手に『セイギノミカタ』という言葉に何処か引っかかりを感じていた。
『殺人クラブ』――何とも分かり易い名前のクラブではないか。身も蓋もなく、その名称で一言でどんな場所かが分かる。しかし、その所属員が悪であり、自信が正義であると結唯は考えた事など無かった。
 無論、この場で正義の味方と称されるのであれば、『覇界闘士<アンブレイカブル>』御厨・夏栖斗(BNE000004)の様な人種を指すのであろう。勝つ為に足掻き続ける。ヒーローになりたいと願った彼だからこそ、その『呼び名』が一番に似合っていたのだろう。
「貴方……アークの御厨さんじゃないの。おっかなびっくり。其方は? 銃火器の祝福さん?」
 一般人である様にしか見えない『BlessOfFireArms』エナーシア・ガトリング(BNE000422)の方がぴくり、と揺れる。銃を扱えるだけの一般人は大きな紫の瞳を細めて「モテる一般人は辛いのだわ」と溜め息を吐き出した。
 噂に聞いた覇界闘士の少年と銃を扱う一般人。彼女等の中で、『Type:Fafnir』紅涙・いりす(BNE004136)が牙を剥き出しにして、腹の足しになるか――せいぜい前菜程度か――分からぬ少女を見据えて舌なめずりをする。
「暇潰し程度にはなるだろう。小生の好みでいうなら、ちと足りないが、まぁ、可愛らしい子ではあるかしら」
「あら、失礼しちゃう。素敵ね、濁った瞳。まるで鮫――いいえ、何かしら、龍かしら?」
 くすくすと笑う女――『ラッヘン・フラウ』の声を耳にしていりすが肩をすくめる。ぼんやりとした瞳が見据えたのは少女の手にしていた『嗤哭』であった。後衛で、エリューションに護られる様に立つ彼女を『盆栽マスター』葛葉・颯(BNE000843)は煙草をふかせながら見詰めている。
「さァ、小生と踊ってくれるカイ?」
 勿論、と笑うラッヘン・フラウが踏み出せば、真っ先にいりすが動きだす。『殺人対象』と呼ばれるエリューションがにたりと笑うその笑みを切り裂く様にリッパーズエッジを振るった。
「なぁ、そのエリューションはどうやって呼びだした? 死者は冥府に、死体は墓に。
 死神の座を預かる物としては、想いの残滓を利用するような連中を看過できん」
『黄泉比良坂』逢坂 黄泉路(BNE003449)の瞳が細められる。眼帯の向こう、ぎっと睨みつける黄泉路の瞳は怒りを浮かべたものであると同時に、少女の技を盗み抜こうとする様な好奇心を映し出して居た。
 好奇心だけで云えば『灯探し』殖 ぐるぐ(BNE004311)が勝る。人の『灯火』を何よりも重視するぐるぐにとって、ラッヘン・フラウの言う『魅せる殺人』と言う物がどんなものであるか――彼女の舞台で見てみたいとそう思ったのだろう。
 踏み込んで、増殖(ふ)える。妖狢はぐるぐの指先を隠す白い袖の中から現れる。マフラーを揺らし、切り揃えた短い髪が舞いあがった。
「ボクとしては、殺しは美の結果にあると思うのですよね。作法のお勉強と参りましょう。優雅さかが有ると嬉しいな」
 笑うぐるぐの声を聞きながら魔力のナイフを握りしめ、踏み込んだ颯は和風のゴシックロリータを舞いあがらせる。彼女のナイフの向く先に居るエリューションが小さく笑うと同時、ラッヘン・フラウを援護する様に影人が現れる。
(やはり……影人を使いますか)
 じ、と見据えて居た『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)はゆっくりと歩み出る。殺しの流儀も殺しの作法も彼女にとっては必要なかった。殺人者と言うフレームの中ではユーディスはこの場に居る誰もが同じであると知っている。
「生憎、貴女の様に殺しが愉しいからという訳ではありません。その辺りの機微は理解しかねますが……」
「セイギノミカタは随分な事を云うのね。楽しんで殺さなきゃターゲットが可哀想!」
 楽しげに笑うラッヘン・フラウの声を聴きながらユーディスの魔力盾がエリューションを受け止める。加護をあたる様に振るう槍。
 ――殺しに正義や悪があるのであろうか。
「唯、殺す理由が違うだけ。『愉しいから』と『必要だから』……その程度の違いです」


 呟かれる言葉にぐ、と炎牙を握りしめる夏栖斗の心が小さく揺らぎかける。護るための両手が小さく震えた。
 正義の味方なら命を奪っていい。誰かの命を奪う事に正義なんてなくて、誰かを奪う事で幸福になれなくったって、血に汚れた両手に夏栖斗も後悔を浮かべ続けて居た。
「ご機嫌麗しゅう。殺人クラブなんてご機嫌な組織でご満悦な所、ゴメンネ。舞台のお誘いありがとう」
 そう告げる彼の瞳は笑わない。息なく横たわっている男の姿に小さく唇をかみしめた。前進する夏栖斗がラッヘン・フラウを覗きこめる位置へと近づいていく。彼等を支える様に背後でエリューションの情報を処理せんと目を凝らす黄泉路の瞳は真剣そのものだ。
「あんたの言う様に俺達は殺人に対して今更どうこう言える立場じゃないのは分かってる」
「お分かりいただけてるなら邪魔しないで下さらないかしら」
 くすくすと笑うラッヘン・フラウ(笑う女)にエナーシアはペイロードライフルを構えて唇を歪める。可愛らしいかんばせには似合わぬ悪態を浮かべる彼女は小さく笑ってベストに仕込んだ追加弾倉を指先でなぞった。
「『此方』の世界に来て何故か多いわよねぇ。人殺しが何か特別な事みたいに考えてる奴。
 何度か殺れば馬鹿でも分かるでせう? 特別だと思いたかっただけだって」
 身体を捻り、周辺に存在する殺害対象――黄泉路がエネミースキャンを使用して得た結果の通り――へと鉛を撃ち込んでいく。じっと見つめる結唯が息を吐く。エナーシアの視線がちらりと彼女に送られれば、彼女はその場で展開させる『陣地作成』。魔女の秘術をその場で組み立てる彼女の沈黙の考察は続いていく。
 何が正義で何が悪か。それは自分で決める事。法だの何だのは他人が決めた事だ。それを守るかどうかは自分で決める以上、世界に正義など存在して居ないのだ。
「ならば私はお前を殺害しよう。常識と言う社会が決めた正義から、踏み外した異常者よ」
 囁きながら秘術を構築させるラッヘン・フラウの目は笑わない。前線に飛び出すエリューションを受け止めて、トンファーが真っ直ぐに殴りつける。味方を巻き込まぬ様に「いりす」と夏栖斗が呼べば、竜は小さく笑って地面を蹴った。
「人殺しは『仕事』か。ならば、この辺りが限界か」
「なあに、それ?」
「小生は、好きになったモノを食い殺さずには居られない『業』を持つが多分、君の事は殺したりしないから大丈夫」
 囁く言葉はラブコールには程遠い。失礼しちゃうと嗤うラッヘン・フラウの周りに増える影人は彼女を護る様に周辺に立っていた。エリューションが噛みつかんとする様に手を伸ばす。その手を盾で受け止めてユーディスは槍を握る指先に力を込めた。
「御期待に副う新鮮さなど無いと思いますが、違う殺しの形に興味でも抱きましたか?」
 ラッヘン・フラウの間近に存在するエリューションへと魅惑の指先を揺れ動かして、ユーディスは誘う様に錯乱させていく。彼女に続き、黒き瘴気を纏った黄泉路は観察眼を緩めぬままに斬射刃弓「輪廻」を弓の形へと変形させて爪弾いた。
「所で、彼等は貴女が殺してきた方々ですか?」
 いいなあ、と瞳を輝かせるぐるぐが地面を蹴り、身体を反転させる。その尻尾をつかもうと伸ばした手を避けてぐるぐは多角的な攻撃を繰り出していく。
「貴女を邪魔に思った誰かが端金で依頼を出して私がその端金をbetする。どちらも安いわよね、実際に命は」
 タクティカルライトをマウントさせた銃をエナーシアが身体を低くして討ち出した。周辺に降り注ぐ氷の雨がエナーシアや結唯を狙いだす。
 行動指針を『陣地を張る』事にのみ集中させている結唯を庇おうとするのと同時、ちらりとエナーシアが目を向けた先には攻撃にさらされる颯の姿があった。靡く黒髪が死者の手刀ではらりと散った。
「……さて、此処までにしましょうか。『殺人クラブ』の少女――次が欲しいなら、自分で死を体験してみますか」
 じ、と見据えるユーディスの言葉に首を傾げたラッヘンは背後から攻撃を加えていく。黒き瘴気で前線をしっかりと安定させた黄泉路は弓を引いていく。
「正義を称する者もいるが、俺は正義を謳うつもりは無い。
 殺人を楽しむのは勝手だが、それを俺達に求めるのは筋違いじゃないか?」
「殺人は常に楽しむ物。面白くなくなっちゃったんだもの。『殺人クラブ』は何時だって楽しみたい面々しかいないのよ」
 だから、その私に殺されて頂戴よ、と愉しげに笑う少女の懐で光る『殺人クラブ』のナイフにじ、と目を凝らす。その『殺人クラブ』の情報を知れればと黄泉路が目を凝らして居れば、背後から結唯が静かに囁いた。
「――出来たぞ」


 倒れた颯の場所をカヴァーする様に黄泉路が弓を爪弾く。ぴょん、と跳ねたぐるぐがナイフを見極めて、早くラッヘンと戦いたいとその体を揺らして居る。
 その中でも無銘の太刀を握りしめて、前進するいりすは楽しげに笑っていた。光りの飛沫を上げて、攻撃を行いながら、的確にフェーズ1のエリューションを倒していくリベリスタの中で、いりすの鼻がすん、と鳴る。
 未だ攻撃を受けず、影人に庇わせながら、周囲を俯瞰する様な瞳で見詰めるラッヘンに夏栖斗が嫌気がさすと言う様に瞳を細めて毒吐いた。
「ラッヘンちゃん、僕も人を殺した事があるよ。罪のない少女の首を折った、まだ罪らしい罪をしていない少年の未来を潰した。
 アークに敵対するフィクサードも復讐に身を焼いて殺すためだけに殺したんだ――全部、楽しくなんてなかった」
 ぐ、とトンファーを握りしめる手に力が籠る。警戒を強める夏栖斗に、小さく笑ったラッヘンがクロスでとん、と地面をたたく。
 殺人作法Aは彼女にとって『殺人クラブ』で培われた業なのだろう。目を凝らす黄泉路は学ぼうとするその強い意志で手を伸ばす。周囲に広がる符が刃の様に研ぎ澄まされて行く。受け止めんと足に力を入れたエナーシアが背後に存在する結唯を庇う様に身体を捻らせた。
「――それが、貴女の技ですか……。ご期待に副わねば早々に舞台から退場しろという事ですか?」
 ゆっくりと告げるユーディスの言葉にもラッヘンは楽しげに笑い続ける。妖狢を袖から表して、地面に手を付き、ぐるぐは見極める様にエリューションを倒していく。早くと焦がれる思いがあれど、攻撃手の数が早々に一人減り、エリューションの数を減らしても、未だに届かない。
 だん、と踏み込んだままに『ヒトガタ』を切り裂いて、ぐるぐは眼鏡を仕舞い、愉しげに笑ってラッヘンを見詰めた。
 眼鏡は邪魔だった。殺すつもりで戦えばいい。遊べるうちに遊んでしまえ、『久しぶり』に『こども』の様に遊べばいいのだから。
「小生的には、情報とか如何でも良いんだ。なるべく殺さないようにしようかしら、君は美味しくなさそうだ。
 でも、可愛い子のすりーさいずとかは、ちょっと気になるお年頃だし」
「上から教えてあげましょうか」
 その気持ちはいりすも同じか。くすくすと笑うラッヘンに嬉しいと愉しげに言ういりすではあるが、その目は余り笑ってはいない。恋する相手では無い以上、殺す対象でも無いのだ。そこまで楽しめて居ないと言う様にいりすが肩を竦めれば、素早く結ばれた符が強烈に鈍化させんとする結界を張り巡らせる。
「こんなにも小口の取引の取引なのですもの。さっさとお会計と参りませう」
 エナーシアの弾丸はエリューションを巻き込むと共にラッヘンの足を狙う。鉛弾が食い込んで、ラッヘンはぎ、と睨みつけるようにエナーシアを見詰めた。
 命なんて安い。おつりが出るほどに安いのだとエナーシアは知っていた。回復手が無い以上、少量でも回復する手立てを持つラッヘンとそれを守る影人とエリューションの布陣は戦い難さを感じられずには居られない。
「ところで、ユータ君ってお友達? どんな方なのです?」
 小さく笑ったエナーシアにさあ、と首を傾げるラッヘンは影人に自身を庇わせながら攻撃を繰り出してくる。庇い手が居る事に唇を噛みながら、トンファーを握りしめる手に力を込め、血の花を咲かせる夏栖斗はラッヘンちゃんとまるで友人へと語りかけるように小さく呼んだ。
「殺されるスリルなんて味わいたくないよ。殺す事に慣れるなんて嫌だよ」
 殺す事にも人の死にも慣れてはいけない。自分に対する誓いの言葉が其処にはあったのだから。
「なぁ、あんた等には殺害対象選定基準とかあるのか?」
 頬に一筋走る血を拭いふらつく足で黄泉路が問いかければ、自身を回復しながらラッヘンがそうね、とナイフを黄泉路へと投げつけた。無作為な通り魔であるのか、其れとも、理由があるのか。その存在を見極めんとする黄泉路にラッヘンは小さく笑う。
「あたし、一番キレイに殺せる相手を殺す事にしてるの。それが流儀ってこと。イロイロあるわよね」
 未だ、けろりとした笑顔を浮かべるラッヘンの近くでエリューションがゆるりと顔を出して居る。通常攻撃を行う結唯の攻撃は上手くあたらない。殺してやると言う意思があれど、彼女の攻撃には或る意味で『ムラ』が多過ぎた。
 だん、と踏み込んだ、ぐるぐがにぃと笑う。彼女なりの作法を見て学び考え方を得る。直撃しなければ麻痺を喰らわないのだから、大丈夫、獲物を逃がす訳にはいかないのだから。
「殺さないの? ボクはまだ遊べる、ほらもっと遊んで」
 あくまで前のめり。楽しげなこどもの笑みにラッヘン・フラウが小さく笑う。リベリスタ達のうち、避ける事に特化せぬ黄泉路がラッヘンのナイフを握りしめながら降り注ぐ雨に膝をつく。
 庇う様に存在する影人に苛立ちを隠せないままに攻撃を受け止めるエナーシアの背後で結唯は黙々と攻撃を続けていく。回復がユーディスのラグナロクのみと言った布陣では、何処か頼りなさげに存在するエリューションが夏栖斗を狙う様に攻撃を繰り出して居る。
 打ち払う様に光りを纏った槍で貫いたユーディスがラッヘンをじ、と見据える瞳を細めていく。必要だから殺すと言った――今は必要じゃないのだから。
 庇い続けるエナーシアがじりじりと攻撃を削られる。同時に、癒しを与える様にユーディスが支え続けるラグナロクに支援型であったラッヘンが愉しげに笑いだす。
 前線を崩す様な攻撃に「お題は高々ワンコイン。せいぜいお釣りが出る位のお値段なのだわ」とエナーシアが握りしめる銃を再度力を込めて握り直す。庇う事で攻撃手が減っている状況では戦うのも少しばかり手間取ってしまっていたのだろう。
 じりじり削られる体力にエナーシアが膝をつけば、結唯は運命を使用し立ち上がるエナーシアの後ろでフィンガーバレットを構え続け得る。
 平行線の戦いの中、『速攻』を狙いつつも、長引く戦いに苦戦を強いられたいりすが握りしめたナイフを逆手に取り、一気に踏み込んだ。
「小生は君を殺す気はないんだが、生憎、逃がす気がない人もいるみたいでね」
 影人が受け止めて、掻き消えればエリューションを相手にしていた間に増える影人が更にラッヘンを庇わんとする。
 支え合う攻撃の中で、小さく笑い続ける少女を見据えて、夏栖斗は再度足に力を込めた。負けるわけにはいかない、殺す事には慣れてはいけないと意志を込めて動くそれを苛む様に遅れさせる足。
 されど、ユーディスが支える力によって苛みを解き放ち、前進する中で、けろりとした表情の少女は狙いを定めた様に一斉にエナーシアへと襲いかかった。
「あたしね、あなたみたいなお嬢さん大好き。だって、あたしを負けさせる事を第一に考えてるじゃない?
 確かに、端金ばかりね。あたしの命もあなたの命もそんなものよね?」
 詰まらない詰まらないと言う様に、影人の後ろで嗤ったラッヘンが更に影人を作り出す。能力の歯止めを感じながらも、少女がにこりと笑えば、エナーシアがとん、と膝をついた。
 戦闘を続けながら膝をつく結唯を庇う様に夏栖斗が戦い続ける。削り合いで勝敗を分かつのは難しい。
 す、と手を上げたユーディアが柔らかく笑みを浮かべて、「これで終わりにしましょうか」と囁いた。陣地作成のお陰かラッヘン・フラウは逃げ出すことはなかった。しかし、その為に彼女は最後まで戦い続けると言う選択肢を取ったのだろう。狙われぬ間に影人を量産し続けた少女は盾を作り続け、攻撃を受け流すという常套手段の元、庇い手等に寄って戦力を低下させたリベリスタとの持久戦を楽しんでいたのだろう。
 晴れていく空の中、陣地が避けたのだと気付き、ユーディスが顔を上げる。槍を握りしめた彼女の目の前でラッヘンは携帯電話を弄って小さく笑った。
「あーあー……もしもし、ユータくん? うん、とっても楽しかったの。
 あたしたちって殺人クラブっていうの。小さなお友達クラブだよ。誰よりも愉しく人を殺す所なの。またお会いしましょう?」
 それではね、と倒れた黄泉路の掌にぎゅ、とナイフを握りしめさせてラッヘン・フラウは笑いながらその場を後にする。
 残されたのは、彼女に殺された男の死骸と、『殺人クラブ』というロゴが入ったナイフだけだった。

■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
 お疲れ様でした。
 判定理由は全てリプレイに書かせていただきました。
 ラッヘン・フラウに対して様々な声掛け、とても面白く感じさせて頂きました。人殺しに対する考え方や流儀は人それぞれであるなあと感じさせて頂きました。

 ご参加有難うございました。また別のお話しでお会いできます事をお祈りして。